• 作成日 : 2024年8月23日

標準原価とは?実際原価との違いや計算の流れを解説

標準原価とは、製品の製造に伴う材料費労務費、間接経費について、科学的・統計的に算定する原価のことです。標準原価を実際にかかった費用と比較することで、製造の問題を把握し、解決につなげられます。

今回は、標準原価の種類やそれぞれの違い、標準原価計算の流れを紹介します。製品製造の効率化やコスト削減を検討したい場合に必要な知識ですので、押さえておきましょう。

標準原価とは

標準原価とは、以下のような製品の製造する際、目標とすべき原価のことです。材料の標準使用量・価格や従業員の標準作業時間・標準賃金率などから算定されます。

  • 従業員の標準作業時間と標準時給
  • 原材料の標準使用量・標準単価

標準原価とは何も問題がない場合にかかる原価で、実際にかかった原価ではありません。しかし、算定することで製造に関する予算を立てやすくなるというメリットがあります。また、実際の製造を待つことなく、製品の原価をある程度把握できることもメリットといえます。

標準原価の分類

標準原価は以下の4つに分けられます。

  • 理想標準原価
  • 現実的標準原価
  • 正常原価
  • 基準標準原価

それぞれの特徴を見ていきましょう。

理想標準原価

理想標準原価とは、最も効率良く仕入や製造が行われたときの原価です。理想標準原価では達成が難しい原価が算出されるため、財務関連では使えません。実際の原価と比較し、その差額から改善点の発見をするために利用します。

現実的標準原価

現実的標準原価とは、現実的な業務から算定した標準原価です。現実的標準原価は短期間のものであるため、原料価格や工場の稼働具合に応じて改めて算定されます。達成できる程度の原価が算定されるため、会社や従業員のモチベーション向上にも使われます。

正常標準原価

正常標準原価とは、過去の実績と今後の見込みを加味して算定される原価のことです。比較的長期的な目標として利用されます。

基準標準原価

基準標準原価は、固定的に長期間使用することを前提とした原価です。年度替わりなどに改定されることはなく、経年変化を確認する時に使われます。ただし、基礎的な条件が変更される場合は改定されます。

標準原価計算とは

標準原価計算とは、標準原価と実際原価の差を分析するために行う計算のことです。製造の現場で利益を出すためには、標準原価と実際原価の差を小さくする必要があります。また、差が小さくなると棚卸資産の決定にも役に立ちます。

標準原価計算を計算するメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

標準原価計算のメリット

標準原価計算のメリットは以下のとおりです。

■月次決算に役立つ

標準原価計算を使って月次決算を行えば、材料等の請求書の到着を待つ必要がなくなります。おおよその月次決算内容を確認できます。

■改善点やコストの問題点を把握できる

また、請求書や棚卸の情報が届くと、標準原価計算の結果と実際原価の差額が明らかになります。この作業を「差異分析」と呼び、この差額からコスト管理の問題点を把握できます。

標準原価計算のデメリット

標準原価計算には、以下のようなデメリットもあります。

■実際原価と大きくずれる可能性がある

標準原価計算によって事前におおよその月次決算内容を確認できますが、実際原価の数値と大きくずれることもあります。特に、大きな環境の変化が急に発生した場合はずれが大きくなり、原価の見当がつかなくなることもあるので注意が必要です。

■標準原価計算が間違っている場合がある

標準原価計算自体が間違っている場合もあります。その際は、概算で出した月次決算も正しい数値が得られないことにより、正しい財務情報が得られない結果になります。

標準原価計算の流れ

標準原価計算は、以下の流れで行います。

  1. 標準原価の設定
  2. 標準原価の計算
  3. 実際原価の計算
  4. 原価差異の計算
  5. 原価差異の分析
  6. 原価差異の処理

1.標準原価の設定

製品ごとに標準原価を見積もります。

2.標準原価の計算

見積もった標準原価をもとに、製品が完成したらその度に標準原価を計算します。例えば、1製品あたりの標準原価が1,000円、月末の完成品が150個の場合、完成品の標準原価は以下のとおりです。

1,000円×150個=15万円

3.実際原価の計算

請求書などをもとに、実際にかかった費用を製品ごとに計算し、実際原価を計算します。実際原価を計算する際には、何にコストがかかっているか、標準原価とどの程度の差異があるかを把握するために、労務費、材料費、間接費など費用ごとに計算することも重要です。

4.原価差異の計算

実際原価を算出したら、製品ごと、費用や作業時間などについても標準原価と実際原価の差を計算します。

5.原価差異の分析

全ての製品・費用で差異を計算したら、標準原価と実際原価の差を分析します。標準原価に比べて実際原価が高い場合は、どのような理由でコストがかかったのかを確認しましょう。

6.原価差異の処理

標準原価計算をしている場合は、算出された標準原価を記帳しています。標準原価と実際原価に差が生じた場合は、「標準原価差異」という科目を使って差額分を処理します。

標準原価計算と他の原価との違い

標準原価計算と他の原価との違いを確認しておきましょう。

実際原価との違い

実際原価とは、実際にかかった原価のことです。製造後、材料費等をもとに算出するため、標準原価とは異なる金額になることもあります。

見積原価との違い

見積原価とは、商品の開発段階で見積もる原価のことです。材料や設備を準備するために、過去の経験や計画書などから原価を見積もります。

見積原価を低く見積もりすぎると、赤字の原因になります。

コスト管理のためにも標準原価を理解しておこう!

標準原価があることで、製品を製造する際にどの程度の原価がかかるのかを把握できます。実際にかかった原価との差異を確認することで、予想以上に費用がかかっているのは何かを把握できますので、コスト管理を徹底したい場合はぜひ活用してください。

標準原価計算をすれば、請求書や棚卸の完了を待つことなく、月次決算を行えます。おおよその損益を把握できますので、迅速に経営判断をしたい方も理解しておきましょう。


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