- 更新日 : 2024年8月8日
未収消費税とは?計上時期や仕訳の解説
未収消費税とは、決算時に仮受消費税と仮払消費税の相殺を行い、還付予定の消費税がある場合に計上する勘定科目です。決算時に計上するとともに、翌期に還付金が入金されたときに減額します。
本記事では未収消費税の内容や計上時期、仕訳例についてご紹介します。
未収消費税とは
未収消費税とは、決算時に仮受消費税と仮払消費税の相殺を行い、還付予定の消費税がある場合に計上する勘定科目です。貸借対照表では、「流動資産の部」に計上します。
未収消費税は申告して還付を受けますが、還付金を受け取った後の会計処理は、採用している方法が税抜経理方式か税込経理方式かで異なります。
税抜経理方式は消費税を費用・収益として扱わず、仕訳では「仮払消費税」「仮受消費税」をそれぞれ計上します。仮受消費税は課税売上に対する消費税のことで、仮払消費税は課税仕入に対する消費税です。
税込経理方式は、本体価格に消費税を含めて計上します。消費税も費用として考える方法です。
未収消費税の計上時期
未収消費税の仕訳は、決算時と入金時に行います。税抜経理方式では決算時に仮払消費税と仮受消費税の合計額を相殺し、差額を未収消費税として計上します。還付金の入金があったら、未収消費税の勘定科目を振り替える処理が必要です。
税抜経理方式では、端数処理などの関係で還付金と仮受消費税・仮払消費税の差額の間に不一致が生じる場合があります。その場合、金額を調整する勘定科目として雑収入を使うことを把握しておきましょう。
税込経理方式では日々の仕訳で消費税を費用に含めるため、仮受消費税や仮払消費税の勘定科目は使用せずに処理を行います。決算時には未収消費税を雑収入として計上し、入金時は未収消費税の勘定科目を振り替えます。
税込経理方式は仮受消費税・仮払消費税の勘定科目を使わないことで端数による不一致がなく、会計処理はシンプルです。
未収消費税の税務上の取り扱い
未収消費税は税務上、貸倒引当金の対象にはなりません。貸倒引当金とは、取引先の倒産などの理由で債権を回収できなくなるリスクに備え、金額を予想してあらかじめ計上する引当金です。
貸倒引当金の設定対象となるのは売掛金や貸付金などで、未収金も対象ですが、「益金の額に算入されたもの」という限定があります。消費税の還付金は益金とはならないため、対象に含まれません。
未収消費税の仕訳
未収消費税の仕訳例について、税抜経理方式と税込経理方式に分けてご紹介します。
税抜経理方式の仕訳例
(決算時の仕訳)
決算時の仮払消費税の残高が20万円、仮受消費税の残高が40万円の場合、税抜経理方式の仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
仮受消費税 | 400,000円 | 仮払消費税 | 200,000円 | 未収消費税を計上 |
未収消費税等 | 198,800円 | 雑収入 | 200円 |
還付金と「仮受消費税・仮払消費税の差額」に不一致が生じた場合に、金額を調整するため雑収入の勘定科目を使います。
(入金時の仕訳)
未収消費税の入金を受けたら、次のように処理します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
普通預金 | 198,800円 | 未収消費税等 | 198,800円 | 未収消費税の還付 |
税込経理方式の仕訳例
税込経理方式は仮受消費税や仮払消費税の項目を使用しないため、仕訳処理の手間が減ります。
(決算時の仕訳)
端数による不一致がないため、決算時の処理は簡単です。
決算で未収消費税198,800円を計上するとき
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
未収消費税等 | 198,800円 | 雑収入 | 198,800円 | 未収消費税を計上 |
(入金時の仕訳)
入金時の仕訳は税抜経理方式と同じで、未収消費税を減少させる処理を行います。
還付金198,800円が振り込まれたとき
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
普通預金 | 198,800円 | 未収消費税等 | 198,800円 | 未収消費税の還付 |
未収消費税の計上時期と仕訳時期を覚えよう
未収消費税は、還付される予定の消費税を計上する勘定科目です。貸借対照表では「流動資産の部」に計上されます。
仕訳は決算時と入金時の2回行いますが、消費税の処理方法である税抜経理方式と税込経理方式では仕訳処理が異なるため、注意してください。記事の仕訳例も参考に、正しく仕訳しましょう。
よくある質問
未収消費税とは?
決算時に仮受消費税と仮払消費税の相殺を行い、還付予定の消費税がある場合に計上する勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
未収消費税の仕訳はどうやる?
決算時と入金時に行い、仕訳内容は消費税の処理方法により異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
法人が投資信託している場合の仕訳と勘定科目まとめ
投資信託とは、運用の専門家などが投資家から資金を募り、集めた資金を株式や債券などに投資して運用する金融商品です。 投資信託は、法人でも証券口座を開設するなどして取得できます。ただし、法人が取得した投資信託は、会社の資産として認識しなければな…
詳しくみる勘定科目 通信費とは?仕訳から解説
取引先や顧客との通信手段にかかる費用は、通信費の勘定科目を用いて経費計上します。通信費は、携帯電話料金やインターネット利用料、切手代など、さまざまな項目を含むため、何を通信費として計上してよいか迷ってしまう方も多いでしょう。今回は、通信費と…
詳しくみる原価計算とは?計算方法や目的、種類などの基本知識と仕訳例を解説!
原価計算は難しいという先入観はありませんか?一度にあまり多くの計算方法を学ぼうとせず、基礎的なところから始めましょう。ビジネスの最前線の問題も、基本的なしくみの理解なしでは語れません。この記事では、原価計算の基礎としてその種類や計算方法、仕…
詳しくみる受取利息とは?勘定科目は?計算方法や仕訳、源泉徴収税までわかりやすく解説!
利息とは、一般にお金を貸した人が受け取るお金のことをいいます。 利息の通知があり、税金が差し引かれた金額の入金を確認した場合、どのような仕訳を起こしたらよいでしょうか?この記事では会社が受け取る利息を中心として解説します。 受取利息とは 受…
詳しくみる引当金の会計処理はどう考えればいいのか?
「引当金」についてご存知でしょうか? 引当金とは、将来に発生するであろう特定の費用又は損失に備えてあらかじめ準備しておく見積金額のことをいいます。 なお、発生する可能性が低い場合は、その金額を引当金として計上できません。会計上は、役員引当金…
詳しくみる返品調整引当金は法改正により廃止!仕訳方法や変更点を解説
「収益認識会計基準」の創設によって、返品調整引当金が廃止されました。法人税においても、平成30年度税制改正によって返品調整引当金が廃止されることとなり、現在は経過措置期間を通じて段階的に縮小されています。 「返品権付き販売」を行う業界では、…
詳しくみる