• 作成日 : 2021年7月30日

洗替法(洗い替え方式)とは?切放法との違いや売買目的有価証券の仕訳例など徹底解説!

洗替法(洗い替え方式)とは?切放法との違いや売買目的有価証券の仕訳例など徹底解説!

簿記で資産負債の帳簿価額(簿価)を評価計上する際の方式として「洗替法」「切放法」「差額補充法」があります。

売買目的有価証券貸倒引当金(大企業では廃止)などを評価替えする際に用いる「洗替法」とはどのようなものか?について仕訳を例示しながら解説していきます。

洗替法とは?

「洗替法」は資産負債を評価するに際に用いる処理方法の1つです。

資産負債の評価方法には「取得原価主義」と「時価評価主義」の2つの考え方が存在します。

帳簿価額を取得価額のまま計上しておく「取得原価主義」に対して、資産負債を時価により再評価し直すのが「時価評価主義」です。

「洗替法」の具体的な処理として、資産負債の評価額(簿価)を期末において、いったん時価評価した後、翌期首に逆仕訳により取得価額に戻すという手法をとります。

海外では主流となっている「時価評価主義」を取り入れつつも「取得原価主義」に寄った処理方法であるといえます。

洗替法と切放法の違いは?

評価損益を計上した後、翌期首には取得原価に戻す「洗替法」に対して、「切放法」では翌期首の逆仕訳を行いません。

つまり一度時価評価により評価損益を計上したら、資産負債の簿価は評価替え後のままとなります。

「洗替法」「切放法」は全ての資産負債に対し自由に選択できるわけではありません。

項    目
処 理 方 法
棚卸資産
洗替法
売買目的有価証券
洗替法又は切放法
その他有価証券
洗替法
貸倒引当金
洗替法又は差額補充法
固定資産(減損会計
切放法

このように「洗替法による取得原価主義とすべき項目」「切放法による時価評価主義とすべき項目」というのが決められているのです。

洗替法の仕訳

では、実務における「洗替法」の具体的な仕訳について解説していきます。
資産項目の1つである「売買目的有価証券」を例に挙げてみましょう。

売買目的有価証券の洗替法による経理処理と仕訳例

売買目的有価証券とは、近い将来売却する目的で所有する有価証券のことを指します。売買目的有価証券について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。


売買目的有価証券の「洗替法」のイメージは以下の通りです。
売買目的有価証券の「洗替法」のイメージ
例:売買目的有価証券を100,000円で購入した
借   方
貸   方
売買目的有価証券  100,000円
現  金   100,000円

売買目的有価証券の取得時は「取得価額」で資産計上します。

例:期末における時価評価額は50,000円であった

借   方
貸   方
売買目的有価証券評価損  50,000円
売買目的有価証券   50,000円

平成11年1月に企業会計審議会が定めた「金融商品に関する会計基準」では、売買目的有価証券は時価評価により評価替えを行うこととされています。

080310金融商品会計基準 (asb.or.jp)

例のように取得価額より時価評価額が下落した場合、評価損50,000円を計上しなければなりません。結果として貸借対照表には評価替え後の50,000円が計上されます。

貸借対照表
資産の部
負債の部
   投資その他

売買目的有価証券  50,000円

例:翌期首に洗替法による会計処理を行った

借   方
貸   方
売買目的有価証券  50,000円
売買目的有価証券評価損   50,000円

この仕訳が「洗替法」のポイントです。

前期末に計上した評価損の仕訳と反対の仕訳(逆仕訳)をおこして、売買目的有価証券の簿価を取得価額に戻す処理を行います。

貸借対照表

資産の部
負債の部
   投資その他

売買目的有価証券  100,000円

結果として貸借対照表の売買目的有価証券は評価替え前の100,000円(取得価額)に戻ります。

例:売買目的有価証券を80,000円で売却した

借   方
貸   方
現   金  80,000円
売買目的有価証券売却損 20,000円
売買目的有価証券   100,000円

洗替法により売買目的有価証券の簿価は取得価額100,000円に戻っていますので、売却損は取得価額との差額20,000円となります。

なお、売買目的有価証券に「差額補充法」は使えず、「洗替法」又は「切放法」のみ選択可能となりますので注意してください。

貸倒引当金の洗替法による経理処理と仕訳例

「貸倒引当金」とは、将来的に回収不能となる可能性が高い債権について、その貸倒損失を見越して一定割合を当期に費用計上する勘定科目です。貸倒引当金について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。


大企業における簿記では既に「貸倒引当金」は廃止されています。

しかし中小企業では税法上「貸倒引当金」の計上はまだ行えることになっています。
この場合「洗替法」により処理するのが原則です。

例:製造業の会社が当期末に売掛金5,000,000円に対して0.8%の貸倒引当金を設定した

借   方
貸   方
貸倒引当金繰入 40,000円
貸倒引当金 40,000円
(資産のマイナス項目)

貸倒引当金の設定額は 5,000,000円 × 0.8% = 40,000円となります。

例:翌期末に洗替法で売掛金8,000,000円に対して0.8%の貸倒引当金を設定した

借   方
貸   方
貸倒引当金 40,000円

貸倒引当金繰入 64,000円
貸倒引当金戻入 40,000円

貸倒引当金 64,000円
(資産のマイナス項目)

「洗替法」により前期に計上した貸倒引当金40,000円を一旦戻し、当期末の設定額を計上し直すという処理を行います。

貸倒引当金の設定額は 8,000,000円 × 0.8% = 64,000円となります。

洗替法について理解できましたか?

「洗替法」の目的は、実際に動いた取引額で資産負債を計上することです。
これにより恣意性を排除した客観的な評価を行うことができますから、第三者から見た場合信頼性が高くなるというメリットがあります。
「洗替法」のメリットを意識しながら正しい処理を行うようにしましょう。

よくある質問

「洗替法」とは何ですか?

資産負債を評価替えする際の処理方法の1つです。詳しくはこちらをご覧ください。

「洗替法」と「切放法」の違いは何ですか?

「洗替法」は逆仕訳をおこし取得原価で資産計上します。「切放法」は評価替えを行ったまま資産計上します。詳しくはこちらをご覧ください。

「洗替法」ができる項目にはどのようなものがありますか?

売買目的有価証券、棚卸資産、貸倒引当金などがあります。 詳しくはこちらをご覧ください。


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