• 作成日 : 2022年4月1日

貸倒実績率とは?計算方法をわかりやすく解説!

貸倒実績率とは?計算方法をわかりやすく解説!

会計処理、特に期末における決算整理仕訳では、貸倒引当金の計上の要否を検討します。貸倒引当金とは、取引先が倒産等で支払い不能となった状態などに備えて、事前に損失額を予測して計上しておく引当金です。貸倒引当金の計算方法には、取引先の財政状態等に応じて引当金を計上する個別評価法と、一定の貸倒実績率に基づき金額を算定する一括評価法があります。この記事では、一括評価法による算定方法を中心に見ていきましょう。

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貸倒実績率とは?

貸倒実績率とは、過去に取引した債権の金額のうち、取引先の倒産等で回収不能となり、貸倒損失となった債権の割合を示す数値です。事業を営む上では、与信管理を行いますが、不況等による取引先の業績悪化によって、売掛金などの債権から貸倒が発生してしまう恐れもあります。

貸倒が発生する場合、取引先の状況悪化が兆候として徐々に表面化していきます。そうした変化を感じ取ったなら、個別計算で貸倒額を見積ることになるでしょう。一方、突発的に貸倒が発生する場合もあるため、個別計算での貸倒見積が不可能な場合もあります。このような突発的な貸倒の金額を見積る際には、過去の貸倒実績率を用いて貸倒金額を見積り、貸倒引当金を計上することとなります。

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貸倒実績率の計算方法は?

貸倒実績率は、一定時点における債権残高を分母とし、翌期以降における貸倒損失の予想額を分子として算定します。分母となる債権には、売掛金・受取手形・貸付金・未収入金等が考えられるでしょう。

分母に組み入れる債権には、オンバランスされているもの以外にも、裏書手形、割引手形、保証債務などのオフバランス項目を含むことも考えられます。また、一定時点としては、期末日など決算の区切りとなる時点で算出していきます。

分子となる貸倒損失額は、過去に法的整理などの理由で回収不能になった実績を基準とした予想額です。それぞれの債権のリスク度合いや性質により、貸倒実績率を区分して計算することが考えられます。理論的には、それぞれの債権の回収期間で、どれだけの貸倒が発生するかを検討することになります。

具体的には、以下のような計算式で算出します。

貸倒実績率(%)= 翌期以降の貸倒損失の予想額 ÷ 一定時点での債権残高

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貸倒引当金の計算で貸倒実績率を使う場面は?

ここでは、貸倒引当金の計算で貸倒実績率を使う場面について、以下の2つに分けて解説していきます。

一括評価金銭債権の貸倒引当金繰入限度額を計算する場合

一括評価金銭債権とは、回収期限到来前の正常な債権のことを言います。売掛金・貸付金・受取手形・そのほか、これらに準ずる金銭債権で、後述する個別評価金銭債権を除いたものを指します。

一括評価金銭債権は、貸倒の可能性は低い債権ですが、企業を取り巻く環境は常に変化しており、確実に回収可能な債権とは言い切れません。法人税法上でも、過去3年間の貸倒損失発生額に基づく貸倒実績率による繰入限度額の算定が求められています。

具体的には、以下の計算式にて繰入限度額を求めます。

繰入限度額 = 期末一括評価金銭債権の帳簿価額 × 貸倒実績率
貸倒実績率 = 過去3年間の貸倒損失の額 ÷ 過去3年の期末時点の一括評価金銭債権の合計

なお、本方法を適用できる法人は、普通法人のうち各事業年度終了時において資本金の額、若しくは出資金の額が1億円以下であるもので、資本金が5億円以上等の大法人、大法人と完全支配関係がある法人・投資法人・特定目的会社等、相互会社および外国相互会社を除く法人に限定されています。

個別評価金銭債権の貸倒引当金繰入限度額を計算する場合

個別評価金銭債権とは、その事業年度終了時において、その一部につき貸倒、その他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権を言います。また、法人税法上では、次の4つのケースが想定されています。

  1. 会社更生法の規定による更生計画認可の決定等の一定の事由が生じたことにより、その弁済を猶予され、または賦払いにより弁済されることとなった場合

    対象債権から、その事由が生じた事業年度終了の日の翌日から5年を経過する日までに弁済されることとなっている金額および担保権の実行により取立て等の見込みがあると認められる金額を差し引いた金額が繰入限度額となります。

  2. 債務者の債務超過状態が相当期間継続し、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由が生じていることにより、その個別評価債権の一部につき取立て等の見込みがないと認められる場合

    対象債権から、担保権の実行その他による取立て等の見込みがある金額を差し引いた金額が繰入限度額となります。

  3. 会社更生法の規定による更生手続開始の申立て等の一定の事由が生じている場合

    対象債権から、債務者から受け入れた金額があるために実質的に債権とみられない部分の金額および担保権の実行、金融機関等の保証債務の履行その他により取立て等の見込みがある金額を差し引いた金額の50%が繰入限度額となります。

  4. 外国の政府、中央銀行または地方公共団体に対する個別評価金銭債のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によるその経済的価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている場合

    対象債権から、債務者から受け入れた金額があるために、実質的に債権とみられない部分の金額および、保証債務の履行その他による取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を差し引いた金額の50%が繰入限度額となります。

参照:法人税法|e-Gov法令検索

法定繰入率を用いて計算する方法も!

法人税法では、前述の貸倒実績率に基づく一括評価金銭債権の貸倒引当金の繰入限度額を算定する方法の簡便的な方法として、業種ごとの一定の法定繰入率で繰入限度額を算定する方法も認められています。

法定繰入率による繰入限度額の計算式は次のようになります。

繰入限度額=期末一括評価債権の帳簿価額×法定繰入率

法定繰入率は、業種ごとに次のように決められています。

卸売業及び小売業10/1000
製造業8/1000
金融業及び保険業3/1000
割賦販売小売業7/1000
その他6/1000

法人税法上は、法定繰入率と貸倒実績率で算定された繰入限度額のうち、高いほうの採用が認められています。

なお、法定繰入率を適用できる法人は、貸倒実績率を適用できる法人と同様で、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもので、資本金が5億円以上等の大法人、大法人と完全支配関係がある法人・投資法人・特定目的会社等、相互会社および外国相互会社を除く法人に限定されています。

金融商品会計基準での貸倒実績率の算定方法もある

貸倒引当金の算定方法としては、前述までの法人税法上の方法のほか、上場会社が準拠すべき金融商品会計基準による方法があります。金融商品会計基準では、債権を一般債権、貸倒懸念債権破産更生債権等に区分し、それぞれのリスクに応じた貸倒引当金を算定します。

特に、一般債権については、債権全体または同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等の合理的な基準により貸倒見積高を算定することとしています。

具体的には、ある期における債権残高を分母とし、翌期以降の貸倒損失額を分子として算定することになります。貸倒実績率の算定期間は、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3算定期間に係る貸倒実績率の平均値によって算定します。

一見、法人税法上の算定方法と似ているようにも見えますが、算定する分母の数値の取り方などが相違するため、金融商品会計基準による方法で貸倒引当金を算定する場合には、所得計算において法人税法での繰入限度額との差額を調整する必要があります。

貸倒実績率を用いて、貸倒引当金を正しく計上しましょう

貸倒引当金の算定方法には、債権の回収懸念リスクに応じて複数の方法があります。多くの企業では、法人税法の規制を受けるため、法人税法上における貸倒引当金の繰入限度額を求める算定方法を採用することになると考えられるでしょう。

また、同じ繰入限度額を算出する場合でも、貸倒実績率による方法と、法定繰入率による方法があります。一方、上場会社では、金融商品会計基準による貸倒引当金の計上を行う必要があります。

それぞれの基準で、一般債権に対しては貸倒実績率を用いた算定方法を採用する点では類似しますが、具体的な算定方法には相違点があり、それぞれの算定方法を間違わないよう注意が必要です。

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よくある質問

貸倒実績率算定の際、分子になる金額は?

貸倒実績率算定の際、分子になる金額は、法的整理などの理由で回収不能になった額など、過去の実績に応じて予想額を決めていきます。なお、各債権のリスク度合いやその性質により、貸倒実績率を区分して計算します。詳しくはこちらをご覧ください。

貸倒実績率はどの方法でも自由に採用できる?

貸倒実績率は、複数の方法からひとつを選択することになります。中小法人などでは、貸倒実績率法と法定繰入率法を両方計算し、高いほうを選択できます。ただし上場会社では、金融商品会計基準が採用されます。詳しくはこちらをご覧ください。

金融商品会計基準の貸倒実績率とは?

金融商品会計基準の貸倒実績率は、税法上の貸倒実績率と類似していますが、ある期における債券残高を分母とし、翌期以降の貸倒損失額を分子として算定することになり、税法上の貸倒実績率とは相違します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:宮内 威(公認会計士)

20年以上、監査法人に所属し、比較的広い分野の会計監査に従事。個人でもコンサルティング業務を請けており、株価算定業務(事業計画策定も含む)・買収に伴う財務デューデリジェンス・IPOコンサルティング(資本政策も含んだ事業計画策定も含む)・経理業務アウトソーシングなどを担当している。

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