• 更新日 : 2024年8月8日

手形売却損とは?仕訳例からわかりやすく解説

お金の代わりとして使えるのが手形です。手形は金融機関に売却することで、早期に現金化できます。ただし、満期日前に現金化すると割り引かれてしまうため注意が必要です。この割引料を「手形売却損」といいます。

手形売却損は売却時の内容によって仕訳を行う必要があり、この部分に難しさを感じる方も多いでしょう。そこで本記事では、手形売却損の概要や仕訳例、手形が不渡になった場合などについて解説します。

手形売却損とは

手形売却損とは、満期日を迎える前に手形を決済し、現金化する際に発生する割引料を指します。受取手形には支払金額と決済期日が記載されていますが、その日を迎える前に金融機関などに持ち込むことで現金化できます。

その際、手形に記載され金額よりも受け取る金額の方が少なくなります。なぜなら、満期日よりも前に決済することで、利息に相当する金額が差し引かれるためです。

会計上においては営業外費用に計上され、勘定科目においては「手形売却損」として計上されます。なお、手形売却損には消費税には関係しません

手形売却損の仕訳例

仕訳事例1

受取手形100万円を銀行で割引し、割引料5万円が差し引かれた残額が普通預金へ入金された場合。

借方
貸方
普通預金
950,000円
受取手形
1,000,000円
手形売却損
50,000円

仕訳事例2

取引先より取得した受取手形100万円を銀行で割引し、割引料10万円を差し引かれた残額が当座預金に入金された場合。

借方
貸方
当座預金
900,000円
受取手形
1,000,000円
手形売却損
100,000円

仕訳事例3

受取手形100万円を銀行で割引し、割引料5万円を差し引かれた残額が当座預金に入金。 当該手形には1%の貸倒引当金が設定された場合。

借方
貸方
当座預金
950,000円
受取手形
1,000,000円
手形売却損
50,000円
貸倒引当金
10,000円
貸倒引当金繰入
10,000円

貸倒引当金は、保有する売掛金や受取手形、貸付金などの残高にあわせて計上します。実際に発生した貸倒れがどれくらいなのか、次の算式で計算します。なお、引当金を計上することを「繰入」と呼ぶことから、貸倒引当金の計上限度額を「繰入限度額」と呼びます。

繰入限度額 = 期末一括評価金銭債権の帳簿価額 × 貸倒実績率(実績繰入率)

この算式によって、貸倒引当金の計上額が決められます。

仕訳事例4

受取手形50万円を取引銀行で割引し、手取金は当座預金へ入金。割引料は年利3%、割引日数は90日で設定された場合。

借方
貸方
当座預金
496,302円
受取手形
500,000円
割引料
3,698円

割引料の計算式は、次の通りです。

割引料=手形金額×割引年利率×(割引日数/365日)

今回の事例では、以下のように計算しました。

(受取手形500,000円)×(年利0,03×割引日数90日÷365)= 割引料3,698円

受取手形を裏書譲渡する場合、手形を取引銀行などに裏書譲渡し、満期日前に買い取りしてもらうのが手形の割引です。この場合、割引日から満期日までにかかる利息の支払いが発生し、この利息を割引料として割引料勘の借方に記帳します。

仕訳事例5

受取手形50万円を取引銀行で割引し、割引料5,000円を差し引かれた残額は当座預金へ入金。偶発債務に関しては対照勘定法で記帳する。保証債務の時価は1%と評価した場合。

借方
貸方
当座預金
495,000円
受取手形
500,000円
手形売却損
5,000円
保証債務費用
5,000円
保証債務
5,000円

手形割をした受取手形は発行者が手形期日までに支払えない場合、割引譲渡した側が代わりに銀行に対して手形金額を支払う必要があります。この保証義務には、時価評価を行い「保証債務費用」として費用勘定と「保証債務」として負債勘定で記帳します。

手形が不渡になった場合

もし手形が不渡になった場合はどのようになるのでしょうか。割引に出した手形が支払期日に支払われなかった場合について解説します。

不渡りとは

不渡りとは、支払期日を超えても小切手や手形の決済ができない状態を指します。不渡りには3種類あり、何らかの不備や支払期日の間違いなどが0号不渡り。預金残高の不足などが1号不渡りで、債務不履行や詐欺といった故意によるものが2号不渡りです。

この3種類のうち最も発生しやすいのが1号不渡りになります。一般的な不渡りを指す場合には、1号不渡りであることが多いでしょう。

手形割引をした側に請求がくる

割引に出した手形がもし不渡りとなった場合、その請求は手形割引した側に請求されます。手形割引とは、業者や銀行に手形金額を受取権利を譲渡することです。その譲渡の見返りとしてお金を受け取ります。

このとき、手形の裏面(裏書欄)に必要事項を記入することで譲渡したとみなされます。これが「裏書譲渡」と呼ばれるものです。裏書譲渡することで手形代金を受け取る権利を譲り、支払の手段の1つとして使用できます。

ただし、何らかの理由でその手形の振出人の支払能力が無くなり、不渡りとなった場合は、裏書または「割引した側」にさかのぼって請求されます。これは銀行と手形割引業者のどちらも同じ対応です。

手形売却損の仕訳を繰り返して慣れよう

ここまで手形売却損の概要や仕訳例、手形が不渡になった場合などについて解説しました。特に手形売却損の仕訳については、その内容によって方法が異なることから「難しい」と感じる方も多いでしょう。

しかし、手形売却損の仕訳をさまざまなパターンで繰り返し行うことで、自然と慣れてきます。手形売却損の仕訳について学び、理解を深めていきましょう。

よくある質問

手形売却損とは?

手形売却損とは、満期日を迎える前に手形を決済し、現金化する際に発生する割引料のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

手形の不渡りとは?

不渡りとは、支払期日を超えても小切手や手形の決済ができない状態のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

手形売却損の会計上の扱いは?

会計上においては営業外費用に計上され、勘定科目においては「手形売却損」として計上されます。詳しくはこちらをご覧ください。


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