- 更新日 : 2024年8月8日
経費は領収書なしで認められるか?領収書がない場合の対処法
事業に関係する支出であれば、確定申告をする際に税務上の費用として処理することができます。費用として処理するために必要となるのが、その支出を証明する証拠。一般的に領収書と呼ばれるものがこれにあたります。レシートと呼ばれる会計明細がプリントされたものも同様です。
ところが、次のような支払をした場合、領収書が受け取れない場合があります
・電車やバスに乗るときに支払う運賃
・移動中に取引先へふるまった自動販売機の缶ジュース代
・得意先訪問前に情報をチェックするため駅の売店で買った新聞や雑誌
・割り勘で支払うことになった打ち合わせの喫茶代
・個人のカード決済による仕事用にダウンロードしたアプリケーションの代金
・関係先のご祝いやご不幸での、ご祝儀や香典などの出費
また、せっかく発行してもらった領収書をなくしてしまったということがあるかもしれません。
領収書なしやレシートなしの状態での支出をあきらめずに税務上の費用にするために、出金伝票の切り方を覚えておきましょう。
出金伝票とは
出金伝票と呼ばれるものは、事業を行っている者が現金を支払った際に起こす書類のひとつです。書式に規定はなく、単なるメモの一種でもあると言えますが、税務署がチェックしても問題のない内容を備えていることが大切になります。
出金伝票の書き方
出金伝票は市販のものを使うのが一般的です。会社によっては独自の項目(仮払精算や立替精算など)を盛り込んだオリジナルの書式を使っていることもあります。
このように外見は異なっていても、出金伝票として成立する要件がそろっていれば、領収書なしで経費として精算しても問題ありません。
出金伝票の要件
出金伝票として成立させるためには、次の4項目が記載されていることが必要です。
1.支払いをした日付
2.支払いをした相手の名称
3.支払った金額
4.支払いの目的や品物・サービスの内容
出金伝票の保存
出金伝票は、会計処理をしたあともほかの税務書類と一緒に資料として保存する必要があります。交通費は業務日報が出金の内容を裏付けてくれますので、一緒に保存するようにします。
案内状やビジネス・セミナーの入場チケットなども、それだけでは証拠書類になりにくいですが、出金伝票と一緒に保存すれば、有効な証拠書類になるので活用してください。
現金出納帳の併用
領収書やレシートの受け取りができなかったというのは、現金で支払っているケースが多いのではないでしょうか。現金での支払いであれば、出金伝票のほかに現金出納帳への記帳をしておきましょう。
現金出納帳は現金の出金・入金が時系列に記載されているので、適正な会計処理のなかで出金伝票が起こされていたことを示す証拠になります。
電子決済などでの支払いの場合
最近では、財布を持ち歩かないという人もいるほど、キャッシュレスで生活ができるようになっています。
しかし、証拠書類を残すために、領収書なしのキャッシュレス支払いはひと手間かける必要があります。
ICカード乗車券など
ICカード乗車券の利用も、寸暇を惜しんで移動するビジネス・パーソンにとってはなくてはならないツールです。JR東日本の「モバイルSuica」では、定期券や新幹線の乗車券・グリーン券・特急券をキャッシュレスで購入でき、手間も時間も少なくて済みます。
領収書の発行がないこのサービスを経費にするには、パソコンで利用明細(領収書)を印刷して出金伝票に添付する方法があります。詳細はJR東日本のサイト(履歴印字(パソコンのみ)|モバイルSuica 利用法)を参照してください。
このほか、航空各社のインターネット発券サービスでは、別途領収書の発行サービスを行っていますので、利用の際は確認・問い合わせをしてください。
ETC利用料金
ETCが普及したおかげで、高速道路を利用する際に料金所で現金受け渡しにもたつくようなことが少なくなりました。その代わり、現金と引き換えに受け取っていた領収書兼利用明細書も手元に残らず、記憶を頼りに出金伝票を起こそうとして苦労している人も多いのではないでしょうか。
ETCを利用した際には、後日クレジット会社から送られてくる請求書に利用明細が添付されます。これが出金伝票の代わりになりますが、タイムラグがあるので不便です。
そこで利用したいのが、インターネットの「ETC利用照会サービス」です。ここでは過去62日間(非登録型サービスの場合)の利用証明書を発行することができます。詳細はETC利用照会サービスのサイトを参照してください。
なお、料金所の現金精算レーンでETCカード支払いをすると、その場で、現金での支払い時と同様に領収書兼利用明細書を発行してもらえます。
<関連記事>
タバコを経費で落とした社長の末路 経理の目をすり抜けた申請方法とは
中小企業の経営者必見! 交際費の範囲を具体的に紹介
よくある質問
出金伝票とは?
事業を行っている者が現金を支払った際に起こす書類が、出金伝票です。詳しくはこちらをご覧ください。
出金伝票として成立させる要件は?
「支払いをした日付・支払いをした相手の名称・支払った金額・支払いの目的や品物・サービスの内容」の4項目が記載されていることです。詳しくはこちらをご覧ください。
ICカード乗車券などを経費にするには?
パソコンで利用明細(領収書)を印刷して出金伝票に添付する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
赤字でも法人税がかかるって本当?費用と損金の違いを解説
法人税は会社の利益にかかる税金です。では、会社が赤字の場合はどうなるのでしょうか。当然法人税は支払わなくてよいはずです。ところが、実際には会社が赤字でも法人税を支払う場合があります。 これは企業会計上の利益と、法人税法上の利益(所得金額)の…
詳しくみる固定資産税も軽減措置で減税!納期は?課税資産や納税義務者は?
税金には、所得に課税される税金(所得税、法人税など)や消費に課税される税金(消費税、酒税など)のほか、資産の所有に課税される税金もあります。この代表的な税金が固定資産税です。 本稿ではこの固定資産税について解説します。納期や減税となる軽減措…
詳しくみる知っておきたい支払調書の提出義務者・期限・提出先
事業者は、所得税法で源泉徴収が必要とされている報酬等を支払った場合、原則的には支払いをした翌月に徴収した源泉所得税等を国に納付します。この報酬等について、1年間の支払金額・源泉徴収税額等をまとめたものが支払調書です。 今回は、支払調書にはど…
詳しくみる事業税の計算方法を正しく理解していますか?個人事業税と法人事業税の計算方法を解説
事業主が知っておくべき税金のひとつに「事業税」があります。 所得税は国に納める税金ですが、事業税は管轄する行政に納める地方税です。そして、事業税には「個人事業税」と「法人事業税」があります。 名前のごとく、個人が営む事業に対して課せられるも…
詳しくみる販売者は気をつけたい!軽減税率の値引きの話
2019年10月1日より、消費税が8%から10%へと引き上げられます。 これと同時に軽減税率が導入され、一部の商品は8%で据え置きとなります。そのため事業者は、取り扱う商品によって対応を変えなければいけません。また、販売時に値引きがあった場…
詳しくみる重要性の原則とは?金額での判断基準や適用例についてもご紹介
本記事では、企業会計の基本的なルールのひとつ「重要性の原則」について、具体的に解説します。重要性の原則とは、重要性の乏しいものに関する例外的な会計処理を認める規定です。重要性の原則によって会計処理をすることは税務上も認められており、法人税に…
詳しくみる