• 作成日 : 2024年12月3日

電子帳簿保存法に対応後の税務調査への対策は?ポイントを解説

紙媒体の会計書類を電子データ化して保存できる電子帳簿保存法は、繰り返しの改正に伴い多くの企業で対応が求められるようになりました。そして、実際に電子帳簿保存法に対応する企業が増えています。

一方で、電子帳簿保存法対応後の税務調査への対策に関心をもつ担当者もいるでしょう。本記事では、電子帳簿保存法対応後の税務調査においておさえておきたいポイントを紹介します。

要件を満たしていれば電子データも税務調査時の書類として認められる

電子帳簿保存法では、スキャナ保存の要件を満たしていれば、紙の書類を電子データで保存できます。そして、電子データで保存された書類は、税務調査時の提出書類として認められています。

具体的に満たすべきスキャナ保存の要件としては以下の通りです。

重要書類

(契約書、領収書請求書納品書など)

一般書類

検収書見積書、注文書、契約の申込書など)

過去分重要書類
真実性の確保入力期間の制限(書類の受領等後、おおよそ7営業日以内に入力)
一定水準以上の解像度(200dpi 以上)による読み取り
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ 256階調(約 1677 万色)以上)
タイムスタンプの付与
バージョン管理(訂正または削除の事実および内容の確認等)
可視性の要件スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
見読可能装置(14 インチ以上のカラーディスプレイ等)の備付け
整然・明瞭出力
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け
検索機能の確保

保存する書類の種類によっても、満たすべき要件は異なるため、書類ごとにどのような要件を満たさなければいけないのか確認しておきましょう。

電子帳簿保存法に対応後の税務調査と調査対応

税務調査とは、企業や個人事業主が提出した税務申告の内容が正しいのかどうかを確かめるために、税務署が行う調査です。税務調査は、通常「任意調査」と「強制調査」の2種類に分かれ、とくに任意調査が一般的です。

任意調査では事前に税務調査が実施される旨の通知が送られた後、調査当日に帳簿や領収書、請求書などの書類が確認されます。そして、財務データや申告内容に虚偽や過失がないかを調査します。

基本的には通知を受け取ったら税務調査に必要な書類を整備し、当日は調査官からの質問回答や追加書類の提出などの対応が必要です。

一方で、電子帳簿保存法に対応しており、必要な書類を電子データに保管している場合、調査官がシステムで書類を確認できるようにマニュアルや説明書を用意しておきましょう。

法人に対して税務調査が入りやすいケース

法人に対して税務調査が入るのは、以下の要因が考えられます。

  • 過去に税務署から指摘や処分を受けたことがある
  • 売り上げや経費などの数値が異常に増減している など

税務調査に入られやすい法人の特徴として、過去に申告漏れや誤りがありマークされている、不正をしやすいもしくは疑われる状況にある、などがあげられるでしょう。

現時点で列挙されたケースに該当する法人は、より誠実な帳簿管理を行い、税務調査への対策をとっておくのが大切です。

税務調査が入りやすい時期

具体的に税務調査が実施される時期というのはありません。一方で、4月から5月、また7月から11月には税務調査が入りやすいといわれています。

4月から5月は、所得税の申告が集中する3月の確定申告期が終了する時期です。そして、7月から11月は国税局や税務署の人事異動が落ち着くため、この時期にも税務調査が多く実施される傾向にあります。

税務調査の対象になるかどうかは申告内容の整合性や不審点により判断されますが、事業年度末から3ヶ月後にはとくに注意しておくとよいでしょう。

電子帳簿保存法に対応後の税務調査へ向けて知っておくべきポイント

電子帳簿保存法対応後の税務調査対策を行ううえで、知っておくべきポイントを紹介します。以前から税務調査対策を行っていたという方も、電子帳簿保存法対応後ならではの注意点を把握しておきましょう。

電子帳簿保存法に違反していると税務調査時にバレる可能性が高い

電子帳簿保存法に違反している場合、税務調査の際にその不備が発覚するリスクが高くなります。税務調査では、税務署の調査官が帳簿書類を確かめるため、使用されている会計システムや保存されている電子データが要件を満たしているかどうかもチェックされるのです。

もし税務調査時に適切な保存がなされていなければ、不正行為とみなされる恐れもあるでしょう。保存体制に違反があった場合「推計課税」や「追徴課税」など追加の課税が行われたり、青色申告の承認が取り消されたりといった罰則が科せられる場合があります。

たとえ、過失だったとしても、違反による罰則は科せられる可能性があるため、適切な対応が不可欠といえるでしょう。

税務調査で紙の原本が求められる場合もある

電子帳簿保存法に対応していたとしても、以下のケースに該当する場合、税務調査時に紙の原本の提出が求められることがあります。

  • 保存している電子データにタイムスタンプが付与されていなかった場合
  • 電子帳簿保存法対応前の証憑類が必要な場合

会計システム内の電子データ書類にタイムスタンプが付与されていない場合、書類内容の真実性を証明できないため、原本として認められません。また、電子帳簿保存法の運用が開始される前に発生した書類も、紙の証憑類として提出が求められる場合があります。

これらのケースでは、紙の原本の保管も重要となります。後から紙の原本の提出が求められないように、電子帳簿保存法に詳しい専門家やコンサルティング会社と相談しつつ、社内体制を構築していきましょう。

電子帳簿保存法の要件を満たして税務調査への対策も行おう

電子帳簿保存法の対応が進む中、企業にとって税務調査への備えも重要となります。電子帳簿保存法によって、電子データも正式な帳簿書類として認められる一方で、保存要件の厳守や適切なデータ管理が求められます。

とくに要件を満たさない電子データは税務調査時にリスクを招く可能性があるため、普段からの慎重な対応が必要です。また、紙の原本が求められる可能性や、突発的な調査にも対応できるよう、必要に応じて紙の書類も保管しておくとよいでしょう。

こうしたポイントを踏まえて、企業は日頃からの準備を整え、法令遵守に努めることで、電子帳簿保存法対応後の税務調査にも対応できます。


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