• 更新日 : 2023年1月13日

連結税効果会計をわかりやすく解説

連結税効果会計をわかりやすく解説

グループ会社で連結財務諸表を作成する際には、親会社と子会社の財務諸表を単純に合算するだけではなく、親会社と子会社間の取引で生じた取引や債権債務・未実現利益を消す、貸倒引当金の修正を行うなどの作業が必要になります。これらの処理に伴い、連結財務諸表上の繰延税金資産や繰延税金負債の金額は、各社の繰延税金資産・繰延税金負債を単純合算した数字から修正することが必要となります。

この記事では、連結財務諸表作成における連結税効果会計について解説していきます。

連結税効果会計とは?

連結税効果会計を確認する前に、連結財務諸表の意味を確認しておきましょう。

連結決算を行い、連結財務諸表を公開することで世間、特に株主や投資家にその企業グループの正確な情報を知らせることができます。

グループ内の企業それぞれでも決算を行い、財務諸表も作成していますが、その中にはグループ間の取引で生じた利益等も含まれています。それらを取り除いた連結財務諸表を作成することは、投資家への正しい情報提供も可能となるという利点があるのです。

連結財務諸表が作られるようになった背景

以前の日本の会計制度では、親会社と子会社が存在する場合、財務諸表はそれぞれで作成していました。しかし、親会社、子会社はそれぞれ全く違う活動を行っているわけではなく、親会社が主導し、グループの企業運営を行っているのが現状です。この現状を会計上に反映させるために、それぞれの会社の個別財務諸表だけではなく、グループ企業全体の「連結財務諸表」が作られるようになりました。

連結財務諸表作成で生じる問題点

連結財務諸表を作るようになったことで、グループ企業全体の財務状況は分かるようになりましたが、問題も生じます。それは、単純にグループ企業の個別財務諸表を合算するだけでは、グループ企業間の取引等で生じた数字も連結財務諸表に表れてしまうという点です。具体的には以下のような数字があります。

  • 親会社と子会社間の取引
  • 親会社から子会社への投資
  • グループ企業間で発生している債権債務残高
  • グループ企業間で発生している在庫・固定資産の未実現利益

連結税効果会計が必要な理由

グループ会社全体の財務諸表を作成する場合、そのまま合算しただけだとグループ間の取引で生じた利益・損失、親会社から子会社への投資に関する金額、グループ間の債権や債務の残高も数字に表れてしまい、企業グループとしての財政状態や経営成績を適正に判断できなくなってしまいます。

そのため、連結仕訳で調整を行わなければなりません。その際には、個別の財務諸表で税金額が判明していたとしても、連結税効果会計の仕訳も必要となってきます。

税効果会計自体はグループ内の各企業でも行っているため、グループの連結財務諸表を作る時までは必要ないのでは?と思われるかもしれません。しかし、連結財務諸表でグループ間の取引で生じた利益・損失を調整しているため、各企業の税効果の単純合計と連結財務諸表上で税効果として認識すべき金額にはズレが生じているはずです。それを解消するために、連結税効果会計が必要となってくるのです。

次章以降で、具体的な項目を挙げながら、連結税効果会計について詳しく解説していきます。

未実現損益の連結税効果会計

未実現損益とは、グループ内の企業間で商品等の資産を売買、もしくは損失をやり取りした後、連結決算日を迎えても、その資産(損失)がまだ外部に売却(もしくは、外部で解消)されずにグループ内に留まっていることで含まれている利益(損失)のことです。外部に渡すまでは利益や損失が出ているとはいえません。利益や損失がグループ企業間で移動しているだけになるため「未実現」の名前がついています。

連結税効果会計では、子会社の資産に未実現損益が存在する場合は全額を消去する必要があります。ただし、売り手側の帳簿価額の中で回収ができないと認められる未実現損失については、消去する必要はありません。

未実現損益の消去が発生した場合には以下の調整を行います。

【前提条件】

  • A社は、B社の子会社である(100%を保有)。
  • A社及びB社の決算日は、12月31日である。
  • X1年12月期にA社は、B社に製品Nを2,000で販売した。当該製品の売上原価は1,400である(すなわち、売却益は600)。P社は、X1年12月期の期末において当該製品Nを棚卸資産として保有している。
  • A社及びB社の法定実効税率は、共に30%である。

1. 連結会社間の取引高の消去及び未実現利益の消去

借方
貸方
売上高2,000円売上原価2,000円
売上原価600円棚卸資産600円

2. 未実現利益の消去に伴う繰延税金資産の計上

借方
貸方
繰延税金資産180円法人税等調整額180円

※法人税等調整額:600円×30%=180円

資本連結の連結税効果会計

資本連結とは、グループ企業内で親会社が子会社を連結する場合、親会社の投資額、そして子会社の純資産額を相殺する仕訳のことです。連結をすることで子会社の資産や負債の評価がどの時点のものになるのかですが、「親会社の支配獲得日の時価」となります。

資本連結を行い、子会社の資産や負債の評価替えを時価で行うと、連結上認識すべき資産・負債の金額と個別財務諸表上の資産・負債の金額にズレが発生しますが、そちらは連結税効果会計を適用して調整します。

具体的には、時価評価した結果発生した差額分について、税率をかけ、繰延税金資産・負債を評価差額から控除するような仕訳を計上します。

【前提条件】

  • A社は、B社の子会社である(100%を保有)。
  • A社及びB社の決算日は、12月31日である。
  • X1年12月期にB社が保有する建物について、時価評価をした結果1,000円の評価益が発生した
  • A社及びB社の法定実効税率は、共に30%である。

1. 評価益に伴う繰延税金負債の計上

借方
貸方
資産1,000円評価差額700円
繰延税金負債300円

※繰延税金負債:1,000円×30%=300円

貸倒引当金の連結税効果会計

グループ企業内にある債権で貸倒引当金が発生している場合、各企業個別の財務諸表では「貸倒引当金」という項目が計上されているはずです。しかし、連結財務諸表作成する際には、グループ内の債権・債務は相殺消去する必要があります。それに伴い、貸倒引当金の調整も行われます。

具体的には、債権が連結消去されることで、貸倒引当金も減額されます。故に、連結貸借対照表の貸倒引当金は個別財務諸表の貸倒引当金よりも低くなるため、差異が生じることになるのです。その差異を解消するために、会計処理を行います。

貸倒引当金が修正され減額されているのならば、損金として認められていた分については連結税効果会計の手続きでは「繰延税金負債」を計上する、という処理を行ってください。

【前提条件】

  • A社は、B社の子会社である(100%を保有)。
  • A社及びB社の決算日は、12月31日である。
  • X1年12月期にB社はA社に対して5,000円の債権を保有していた。
  • B社の貸倒実績率は2%であった。
  • A社及びB社の法定実効税率は、共に30%である。

1. 債権債務の連結相殺に関する仕訳

借方
貸方
買掛金5,000円売掛金5,000円
貸倒引当金100円貸倒引当金繰入100円

※貸倒引当金:5,000円×2%=100円

2. 貸倒引当金の調整に伴う繰延税金資産の計上

借方
貸方
法人税等調整額30円繰延税金資産30円

※法人税等調整額:100円×30%=30円

連結調整の際には連結税効果会計が必要

グループで連結財務諸表を作成する場合、各社の財務諸表をそのまま合算してしまうと、親会社と子会社間の取引もそのまま残るため、連結調整が必要です。

連結調整を行った結果、連結上の利益の額と、個別財務諸表の単純合算による利益の金額が異なってきます。それを調整するために連結税効果会計が必要になります。

よくある質問

連結税効果会計とは?

連結財務諸表を作成する際、各社の財務諸表を単純合算するだけでなく、グループ間の取引等について調整するものです。詳しくはこちらをご覧ください。

未実現損益の連結税効果会計の概要は?

連結税効果会計では、子会社に未実現損益がある場合、それを全て消去しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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