• 作成日 : 2024年12月9日

出張旅費や出張手当は課税対象?精算書のテンプレートも紹介

旅費精算は、従業員が出張時に立て替えた交通費、宿泊費、日当などの経費を会社が精算するプロセスです。本記事では、出張旅費や出張手当の課税対象について解説します。非課税となる費用の種類や例外的な課税ケース、適切な旅費規程の作成ポイントの紹介やテンプレートなど、すぐに活用できる内容をまとめています。

旅費精算とは

旅費精算とは、出張に際して発生した交通費や宿泊費などの業務に関連する費用を会社が精算することです。精算の対象となる費用として、主に「出張旅費」と「出張手当」の2種類があります。以下で、それぞれの内容を解説します。

出張旅費

出張旅費には次のような費用が含まれます。

  • 交通費:出張先への移動にかかる費用(新幹線・飛行機・タクシー代など)
  • 宿泊費:宿泊施設の利用料金

これらは業務に必要な経費として認められるものです。出張旅費を申請する際、従業員は保管した各費用の領収書を提出します。経理部門は、これらの領収書を確認し、規定に従って精算を行います。

出張手当(旅費日当)

出張手当(旅費日当)は、出張中にかかる日常的な雑費や食事代を補助するという趣旨で定額を支給するもので、以下のような特徴があります。

  • 実際の支出に関係なく一定の額を支払う
  • 一般的には、日当として1日あたり数千円程度を支給されるが、企業によって支給額は異なる
  • 従業員も事前に金額を把握できるため、出張時の安心材料となる

出張手当は、簡便で公平な経費補助手段で、多くの企業が活用しています。さらに、出張手当では細かな領収書の管理が不要なため、経費管理の効率化も大きなメリットです。

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出張旅費は原則的に非課税

出張旅費は、企業が従業員の業務遂行に伴って支給する経費であり、原則として所得税は非課税扱いです。この非課税の取り扱いは、所得税と消費税の観点から異なる点があるため、両者を区別して理解する必要があります。

所得税の観点では、出張旅費は「個人の所得」には該当せず、非課税扱いです。国税庁の見解によれば、出張旅費や宿泊費、日当など「業務遂行に通常必要とされる金額」が支給される場合、これらは所得税の課税対象から除外されます。

この取り扱いは、所得税法第9条第1項第4号に基づいており、業務上必要な範囲で支給される出張旅費は非課税所得として認められています。

参考:国税庁  No.2508 給与所得となるもの

参考:e-Gov 法令検索 所得税法

一方、消費税の観点では、国内出張の場合に限り、通常必要と認められる部分が課税仕入として扱われます。これは、帳簿に正確に記録することで出張旅費旅費等特例の規定が適用され、仕入税額控除を適用できます。ただし、海外出張費用は原則として課税仕入には該当しないため、注意が必要です。

参考:国税庁 No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い

所得税の非課税対象となる経費には、以下のようなものがあります。

  • 交通費:電車・飛行機・タクシーなどの移動費
  • 宿泊費:出張先での宿泊施設利用料金
  • 食事代:業務上必要と認められる食事の費用
  • 日当:通常必要とされる範囲内での定額支給

出張旅費の処理では、以下の点に注意します。

  • 非課税となるための要件を満たし、帳簿で正確に管理すること
  • 所得税の観点では、業務上必要な出費であることを明確にすること
  • 通常必要とされる範囲内の金額に限定すること
  • 消費税の仕入税額控除を行う際には、出張目的や出張期間などを記録すること
  • 適切な出張旅費規程を作成し、社内で周知徹底すること

このような経費処理で、企業は税務リスクを回避できるとともに、従業員も安心して出張に集中できます。出張旅費の非課税処理は、企業の経費管理と従業員の福利厚生の両面で重要な役割を果たしています。

出張旅費が課税対象になるケース

出張旅費は原則として非課税ですが、特定の状況下では課税対象となる場合があります。主なケースは以下の通りです。

  1. 業務外目的での使用:出張の名目で私的な旅行をした場合
  2. 過度に高額な支給:業務遂行に必要な範囲を明らかに超える支給
  3. 社会通念を超える支給:同業他社と比較して著しく高額な旅費の支給

国税庁の見解によれば、「通常必要と認められる範囲」を超える出張旅費は所得税の課税対象となり得ます。この判断には、業務内容との整合性、業界基準との比較、役員と一般社員間の公平性などが考慮されます。

参考:国税庁 No.2508 給与所得となるもの

出張旅費を課税対象とするかの判断基準

出張旅費が課税対象となるかどうかの判断には、以下の基準が重要です。

  1. 金額の妥当性:支給額が業務の必要性に見合っているか
  2. 業界基準との比較:同業他社の支給基準と著しく乖離していないか
  3. 役職間の公平性:役員と一般社員の間で支給基準に極端な差がないか
  4. 業務との関連性:出張の目的と期間が適切か
  5. 社内規程の遵守:適切に策定された出張旅費規程に基づいて支給されているか

例えば、一般社員には9,000円の宿泊費上限が設定されている一方で、役員が10万円というような極端な差がある場合、役員への支給分が課税対象となるリスクが高まります。

これらの基準を総合的に考慮し、「通常必要と認められる範囲内」であるかどうかを判断することが重要です。適切な出張旅費規程を設け、それに基づいて公平かつ合理的な支給を行うことで、課税リスクを最小限に抑えられます。

参考:国税庁 〔傷病者の恩給等(第3号関係)〕

参考:国税庁 「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)新旧対照表

参考:e-Gov 法令検索 所得税法

出張手当を非課税にするには?

出張手当を非課税として取り扱うためには、出張旅費規程の整備が不可欠です。税法上、業務に必要な出張手当は非課税とされますが、その適用には出張旅費規程に合理性があることが条件です。

出張旅費規程を作成する際の注意点は次の通りです。

  • 支給対象や金額の上限を具体的に示し、曖昧さを避ける
  • 出張手当の支給に関する項目や内容を明確化し、合理的な範囲で定める
  • 業務の必要性に即した内容にする(税務上の非課税条件を満たしやすくなる)

このような点に留意し、出張旅費規程を整備することが、税務リスクを回避し、適正な非課税処理につながります。

出張旅費規程の作成方法

出張旅費規程を作成する際には、以下のような明確な項目と基準を盛り込むことが重要です。

  • 出張手当の支給対象と金額の上限を明記する:どのような出張や費用が対象となるのか、また金額の上限がいくらかを明記することで、非課税処理を行いやすくする
  • 業務の必要性に即した内容を設定する:支給基準が業務上の必要性と合致していることを示す内容にすることで、税務署からの指摘を避けられる

さらに、経営陣の承認を得たうえで、策定した規程を従業員にわかりやすく説明し、周知することが重要です。これらの手順を踏むことで、税務リスクを回避し、公平かつ透明性のある経費管理が実現できます。

出張手当の目安はいくらまで?

出張手当が非課税となるには、通常必要と認められる範囲内で支給されることが条件です。一般的な宿泊費の目安として1日あたり数千円程度が相場となっています。

参考:産労総合研究所 2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査結果

ただし、出張手当が過度に高額になると、課税対象となり、住民税や所得税がかかる場合があります。これを回避するためには、以下の点に注意が必要です。

  • 従業員に支給する金額が業務の必要性に見合った範囲内であるかを確認する
  • 社会通念上、妥当な範囲で設定する

税務署が非課税の範囲と見なさなかった場合、その部分には所得税・住民税が課税されます。この場合、従業員に追加の税負担が生じることになります。

金額の目安

出張手当は、役職や出張形態に応じた基準を設定します。さきほどの産労総合研究所の2023年度調査によると、宿泊費や交通手段の利用基準は以下の通りでした。

  1. 宿泊費の基準額:
    • 全地域一律の場合:8,606円
    • 実費上限の場合:9,117円
  2. 交通手段の利用基準:
    • 新幹線グリーン車
      • 役員:36.3%の企業が許可
      • 課長クラス:2.3%の企業が許可
      • 一般社員:1.2%の企業が許可
    • 航空機ビジネスクラス
      • 役員:22.2%の企業が許可
      • 課長クラス・一般社員:許可する企業は0%

これらの相場を参考にし、自社の規模や業態に応じた適切な金額を設定することで、税務署に非課税として認められる合理的な基準を整えられます。

参考:産労総合研究所 2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査結果

税務署が否認した場合の対応

万が一、税務署が出張手当の非課税処理を否認した場合、企業は追加で所得税や住民税を支払う必要があります。この場合の対応としては、以下の手順が必要です。

  1. 源泉徴収年末調整のやり直しを行い、不足額を速やかに納付する
  2. 再発防止のために、出張手当の支給基準を税務署の指導に従って適切な金額に調整する

これらの対応を迅速に行うことで、企業の信頼性は保たれ、将来的なリスクも軽減されます。

単身赴任者が帰省する場合の旅費は課税される?

単身赴任者の帰省旅費は、その目的によって課税・非課税の取り扱いが異なります。

  • 業務上の理由による場合

国税庁の質疑応答事例によれば、単身赴任者が業務上の出張に付随して帰宅する場合、この旅費は「職務遂行上必要な旅行」として所得税は非課税扱いされる可能性があります。ただし、非課税の適用を受けるためには、旅費の金額が「通常必要とされる範囲内」であることが条件です。

参考:国税庁 単身赴任者が会議等に併せて帰宅する場合に支給される旅費

  • 業務に関連しない場合

一方、業務に関連しない家族との面会や生活のために単身赴任先から自宅へ戻る旅費は、福利厚生費として企業が負担する場合でも、給与所得として課税対象となります。この場合、年に数回程度の帰省旅費が社会通念上妥当な範囲内で支給されることが多く、支給頻度や金額が過度にならないように設定することが重要です。

参考:国税庁 単身赴任者が職務上の旅行等を行った場合に支給される旅費の取扱いについて

出張旅費・手当の課税判断と実務のポイントを把握しておこう

出張旅費と手当に関する課税判断についての主要ポイントは次の通りです。

  1. 非課税の基本原則:出張旅費は業務遂行に必要な経費として原則、所得税は非課税だが、「通常必要な範囲内」の金額設定と明確な旅費規程の整備が条件となる
  2. 課税リスクへの注意:交通費や宿泊費の実費、および出張手当について、過度な支給は課税リスクを生む可能性があるため、適切に金額を設定する
  3. 単身赴任者の帰省旅費:業務上の出張に付随する場合のみが非課税で、それ以外は課税対象となることに注意する

さらに、実務で対策すべきステップが以下の通りです。

  1. 出張旅費規程の見直し:非課税となる範囲と支給額の基準を明確に設定し、定期的に見直す
  2. 社員への周知:非課税要件を踏まえた規程内容を社内で共有し、全従業員の理解を促進させる
  3. 正確な経費処理:領収書の保管や必要な記録の整備を徹底し、税務リスクの低減に努める

これらのポイントを実践することで、正確な経費管理と従業員への公平な手当支給が実現し、同時に、企業の透明性と信頼性を高めることにもつながります。


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