- 更新日 : 2025年4月23日
自己振出小切手の使い方や仕訳方法
自己振出小切手はそれほど登場頻度が高くないため、まだ出会ったことがないという人も多いでしょう。自己振出小切手という名前だけ見ると難しく感じられますが、実際は自分が振り出した小切手が手元に戻ってくるだけのことで、会計処理も決して難しいものではありません。この記事では自己振出小切手が発生する仕組みや、受け取った場合の仕訳例を紹介しています。小切手の実務の参考にしてください。
※政府は、2026年までの約束手形の利用廃止、小切手の全面的な電子化の方針を示しております。詳しくは以下の記事をご確認ください。
小切手のしくみ
小切手とは、多額の現金の代わりに使用される決済手段です。個人間で使われることはなく、商取引で使用されるため見たことがないという人も多いでしょう。小切手は振出人(小切手の作成者のこと)が、用紙に記載された金額を支払う約束をした証書です。受取人は銀行へ小切手を持っていくと、その金額を現金で受け取れます。
多額の現金を持ち歩くことは不便なだけでなく、防犯上の危険もあります。そうした際でも、小切手であれば不正使用されないための仕組みが何重にも施されているため、悪用の心配はほとんどありません。
ただし、小切手を発行するためには、金融機関との当座預金契約が必要です。原則として当座預金残高の金額までしか小切手は発行できませんが、「当座貸越契約」があれば当座貸越限度額まで小切手の振出が可能になります。当座貸越は与信取引(融資)の一種のため、利用にあたっては審査があり、貸越した金額は金融機関からの借入(融資)と同じ扱いです。
なお、小切手の発行には、当座預金取引のある金融機関が発行する統一小切手用紙(「小切手帳」ともいい、発行は基本的に有料)を使用しなければなりません。また、金額の訂正ができず、書き損じがあれば新しい用紙を使う必要があります。
小切手は紙で発行されるために、取扱いや修正に手間がかかる点が特徴です。慣れてしまえば難しい手続きではありませんが、最初は戸惑うこともあるかもしれません。
自己振出小切手とは
自己振出小切手とは、さまざまな取引を経て手元に戻ってきた、自分が振り出した小切手のことです。どのような場合に自己振出小切手が発生するのか、事例を見ながらイメージしてみましょう。
取引先Aから商品の仕入れを行い、その代金を小切手で支払いました。取引先Aはその小切手を金融機関で換金せず、取引先Bに対する別の支払いにその小切手を充てることにします(小切手は受取人の指定がないため、現金と同じように支払い手段として使えます)。
今度は取引先Bが当社から商品の仕入れを行い、この小切手をもって商品代金を支払いました。そうすると、当社には自分が振出した小切手が戻ってきたということになります。これが自己振出小切手の生まれる仕組みです。
自己振出小切手が発生する頻度はそれほど高くなく、会計処理も簡単です。自分が振出した小切手をわざわざ支払う必要がないため、会計上は小切手の発行を取り消すだけということになります。小切手を振出す時には当座預金勘定を減らすため、戻ってきたときにはその金額の当座預金勘定を増やすだけでよいのです。
続いて、具体的な仕訳を見ていきましょう。
自己振出小切手の仕訳
小切手という勘定科目はありませんので、小切手を振出した場合の仕訳は単純な当座預金残高の減少です。自己振出小切手が戻ってきた場合は、その取消仕訳をするだけになります。
例:小切手を振り出してA社から5万円分の商品を仕入れた。
5万円分の当座預金残高を減少させています。
例:A社に商品8万円分を販売し、売上代金の5万円分を上記小切手から、残り3万円分をA社振出の小切手で受け取った。
自己振出小切手が手元に戻ってきたので、5万円の小切手を振り出した場合の取消仕訳となっていることが分かります。なお、この事例では、売上代金の一部である3万円をA社振出の小切手で受け取っています。
ここで注意したいのは、他社から小切手を受け取った場合は現金として記帳するということです。小切手はいつでも換金できるという性質があるため、実質的に現金と同じと考えればそれほど難しくはないでしょう。
自己振出小切手の会計上の扱いは簡単
自己振出小切手は、自分が振り出した小切手が取引を経て手元に戻ってくることなので、そもそも発生頻度はそれほど高くありません。もし自己振出小切手を手にすることがあっても、当座預金残高を増やすだけなので会計処理もシンプルです。
小切手は製造業など特定の業種では使用する頻度が高く、実務を担当していればいつか自己振出小切手に出会うことがあるでしょう。そのような場合でも、正しい知識さえあれば苦労せずに対応できますので、自己振出小切手の扱い方を頭の片隅に置いておいてください。
よくある質問
小切手とは?
小切手の作成者(振出人という)が、用紙に記載された金額の支払いを約束した証書のことを小切手といいます。法律上の規定ではないが、金融機関から支払いを受けるためには指定の用紙を使用したものでなければなりません。 詳しくはこちらをご覧ください。
自己振出小切手とは?
自分が振り出した小切手が取引を経て最終的に手元に戻ってきた場合に、この小切手のことを自己振出小切手と呼びます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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