• 更新日 : 2024年9月27日

中小企業に決算書の開示義務はある?開示の範囲や決算公告の方法を紹介

中小企業であっても、一定の条件を満たす場合は決算書を公告により開示する義務があります。中小企業で決算公告が必要な要件には、何があるのでしょうか。この記事では、決算公告の義務がある中小企業の要件や、公告以外で決算書の開示を求められた場合について解説します。

中小企業に決算公告の義務が課される要件

中小企業を含めて、会社法によって決算公告が義務付けられている法人は、仕組み上は会社の経営権と所有権が分離している株式会社です。すべての株式会社は決算公告が義務付けられているため、中小企業においても株式会社であれば決算公告の義務が課されます。

決算公告とは、株主総会の承認を得た決算内容を投資家や債権者などに広く知らせることです。原則として、官報や日刊新聞に決算内容を掲載して公告することとなっています。原則的な方法に代えて、ホームページへの掲載など電子公告も認められています。電子公告を選択する場合は、ホームページアドレスの登記などが必要です。

決算公告の方法や期限について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

なお、大企業は貸借対照表に加え、損益計算書の決算公告も必要です。中小企業においては、貸借対照表のみの開示が認められています。

中小企業が決算手続きや公告以外で決算書を開示するケース

決算公告は、会社法に定められている株式会社の義務だと紹介しました。なお、会社法に定める決算公告以外で、決算書の開示が求められるケースもあります。

銀行などから融資を受ける

銀行などの金融機関から融資を受ける際には、決算書の提出が求められます。銀行が決算書を必要とするのは、決算書から企業の返済可能性などを確認するためです。

例えば、貸借対照表からはどのような資産を持っているか(担保になる資産はあるか)、資金調達はどのように行われているか、債務超過が生じていないかなどを確認します。貸借対照表だけでなく、損益計算書も重要な書類です。貸借対照表に懸念事項があっても、売上や利益が伸びており返済の可能性があれば、融資を受けられる可能性はあります。

取引先から求められた

取引先から決算書の提出を求められるケースもあります。取引先が決算書を必要とするのは、ほとんどの場合、企業の安全性を確認するためです。決算書の内容は、取引を継続するかどうかの判断材料になります。新たに取引を開始する企業から、同様の理由で与信のために決算書の提出を求められるケースもあります。

取引先からの決算書の開示依頼は今後の取引にも影響を与えることから、依頼があったらすぐに開示できるようにしておきましょう。取引先への開示は義務ではないものの、取引の継続に影響したり、既存取引の拡大に影響したりすることもあるからです。

株主から求められた

株主から決算書の開示を求められるケースもあります。株主が決算書を必要とするのは、今後の投資の継続などを判断するためです。一定以上の議決権を有する株主から請求については開示義務があるため、株主からの開示依頼があった場合には速やかに決算書を開示しましょう。

中小企業が決算書を開示する際に注意したいポイント

中小企業でも、株式会社には決算公告の義務があります。しかし、必ずしも相手の求めに応じて決算書を開示する必要はありません。中小企業が決算公告以外で決算書を開示する場合は、以下の点に注意しましょう。

  • 相手が請求権者であるか確認する
  • 請求権者に対しては速やかに決算書を開示する
  • 相手の求めに応じてすべての書類を提出する義務はない
  • 相手によって開示する決算書類を検討する
  • 税務署には提出義務があるため、確定申告時に決算書を添付する

中小企業でも株式会社は決算書を開示しなければならない

株式会社には、決算公告の義務があります。そのため、中小企業であっても株式会社の場合は、決算書を公告によって開示しなければなりません。中小企業の場合は、少なくとも貸借対照表の公告が必要です。決算公告の他、取引先や株主などから決算書提出の依頼があった場合には、必要に応じて決算書を開示しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事

会計の注目テーマ