- 作成日 : 2024年11月5日
社員が経費精算しない理由は?時効や効果的な対策を解説
社員が経費計算をしない理由としては、申請が面倒であったり、期限に間に合わなかったりすることが挙げられます。しかし、社員が経費精算をしないことは企業にとって問題があり、対策を講じなければなりません。
本記事では、社員が経費精算しない理由や対策のほか、精算の時効などについて詳しく解説します。
目次
経費精算とは
経費精算とは、社員が業務で支出した費用を会社が後日払い戻す手続きを指し、小口精算や交通費精算、旅費精算の3種類に大きく分けられます。
立替経費精算が発生する例
経費に該当する出費としては、接待時の飲食費や取引先との打ち合わせのための移動交通費、出張時の宿泊費や移動費などがあります。加えて、文具などの消耗品費や、業務に必要な通信費も経費に該当します。
こうした経費を立て替えるシーンの例としては、取引先との会食で使った費用を営業担当がいったん自分のお金で支払った場合や、取引先を訪問するために利用したタクシーの費用を立て替える場合などがあるでしょう。
仮払制度がない企業では、出張旅費なども従業員が立て替えます。こうして従業員が経費を立て替えた際には、適切な方法で事後に立替経費精算を行う必要があります。
立替経費精算をしない社員が発生する理由は?
経費を立て替えている社員にとって、経費精算しないと立て替えたお金が戻ってこないため損をすることになります。それでも、立替経費精算をしない社員は一定数存在します。
ここでは、なぜ立替経費精算をしない社員が出るのか、その理由を見ていきましょう。
申請や承認の手続きが面倒
経費精算の手続きに手間がかかり、面倒で申請しないというケースは少なくありません。経費精算では、詳細な項目別のルールに従う必要があります。このルールに対応しきれずに何度も差戻しが発生し、嫌気がさすということもあるでしょう。
特に紙ベースでの申請を採用している企業では申請書の提出が社内回覧の形式を取っており、リモートワーク時や出張時でも出社して申請する必要があります。こういったケースでは出社を面倒に感じ、申請をしないケースが多々あります。
立替経費精算プロセスの煩雑さは、特に忙しい社員にとって申請そのものを敬遠させる原因となっていると考えられるでしょう。
領収書の紛失や、申請期限の超過で対応できなかった
経費精算に必要な領収書を紛失する、または申請期限を過ぎてしまうケースも少なくありません。特に、リモートワーク中は領収書をデジタルで保管する体制が整っていないと、紙の領収書が管理されずに紛失してしまうことがあります。
また、出張のタイミングなどによっては経費精算の締め日が近く、申請をするつもりではあっても結果的に間に合わず申請できなかった、というケースも見られます。
インボイス制度の要件確認に時間がかかる
2023年10月からインボイス制度が実施されたことで、経費精算の際に受け取ったインボイス(適格請求書)が法的要件を満たしているかどうかを確認する必要が生じました。
インボイスに必要な記載事項は、以下のとおりです。
- 適格請求書発行事業者の名称または氏名及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象であればその旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
このように、多くの項目をチェックしなければなりません。特に税率ごとに分けた消費税額の確認は手間がかかるため、申請が遅れる原因になる可能性があります。
少額の場合、申請しづらい
数百円など金額が小さい経費については、わざわざ申請することをためらう社員も少なくありません。企業によっては、少額の経費申請は「重要でない」と見なされたり、歓迎されない空気があったりするケースも見られます。
また、立替経費申請にかかる手間と経費の金額を比較したとき、金額に対して負担や手間が大きすぎると感じ申請しないこともあるようです。
経費精算の期限
経費精算には、法的および社内の規定に基づく期限があります。詳しく見ていきましょう。
税法上は原則として年度内
税法上の扱いでは、原則として経費精算は発生した年度内に行う必要があります。これは決算書に必要な情報を正確に反映させるためです。
企業が適切な財務報告を行うために、この期限を守ることが大切になってきます。また、年度をまたぐ経費精算は税務調査で問題視されることもあり、余計なトラブルを避けるためにも、年度内での精算は守るべきといえるでしょう。
就業規則で1ヶ月以内と定めている企業が多い
立替経費精算の期限については、税法とは別に就業規則において定めがあるケースがほとんどです。企業によって期限には多少の差があるものの、1ヵ月程度と定められていることが多く、社員はこの期限内での精算が求められます。
期日は毎月25日や月末など様々ですが、企業は全社員に対し精算期日を周知しておく必要があります。
経費精算の申請が遅れた場合の対応
もし経費精算の申請が就業規則で定めた期日に遅れた場合でも、企業は経費を精算し支払う必要があります。
その理由は、民法166条における債権の消滅時効の定めにあります。
- 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
- 権利を行使することができるときから10年間行使しないとき
この条件を満たして初めて時効によって消滅するとされています。就業規則は法的効力を持たないため、民法の規定に従うと経費精算の時効は5年もしくは10年です。
そのため就業規則による期日を経過していたとしても、請求されれば企業は経費精算せざるをえません。正当な理由なく拒否した場合は、立替金請求訴訟を起こされるリスクがあります。
経費精算をしないリスク
経費精算が適切に行われないと、企業の財務管理に悪影響を及ぼします。以下で、経費精算しないことによって起こるリスクを見ていきましょう。
財務状況を適切に把握できない
未精算の経費が積み重なると、企業の実際の支出額と財務書類上の数値に差が生じます。そうなると決算書の信頼性が損なわれ、経営判断に誤りが生じる可能性が高まります。
また、対外的にも不正確な情報を提示することで、取引先や投資家からの信頼が低下するリスクが否定できません。企業の健全な財務運営のために、経費精算を決められた期間内に行うべきといえます。
税務調査で問題視されるリスクがある
相当の理由がない未精算の仮払金が企業の帳簿上に残っている場合、税務調査で問題視される可能性があります。
「相当の理由がない未精算」は「使途不明金」と見なされ、税務署からの指摘を受けることになりかねません。また、金融機関に与える印象も悪くなり、融資に対する悪影響が出る懸念もあります。
経費精算しない社員に対しては、一つひとつの未精算経費の金額はそれほど大きくなかったとしても、会社全体にリスクが及ぶ可能性があることを理解してもらう必要があります。
経費精算しない社員に効果的な対策
経費精算しない社員に対しては、経費精算に対するハードルを下げ、心理的な苦手意識や面倒さをなくすことが大切です。
以下に、効果的な対策を紹介します。
経費精算システムを導入する
経費精算システムの導入は、経費精算しない社員だけではなく、経費精算に抵抗がない社員や経理担当者、承認者といった精算フローに関係するすべての社員にとってメリットがあります。
申請から承認まで一連のプロセスを自動化できることに加え、会計システムと連携させると支払いまで一括で管理可能です。また、スマートフォンで領収書を撮影するだけで申請が完了するシステムも多く、煩雑な紙ベースの申請プロセスを大幅に簡略化できます。
手間を減らして簡単な手順で申請できる環境を整えることが、経費精算を促すことにもつながるでしょう。
経費申請ルールの周知を徹底する
経費申請についてのルールを整え、全社員への周知を徹底しましょう。経費を使う機会が少ない社員の場合、経費精算の流れや期日を知らずに悪気なく経費精算をしていない可能性もあります。
また、法改正などに伴ってルールが更新された場合なども、速やかに周知して全社員が経費精算について同じ認識を持つようにしておくことが大切です。
従業員に定期的に手順をレクチャーする
定期的な研修を通じて、社員に経費精算の手順や重要性を認識してもらい、経費に対する意識を高めることも効果的な対策のひとつです。経費精算に対する理解が深まることが、申請漏れや不正行為の抑止にもつながるでしょう。
特に、新入社員やルールに不慣れな社員に対しては、経費精算システムの利用方法や正しい申請手順をレクチャーすることで、精算率の向上が期待できます。
経費精算システムの導入で経費精算は効率化できる
経費精算システムの導入により、社員の手間が軽減されるだけでなく、経理部門の業務も効率化されます。
経費を申請する社員のメリット
経費精算システムを導入することで、社員はペーパーレスで経費申請を行えるようになります。スマートフォンで領収書を撮影し、システムにアップロードするだけで申請が完了するため、紙ベースの申請に比べて手間も時間もかかりません。
さらにクラウド型なら出張先やリモートワーク時でも、経費申請のためだけに出社する必要がなくなります。
経費申請を承認する社員のメリット
経費計算システムは、承認者にもメリットをもたらします。オンラインで申請確認ができるため、申請後にタイムラグなく確認や承認が可能です。紙の申請書を回覧する手間もかかりません。
さらに、システム上でコメントを入れて差し戻せるため、承認プロセスがスムーズに進みます。原本保管をしなくて済む点も、メリットといえるでしょう。
経理担当者のメリット
経理担当者にとっても、経費精算システムは業務の効率化において大きなメリットがあります。システムは自動で経費の仕訳を行い、会計ソフトと連携することで振込処理まで自動化が可能です。
手作業での入力ミスや確認作業が大幅に削減され、経理担当者の負担が軽減されるでしょう。さらに、経費精算の進捗状況がリアルタイムで把握できるため、管理も楽になります。
マネーフォワード クラウド経費なら、経費精算がスムーズ!
経費精算しない社員に少なからずある、精算に対する心理的ハードルの高さを下げる手段として、「マネーフォワード クラウド経費」がおすすめです。
マネーフォワード クラウド経費では、領収書やレシートをスマホカメラで撮影すると画像から日付・金額・支払先をデータ化するため、入力ミスが防げることに加え、手間がかかりません。また交通系ICカードやクレジットカードなどの各種サービスと連携でき、対象の明細を選ぶだけで経費登録ができます。
チャット機能もあり、申請者と承認者がシステム上でコミュニケーションが取れるため確認作業もスムーズです。
経費申請の効率化ができるのはもちろん、ペーパーレスで経費精算にかかる時間を大幅に削減できます。
効率化によって経費精算を促すのもひとつの方法
経費精算しない社員に精算を促すには、精算フローを効率化し少ない負担でスムーズに申請できるようにするのもひとつの方法です。
特に経費精算システムの導入は、手間を大幅に削減し効率をアップさせるだけではなく、財務管理の正確性と透明性を向上させるなど多くのメリットがあります。
現状の経費精算フローの課題となる点を洗い出し、自社に適した方法で経費精算を効率化させたうえで経費精算しない社員へ意識変革を促すといいかもしれません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
与信管理とは?調査方法やポイントをわかりやすく
一般企業の与信取引として代表的なのが、売掛金などによる掛取引です。与信取引のある企業では、与信管理をすることが、自社を連鎖破産から守る防衛策になります。今回は、与信管理の重要性やプロセス、押さえておきたいポイント、与信調査の方法などを解説し…
詳しくみる不動産投資で経費にできるもの・できないものまとめ
不動産投資でかかった費用には、経費にできるものとできないものがあります。実際に経費として計上が可能な費用について具体的に例を挙げて紹介するので、ぜひ参考にしてください。経費計上する際の勘定科目や注意点についても解説します。 不動産投資で経費…
詳しくみる営業キャッシュフローとは?マイナスでも大丈夫?計算方法まで解説
「営業キャッシュフロー」とは、財務諸表の一種である「キャッシュフロー計算書」の重要な項目の1つです。企業のキャッシュフローのうち、「営業取引」から生じた現金収支を表します。 営業キャッシュフローを見ることで企業の何がわかり、どのような分析が…
詳しくみるクレジットカード管理表の書き方をテンプレをもとに解説
事業で発生する経費を現金で支払う場合は、立替や領収書の確認、支払いなどの対応が必要です。しかし法人向けクレジットカードであれば、このような事務処理を削減できます。 ただし、むやみに使うと不正や誤用のリスクがあるため、クレジットカード管理表な…
詳しくみる経費精算で税金はどう扱う?節税のポイントや課税・非課税の対象を解説
経費精算における税金を正しく理解すると、適切に処理ができるため、節税にもつながります。ただし、経費精算には支出の内容に応じた課税と非課税の判断や、消費税の仕入税額控除など、注意するべき点があります。 本記事では、経費精算の税金について、節税…
詳しくみるインボイス制度対応のおすすめ会計ソフトは?選び方のポイント
2023年10月1日にインボイス制度が導入され、経理業務や消費税計算が複雑化しています。会計ソフトに関しては、単にインボイス制度へ準拠するだけでなく、経理業務の負担やミスの発生リスクを軽減するための機能が必要不可欠です。この記事では、インボ…
詳しくみる