• 更新日 : 2024年8月8日

飲食店の経理のやり方!エクセルと会計ソフトおすすめ【簡単ガイド】

飲食店をうまく経営するには、料理の味やメニューの増加といったクオリティアップだけでなく、正確な経理作業による経営実態の把握や正しい申告納税が必要です。このとき経理データが整理されていなければ、売上や原価をもとにした経営分析や適切な決算ができません。

経理作業を効率化したいときは、エクセルや会計ソフトを用いたデータ管理がおすすめです。しかし、コストや機能を天秤にかけて、どちらを選べばよいのか迷っている担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では飲食店経理を行うために必要な基礎知識や、エクセルと会計ソフトのどっちを選べばよいのかについて解説します。

目次

飲食店でも経理は重要

飲食店だけに限りませんが、事業においては、顧客との取引を1つひとつ正確に記録しなければ、正しい会計処理や確定申告が行えません。特に、飲食店などでは現金を直接やり取りする取引が多い分、抜けや漏れのせいで帳簿の金額と現金が合わないというリスクを抱えています。

経理処理により帳簿を作成する過程では、さまざまなデータが得られます。それぞれは売れる料理のマーケティングやコストダウン施策立案などの情報源にもなることから、飲食店の経理は事業戦略に深くかかわっているといえるでしょう。

このように経理データは申告納税につながるだけでなく、その事業の戦略や将来の安定性などの資料として有効活用することが可能なのです。
したがって、飲食店の経理は非常に重要な業務といえるでしょう。

飲食店の経理で必要な知識

飲食店の経理で押さえておきたい基礎知識は、一例として次のとおりです。

その地域や扱うものによって他にも重要なものはあるにせよ、簿記の基礎や顧客との取引上のルールについてはしっかりと押さえておきましょう。

上記の知識と飲食店経理との関係を交えながら、確定申告に至る過程としての経理について解説します。

飲食店の経理におすすめの会計ソフト

飲食店の経営者に多く使われている会計ソフトが「マネーフォワード クラウド会計」です。

初心者の方でも利用しやすく、POSシステムや電子マネーと簡単に連携できるので、経理業務にかける時間をギュッと減らせます。軽減税率も対応です。

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飲食店経理の現金主義・発生主義・実現主義など

現在、日本の会計処理は企業会計原則に従いつつも、新しい論点や収益や費用に関する個別の論点については新たな基準が優先されるという構造になっています。例えば、「収益認識に関する会計基準」が2018年に公開されましたが、このルールは「履行義務」という新たな考え方を取り入れ、企業会計原則に優先して適用されるルールとなっています。

参考:企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等の公表|企業会計委員会
「収益認識に関する会計基準」への対応について|国税庁

これらの基礎となる概念として、収益、費用の認識については「現金主義」「発生主義」、そして収益の認識については「実現主義」という考え方も押さえておきましょう。

名称(対象)概要
現金主義
(収益・費用)
現金の受け取りや支払いなど、実際に現金が動いた時点で取引があったものとして認識して、会計処理を行うもの
発発生主義
(収益・費用)
現金の入出に関係なく、経済的事象が発生した時点で取引を認識して、会計処理を行うもの
実現主義
(収益)
収益の認識基準であり、未実現のものは収益として認識できないとされ、実際に商品やサービスを提供した時点で会計処理を行う

※上場企業においては「収益認識に関する会計基準」が適用され、それ以外は、実現主義によって収益を認識できる。

基本は発生主義

所得税の確定申告においては、現金主義による計算が可能なのは特例的な場合であり、企業の会計処理の基本は発生主義です。

これは企業会計原則において、費用及び収益はその発生した期間に計上するよう要請されていることによります。
例えば「5月10日に取引が確定して、5月20日に顧客から支払いがある」という場合は、10日に確定した取引の内容や未払いの売上を、20日には支払われた現金等の動きを記録します。この10日において取引が発生した時点で売上を計上することが「発生主義」に沿っているのです。

飲食店の事業は、料理や飲み物、そのほかのサービスの提供について取引が発生したと同時に「その日の現金取引」で済む取引が多いのが現状です。レジに打ち込んだ代金を顧客から受け取り、その場でレシートやおつりのやり取りを行います。

そのため飲食店経理では、発生主義でもありますが、現金の授受に着目して現金主義であるとも言えます。経費の立替費用として金庫等に「小口現金」を用意したり、出金伝票を使ったりすることで、うまく取引内容を整理する必要があります。

青色申告がおすすめ

飲食店においても特例を除けば帳簿付けに関しては、青色申告白色申告にかかわらず発生主義で行うことが原則です。また、青色特別控除を受けるには固定資産や貸付金、未払金などの現金以外の資産や負債などについて、決算書にまとめなければなりません。
現金取引以外の掛取引や金融機関からの融資などについては、発生主義で記帳を行いましょう。

ただし「青色申告者かつ小規模事業主の個人事業主」かつ「2年前の不動産所得+事業所得が300万円以下」の場合は、現金主義による所得計算の特例を受けることで現金主義の帳簿付けが認められます。開業したてで売上が不安定な場合は、経理負担を減らすために導入を検討してみてください。

参考:[手続名]所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出手続|国税庁[手続名]現金主義による所得計算の特例を受けるための手続|国税庁

現金主義や発生主義の違いについて詳細を知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

キャッシュレス決済の扱い

飲食店経理においては、クレジットカードやQRコードを利用したキャッシュレス決済を取り入れている場合、必ずしもサービスを提供した日に現金が入るわけではありません。

キャッシュレス決済を正確に処理するには、基本的に売上高を計上した場合には発生主義に基づき、後日入金があった場合には実現主義での計上が必要です。とくにポイント還元や値引きが関係すると、その分の仕訳が発生するため、決済手段の導入を検討する前に、どのような仕訳が想定されるか内容を確認しておきましょう。

単式簿記と複式簿記

単式簿記とは白色申告で可能な、勘定科目を1つだけ使って取引内容を記載する方法です。複式簿記の知識が必要なく、非常に簡単な記帳で済みます。ただし、財政状態の詳細な変化が見えない点がデメリットです。仕訳例をみていきます。

<◯月△日の売上>(単位:円)

売上高  100,000

<◯月△日に光熱費支払い>(単位:円)

水道光熱費50,000 

もし個人事業主が単式簿記での記帳による確定申告を行う場合は、白色申告または10万円の青色申告特別控除になります。65万円(55万円)の青色申告特別控除を適用するには、複式簿記での記帳が必要です。

複式簿記とは、勘定科目を2つ以上使って取引内容を記載する方法です。会計仕訳は左側を借方、右側を貸方として作成し、それぞれの勘定科目について元帳を作成し、試算表につなげます。

複式簿記によると帳簿付けの手間が増えるものの、取引内容や資産の状況が正確に記録できるため、確定申告の対応や経営分析を行う際には単式簿記より優れた記帳方法といえます。

具体的な仕訳例は次のとおりです(実際にはこれ以外に摘要欄にて取引の詳細を記載します。)

<◯月△日の売上>(単位:円)

借方貸方
現金100,000売上高100,000

<◯月△日に小口預金を使って材料費を支払った>(単位:円)

借方貸方
材料費30,000小口現金50,000
消耗品費20,000

貸借対照表と損益計算書などの決算書

個人事業主・法人にかかわらず、青色申告による確定申告を行う場合には、貸借対照表と損益計算書といった決算書の作成が必要です。

とくに個人事業主は、青色申告によって最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。法人の場合、所得税と同じような青色申告特別控除はありませんが、金融機関や税務署からの信頼を得たり赤字の繰越控除を適用できたりする恩恵があるので、事業を進める上で青色申告は重要な作業といえます。これらの決算書についての知識も深めておきましょう。

貸借対照表と損益計算書にキャッシュ・フロー計算書を含めて財務三表と呼ばれますが、ここでは青色申告に必要な貸借対照表と損益計算書について解説します。

なお多くの飲食店では、より細かい取引実態の記録や現場作業の効率化のために、出金伝票やお会計伝票といった伝票も一緒に使用されることが一般的です。

飲食店における貸借対照表

貸借対照表

貸借対照表(B/S)とは企業の資産と負債、資本のバランスを「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つに分けて表示した決算書です。決算日時点で「どのくらいの資産を持っているのか」「負債はあるのか」を表します。原則として「資産=負債+純資産」です。

飲食店の場合、資産の部にはレジや金庫に入っている「現金」、厨房設備や空調設備などの「固定資産」、負債の部には金融機関等から借りている「借入金」などが表示されます。

飲食店における損益計算書

損益計算書

損益計算書(P/L)とは、企業の収入や支出、最終的な純利益などの数値を記載した決算書です。事業年度に「どれくらい売上があったのか」「原価や管理費はどれくらいかかったのか」といった企業の損益の規模などを表します。

飲食店の場合、料理や飲物の売上が「売上高」、材料費が「売上原価」、シェフやスタッフなどの従業員にかかる人件費が「販売費および一般管理費」などに該当するわけです。

飲食店での減価償却

事業のために使用する建物や附属設備、器具備品、車などの資産については、時の経過等によって価値が減ると考えられます。減価償却とは、それぞれの資産を使用可能期間にわたって取得価額を分割して費用として計上する会計処理です。

例えば、飲食店用設備である陳列ケースの場合で冷蔵機能のないものは、耐用年数が8年と決まっています。もし400万円で設備を購入した場合、8年間かけて「400万円÷8年=50万円」の費用計上が必要です。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁、主な減価償却資産の耐用年数表

飲食店の場合は、飲食店用の厨房や配達用の車両、冷蔵庫、電気設備、テーブル、店舗などの所有している固定資産が減価償却の対象です。それぞれの耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められています。

「少額減価償却資産の特例」といった制度が使える可能性もあるので、以下の記事でも減価償却について一度確認してみてください。

飲食店における現金出納帳

現金出納帳とは、現金の入金や出金を記録し管理するための帳簿です。帳簿の位置づけとしては補助簿に当たるので、貸借対照表や損益計算書のような法的な作成義務はありません。

しかし、毎日現金の支出が発生する飲食店経営では、正確な現金管理と取引実態把握のためには欠かせない帳簿です。税務調査のときに証拠資料としても使えます。

また、金額を毎日記録しておけば、万が一従業員が架空の経費を申請したり現金を盗んだりしたときにもすぐ気づけます。そうでなくとも、毎日の入出金についてしっかり把握することが基本ですし、万が一のため不正や盗難に対するリスクマネジメントとしても役に立つでしょう。

飲食店における消費税とインボイス制度

2019年10月より開始した軽減税率制度は、「区分記載請求書」への切替をはじめ、テイクアウト・宅配の飲食料品や外食を除く飲料食品などが対象になったため、飲食店への影響が大きくなりました。そのため、同じく消費税の仕入控除にかかわる「インボイス制度」に関しても、飲食店経理と深くかかわってきます。

インボイス制度に対応するには、売り手側と買い手側で次のような準備が必要です。飲食店は顧客に対しては売り手ですが、仕入れ業者に対しては買い手となります。
なお、インボイス制度に対応するということは、消費税の申告納税が必要になるということでもあります。

飲食店の立場何が必要か?必要な手続きなど
売り手として買い手である顧客から求められたときにはインボイスを発行しなければならない適格請求書発行事業者の申請が必要
買い手として消費税の申告において、仕入税額控除のためには、仕入れ業者からインボイスの交付を受け、その保存等が必要仕入れ業者にインボイスを発行するように働きかける必要あり

飲食店の経理で主に使用する勘定科目

飲食店経理の仕訳で主に使用する勘定科目は次のとおりです。おしぼりやホールに置く新聞、まかない料理についても記載しているので、ぜひ参考にしてください。

勘定科目飲食店で該当する具体例
売上顧客に提供・販売した商品やサービスの代金
仕入食材や飲み物など資材の仕入代金
水道光熱費店舗の電気代や水道代、厨房のガス代など
地代家賃借店舗や仮倉庫の家賃、借りている駐車場代など
消耗品費おしぼり、文房具や伝票、そのほかに備品
福利厚生費
(法定外福利費)
従業員に関する社会保険料や雇用保険、労災保険など
法定福利費社会保険料や雇用保険、労災保険など
荷造運賃商品発送の宅配代
広告宣伝費チラシの作成費やグルメサイトへの広告掲載費など
通信費会計ソフトの継続使用料や広告用のWebサイト運営費、有線放送や切手など
給料・賞与従業員への給料やまかない代金
(まかないに関しては1カ月3,500円以下・従業員が50%以上負担とすれば給与に含まれない)
減価償却費減価償却の金額

原則として勘定科目の決め方に法的な決まりはありません。しかし、経理作業の効率化や経営実態の透明化などの観点から、わかりやすい勘定科目にしておくことをおすすめします。

なお、まかないの金額等については下記を参照ください。

参考:No.2594 食事を支給したとき|国税庁

【飲食店の経理】エクセルと会計ソフトを比較!

飲食店経理の実務・管理を行う際には、手書きではなく、エクセルや会計ソフトを使ったデータ管理を推奨します。メリットは次のとおりです。

  • 毎日の現金収支が整理されてわかりやすくなる
  • 在庫の数値管理によって材料の賞味期限や冷蔵庫の専有スペースが把握しやすくなる
  • 会計処理や損益をもとにした今後の経営戦略やイベント・企画を考えられる
  • 日々の記帳作業をミスを少なくかつ快適かつ効率的に行える

など

エクセルと会計ソフトの違いをみていきましょう。

エクセルを使う

エクセルを用いるメリットは次のとおりです。

  • 導入コストがあまりかからない
  • Web上にあるデータ管理に関する無料テンプレートを参考にしやすい
  • 関数やマクロ等を利用したオリジナルの分析・管理の自動化が可能になる
  • シート機能を利用した月別管理をしやすい
  • 経理関係以外にも従業員の勤務表や在庫数管理なども行える

など

ただし、エクセルには次のようなデメリットがあります。

  • 関数やマクロの知識が限られるとトラブルに対応しづらい
  • 関数やマクロを用いないと詳細な管理や利便性高い機能実装が難しい
  • 書式を考えて作らないと管理や検索が難しくなる
  • 簿記の知識がない従業員向けのマニュアルが必要になる
  • 同時編集ができない

など

会計ソフトを使う

会計ソフトを用いるメリットは次のとおりです

  • 簿記知識が少なくても数値を入力するだけで帳簿付けや仕訳ができる
  • 経営分析や決算書の作成サポート機能がある
  • POSレジ(販売時点情報管理レジ)との連携によってレジデータを取得するタイプがある
  • クラウド型なら端末があればどこからでもアクセス・操作ができる
  • 電話やチャットでの相談サポートが付いているタイプもある

など

ただし、会計ソフトには次のようなデメリットがあります。

  • 機能をフルで使うには月額料金や初期費用が必要になる
  • サービスを受けるのを辞める場合には、データ移行等をする必要がある
  • そのほか規約違反や従業員による不適切な使用によって利用が禁止される可能性がある

など

会計ソフトはエクセルに比べ、経理や経営分析作業に特化した機能が豊富な点が大きな特徴です。

飲食店の経理では会計ソフトを使うと便利

飲食店の経理は会計ソフトの利用が非常に便利です。中でもPOSレジとの連携ができるタイプであれば、レジデータを自動で取得できるため、帳簿への転記作業や伝票のチェックの手間が省けます。また、書き間違いや計算ミスも防止できるでしょう。

クラウド型会計ソフト『マネーフォワード クラウド会計』であれば、このPOSレジ連携機能を搭載しているため、飲食店の経理作業の効率化につながります。

さらに、飲食店の経理作業が便利になる、以下の機能を利用できます。

  • 入力した会計ソフトデータをもとに損益計算書や貸借対照表などの決算書を作成できる
  • 他ソフトと連携することで、請求書や納品書見積書だけでなく各種伝票も作成できる
  • キャッシュ・フローや損益レポート、得意先レポートなども確認できる
  • 銀行やクレジットカードの入金・出金データを取得できる
  • Amazonや楽天などのECサイトとも連携できる
  • インポート機能でエクセルデータを移行できる

など

新規登録後、1ヶ月間有料プランと同様の機能を無料トライアルとして試せます。はじめての会計ソフトを利用する方やパソコンが苦手な方でも簡単に使えます。

飲食店で行う仕訳例

続いて、飲食店でよく利用される会計仕訳について、一般的な例を挙げていきます。ここでは消費税については「税込経理」で処理しています。

電子マネーやクレジットカード等での売上の仕訳

サービスを提供した時点で売上高を計上するのが原則的な処理です。

電子マネーやクレジットカードでの売上は、すぐに入金がなされないため借方は売掛金となります。実際には売掛金も補助科目などを付して詳細に分けるとよいでしょう。

例)
6/1  飲食代金につき電子マネーでの支払があった。
6/2  飲食代金につきクレジットカードでの支払があった。
7/1  電子決済代行業者から普通預金に入金があった。
7/2  クレジット決済会社から普通預金に入金があった。

日付借方貸方摘要
6/1売掛金10,000円売上高10,000円電子マネーによる売上
6/2売掛金15,000円売上高15,000円クレジットカードによる売上
7/1普通預金9,670円売掛金10,000円電子マネー決済分
支払手数料330円
7/2普通預金14,505円売掛金15,000円クレジットカードによる決済分
支払手数料495円

一つの店舗で電子マネーもクレジットカードも取り扱うことが多いため、入金時には正しく売掛金が計上されているかを確認しましょう。そのためにも先述のように売掛金は種類ごとに補助科目などで分別しておくことが大切です。

割引券等で値下げした場合の仕訳

店舗では「クーポン券」などを発行して値下げすることがあります。

クーポン券、割引券などいろいろな形のサービス券がありますが、ここでは事前に不特定多数の顧客が利用できるクーポン券を配ったケースを紹介します。

例)
6/1  クーポン券を発行した。(食事が10%OFFになるクーポン券)
6/2  クーポン券を利用した売上があった。
6/3  クーポン券を利用したクレジットカード売上があった。

日付借方貸方摘要
6/1売上に関する会計仕訳はありません。
6/2現金2,700円売上高3,000円クーポン券による現金売上
売上値引300円
6/3売掛金2,700円売上高3,000円クレジットカード及びクーポン券による売上
売上値引300円

ここでおさえておくべきは、売上高は値引きをする前の金額で計上するということです。原則として、費用・収益は「総額」によって行うことになっているため、値引き前の金額にします。

クーポン利用の売上がクレジットカードなどによる場合は、売上金額から「値引き分+クレジット手数料」が差し引かれるため手取り額は減ってしまいます。

ポイントカードのポイントで支払った場合の仕訳

ポイントの使い方は多岐にわたりますが、ポイント分をクーポン券同様の値引きとするか、その取引に係る費用とするかによって会計仕訳も異なります。

ポイント分については、前者は「売上値引」、後者は「販売促進費」等とすることが多いのですが、消費税の認識が異なってきますので詳細は下記の参考をご覧ください。

参考:No.6480 事業者が商品購入時にポイントを使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方|国税庁

例)
6/1  食事代金3,000円のうち、200ポイント(200円分)を利用した売上があった。

なお、当店ではポイントについては、「売上値引」で処理をしている。

日付借方貸方摘要
6/1現金2,800円売上高3,000円ポイントによる売上
売上値引200円

サービスミスが発覚し、後日お客様に一部返金をした場合の仕訳

店舗側のミスにより一旦入金したものの、返金処理をするケースもあります。返金理由にはいろいろありますが、ここでは先の取引で過大に支払われており、過大分を返金するケースを紹介します。

例)
6/1  食事代金3,000円を受け取る。
6/2  6/1の食事提供においてサービスが一部なかったことが分かり、500円の返金をすることとなった。

日付借方貸方摘要
6/1現金3,000円売上高3,000円電子マネーによる売上
6/2売上高500円現金500円6/1の売上一部取り消し(返金)

返金をした場合には、売上の取り消しとなり、現金売上の場合はここで完結します。

電子マネーやクレジットカードによる取り消し操作をする場合には、返金前の仕訳を残しつつ、一部または全部の売上高を取り消す仕訳になります。この場合には、取り消し日によっては翌々回の決済で反映されるケースもあります。利用している決済会社のマニュアル等でご確認ください。

レジのお金が合わない場合の仕訳

基本的には、会計帳簿の現金残高とレジ機(現物)の現金残高は一致します。この帳簿と現金の残高の不一致を「現金過不足」と言い、現金過不足が起こらないように営業日ごとに現金残高の一致を確認するのが前提です。

しかし、後日、現金残高不一致の原因が分かるケースもありますので、一旦現金残高が不一致であることを認識して仕訳をしておくのが一般的です。

例)
6/1  レジ機の現金残高が帳簿残高より1,000円少なかった。
6/2  現金過不足の原因は、お釣りを1,000円多めに渡したことだと判明した。

日付借方貸方摘要
6/1現金過不足1,000円現金1,000円現金不足
6/2雑損1,000円現金過不足1,000円6/1現金過不足:釣銭相違

現金残高が多いときは、貸借を逆に考えます。

従業員にまかないを支給する場合の仕訳

飲食店における従業員の食事のことを「まかない」と言います。一般には、従業員への食事提供は(残業時などを除き)給与として課税されます。

しかしながら、1か月3,500円(税込3,685円)以下の場合等には給与として課税されません。

例)
6/30  従業員にまかないを支給した。支給はすべて残業時間におけるものである。

日付借方貸方摘要
6/30福利厚生費5,000円売上高5,000円従業員残業時間におけるまかない

残業などでの場合や1か月3,500円を超える場合など給与となる場合には、借方の科目は福利厚生費などではなく、「給与」となるためご注意ください。

また、貸方の科目は売上高でなく、「自家消費」などを使うことも多いです。

参考:No.2594 食事を支給したとき|国税庁

食材を廃棄した場合の仕訳

飲食店ではさまざまな理由から食材の廃棄が生じます。一旦仕入としたものであれば、費用化されているものの、収益に対する原価にはなっていないため、振替仕訳をしておきます。

例)
6/30  賞味期限切れのため食材を廃棄した。

日付借方貸方摘要
6/30廃棄損5,000円仕入高5,000円食品廃棄

借方の科目は、雑損失などを使うこともあります。このような仕訳をキチンとしておくことにより、食材ロス分を把握して原価率をより正しく求めることができ、品質管理にも役立ちます。

飲食店の経理で使う伝票の種類

最近はDX化が進み、改めて伝票を起票する機会があまりないこともあります。ここでは簿記において、「3伝票制」と呼ばれる「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」について説明します。

入金伝票

飲食サービス等に対し、現金で対価を受け取ったとき等に起票します。現金の相手勘定科目と金額のみを記載します。実際には飲食店で伝票を利用する場合には、オーダー伝票や売上票を入金伝票としても利用することが多いです。

出金伝票

仕入や経費について現金で支払ったときに起票します。現金の相手勘定科目と金額のみを記載します。実際は、出金伝票を利用せずに仕入先等から受領した請求書や領収書をもって出金伝票の代替とすることが多いと言えますが、領収書がない取引などに利用されます。

振替伝票

3伝票制では現金勘定ではない取引について起票します。会計仕訳と同様、勘定科目と金額購入先、摘要等を記入します。複雑な取引やイレギュラーな取引があった場合、証憑とともに振替伝票を作成しておくことはよくあります。

飲食店が支払う税金一覧とその詳細

飲食店においては、一般の商品販売やサービス提供などの店と同様に、負担すべき税金がいくつかあります。代表的な税金について、個人と法人に分けて見ていきましょう。

個人事業主の場合

税金の名称内容納付時期(原則)
所得税個人が得た所得に対して課される国税
※確定申告が必要
翌年3/15頃
住民税居住する市区町村や都道府県に納める地方税翌年4回に分けて納付
個人事業税一定の事業を営む個人が、事業所得に対して都道府県に納める地方税8月および11月の年2回
消費税*事業者が行う資産の譲渡などに課税翌年3月末

法人の場合

税金の名称内容納付時期(原則)
法人税法人が事業で得た所得に対して課される国税※確定申告が必要事業年度終了後2か月以内
法人住民税法人が事業所のある都道府県・市区町村に納める地方税
法人事業税
特別法人事業税**
法人が事業で得た所得に対して事業所在地(都道府県)に納める地方税
消費税事業者が行う資産の譲渡などに課税

*消費税(国税)の納付時には地方消費税も併せて納付します。
**特別法人事業税は法人事業税(地方税)と併せて納付する国税です。

また、個々の契約書等に「印紙税」、固定資産に対して「固定資産税」、「自動車税」などがあります。

飲食店の経営で必須のFL比率とは?

飲食店の経営指標としてよく用いられるものにFL比率があります。

FL比率とは、売上高に占めるF(Food:食材費)とL(Labor:人件費)の合計割合のことを言います。飲食店においては「食材費+人件費」がコストの多くを占めるため、重要な指標の一つであり、適正なFL比率を維持することが利益を出し続ける鍵となります。

FL比率の適正値は?

FL比率 = (食材費+人件費)/ 売上高

業種によっても差はありますが、一般的に飲食店のFL比率の目安は60%前後と言われます。FL比率は飲食店の経営に直接関連する費用の割合であり、適正値へのコントロールが経営改善に結びつきます。

FLR比率とは?

Food(食材費)とLabor(人件費)にRent(家賃)を加えた合計額が売上高に占める割合をFLR比率と呼びます。

FLR比率 = (食材費+人件費+家賃)/ 売上高

家賃は毎月固定なので、コントロールが難しいところですが、営業に支障ない範囲でFLR比率をコントロールすることも重要です。

飲食店の経理が不安な場合は、税理士に依頼するのもおすすめ

飲食店の経理が不安な場合は、税理士に依頼するのも安心の方法です。

飲食店の会計業務を税理士に依頼するメリット、デメリットにはどのようなものがあるでしょうか?それぞれ2つずつ挙げておきます。

メリット①:税理士の専門知識を経営に生かせる

税理士に依頼することにより、正確な記帳と申告が期待できます。税務に関する知識や経験を生かした適切な経費処理や、節税対策などのアドバイスを受けられます。また、経営の要所や税制改正における税務トラブルのリスク低減が期待できるでしょう。

メリット②:時間的、精神的ゆとりが生じる

経営者や従業員が会計業務から解放され、本業に専念できます。記帳や申告業務を税理士に委託することで、時間的・精神的な余裕が生まれ、長時間になりがちな飲食店経営においてもライフバランスを考えるゆとりが生じます。

デメリット①:必要経費が増加する

税理士への報酬が新たな経費となります。飲食店の規模や業務量によっては、高額な経費がかかる可能性もあります。この場合は、どこまでを委託するのか税理士と相談しましょう。

デメリット②:経営者の財務把握減少

経営者自身が会計知識を身につける機会が減少します。税理士に過度に依存すると、経営者自身が経理の実態を把握しづらくなることも考えられます。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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