• 更新日 : 2026年4月15日

戦略分野国内生産促進税制とは?対象や適用要件についてわかりやすく解説

Point戦略分野国内生産促進税制とは?

戦略分野国内生産促進税制は、EVや半導体など重要分野の国内生産を後押しするため、生産量に応じて法人税を控除する制度です。

  • 令和6年度創設
  • 最大10年間控除
  • 賃上げ2%以上または設備投資基準達成が要件のひとつ

認定取得のうえ、賃上げ(2%以上)か一定の国内設備投資を満たせば適用されます。

戦略分野国内生産促進税制は、電気自動車(EV)や半導体、グリーンケミカルなど、国の成長と経済安全保障を支える重要分野への国内投資を後押しするために創設された税制措置です。認定を受けた計画に基づき対象製品を国内で生産・販売した場合、生産量に応じて法人税の税額控除を受けることができます。

本記事では、制度の概要や対象分野、適用要件、注意点を解説します。

戦略分野国内生産促進税制とは?

戦略分野国内生産促進税制は、経済安全保障や脱炭素、デジタル化といった国家戦略上重要な分野において、国内投資を強力に後押しするために創設された税制措置です。

戦略分野への国内投資を促すために生産量に応じて法人税を控除する制度

戦略分野国内生産促進税制とは、電気自動車や半導体など、日本にとって戦略投資が欠かせない分野のうち、特に生産段階でのコストが高い事業に対して新たな国内投資を引き出すため、税額控除を行う制度です。GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、経済安全保障といった戦略分野にかかる特定の商品を国内で生産・販売した場合、その生産量に比例して法人税額が控除される仕組みとなっています。

近年は、米国のインフレ抑制法(IRA法)やCHIPS法、欧州のグリーンディール産業計画など、各国が戦略分野への国内投資を促す政策を打ち出し、産業政策競争が激化しています。こうした国際的な動向を踏まえ、日本でも経済成長を牽引する戦略分野において世界と競争できる投資促進策が求められました。その結果、戦略分野国内生産促進税制が令和6年度(2024年度)の税制改正により創設されました。

戦略分野国内生産促進税制の対象は?

戦略分野国内生産促進税制の対象となるのは、特に戦略的な長期投資が不可欠となる5つの分野です。

ここでは、税制の対象分野と、単位あたりの控除額を解説します。

対象分野

戦略分野国内生産促進税制の対象となるのは、電気自動車や半導体など、長期的な戦略投資が必要な次の5分野です。

  • 電気自動車等
  • グリーンスチール(鉄鋼)
  • グリーンケミカル(基礎化学品)
  • 持続可能な航空燃料(SAF)
  • 半導体(マイコン・アナログ)

電気自動車等で対象となるのは、電気自動車(EV)、軽自動車の電気自動車(軽EV)、燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)で、ハイブリッド自動車(HEV)は対象外です。二輪車および自動車に搭載する蓄電池の生産・販売も対象になりません。

グリーンスチールとは、製造時の二酸化炭素排出量を従来の鉄鋼より大幅に削減した鉄鋼材料です。2050年のカーボンニュートラルを達成するために鉄鋼業の脱炭素化が求められており、グリーンスチールの実用化が進められています。

グリーンケミカルは、植物や農産物、廃棄物などの再生可能資源を原料とする化学製品の総称です。石油依存からの脱却や地球温暖化対策など、環境問題への意識が高まるとともに注目を集めています。

持続可能な航空燃料(SAF)とは、廃食油や微細藻類、木くずなどを原料として製造されるジェット燃料です。従来の化石燃料(石油など)から作られるジェット燃料と比べ、二酸化炭素削減効果が期待されています。

半導体はすべてが対象になるわけではなく、対象となるのはマイコン半導体とパワー半導体を含むアナログ半導体で、先端ロジック半導体やメモリ半導体は対象外です。なお、半導体の初期投資が補助金の対象となっている場合は対象となりません。

対象物資と単位あたり控除額

税制の控除額は、産業競争力基盤強化商品の区分ごとに単位あたりの金額が定められています。対象となる法人は、計画認定日から10年間の各事業年度につき、生産・販売量に応じた税額控除を受けることが可能です。

対象物資ごとの控除額は、次のとおりです。

物資 控除額
電気自動車等 EV-FCV:40万円/台

軽EV-PHEV:20万円/台

グリーンスチール 2万円/トン
グリーンケミカル 5万円/トン
SAF(持続可能な航空燃料) 30円/リットル
半導体(マイコン) 28~45nm相当:1.6万円/枚

45~65nm相当:1.3万円/枚

65~90nm相当:1.1万円/枚

90nm以上:7千円/枚

半導体(アナログ半導体) パワー半導体(Si):6千円/枚

パワー半導体(SiC、GaN):2.9万円/枚

イメージセンサー:1.8万円/枚

その他のアナログ半導体:4千円/枚

参考:経済産業省 戦略分野国内生産促進税制

戦略分野国内生産促進税制が適用される要件は?

戦略分野国内生産促進税制の適用を受けるためには、形式的要件と実質的要件の双方を満たす必要があります。令和8年度税制改正に基づき、適用を受けるために必要な主な要件を整理します。

戦略分野国内生産促進税制は、次の要件を満たす法人に適用される

  • 青色申告書を提出する法人であること
  • 産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を受けていること(所定の期限内に認定)
  • 認定計画に基づき、産業競争力基盤強化商品を生産するための設備の新設または増設を行うこと
  • 取得した生産用資産を国内の事業の用に供していること
  • 対象商品が制度で定める戦略分野(EV等、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF、半導体〔マイコン・アナログ〕)に該当すること
  • 認定日以後10年以内の各事業年度において生産・販売実績があること
  • 次のいずれかを満たしていること
    • 継続雇用者給与等支給総額の増加率が2%以上であること
    • 国内設備投資額が当期の減価償却費の4割を超えていること

戦略分野国内生産促進税制の税額控除が適用されないケースは?

戦略分野国内生産促進税制では、一定の業績や賃上げ・投資水準を満たしていない場合、その事業年度において税額控除の適用が制限されます。令和8年度税制改正により、賃上げ要件が見直されるとともに、給与要件と投資要件の判定方法が整理されました。

税額控除が適用されないのは、次の要件すべてに該当する場合です。

  • 当期が設立事業年度または合併等事業年度に該当せず、かつ所得金額が前事業年度より減少していること
  • 継続雇用者給与等支給総額の増加率が2%未満であること(令和8年度改正により1%から引上げ)
  • 国内設備投資額が当期の減価償却費の4割以下であること

ここで重要なのは、給与要件と投資要件については「いずれか一方を満たしていればよい」と整理されている点です。したがって、給与増加率が2%未満であっても、国内設備投資額が基準を上回っていれば適用は可能です。逆に、投資額が基準以下であっても、給与増加率が2%以上であれば適用対象となります。

つまり、所得が減少していることに加え、賃上げ・投資の両方の基準を満たさない場合に限り、その事業年度の税額控除は適用されません。なお、控除限度額を超えた部分については、一定期間の繰越控除が認められています。

令和8年税制改正における戦略分野国内生産促進税制の変更点は?

令和8年度改正で創設された特定生産性向上設備等投資促進税制が、戦略分野税制との重複を避けるために対象設備の計算根拠から除外されるようになったのが主な調整点です。

項目 改正前(制度創設時点:令和6年度) 改正後(令和8年度税制改正)
対象制度の枠組み 戦略分野の国内生産を促進 → 生産・販売量に応じて税額控除 基本的な制度枠組みは維持
認定要件 ・主務大臣による計画認定が必要・認定産業競争力基盤強化商品を生産する設備取得等が対象 変更なし
税額控除の算定ベース 生産・販売量に応じた控除額または取得価額を基礎とした金額のいずれか低い金額 計算式は同じ。ただし、特定生産性向上設備等投資促進税制の対象設備の取得価額は特定商品税額控除限度額の計算基礎から除外
他税制との調整 他税制との重複調整ルールが存在 現行ルールに加えて、新設の「特定生産性向上設備等投資促進税制」を利用した設備投資は、戦略税制の対象投資額の計算から除外されるように調整
継続雇用者給与等支給額要件 (適用条件として)継続雇用者給与等支給額の増加率が1%以上 継続雇用者給与等支給額の増加率が2%以上に要件強化
国内設備投資額要件 継続雇用者給与等支給額及び国内設備投資額の両方を満たさないと税額控除が適用できないルール 継続雇用者給与等支給額及び国内設備投資額の要件は「いずれか一方を満たしていればよい」に緩和
控除限度額等のルール 法人税額に対する控除限度等は存在(従来制度の計算ベース) 引き続き同様だが「除外対象投資額」を加味した調整あり
適用対象資産 認定計画に基づく生産用設備等 同じだが「特定生産性向上設備等」で取得した設備は別枠扱い

戦略分野国内生産促進税制による減税はいつから?

戦略分野国内生産促進税制の適用で減税を受けられるのは、産業競争力強化法の改正により規定される「事業適応計画」の認定日以後、10年以内の日を含む各事業年度までです。

開始日は、生産用資産を事業の用に供した日です。

戦略分野国内生産促進税制を適用するためには、2027年3月31日までに事業適応計画の認定を受ける必要があります。

事業適応計画の認定を受けた日と生産開始の日の間にはタイムラグが生じると考えられますが、最大10年間の適用期間の開始日は事業適応計画の認定を受けた日です。認定日から生産開始の日までの期間が長いと、それだけ税額控除の期間が短くなります。

対象期間をできるだけ長くするためには、認定のタイミングが生産開始の直前となることが望ましく、認定に要する期間を考慮して計画の準備を進めるとよいでしょう。

税額控除の上限は、各事業年度において、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制による控除税額およびカーボンニュートラルに向けた投資促進税制による控除税額との合計で、当期の法人税額の40%(半導体は20%)です。上限を超えた控除額は4年間(半導体生産用資産は3年間)の繰越しができます。

戦略分野国内生産促進税制を適用する手順は?

戦略分野国内生産促進税制を活用するには、事前の計画認定から設備投資、生産開始、税務申告まで、段階的な手続きを適切に進める必要があります。ここでは、流れをステップごとに整理します。

① 事業適応計画を策定する

まず、自社の投資計画が戦略分野国内生産促進税制の対象となるかを確認し、産業競争力強化法に基づく「事業適応計画」を策定します。対象となるのは、EV等、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF、半導体(マイコン・アナログ)といった戦略分野です。投資内容、生産見込み、財務計画などを具体的に整理する必要があります。

② 主務大臣の認定を受ける

策定した事業適応計画を所管省庁へ提出し、主務大臣の認定を受けます。税額控除の適用期間は認定日から最長10年間であるため、認定時期は重要です。生産開始とのタイミングを考慮し、適用期間を最大化できるよう申請時期を調整します。

③ 生産用資産を取得し国内で供用する

認定計画に基づき、産業競争力基盤強化商品を生産するための設備を新設または増設します。取得した設備は国内の事業の用に供することが必要です。また、新設の他税制との重複適用がないよう、対象設備の区分整理も行います。

④ 生産・販売実績を確保する

税額控除は生産量に応じて算定されるため、実際に対象商品の生産・販売を行う必要があります。認定日以後10年以内の各事業年度が対象期間となります。

⑤ 税額控除の判定・申告を行う

各事業年度において、賃上げ(給与増加率2%以上)または国内設備投資基準のいずれかを満たしているかを確認します。要件を満たしていれば、生産量に応じた控除額を計算し、法人税の確定申告で適用します。必要に応じて繰越控除の管理も行います。

戦略分野国内生産促進税制の注意点は?

税制の控除額は、段階的に引き下げられる点に注意が必要です。

控除額は8年目以降、段階的に引き下げ

控除額は、事業適応計画の認定日から7年を経過した日の翌日以後に開始する事業年度から、段階的に縮減されます。縮減後の控除割合は次のとおりです。

  • 8年目:75%
  • 9年目:50%
  • 10年目:25%

そのため、10年間すべて同じ水準の控除を受けられるわけではありません。

戦略分野国内生産促進税制は戦略分野の国内投資を促進する制度

戦略分野国内生産促進税制は、戦略的な長期投資が必要な戦略分野の集中的な国内投資を促すための制度です。企業が優遇措置を受けるためには、要件に該当するとともに、事業適応計画を策定して認定を受ける必要があります。

税額控除は、認定を受けてから10年間という長きにわたって受けられます。最大限の控除を受けるためには、認定を受けるタイミングも考えて申請するとよいでしょう。

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