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  • 更新日 : 2021年4月1日

事業報告書とは?作成方法や書き方・雛形・記載例についてわかりやすく解説

事業報告書」とは一体どんなものでしょうか。ある程度のイメージはできるけど「具体的には?」「事業報告を詳しく知りたい」という方に向けて、この記事では事業報告書について詳しく解説していきます。
事業報告書をきちんと理解したい方はもちろん、初めて作成するという方にも役立つ内容となっていますので、参考にしてみてください。

事業報告書とは

事業報告書とは、会社法で開示する書類のうち、事業報告とその附属明細書を合わせた総称を指します。決算時に開示する書類は以下の通りです。

  • 計算書類
  • 計算書類の附属明細書
  • 事業報告
  • 事業報告に係る附属明細書

計算書類には貸借対照表損益計算書などがあり、事業報告書には、計算書類ではわからない定性的な情報を補足する役割があります。「定性的な情報」とは具体的に、会社の事業内容、従業員に関する情報、役員に関する情報などです。

また、事業報告書の記載内容は会社法上の会社区分によって取り扱いが異なります。会社法での会社区分には、「公開会社」と「公開会社でない会社」に分けられます。公開会社を簡単にいうと、その会社の株式を一部でも自由に売買できる会社のことです。反対に、自由に売買できない譲渡制限株式しか発行していない会社は、公開会社でない会社になります。

さらに、公開会社でない場合でも支配関係がある場合(親会社や子会社がいるなど)には事業報告書の記載内容が変わります。

記載内容と会社の関係をまとめると、以下のどちらにも該当しない会社は、事業報告書の記載内容を大幅に省略することができます。

  • 公開会社(一部でも自由に売買できる株式を発行している会社)
  • 支配関係がある会社(親会社や子会社がいる会社)

事業報告は会社法で作成が義務付けられている

事業報告書の作成がなぜ義務付けられているのかというと、そもそも会社は決算情報を株主に開示しなければいけないためです。実際、株主総会の招集通知には、計算書類と事業報告書を添付しています。

事業報告書の作成義務の根拠は、以下の会社法で定められています。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

会社法435条2項より ()書きを省略

この条文では「株式会社」と定められているため、公開会社、公開会社でない会社を問わず、すべての株式会社が事業報告書を作成することを定めています。

上記の会社法435条2項の補足になりますが、会社法435条3項には電磁的記録で作成できる旨の規定があります。

計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。

会社法435条3項より

つまり、事業報告書はすべての株式会社が作成しなければいけません。作成の方法は、紙または電磁的記録による方法で良いことになります。

中小企業も事業報告の提出は必須

上述した通り、すべての株式会社には事業報告書の作成義務があります。しかし、中小企業では不特定多数の株主を招待して株主総会を開催することはないため、事業報告書の必要性が高くないように思えるかもしれません。

そこで会社法施行規則では117条から126条まで、会社区分による事業報告書の記載内容を定めています(事業報告書の附属明細書は同128条)。

会社法施行規則は、会社を細かく区分し該当する場合、事業報告書に記載するよう求めています。反対に、該当しない場合は記載を省略することが可能です。つまり、この区分によって、中小企業は事業報告書の記載内容を大幅に省略できるのです。

以上をまとめると、すべての株式会社に事業報告書の作成義務があり、中小企業でも免除されません。ただし、事業報告書の記載内容は大幅に省略することが可能です。

事業報告書の書き方・作成方法

事業報告書の記載内容は、会社法施行規則によって定められていることは前項で説明しました。
しかし、会社法施行規則では記載事項を定めているものの、具体的な様式やどのような文章を記載するか等、実際に事業報告書を作成する詳細な内容は定められていません。したがって、事業報告書の様式やどのような文章にするか等の具体的な内容は、各会社の任意となります。

ただし実務的には「日本経済団体連合会」(以下、経団連)または「全国株懇連合会」が公表する事業報告書のひな形、地方公共団体が公表するひな形などを参考にしながら作成することが一般的です。

事業報告書の記載事項

会社分類と事業報告の記載事項の関係は以下の表の通りです。条文の各項目は後述します。

会社の分類事業報告書の記載事項
公開会社・会社法施行規則118条の事項
・同規則119条事項
・同規則124条~126条に該当する事項
公開会社でない会社
・会社法施行規則118条の事項
・同規則124条~126条に該当する事項
ほとんどに該当しない中小企業
(親・子会社がない、かつ公開会社でない会社)
・「株式会社の状況に関する重要な事項」(会社法施行規則118条1項)
・「業務の適正を確保するための体制に関する事項」(同規則118条2項)※該当すれば

上記表の通り、事業報告書の記載事項は大きく2つに分かれ、「すべての会社に共通する記載事項」(118条)と「個別に判断が必要な記載事項」(124条~126条)があります。
例外としては「公開会社の特則」(119条)があり、この特則を補足するように120条から123条があります。

以下では、基本的な記載事項である「すべての会社に共通する記載事項」(118条)と「個別の判断が必要な記載事項」(124条~126条)をそれぞれ説明していきます。

すべての会社に共通する記載事項

すべての会社に共通する記載事項は以下のとおりです。すべての株式会社が対象となっています。

【会社法施行規則118条】
1.株式会社の状況に関する重要な事項(同条1項)
2.業務の適正を確保するための体制に関する決定・決議、運用状況の概要(同条2項)
3.会社の支配に関する基本方針(同条3項)
4.特定完全子会社に関する事項(同条4項)
5.親会社等との取引(同条5項)

※会社法施行規則118条より一部加工・省略しています。

中小企業の場合(親・子会社がない、かつ公開会社でない場合)は基本的に上記(同規則118条)の1と2(※)を事業報告書に記載することになります。
3・4・5については該当する場合に記載が求められます。

※2については、体制がない、または決定等を行っていない場合、記載を省略することができます。なお、取締役会がある「大会社」は記載を省略することができません。

個別の判断が必要な記載事項

公開会社か公開会社でない会社に関係なく、以下のそれぞれに該当する場合は事業報告書の記載が求められます。

  • 社外役員がいる場合(会社法施行規則124条)
  • 会計参与を設置している場合(会社法施行規則125条)
  • 会計監査人を設置している場合(会社法施行規則126条)

まず、社外役員がいる場合は社外役員に関する事項を事業報告書に記載しなければいけません。補足として「社外役員」とは、社外取締役または社外監査役を指します。

次に、会計参与を設置し責任限定契約をしている場合は、その契約の内容を事業報告書に記載しなければいけません。「会計参与」とは、会計の専門家(税理士または公認会計士)として役員と共同して計算書類・帳簿などを作成する立場の人です。

最後に、会計監査人を設置している場合は、事業報告書に会計監査人に関する事項を記載しなければいけません。「会計監査人を設置している場合」とは、公認会計士または監査法人の監査を受けている場合のことです。

事業報告書の記入例

中小企業の場合を前提として、事業報告書の記入例を説明していきます。
ここでの「中小企業」とは以下をすべて満たす会社を前提とします(以下、中小企業)。

  • 公開会社でない会社
  • 親・子会社がない会社
  • 業務の適正を確保するための体制がない会社(取締役会がない会社)

ほとんどの記載事項に該当しない中小企業は、事業報告書に「株式会社の状況に関する重要な事項」(会社法施行規則118条1項)を記載することになります。
しかし、会社法及び同施行規則では具体的にどのような記載をするかまでは定められていません。そこで経団連のひな形を参考にします。

経団連のひな形を参考にすると、「株式会社の状況に関する重要な事項」は以下の各項目を記載することになります。

【経団連のひな形】
株式会社の現況に関する事項
1-1.事業の経過及びその成果
1-2.資金調達等についての状況(重要なものに限る)
1-3.直前三事業年度の財産及び損益の状況
1-4.対処すべき課題
1-5.主要な事業内容
1-6.主要な営業所及び工場並びに使用人の状況
1-7.重要な親会社及び子会社の状況
1-8.主要な借入先及び借入額
1-9.剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めがあるときの権限の行
使に関する方針
1-10.その他会社の現況に関する重要な事項

【参照】日本経済団体連合会 ひな形

上記のうち、中小企業で該当することが多い以下の項目について説明していきます。また、マネーフォワードの有価証券報告書(※)の記載も一部抜粋して紹介します。
※有価証券報告書は事業報告書の要求事項を充足している報告書です。

  • 1-1.事業の経過及びその成果
  • 1-3.直前三事業年度の財産及び損益の状況
  • 1-4.対処すべき課題
  • 1-5.主要な事業内容

1-1.事業の経過及びその成果

「事業の経過及びその成果」の具体的な記載内容は以下の通りです。
(経団連のひな形より一部抜粋・編集/以下同様)

  • 会社をめぐる経済環境
  • 業界の状況
  • 業界の中での会社の生産、仕入れ及び販売等の状況、売上高や当期純利益
  • その他重要であれば生産高・生産能力、重要な契約、重要な固定資産など

マネーフォワードの記載内容は以下の通りです。

当社グループを取り巻く事業環境としては、1世帯当たり平均所得金額が1994年をピークに緩やかに下降(厚生労働省発表の2017年版「国民生活基礎調査の概況」による)している一方、消費者物価指数は政策的な背景もあり近年緩やかに上昇(総務省統計局2019年1月18日公表「消費者物価指数(CPI)結果」による)しております。さらには、確定拠出年金制度、NISA導入、GPIF改革といった諸政策の後押しもあり、個人の金融資産に対する自己責任での管理・運用への意識は着実に高まりつつあると認識しております。
一方で、企業活動に目を向けると、国内の人口減少、特に生産年齢人口の減少という構造的なトレンドが避けられない中、今後ますます労働力確保が難しくなってくることが見込まれております。そういった状況の中で、特に日本の経済活動を支える中小企業の生産性向上、具体的にはバックオフィス業務の省力化は急務の課題と認識しております。

―――省略―――

これらの結果、主力事業である『マネーフォワード クラウド』をはじめとするBusinessドメインの各種サービス、及び『マネーフォワード ME』の利用者数は順調に増加しております。いずれの領域においても複数の競合企業が存在しておりますが、当社グループは両領域におけるリーディングプレイヤーとして、着実な成長を遂げております。

1-3.直前三事業年度の財産及び損益の状況

「直前三事業年度の財産及び損益の状況」の具体的な記載内容は以下の通りです。

「財産の状況」については、総資産又は純資産の状況を記載する。
「損益の状況」については、①売上高、②当期純利益、③一株当たり当期純利益等
の状況を表(記載例参照)又はグラフにより表示する。

マネーフォワードの記載内容は以下の通りです。

 第6期
第7期
第8期
売上高(千円)
2,899,472
4,285,748
6,221,375
当期純損失(△)(千円)
△784,437
△264,310
△2,523,264
純資産額(千円)
4,068,619
3,896,972
8,622,223
総資産額(千円)
7,407,884
8,383,671
14,183,431
1株あたり当期純損失(△)(円)
△46.20
△13.73
△115.66

1-4.対処すべき課題

「対処すべき課題」の具体的な記載内容は以下の通りです。

事業の推進のために克服すべき当面の主要課題を事業の経過及びその成果の記載
との関連において記載する。これは、当該事業年度の事業の経過及び成果を踏まえ
て、現時点における対処すべき課題を報告するものであるから、対処すべき課題と
しては事業報告作成時点のものを記載する。
なお、「対処すべき課題」には、社会的・経済的制度にかかわるもの及び長期的視
点にたっての課題は含めなくてもよい。

マネーフォワードの記載内容は以下の通りです。

当社グループが継続的に安定した成長を続けていくためには、『マネーフォワード クラウド』及び『マネーフォワード ME』を中心とした運営サービスの満足度を高め、当社グループが目指す「お金のプラットフォーム」としての地位を確固たるものとするとともに、顧客からの信頼性を向上させ、サービス間のクロスセル(注1)やアップセル(注2)の促進によるARPPU(注3)の向上、無料会員の有料会員への転換の促進、リピート顧客の増加を図ることにより収益基盤を高めていく必要があると認識しております。
『マネーフォワード クラウド』においては、従来人力で行われていた中小企業や個人事業主のバックオフィス業務をテクノロジーの力によって自動化し、より生産性の高い作業に集中することができる社会の構築を目指しております。

また、『マネーフォワード ME』を中心とするPFMサービスにおいては、個人の家計・資産の現状を把握し、さらに踏み込んだアドバイスを行うなど生活に根差したサービスを作ることで、個々人のお金に対する悩みや不安が軽減されることを目指しております。

さらに、既存事業におけるデータを活用した企業間後払い決済サービス『MF KESSAI』や、オンライン融資サービス『Money Forward BizAccel』など新サービスの開発や、SaaSマーケティングプラットフォーム『BOXIL』を運営するスマートキャンプ株式会社のグループジョインによる事業領域の拡大などに取り組むことによって、より高い成長を目指しております。

1-5.主要な事業内容

「主要な事業内容」の具体的な記載内容は以下の通りです。

事業部門を分けて把握できる場合で、その事業部門名から事業内容を推認できる場合は、主要な事業部門名を記載する。
事業部門を分けて把握できない場合は、主要な製品やサービスを記載する。ただし、「事業の経過及びその成果」の中で記載してもよい。
事業内容としては、事業報告の対象となる事業年度の末日現在の状況を記載する。

マネーフォワードの記載内容は以下の通りです。

当社グループは、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションの下、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」というビジョンを掲げ、プラットフォームサービス事業を展開しております。

当社グループのミッションの追求並びにビジョンを達成するために、法人向けサービスを提供するMoney Forward Businessドメイン(以下、「Businessドメイン」といいます。)、個人向けサービスを提供するMoney Forward Homeドメイン(以下、「Homeドメイン」といいます。)、金融機関のお客様向けにサービス開発を行うMoney Forward Xドメイン(以下、「Xドメイン」といいます。)、新たな金融ソリューションの開発を行うMoney Forward Financeドメイン(以下、「Financeドメイン」といいます。)の4つのドメインにおいて、事業を運営してまいりました。

事業報告書のテンプレート・ひな形

事業報告書のテンプレート・ひな形は以下のURLから入手することができます。

日本経済団体連合会

全国株懇連合会|2018/04/13 「事業報告モデル」の改訂について

※PDFのページ
上記の団体のひな形にも注意事項の記載がありますが、特に重要な注意事項である以下の3つを説明します。

【注意事項】

  • 最新のひな形かどうか確認する
  • 主要または重要の判断
  • 記載内容に関する適切な時期

まず、「最新のひな形かどうか確認する」は、会社法の改正と上記団体が独自に行う改訂があります。事業報告書を作成する都度、会社法の改正や、団体独自に行った改訂がないか確認しましょう。

次に、「主要または重要の判断」は、事業報告書の作成上よくある判断になります。しかしその具体的な基準等が定められていないため、判断が難しい場面があります。
保守的な観点では、主要または重要について判断が難しい場合は積極的に記載しましょう。理由は、記載しない場合に記載漏れの不備となってしまうためです。ただし事業上の機密までの記載は求められていません。

最後に「記載内容に関する適切な時期」は、事業報告書の記載内容ごとに判断しましょう。基本的に、事業報告書は対象事業年度の内容を記載することになります。しかし、例外として事業年度以外の時点で記載することがあります。

具体的な例として、事業年度内に重要な契約があり、解約されなかったものの、事業年度終了直後に重要な契約が解約された場合があります。この契約は対象の事業年度には影響していませんが、事業報告書の作成時点で解約されているため、事業報告書に記載することになります。

まとめ

事業報告書は、会社法ですべての会社に作成が義務付けられている事業報告及びその附属明細書を合わせた総称のことです。
会社法の会社区分の1つである公開会社と公開会社でない会社に分け、それぞれで記載事項が大幅に異なります。中小企業は、会社法施行規則118条の記載事項を基本として大幅に省略することが可能です。

最後に、この記事では事業報告書に関する条文や記載事項を説明しましたが、執筆時点(2020年12月現在)の情報によるものです。事業報告書の作成は、会社の状況によって専門的な判断が必要なケースもあります。作成が困難な場合は、近くの会計事務所などに相談しましょう。

【参考】
マネーフォワード|有価証券報告書 第8期

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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