• 更新日 : 2024年11月5日

スマホで書類をスキャナ保存できる?保存・解像度の要件を解説【電子帳簿保存法対応】

2024年1月1日以降、電子帳簿保存法による「電子取引データ保存義務」の宥恕(ゆうじょ)措置が終了しました。今後、企業は電子取引に使用したデータを保存する義務が生まれるとともに、任意で紙書類の「スキャナ保存」に対応する必要があります。

従来の電子帳簿保存法においては、スキャナのような端末が必須でした。しかし、2016年の改正により、スマホやデジタルカメラで撮影した画像も、正規の書類として認められるようになっています。

本記事では、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の対象書類や、注意点をまとめました。電子帳簿保存法の対応にお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。

スマホでのスキャナ保存対象となる書類・対象外の書類

電子帳簿保存法において、スキャナ保存の対象となる書類は限られています。次の表に、対象・対象外の書類をまとめました。

スマホでの電子保存可否書類の種別
可能契約書

見積書

注文書

ほか 決算関係書類を除く国税関係書類

不可手書きの仕訳帳

総勘定元帳

伝票 ほか

スマホで電子保存できる書類

スマホで電子保存できる書類の一例は、次の通りです。

スマホによるスキャナ保存が可能なのは、取引で生じる紙書類に限られます。取引相手から紙で受け取った書類や、自社で手書きして取引相手に渡した書類の写しなども、スキャナ保存の対象です。

また、電子帳簿保存法が施行する以前に作成した書類も、スキャナ保存ができます。ただし、適用届出書といった書類の提出が必要になるため、保存作業には相応の工数がかかるでしょう。

スキャナ保存できない書類

スマホでスキャナ保存ができない書類には、次のようなものがあります。

  • 手書きの仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 伝票
  • 紙の決算関係書類(損益計算書貸借対照表、棚卸表など)
  • 電子取引データを出⼒した書⾯

帳簿や決算関係書類は、スキャナ保存に対応していません。仮に保存しても、正規の書類として認められないため、原本を破棄しないよう注意しましょう。

スキャナ保存が可能となっている書類は「保存すべき国税関係書類」に限られます。元々、スキャナ保存制度は「保存すべき法令書類の管理に伴う負担を軽減する」目的で創設されたため、国税に関係しない書類は対象となっていません。

電子帳簿保存法におけるスマホ撮影要件7つ

スマホで書類をスキャナ保存する際は、撮影要件を満たす必要があります。撮影要件を満たさない書類は、正規の書類として認められない可能性があるため、保存の際はこれから紹介する7つの撮影要件を必ず確認してください。

1.解像度・カラー

スマホやデジタルカメラで書類を撮影する場合、書類の内容をはっきりと判別できるように撮影する必要があります。使用するカメラで、次の解像度・カラー要件を満たせるか確認しましょう。

解像度(A4の場合)387万画素(200dpi)以上
カラー24ビットカラー(赤・青・緑の階調がそれぞれ256階調)以上

規定によると、必要な解像度は「25.4ミリメートルあたり200ドット以上」です。保存する書類のサイズによっては、さらに高解像度のカメラが必要になるでしょう。

また、資金や物の流れに直結しない「一般書類」であれば、グレースケールでの保存も許可されています。

2.入力期間の制限

書類のスキャナ保存は、書類を作成してから一定期間内に行う必要があります。書類ごとの保存期限は、次の通りです。

書類種別方式保管期限
重要書類早期入力方式書類を作成または受領してから、速やか(おおむね7営業日以内)にスキャナ保存する
業務処理サイクル方式それぞれの企業において採用している業務処理サイクルの期間(最長2か⽉以内)を経過した後、速やか(おおむね7営業日以内)にスキャナ保存する
一般書類
  • 制限なし
  • 所定の書類が必要

重要書類の保存は、原則として早期入力方式にしたがいます。しかし、業務処理の期間が社内規程で定められている場合は、最長2ヶ月の猶予がつく仕組みです。

また、一般書類の保存に期間制限はありません。しかし、責任者・入力方法などを明らかにした書類を備え付ける必要があります。別途書類を作成し、備え付けましょう。

3.タイムスタンプ

スキャナ保存する書類には「タイムスタンプ」を付ける必要があります。タイムスタンプは、ハッシュ値とよばれる文字列と日時情報をセットにしたものです。

タイムスタンプを付ける目的は、データの編集・改ざんが行われていない証明をすることにあります。ハッシュ値は画像の中身に応じて変化する文字列であり、電子データの内容を1文字でも編集すると変わる仕組みです。

したがって、ハッシュ値が同じである限り、中身のデータが変更されていない証明になります。

タイムスタンプが不要な事例に関しては、関連記事をご参照ください。

4.バージョン管理

電子データを訂正・削除する場合に備えて、バージョン管理も必要です。書類のデータや、記録事項に関して訂正・削除を行った場合、その事実と内容を確認できるようにする仕組みが求められます。

また、訂正・削除ともに不可能にするシステムを利用することでも、バージョン管理への対応が可能です。

5.帳簿との相互関連性

スキャナ保存した重要書類は、帳簿上の仕訳と紐づけ、記載事項の関連性を証明しなければなりません。具体的には、契約書・請求書がどのような取引で生じたものであるか管理し、説明できる状態にする必要があります。

帳簿関連性の要件に対応するため、取引ごとに関連する書類を分けて保存できる、会計ソフトを導入するとよいでしょう。手動で管理する場合は、スキャナ保存した際のIDを、仕訳に記載するといった対応を行ってください。

6.見読可能装置・出力

スキャナ保存した書類は、「見読可能装置」で、いつでも閲覧・出力できる状態にしましょう。閲覧に必要な見読可能装置の要件は、次の通りです。

重要書類
  • 14インチ以上のカラーディスプレイ・カラープリンター
  • 操作説明書
一般書類
  • 14インチ以上、モノクロ表示のディスプレイ(グレースケール保存の場合)

書類をスマホで撮影した場合でも、別途14インチ以上のディスプレイ(ノートパソコン程度のサイズ)が必要になります。スマホから書類を確認するだけでは、要件を満たさないため、あらかじめ用意しておきましょう。

7.検索機能の確保

検索要件とは、スキャナ保存した書類の中から、必要な書類を速やかに取り出せる仕組みです。次の条件で検索できる機能が求められます。

  • 取引年月日、取引金額、取引先
  • 日付か金額の範囲指定
  • 項目を2種類以上組み合わせた検索

手動でデータを管理する場合は、スキャナ保存したデータに決まった規則で名前を付けたり、Excelで索引簿を作ったりするとよいでしょう。保存した書類データを取り込み、検索できるシステムを導入するのも効果的です。

スキャナ保存でスマホを活用する際の注意点3選

スマホでのスキャナ保存は手軽な反面、不適切な保存方法は後々のトラブルにつながる可能性があるため、基本的な注意点を押さえておくことが重要です。

ここでは、スマホでスキャナ保存を行う場合の注意点3つを解説します。

要件に対応したシステムを導入する

スキャナ保存の要件は複雑であるため、すべての要件が満たせるシステムを導入するとよいでしょう。保存要件を人力で確認し、解像度・カラー・タイムスタンプといった要件を満たすのは、工数が無駄になりかねません。

システムを導入することで、入力期限や真実性の確保など、証拠書類の細かい規定も満たせます。一定の初期投資・運用コストが必要になるため、導入に乗り気でない方もいることでしょう。

しかし、人力で検索要件を満たすのは、多大な工数がかかります。結果的に、システムに任せた方がコスト削減にもつながるでしょう。

原本保存が必要な書類もある

スキャナ保存が可能な書類でも、原本保存が推奨されるケースがあります。取引に関する紛争が起こった場合、データや原本の保存方法が争点となることも少なくありません。

また、スキャナ保存の対象外となる書類は、従来通り原本保存が必要になります。制度上は収入印紙や納付書、決算関連書類をスキャナ保存することで、納税の証拠として使用可能です。しかし、印紙税の過誤納の還付申請をする際には、原本の提示が求められます。

人材教育が必要になる

電子帳簿保存法は新しい法律であり、対応方法が浸透していないため、社内で人材教育を行う必要が出てきます。電子データの管理に慣れた企業でも、細かい要件の確認が必須です。

また、業務フローやマニュアルの内容も、見直す必要があるでしょう。電子データの扱いに不慣れな、年齢層の高い人材に対しては、重点的な教育が必要です。

社内に正しい知識を周知できれば、要件にしたがってスキャナ保存が実施できるでしょう。

スマホで書類をスキャナ保存する3つのメリット

スマホでスキャナ保存ができるようになると、業務の効率化につながります。そこで、デジタル化でもたらされる3つのメリットをご紹介します。

スペース・コストの対策になる

スキャナ保存に対応すると、書類の保管スペースを節約できます。国税関係の書類は、個人・法人に関わらず一定期間の保存が義務付けられているため、保管スペースの確保が必要です。

しかし、スキャナ保存で書類を電子化することで、保管スペースが小さくなります。対応前よりオフィスのスペースが広くなるため、業務環境の改善も可能です。また、書類管理に費やす人件費や、保管スペースのレンタル費なども削減できるでしょう。

書類の劣化を防げる

電子データは紙の書類と異なり、経年劣化がありません。データを保存したパソコン・サーバーが無事であれば、半永久的に保管できます。

紙書類は時間の経過とともに、紙が劣化したり、インクがにじんだりするのが難点です。汚れや破れがあると、内容が読めなくなるかもしれません。保存義務が定められた7年間に、正規の書類として認められなくなるリスクもあるでしょう。

スキャナ保存に対応することで、経年劣化のリスクを抑えられます。

検索性が上がる

スキャナ保存の検索要件に対応することで、必要な書類を見つけやすくなります。紙ベースで保管している書類から、目当ての書類を見つけ出すのは、労力と時間が必要です。しかし、スキャナ保存した書類は、取引の日付や取引先の名前などの条件から検索が可能です。

ベストセラーとなったビジネス書『気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ』によると、ビジネスパーソンは年間1,500時間を探し物に使っているといいます。書類の検索性を上げ、探し物の時間を削減することで、生産性向上につながるでしょう。

スマホでスキャナ保存を行って電子帳簿保存法に対応しよう

スマホでスキャナ保存に対応すると、紙ベースの書類をデータ化できるため、劣化防止や検索性の向上が期待できます。スキャナ保存を実施するには、要件への対応が必要です。

要件をすべて満たすのは、電子データの扱いに慣れた方でも難しいものです。検索要件を自動で満たせるシステムを導入し、対応の手間を減らしましょう。

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