• 作成日 : 2022年10月7日

鉄骨造の耐用年数は?減価償却の計算方法や法定耐用年数との違いも解説!

鉄骨造の耐用年数は?減価償却の計算方法や法定耐用年数との違いも解説!

鉄骨造の建物を減価償却する際は、法定耐用年数の確認が必要です。軽量鉄骨造の法定耐用年数は鋼材の厚さにより異なり、減価償却の計算は耐用年数が一部経過している場合とすべて経過している場合で変わります。

本記事では、鉄骨造の法定耐用年数や、減価償却の計算方法などを紹介します。

鉄骨造を減価償却する際に使用する耐用年数とは?

事業に関して建物などの固定資産を購入したときは、減価償却を行います。減価償却の算出には固定資産ごとの耐用年数を確認しなければなりません。

耐用年数には、税制上の定めとして設定されている法定耐用年数の他にも、物理的な耐用年数(実際の寿命)を指す場合があります。減価償却の計算で使用するのは法定耐用年数です。

ここでは2種類の耐用年数について説明します。

物理的な耐用年数(建物の実際の寿命)

法定耐用年数と建物の実際の寿命を表す物理的な耐用年数は異なります。物理的な耐用年数は同じ構造でもメンテナンスの状態や環境によって変わります。鉄骨造の場合は錆びやすい性質があるため、海に近い環境では潮風などの影響で老朽化は早くなるでしょう。また、雨漏りなどの浸水で鉄骨部分にダメージを受けると、建物の寿命は短くなります。

定期的なメンテナンスを適切に行い、管理の行き届いた鉄骨造の建物であれば、50~60年程度は存続するとされています。

法定耐用年数

法定耐用年数とは減価償却を行うための指標であり、税制上設定されている年数のことです。

減価償却とは事業に使う固定資産の費用を一定期間に配分する会計処理で、定められた法定耐用年数の期間、毎年費用を減価償却費として計上していきます。

法定耐用年数はあくまで税法上の年数であり、実際の寿命とは異なります。法定耐用年数が過ぎても、建物の価値が存続する場合も多いです。

法定耐用年数については以下の記事で詳しく説明しています。あわせて参考にしてください。

鉄骨造の厚さで法定耐用年数が異なる

鉄骨造の法定耐用年数は鉄骨の厚さで変わります。また、店舗用や事務所用など、建物の用途により細かい分類がされています。

鉄骨の厚さや建物の用途別に設定された法定耐用年数は、以下のとおりです。

店舗用・住宅用
  • 4ミリを超える場合:34年
  • 3ミリを超え4ミリ以下の場合:27年
  • 3ミリ以下の場合:19年
事務所用
  • 4ミリを超える場合:38年
  • 3ミリを超え4ミリ以下の場合:30年
  • 3ミリ以下の場合:22年
飲食店・車庫用
  • 4ミリを超える場合:31年
  • 3ミリを超え4ミリ以下の場合:25年
  • 3ミリ以下の場合:19年
工場・倉庫用
  • 4ミリを超える場合:31年
  • 3ミリを超え4ミリ以下の場合:24年
  • 3ミリ以下の場合:17年
旅館・ホテル・病院用
  • 4ミリを超える場合:29年
  • 3ミリを超え4ミリ以下の場合:24年
  • 3ミリ以下の場合:17年
公衆浴場用
  • 4ミリを超える場合:27年
  • 3ミリを超え4ミリ以下の場合:19年
  • 3ミリ以下の場合:15年

参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

鉄骨造の法定耐用年数を用いた減価償却の計算方法とは?

鉄骨造の中古物件を購入した場合、法定耐用年数が一部経過した物件とすべて経過している物件があり、それぞれ計算方法は異なります。

中古物件について、法定耐用年数を用いた減価償却の計算方法を紹介します。

法定耐用年数を一部経過している場合

鉄骨造の購入建物について法定耐用年数を一部経過している場合、まず減価償却年数を算出します。

計算式は、以下のとおりです。

(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%=耐用年数

 

例えば、鉄骨の厚さが3ミリで法定耐用年数が19年の店舗用建物を購入し、耐用年数が5年経過している場合は「(19年-5年)+(5年×20%)の計算式になり、減価償却年数は「14年+1年=15年」です。

この場合は取得から15年かけて費用を分割して計上し、減価償却をすることになります。計算時に端数が出た場合は切り捨て、年数の経過が1年未満の場合はすべて2年に繰り上げて計算します。

法定耐用年数をすべて経過している場合

法定耐用年数をすべて経過した鉄骨造の場合、耐用年数に20%を乗じて減価償却年数を算出します。

例えば鉄骨の厚さが3ミリ以下の事務所の場合、22年×20%で減価償却年数は4.4年となり、端数は切り捨てになるため減価償却年数は4年です。

このように、耐用年数のすべてを経過している建物は減価償却年数も残り少なくなります。耐用年数を超えている中古物件は安価で取引されることが多いですが、経費計上自体はできるため、特に会計処理上不利益になるわけではありません。

参考:中古資産の耐用年数|国税庁

軽量鉄骨造のメリットは?

軽量鉄骨造(鉄骨の厚さが6mm未満)の建物は木造より耐震性が優れている、重量鉄骨造より建築コストがかからないなど、いくつものメリットがあります。

ここでは、軽量鉄骨造のメリットを見ていきましょう。

耐震性が木造の建物よりも優れている

軽量鉄骨造は耐震性が木造建物よりも優れています。法定耐用年数だけ見れば、鉄骨の厚みによっては木造の建物よりも年数が短くなる軽量鉄骨造もありますが、実際に使用する際の安全性は軽量鉄骨造のほうが高いといえるでしょう。

また軽量鉄骨造住宅の多くはプレハブ工法を採用しており、部材が規格化されているため施工する職人の経験や技術に左右されず、品質が安定していることもメリットです。木造住宅のように白アリ被害の心配もありません。

重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも建築コストが安い

軽量鉄骨は事前に部材を工場で生産し、大量生産によるパーツを使用することで材料費を抑えることができます。

またプレハブ工法で作る場合は現場での作業工程が少なく、工期を短縮して人件費などのコストを削減ができるのがメリットです。そのため重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも建築コストが安く、建物の価格自体を抑えられるのがメリットです。

重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも固定資産税が安い

軽量鉄骨造は重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して、固定資産税が安いのがメリットです。固定資産税は毎年1月1日現在、建物の所有者として固定資産課税台帳に登録されている方に課せられます。

ただし重量鉄骨造などとの比較では安くなるものの、木造と比較すると軽量鉄骨造は経年劣化しにくいため資産価値はあまり減少しません。そのため、固定資産税も高めになる傾向です。

修繕や解体のコストも比較的低い

軽量鉄骨は建物の構造がシンプルであるため、修繕のコストを抑えられるメリットもあります。まず、軽量鉄骨の部材は工場で生産されているため品質が安定しており、軽量で加工がしやすく修繕作業に手間がかかりません。

また構造がシンプルであるということは解体にも手間がかからないということであり、解体コストも抑えることが可能です。

軽量鉄骨造のデメリットは

軽量鉄骨造にはリフォームしづらい、断熱性や遮音性が低いなどデメリットな側面もあります。

具体的にどのようなデメリットがあるのか、詳しく見てみましょう。

リフォームがしづらい

軽量鉄骨造は骨組みが鉄骨であるため、大規模なリフォームがしづらいデメリットがあります。壁には筋交いという補強の部材が入っていることが多く、鉄骨構造を変更すると強度が低下するリスクがあります。間取りを変えるのは難しいでしょう。

またプレハブ工法はハウスメーカー各社が独自に開発されたパーツを使い、複雑な独自工法で建てているケースも多く、リフォームに制限が多いのが実情です。リフォーム会社によっては「うちではできない」と断られてしまうことがあります。

通気性や断熱性が低い

軽量鉄骨造などの鉄骨造は木造に比べて通気性や断熱性が低いです。室内に溜まった熱が逃げにくく、一度冷えると温まりにくい性質があります。そのため夏は暑く冬は寒い状態になりがちです。

鉄骨造の骨組みに使われている鉄骨は木造のようには湿気を吸収しないことも、断熱効果が低い理由です。

断熱性を高めるには調湿機能付きの壁紙を貼るか、壁や床下・天井に断熱材を入れるといった対策が必要です。

遮音性が低い

軽量鉄骨造は床や壁の厚みが少ないため、重量鉄骨造やコンクリート造と比較すると遮音性が低くなります。木造住宅と同じ程度で、何も対策をしない状態では外からの騒音に悩まされる可能性もあるでしょう。

また近隣への音漏れも心配になります。トラブルが発生しないよう十分注意しなければなりません。

防音対策には以下のような方法があります。

  • 床に防音マットやカーペットを敷く
  • 壁に防音シートを貼る
  • 遮音性の高いカーテンを選ぶ

防音対策にはある程度のコストがかかることも、把握しておかなければなりません。

火災による倒壊リスクが高め

軽量鉄骨造は耐震面では優れていますが、火災による倒壊リスクは木造よりも高いというデメリットがあります。

木材の表面は燃えやすい傾向がありますが、表面が炭化して覆われるため内部は簡単に焼失しない特性があります。一方で軽量鉄骨造に使用されている素材は熱の影響を受けやすいため、火災が起きた場合は倒壊のリスクが高くなるのです。

ただし近年は熱の影響を受けにくい耐火用の素材を使用している物件もあるため、購入を検討する際はチェックしてみるとよいでしょう。

法定耐用年数を超えた家やマンションを購入する際にチェックしたいこと

法定耐用年数を超えた家やマンションを購入する場合、いくつか注意したい点があります。ここでは、法定耐用年数を超えた場合、どのようなポイントがあるのか見ていきましょう。

償却できる価値がなくなる

法定耐用年数が終わると建物には償却可能な価値がなくなり、税務上は資産価値がない状態になります。減価償却できなくなることで税の負担が大きくなるでしょう。

耐用年数が長くても1年あたりに計上できる金額は下がるため、必ずしも耐用年数が長ければいいというわけではありません。しかし、償却期間がなくなって税の負担が増えれば手元のキャッシュも少なくなり、経営を圧迫するといったことが懸念されます。

売却しづらい

法定耐用年数が経過した家やマンションは売却しづらい場合もあります。築年数が古い住まいは居住用として購入、もしくは資産として投資する対象にもなりにくいため、売却までの時間がかかる可能性が考えられます。

立地条件や建物の状態が良ければ買い手が現れる可能性はありますが、希望の条件で売却できない場合もあります。

住宅ローンの審査に落ちやすくなる

法定耐用年数が経過した家やマンションは担保としての価値が下がり、住宅ローンを契約する際の審査に通りづらくなります。金融機関は融資の際に建物の担保としての価値を評価しますが、法定耐用年数を過ぎた建物は税務上資産価値がないと評価され、審査に落ちやすくなるのが一般的です。

ただし、立地条件や建物の状態が良いなど経済的な価値が残っている場合は、法定耐用年数を過ぎている場合でも担保価値が評価される可能性はあります。

鉄骨造の物理的な耐用年数(寿命)を延ばす方法は?

鉄骨造の法定耐用年数は延ばせませんが、実際の寿命を延ばすことは可能です。寿命を延ばすことで、ローン審査や売却のための価値を保つことができます。

鉄骨造の寿命を延ばす方法を解説します。

定期的なメンテナンスを行う

鉄骨造は定期的に点検やメンテナンスを行うことで、劣化の進行を抑えることができます。損壊が起きたときに修理をするだけでなく、定期的に点検やメンテナンスをすることで、何もしないよりも劣化の進行を遅らせることが可能です。

メンテナンスは、以下の部分を重点的に行いましょう。

  • 外壁・屋根
  • 水回り
  • 空調や給排水管

雨風にさらされて劣化しやすい外壁や屋根の場合はメンテナンスの必要性が高く、ダメージを受けて雨漏りが起こると建物全体の劣化が進みます。メンテナンスは建物の環境によりますが、10年に1回程度の頻度がおすすめです。

水回りは常に湿気の影響を受ける部分で、劣化しやすくなります。トラブルが起きやすいため、定期的なメンテナンスが必要です。

空調や給排水管などの住宅設備も長期使用により劣化が目立つようになり、機器の入れ替えには高額な費用がかかります。計画的なメンテナンスで、良い状態を保つようにしましょう。

リフォーム・大規模修繕を行う

状況に応じてリフォームや修繕を行うことも大切です。定期的なメンテナンスでも経年劣化は避けられず、重量鉄骨造のマンションでは大規模修繕も必要になります。10年単位をめどに、劣化が目立つ部分の修繕を行いましょう。

リフォームにより、建物の価値を高めることもできます。性能を高めたり最新設備に交換したりすれば、経済的価値を上げることができるでしょう。

鉄骨造の耐用年数を事前に確認しておきましょう

鉄骨造の建物は固定資産として減価償却を行いますが、その際は法定耐用年数に応じて毎年費用を計上します。法定耐用年数は鉄骨の厚さや建物の用途でも年数が分けられています。減価償却する際は、よく確認しておいてください。

法定耐用年数が経過した中古物件は、経過した年数により減価償却の計算が異なります。記事も参考に、減価償却の計算は正しく行いましょう。

よくある質問

鉄骨造を減価償却する際の耐用年数は何年ですか?

耐用年数は鉄骨の厚さや建物の使用目的によって異なり、15〜38年の範囲で設定されています。詳しくはこちらをご覧ください。

鉄骨造の減価償却はどのように計算しますか?

法定耐用年数が一部経過している場合と、法定耐用年数がすべて経過している場合で計算が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

鉄骨造の耐用年数(寿命)を延ばす方法はありますか?

定期的なメンテナンスや修繕が効果的です。詳しくはこちらをご覧ください。


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