• 作成日 : 2024年11月20日

誤送金したら返金してもらえる?対応方法や返金依頼文書の具体例を解説

誤送金とは、振込先や振込金額を間違えて送金することです。誤送金が発生した場合、返金依頼文書を作成したり、金融機関に対して「組戻し」の依頼をしたりするなどの対応が必要です。本記事では、誤送金が発生する原因や対応方法、万が一返金を拒否された場合の手続きなどについて解説します。

誤送金とは

誤送金とは、振込先や振込金額を間違えて送金してしまうことです。

誤送金が発生すると、返金手続きが必要になり、余分な手間がかかるため注意が必要です。特に、まとまった金額の誤送金が発生した場合、返金されるまでの期間については、一時的に社内のキャッシュフローが悪化する原因にもなります。

誤送金が発生する原因

誤送金の発生原因には以下のいずれかに該当するケースが大半です。

  • 口座番号や振込先情報の入力ミス
    誤送金のもっとも一般的な原因は、振込先の口座番号や支店コード、金融機関名の入力間違いです。
    特に手入力で情報を入力する際、1箇所でもミスがあると、全く別の口座に振り込まれる可能性があるため注意が必要です。
  • 金額の入力ミス
    送金金額の桁数の入力間違いもよくある原因です。たとえば、10,000円のところを100,000円と入力してしまうミスが該当します。
    送金金額のゼロの数を間違えてしまった場合には、予定とは大きく異なる金額が送金されてしまいます。
  • システムの操作ミス
    インターネットバンキングなどを使用する際、送金先の選択や確認画面で操作ミスをしてしまうこともあります。
    特に、振込先をリストから選択する場合や、過去の振込履歴を利用する際、誤って別の相手を選んでしまうケースが多いです。
  • 連絡ミスによる送金先情報の誤り
    相手先から振込先口座の情報を受け取る場合において、請求書などに記載された内容に誤りがあると、誤送金につながるケースもあります。
    また、書面ではなく、口頭で振込先口座を伝達する場合には、聞き間違いや言い間違いなどによって、誤送金が発生するリスクもより一層高まります。

誤送金先が判明している場合の返金に必要な対応

振込依頼の直後に誤送金に気づいた場合で、相手先に対して振込が完了していないときは、金融機関に対して送金自体の取り消しを依頼できるケースもあります。

振込が完了していない段階であれば、誤送金に至る前にリカバリーが可能なため、振込内容の誤りに気づいた場合には、できるだけ早く金融機関にコンタクトをとることが大切です。

一方で、振込が完了したあとに誤送金が発覚した場合には、振込元となる金融機関に対して「組戻し」を依頼しましょう。

組戻しとは、金融機関が誤送金である旨を相手方に連絡して了承を得たうえで、誤送金額を返金してもらうための手続きです。

誤送金が発生した場合には、素早く金融機関に組戻しを依頼する必要があるため、必要な情報や手続きの流れを正しく理解し、スピーディーに対応しましょう。

組戻しに必要な情報

金融機関に対して組戻しを依頼する際には、誤送金に関する情報を正確に伝える必要があります。

誤送金先の金融機関や支店名、口座番号、口座名義人に加え、送金日、振込金額、受付番号などの情報を確認できる資料を準備しましょう。具体的には、誤送金を行った際の預金通帳や振込明細などの書類を用意し、送金元の金融機関に組戻しの依頼を行います。

また、金融機関の窓口で手続きを行う場合には、金融機関印や本人確認書類などが必要となるケースが多いため、あらかじめ持参すべきものを問い合わせておくことをおすすめします。

組戻しの流れ

金融機関による組戻しについては、以下の手順に沿って手続きが行われます。

  1. 金融機関に組戻し依頼をする
    送金元となる金融機関の店舗窓口やコールセンターなどを通じて、組戻しを依頼します。
    なお、組戻し手続きには手数料がかかるケースが一般的です。組戻し手数料については、金融機関が手続きを行う際の事務手数料であるため、組戻しの結果にかかわらず、返却されないケースが多いです。通常は手続きを依頼するタイミングで支払う必要があるため、あらかじめ料金を確認しておきましょう。
  2. 金融機関が誤送金先へ連絡
    組戻しを依頼した場合でも、誤送金先の了承を得られない限りは返金されません。そのため、組戻しの依頼を受けた金融機関が誤送金先の口座名義人に連絡し、返金の意思確認を行います。
    金融機関からの連絡により、返金の了承を得られるケースが多いですが、万が一相手方が返金に同意しない場合や連絡がつかない場合には、金融機関は組戻しを実行できません。
  3. 誤送金額の返金
    誤送金先が返金に同意すると、誤送金額が自らの預金口座に返金されます。
    金融機関だけでなく、誤送金先の対応によって返金までに時間がかかる場合もあるため、誤送金に気づいた場合には、できるだけ早く組戻しの依頼を行うことが重要です。

取引先に誤送金してしまったら、どのように返金依頼をする?

取引先に対して誤送金が発生した場合には、金融機関を介さずに、直接返金の依頼を行うこととなります。

対応方法によっては、取引先に対していい加減な印象や不信感を与えてしまうリスクもあるため、返金依頼を行う際には、丁寧かつスピーディーな対応が求められます。

具体的には、以下のように返金依頼を行うことで、取引先との関係性を維持しつつ、誤送金のリカバリーに取り組みましょう。

返金依頼の方法

取引先への誤送金が発覚した場合には、まずはただちに相手方に連絡を入れて誤送金の事実を伝えます。相手方が誤送金に気づいていない可能性も考えられるため、しっかりと謝罪の意を伝えたうえで丁寧に事情を説明しましょう。

電話での連絡が難しい場合や誤送金の金額が大きい場合には、直接取引先を訪問して正式な謝罪と返金依頼を行うことも検討します。誠実な対応を示すことで、誤送金によるイメージ悪化のリスクも回避しやすくなります。

電話や対面によって誤送金の事実と謝意を伝えたあとは、「返金依頼文書」を作成し、取引先へ送付します。返金依頼文書には、先方が返金手続きをスムーズに進められるように、誤送金の内容や返金方法をわかりやすく記載しましょう。

返金依頼文書の例

返金依頼文書については、以下の記載例を参考に作成することをおすすめします。

  • 記載例

株式会社〇〇 経理部 〇〇様

誤送金に関するご返金のお願い

拝啓

時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて、弊社が20××年××月××日に貴社(貴殿)へお振込みいたしました金額について、本来は〇〇〇〇円をお支払いすべきところ、弊社の手続きの誤りによって、〇〇〇〇〇円をお振込みしてしまいました。

誤送金によりご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。

つきましては、下記の通りご返金いただきたくお願い申し上げます。

お手数をおかけして大変恐縮ですが、何卒、ご協力賜りますようお願い申し上げます。

敬具

  • ご返金いただく金額:〇〇〇〇円
  • 振込先口座

金融機関名:〇〇銀行

支店名:〇〇支店

口座番号:普通 〇〇〇〇〇〇

口座名義:株式会社〇〇〇〇

ご返金いただく場合の振込手数料につきましては、弊社で負担いたします。

以上

20××年××月××日

東京都〇〇区〇〇〇〇

株式会社〇〇〇〇

経理部 〇〇

誤送金先が不明な場合の対応

誤送金先がわからない場合には、まずは自分で確認できる範囲の情報を調べたうえで、金融機関や弁護士などに相談することが大切です。

具体的には、以下の方法に基づいて適切に対応しましょう。

まずは金融機関に相談する

誤送金先が判明しない場合でも、まずは送金元である金融機関に相談することが重要です。

組戻し手続きの依頼を行うことで、金融機関は送金時の記録をもとに誤送金先に連絡を取り、返金依頼を行います。

組戻しによって、相手方の了承を得ることができれば、無事に誤送金額の返金を受けることが可能です。

弁護士会照会を利用する

金融機関での組戻しが難しい場合や誤送金先が返金に応じない場合には、必要に応じて法的措置などの検討を行います。

もし、訴訟を行うのであれば、前提として相手を特定する必要があります。しかし、プライバシー保護の観点から、金融機関は誤送金先の情報を教えることはできません。

したがって、誤送金先が不明で返金されない場合には、弁護士へ相談することを検討しましょう。弁護士であれば、「弁護士会照会」を通じて相手先の住所や氏名に関する情報を取得できる可能性が高まります。

誤送金した相手には返還の義務がある?

誤送金を受け取った場合には、法律上、受け取った金額を返還する義務があります。

誤って振り込まれたお金については、民法における「不当利得」とされ、受け取った相手はこれを返還する責任を負うことになります。

具体的には、民法第703条によって、不当利得を受け取った場合の返還義務について定められています。誤送金を受け取った場合は、不当利得の受益者として、受け取った金額を送金者に返還しなければなりません。

したがって、誤送金を受け取った場合には、速やかに返金対応を行うことが適切です。誤って入金されたお金を放置したり、使ってしまったりする行為は、法的なトラブルに発展する恐れがあるため注意が必要です。

誤送金した相手が返金拒否したり使ってしまったらどうする?

誤送金を行った際に相手方から返金を拒否された場合には、送金者は「不当利得返還請求」として法的措置を取ることが可能です。

また、誤送金されたお金を故意に使用した場合には、「悪意の受益者」とみなされ、その使い込んだお金についても、利息を付けて返還しなければなりません。

ただし、誤入金と知らずにそのお金を使い込んだ場合には、返還義務は生じないため注意が必要です。不当利得返還請求では、誤入金に気づかずに使用した分を除いた「現存利益」のみ返還義務が生じるため、万が一誤送金が発覚した場合にはできるだけ早く以下の対応をとることが重要です。

  • まずは金融機関に組戻し手続きを依頼する

誤送金が発覚した場合、まず送金を行った金融機関に「組戻し」を依頼します。

組戻し手続きについては、相手先に返金を依頼するための手続きであることに加え、相手に対して誤送金の事実を伝えるという大切な役割があります。

誤送金の事実を知ったあとに使い込んだお金は返還義務が生じるため、返金拒否や故意の使い込みに備え、速やかに誤送金の事実を相手方に伝えましょう。

  • 刑事告訴を検討する

誤送金の事実を伝えたにもかかわらず、相手方が誤送金されたお金を預金口座から引き出す場合には、「詐欺罪」や「窃盗罪」が適用される可能性もあるため、警察への相談も有効です。

刑事告訴によって相手が返金に応じる可能性も考えられるため、選択肢のひとつとして検討しましょう。

  • 不当利得返還請求を行う

相手が返金に応じない場合には、不当利得返還請求を検討します。

不当利得返還請求を行うことで、相手が返金を拒否したり、わざと使い込んだりしてしまった場合にも、民法に基づいて返還を請求することが可能です。

誤送金した場合の相談先

  • 金融機関

誤送金が発覚した場合、真っ先に相談すべきなのは送金元となる金融機関です。金融機関は振込記録を保持しており、誤送金先の確認や返金手続きに必要な「組戻し」処理を進めることが可能です。

また、組戻しによって、金融機関から相手方に対して誤送金の事実が伝えられるため、返金拒否や使い込みに対処するうえでも極めて重要な手続きと言えるでしょう。

  • 警察

万が一、相手が誤送金額を故意に使い込んでいる場合には、「詐欺罪」や「窃盗罪」にあたる可能性もあるため、警察へ相談することも検討しましょう。

ただし、誤送金額を引き出された場合の直接的な被害者は金融機関となるため、被害届を提出するためには、金融機関側の協力が必要となる可能性があります。

  • 弁護士や法テラス

誤送金先が不明な場合や返金を拒否されている場合には、弁護士や法テラス(日本司法支援センター)に相談することで、法律に基づいた返還請求が可能です。

法テラスでは無料相談も行っているため、初めての場合も安心です。

誤送金が発生したら速やかに行動しよう!

誤送金が発覚した場合には、速やかに対応することが重要です。

取引先に対して誤送金を行った場合には、ただちに誤送金の事実と謝意を伝えたうえで、返金依頼書を作成するなど、関係性を悪化させないための丁寧な対応を行いましょう。

一方で、自社と関連のない相手先への誤送金が発生した場合には、金融機関による組戻しを行い、返金を依頼します。万が一、返金を拒否された場合には、不当利得返還請求を行うなど、法的措置も検討しましょう。


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