- 更新日 : 2024年9月6日
債権回収会社(サービサー)は債権管理のプロ!回収の流れやメリットを解説
債権回収会社とは、サービサー法に基づく、民間の債権管理・回収専門業者のことです。法務省が許可した債権回収会社一覧を公開しているため、怖い会社なわけではありません。
債権回収会社に依頼することで、債務者が支払いに応じる可能性が高まる点がメリットです。本記事では、債権回収会社に依頼すべきケースについても紹介します。
目次
債権回収会社(サービサー)とは?
債権回収会社とは、法務大臣から許可を得て設立されたサービサー法に基づく法人のことです。サービサーとも呼ばれます。
民間の債権管理回収専門業者
債権管理会社(サービサー)の主な特徴として、特定金銭債権の管理回収を専門に営む民間の業者(株式会社)であることが挙げられます。サービサー法の施行をきっかけに、民間で設立できるようになりました。
なお、設立要件としては、「資本金5億円以上」「暴力団員等の関与がない」「常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれている」などが定められています。
サービサー法とは?
サービサー法とは、正式名称「債権管理回収業に関する特別措置法」のことです。サービサー法では、以下を債権管理会社が管理回収する「特定金銭債権」と規定しています。
- 金融機関などが有している貸付債権
- リース・クレジット債権
- 資産の流動化に関する金銭債権
- ファクタリング業者が有している金銭債権
- 法的倒産手続中の者が有している金銭債権
- 保証契約に基づく債権
- その他政令で定める債権
また、サービサー法が規定する債権管理回収業の主な仕組みは、以下のとおりです。
- 債権者が債権回収会社(サービサー)に委託・譲渡する
- 債権回収会社(サービサー)が債務者から回収する
- 弁護士会は債権回収会社(サービサー)に取締役弁護士を推薦する
- 警察庁長官は債権回収会社(サービサー)に立入検査や援助などをする
- 法務大臣は債権回収会社(サービサー)に対して許可や立入検査などを実施する
なお、サービサー法に関する詳しい内容については、以下法務省のサイトを参考にしてください。
債権回収はなぜ重要なのか?
債権者にとって債権回収が重要とされるのは、資金不足に陥る可能性があるためです。
民法第166条第1項には、債権者が権利を行使できることを知ってから5年間行使しないときや、権利を行使できるときから10年間行使しないときに、債権が時効で消滅することが定められています。つまり、面倒などの理由で債権回収を後回しにすると、本来手元に入るはずの現金を得られなくなる可能性があるのです。
また、債権回収には時間や手間がかかるため、どのような方法で回収するかも考えなければなりません。債権回収の方法によって、労力や効果も異なります。
債権回収を実施するにあたっては、債権管理も重要です。債権管理とは、回収予定日や残債を把握して、しっかりと債権を回収できるようにすることを指します。
債権回収会社(サービサー)と法律事務所・ファクタリング会社の違い
債権回収会社(サービサー)と法律事務所やファクタリング会社の主な違いとして、以下の点が挙げられます。
- 取り扱う債権
- 料金体系
- 依頼可能な業種
それぞれ確認していきましょう。
取り扱う債権の違い
取り扱う債権の種類が、主な違いです。
債権回収会社(サービサー)は、すでに回収期日が到来しているにもかかわらず、回収が困難な状況にある不良債権を対象にしています。一方、ファクタリング会社が対象にするのは、基本的に支払期日が到来する前の債権です。
また、債権回収会社(サービサー)と法律事務所は、対応可能な債権の範囲で異なります。法律事務所が幅広い債権に対応しているのに対し、債権回収会社が扱えるのは特定金銭債権のみです。
料金体系の違い
料金体系も、債権回収会社(サービサー)とファクタリング会社の主な違いです。
業者によっても異なりますが、ファクタリング業者の手数料は数%〜10%前後であるのに対し、一般的に債権回収会社(サービサー)に依頼すると9割以上の手数料がかかります。なぜなら、債権回収会社(サービサー)が扱う不良債権の回収には高いリスクを伴うためです。
依頼可能な業種の違い
依頼できる業種も、違いのひとつです。
ファクタリングは、資金調達が必要な中小企業や個人事業主が利用します。幅広い業種の事業者が対象です。
一方、債権回収会社には、主に金融機関が依頼します。なぜなら、金融機関などが有している貸付債権やリース・クレジット債権といった特定金銭債権のみが対象とされているためです。
なお、法律事務所は個人から法人まで幅広く依頼できます。
債権回収会社(サービサー)は怖い?
債権回収会社(サービサー)は、決して怖い会社ではありません。主な理由は、以下のとおりです。
- 債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要
- 法務大臣が弁護士の適格性を監督
- 警察庁長官が立ち合い、暴力団員等を排除
それぞれ解説します。
債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要
債権管理回収業を営むためには法務大臣の認可が必要で、誰でもできる仕事ではないことが、債権回収会社(サービサー)が怖いとはいえない理由です。
債権回収を始める会社は、許可申請書に定款や誓約書面などを添付し、法務省の所感部署に提出しなければなりません。また、申請を認めてもらうためには、許可申請者が要件を満たすことが必要です。
法務大臣が弁護士の適格性を監督
法務大臣が弁護士の適格性を監督している点も、債権回収会社(サービサー)が怖い会社ではない理由です。
常時従事する取締役のうち1名以上を弁護士とすることを債権回収会社(サービサー)に義務づけることで、内部から業務全般の適正を監督する仕組みが整っています。また、取締役に就任する弁護士について、法務大臣は日本弁護士連合会の意見を聴取しなければなりません。
警察庁長官が立ち合い、暴力団員等を排除
警察庁長官が立ち会い、暴力団員等を排除する仕組みが整っていることも、債権回収会社(サービサー)が怖い会社ではないといえる理由です。
警察庁長官には、立入検査や援助により暴力団員等を排除する仕組みになっています。また、法務大臣は暴力団等の関与の有無について、警察庁長官に意見聴取しなければなりません。
さらに、債権回収業を営む要件には、暴力団等の関与がないことが含まれています。
債権回収会社(サービサー)に債権回収依頼をするべきケース
債権回収会社(サービサー)や士業に債権回収を依頼すべきケースは、主に以下のとおりです。
- 自社単独での回収に限界があるケース
- 債権管理・回収のノウハウを持っていないケース
それぞれ解説します。
自社単独での回収に限界があるケース
自社単独での回収に限界があるケースでは、債権回収会社(サービサー)への債権回収の依頼を検討したほうがよいでしょう。
たとえば、債務者に資金余力があるにもかかわらず、こちらからの要請に応えようとしない場合は、なかなか回収ができません。そのような場合でも、債権回収会社なら積極的に回収を進められる可能性があります。
また、そもそも債務者に資金余力がない場合でも、債権回収会社(サービサー)なら回収する方法を見出すことがあるでしょう。
債権管理・回収のノウハウを持っていないケース
債権管理・回収に関する業務経験が浅く、ノウハウを持っていないケースも、債権回収会社(サービサー)に依頼するタイミングです。
ノウハウを持っていなければ、債権回収のために何から始めればよいかわからないため、余計な作業をしてコストや時間をかける可能性があります。その点、債権回収のプロである債権回収会社(サービサー)に依頼すれば、効率よく債権を回収できるでしょう。
債権回収会社(サービサー)による取立ての流れ
一般的に、債権回収会社(サービサー)による取立ての流れは以下のとおりです。
- 債権者が催促や内容証明の発送をする
- 債権が債権者から債権回収会社に移る
- 債権回収会社が督促や支払督促の申立てをする
それぞれ解説します。
1. 債権者が催促や内容証明の発送をする
債務者の支払いが滞っている場合、まず債務者は電話や書面などの手段で相手に催促することが一般的です。催促しても反応がない場合は支払いを促す郵便窓口で内容証明を債務者宛に発送します。
なお、内容証明とは、「いつ」「いかなる内容」の文書を「誰が」「誰に」差し出したかを謄本によって日本郵便株式会社に証明してもらう制度です。
2. 債権が債権者から債権回収会社に移る
内容証明を発送しても債務者からの回収が困難な場合、債権回収会社に依頼して債権譲渡します。債権譲渡以降、対象債権の債権者は債権回収会社です。
なお、債権は債権譲渡ではなく代位弁済(代弁)で移る場合もあります。代位弁済は債権者と債務者の契約時に指定していた保証会社に債権が移るのに対し、債権譲渡は債務者に関係のない会社(債権回収会社)に債権が移る仕組みです。
3. 債権回収会社が督促や支払督促の申立てをする
対象の債権が移動したら、今度は債権回収会社が電話や訪問などの方法で債務者に督促をします。
督促に対しても反応がない場合は、債権回収会社が支払督促の申立てに進むことが一般的です。債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申し立てをしない場合、債権回収会社は強制執行の申立てができます。
なお、債務者が支払督促の申立てに対して異議を申し立てた場合は、民事訴訟手続きに移行しなければなりません。
債権回収会社に債権回収を依頼するメリット
債権回収会社に債権回収を依頼する主なメリットは、以下のとおりです。
- 滞留債権や不良債権を処分できる
- 取引先との与信トラブルを回避できる
- 債務者が支払いに応じる可能性が高まる
各メリットについて、解説します。
滞留債権や不良債権を処分できる
債権回収会社に債権回収を依頼すれば、滞留債権や不良債権を処分できる点がメリットです。
自社で債権を回収しようとすると、ノウハウが必要なうえに手間もかかります。その点、債権回収会社に依頼すれば、手間をかけずに滞留債権や不良債権を処分して現金化できるでしょう。そして、債権回収にかける時間を本業にあてられます。
取引先との与信トラブルを回避できる
債務者とのトラブルを回避できる点が、メリットです。直接やり取りしない分、揉める可能性を軽減できます。
債権回収会社に依頼して債権回収できれば、株主やほかの取引先からの信頼回復につながる点もメリットです。取引先からの債権を回収できないままでいると、「与信管理が甘い」とみなされて信用を失う可能性があります。
債権をスムーズに回収するためには、与信管理システムを導入して与信管理を徹底することも大切です。与信管理システム導入時は、リスクを軽減するために定期的に与信限度額を見直すこと、自社だけでなく第三者と連携して客観的な判断をできるようにすることも心がけましょう。
債務者が支払いに応じる可能性が高まる
債務者が支払いに応じる可能性が高まる点も、債権回収会社に依頼するメリットです。債権回収のプロに依頼する分、今まで支払いに後ろ向きだった債務者でも、支払いに応じる可能性が高まります。
ただし、債権回収会社に依頼する際にかかる手数料が一般的に高い傾向にあるため、本来回収できる額よりも少なくなる点には注意しなければなりません。
代表的な債権回収会社
SMBC債権回収株式会社、オリックス債権回収株式会社、ジャックス債権回収サービス株式会社など、さまざまな債権回収会社が存在します。2024年7月1日現在、法務省が債権管理回収業の営業を許可している株式会社は、以下の72社です。
- 日本債権回収株式会社
- アビリオ債権回収株式会社
- ニッテレ債権回収株式会社
- 株式会社整理回収機構
- SMBC債権回収株式会社
- オリックス債権回収株式会社
- 株式会社ファンデックス債権回収
- シー・シー・シー債権回収株式会社
- のぞみ債権回収株式会社
- 株式会社山田債権回収管理総合事務所
- ジャックス債権回収サービス株式会社
- あおぞら債権回収株式会社
- キャピタル・サーヴィシング債権回収株式会社
- 株式会社沖縄債権回収サービス
- エー・シー・エス債権管理回収株式会社
- エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
- パシフィック債権回収株式会社
- 栄光債権回収株式会社
- Pepper Advantage Japan債権回収株式会社
- セゾン債権回収株式会社
- 株式会社日貿信債権回収サービス
- PAG債権回収株式会社
- 中央債権回収株式会社
- やまびこ債権回収株式会社
- みずほ債権回収株式会社
- オリンポス債権回収株式会社
- 保証協会債権回収株式会社
- 三菱HCキャピタル債権回収株式会社
- 九州債権回収株式会社
- アイ・アール債権回収株式会社
- 系統債権管理回収機構株式会社
- しまなみ債権回収株式会社
- ブルーホライゾン債権回収株式会社
- エム・テー・ケー債権管理回収株式会社
- ちば債権回収株式会社
- AG債権回収株式会社
- リサ企業再生債権回収株式会社
- 山陰債権回収株式会社
- ミネルヴァ債権回収株式会社
- 岡山債権回収株式会社
- エーアールエー債権回収株式会社
- アウロラ債権回収株式会社
- みやこ債権回収株式会社
- ふくおか債権回収株式会社
- みらい債権回収株式会社
- NTS-MG債権回収株式会社
- ほくほく債権回収株式会社
- きらら債権回収株式会社
- 株式会社住宅債権管理回収機構
- あけぼの債権回収株式会社
- 株式会社エムアールアイ債権回収
- オリファサービス債権回収株式会社
- SH債権回収株式会社
- ロンツ債権回収株式会社
- ジャパントラスト債権回収株式会社
- アルファ債権回収株式会社
- アップル債権回収株式会社
- リンク債権回収株式会社
- きらぼし債権回収株式会社
- サン債権回収株式会社
- パルティール債権回収株式会社
- リボーン債権回収株式会社
- 株式会社グラックス債権回収
- 札幌債権回収株式会社
- ベル債権回収株式会社
- 北國債権回収株式会社
- アペックス債権回収株式会社
- 美ら島債権回収株式会社
- みちのく債権回収株式会社
- LENDY債権回収株式会社
- にしせと地域共創債権回収株式会社
- 池田泉州債権回収株式会社
営業許可年月日や法人番号、代表者名、本店所在地などを知りたい方は、以下の法務省サイトを確認してください。
回収に自信がなければ債権管理会社に依頼する
債権回収会社(サービサー)とは、法務大臣から許可を得て設立された民間の債権管理回収専門業者です。ファクタリング会社が主に支払期日到来前の債権を扱うのに対し、債権回収会社は期日が到来した債権を扱います。
依頼する主なメリットは、債務者が支払いに応じる可能性が高まる点です。債権回収に自信がない場合は、債権管理会社への依頼を検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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