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  • 作成日 : 2020年11月2日

不良債権とは?回収方法や会計処理の手順を解説

一般的に「不良債権」とは、銀行などの金融機関が行った融資について、経営悪化などを理由に回収できなくなった、あるいは回収の可能性が困難になったものを表します。しかし、回収しなければならない債権をもつのは金融機関だけに限りません。金融機関以外の一般企業においても不良債権が発生することがあり、企業経営にとっては大きな問題です。この記事では、金融機関ではなく一般企業における不良債権を中心に、不良債権比率や回収方法、会計上の不良債権処理について解説します。

不良債権とは?なぜ問題なのか

不良債権とは、一般的には金融機関が回収困難に陥っている債権を表すものです。金融機関の不良債権には、破綻や遅延、貸出条件緩和債権などの銀行法に基づく「リスク管理債権」、破産更生債権や危険債権など金融再生法に基づく「金融再生法開示債権」があります。いずれも、元本や利息が予定どおり支払われなくなった債権、金融機関の場合は融資をいいます。

このような金融機関の不良債権に深くかかわってくるのが、企業の過剰債務です。過剰債務は企業の経営を圧迫することから、将来的に金融機関にとっては不良債権になる可能性があります。また、過剰債務を抱える企業が支払う義務を負っているのは、金融機関からの融資だけではないはずです。取引先に対しても、商品仕入れの対価など、何かしらの支払い義務を負っている可能性があります。

企業の債務は、取引先にとっては債権となり、過剰債務などで回収が困難になる場合は、取引先にとっては不良債権となるリスクがあります。企業の抱える不良債権は、金融機関のように銀行法や金融再生法が直接かかわってくるわけではありませんが、予定どおり回収が難しい点では同義です。企業においても、通常のように回収できなくなった、あるいは回収が困難と判断される債権を不良債権といいます。

不良債権の問題は、当初予定していた代金の回収が困難になることで、キャッシュフローが悪化する可能性のあること、さらには、回収が不能になり、収益が減少することです。

不良債権の例

未回収リスクのあるもののうち、不良債権になるのは、以下の勘定科目や取引に該当する場合です。

受取手形や売掛金

受取手形売掛金は、取引先などとの信用取引によって生じるものです。商品やサービスは引き渡したものの代金の回収ができていない売上債権で、未回収リスクのあるものは不良債権として扱われます。

貸付金

取引先や関連会社、個人などに貸付を行った額のうち未回収リスクのあるものが不良債権になります。貸借対照表上は「短期貸付金」「長期貸付金」に分類される科目です。

立替金

立替金は、会社が取引先や従業員などに代わって立て替えた場合に使います。不良債権となり得るのは、取引先に代わって負担した発送費などの立替金です。従業員の旅費交通費の立て替えなど、将来経費になる性質のものは不良債権として扱いません。

未収入金

未収入金のうち未回収リスクのある未収請負金、未収加工料、未収地代家賃などは不良債権に含まれます。

その他

ほかにも、以下のような勘定科目と取引で未回収リスクがあると認められた場合は、不良債権に該当します。

  • 「雑収入」のうち支払いが確定した損害賠償金で未収のもの
  • ファイナンス・リース取引の「リース債権」で支払期限未到来のもの含め未回収リスクのあるもの
  • 手形と同じ扱いをする先日付小切手(決算日をまたぐ場合は「受取手形」として処理)のうち未回収リスクのあるもの
  • 建設業会計において未回収リスクのある「工事未収金」

※ファイナンス・リース取引とは、中途解約が不可あるいは解約によってリース料総額の90%以上を支払わなければならない、かつ実質的に資産を得たときと同じ効果があると認められるリース取引をいいます。

不良債権比率とは

一般企業における不良債権比率とは、債権のうち不良債権の占める割合のことで、以下の計算式で算出します。

不良債権の合計額 ÷ 売掛金など債権の合計額 × 100 = 不良債権比率(%)

例えば、不良債権の合計額が100万円、売掛金など債権の合計額が1億円の場合の計算は、以下のとおりです。

100万円÷1億円×100=1%(不良債権比率)

不良債権比率は、債権のうちどれだけ未回収リスクの高いものがあるか測る指標になりますので、企業のリスク管理、資金調達において重要なものとなるでしょう。

不良債権比率が低いに越したことはないといえますが、どのくらいの割合が健全といえるかは状況や業種により異なります。資金繰りが順調でない企業は、不良債権比率が低くても正常に回収できない可能性がある債権があること自体が痛手になるためです。そのため、どのくらいの比率が健全かは難しい部分があります。

何か目安にできるとすれば、一括評価金銭債権の貸倒引当金の法定繰入率などになるでしょう。一括評価金銭債権の貸倒引当金とは、経営破綻など特別なリスクのない債権について、将来の未回収リスクに備えて負債として計上するものです。税法上は、業種別に以下のように繰入限度額が定められています。

割賦販売小売業等1.3%
卸売り及び小売業、飲食店業1.0%
製造業、電気業等0.8%
金融及び保険業0.3%
そのほかの事業0.6%

【出典】国税庁「貸倒引当金の繰入限度額を計算する場合における法定繰入率の取扱い」

不良債権の回収方法・手順

未回収リスクのある不良債権のうち、回収が正常に行われていないものについては、以下のような方法や手順を踏んで回収を進めていきます。債権回収には時効があるので、早め早めに実行していきましょう。

当事者に連絡をとる

期限を越えて債権の回収ができていない、相手方から支払いが行われない場合、速やかに相手に連絡を取って支払いを実行するようお願いします。相手が支払えない事情がある場合は、電話や書面ではなく、直接話し合いの場を設けるのが良いでしょう。

支払う意思があってもすぐに全額を用意できないなどの事情があれば、一部だけでも支払ってもらう、分割で支払ってもらうなど、両者にとって可能な妥協案を探るのがベストです。支払いがほとんど難しい状況に陥っている場合は別として、この段階で譲歩できれば、今後の付き合いを継続することも可能です。

相手に支払いの意思があれば、再度債務不履行になってもほかの財産の現金化で回収できるようにするため、不動産や株式などの担保を提供してもらうのも方法としてあります。

督促状を送る

支払遅延後のコンタクトのあとも相手が支払いを実行しない場合、支払い方法など譲歩した場合は譲歩した内容でも支払いが実行されない場合は、督促状を送ります。

内容証明郵便

督促状を送っても支払いが実行されない場合は、法的手段の前段階として、内容証明郵便で催告書を送ります。内容証明郵便は、内容まで証明してくれる特殊な郵便で、不良債権の時効の中断にも役立ちます。弁護士を通して、内容証明郵便を送付することが多いです。

以上、支払期日到来後の連絡、督促状、内容証明郵便の時点で、相手の支払い意思が確認でき、話し合いがまとまれば、契約の内容に法的効力をもたせるため、債務弁済契約公正証書を作成します。公正証書は、約束が守られなかったとき、訴訟を経なくても強制執行が可能となる強い効力をもつものです。

民事調停

民事調停は法的手段のひとつで、当事者の間に第三者の調停委員が入って行われる話し合いです。民事調停で双方の意見がまとまれば、調停調書が作成され、裁判での和解と同じ効力が発動します。法的手段の中では、円満な解決方法で、費用もあまりかかりません。しかし、民事調停で話し合いが決裂した場合は、次の法的手段に出る必要があります。

支払督促

裁判になった場合、解決まで長期戦になることから、裁判所を通した支払督促をすることがあります。支払督促で必要なのは書類審査のみで、裁判よりもすぐに実行できるのがポイントです。相手が支払督促に対して異議を申し立てなければ、裁判の判決と同じ法的効力が生じます。

裁判

民事調停や支払督促などで解決しない場合は、裁判による解決があります。通常訴訟のほか、債権が60万円以下の場合は少額訴訟を選択することが可能です。裁判のメリットは、債権者の主張が正しいと裁判で認められた場合、裁判所が法的効力のある支払い命令を出すことで、債権回収が進むことです。一方、費用がかかる、裁判が長期になることがあるといったデメリットがあります。

強制執行

判決確定後など、なお債務履行がないときは、裁判所に強制執行の申し立てを行うことで、相手方の財産差し押さえが可能になります。銀行預金や売掛金、商品など、差し押さえられる財産はさまざまです。通常は裁判を含め、専門家である弁護士に依頼します。

不良債権を回収できないケース

不良債権の回収方法について前項で説明しましたが、不良債権の回収が有効なのは、あくまで相手に支払い能力や支払い意思がある場合です。不良債権を回収したくても、さまざまな事情で回収できないことがあります。不良債権が回収不能なものについては、貸倒れとして処理することになります。貸倒れになるケースとリンクさせて、この項では不良債権を回収できないケースを解説します。

法律上回収できないケース

法律上回収できない代表的なケースとしてあげられるのが、会社更生法の更生計画、民事再生法の再生計画、会社法の特別清算によって切り捨てられた債権です。法律上債権が消滅したことになるため、カットされた部分は回収できないと考えられます。

このほか、合理的な基準(すべての債権者が同一条件など)による特定調停などでカットされた債権、債権放棄による債権の消滅があったものも、回収不能です。債権放棄による債権消滅とは、相手方の債務超過が相当期間継続して弁済が不能と認められるとき、債権者が相手に対して債務免除額を書面により明示することを指します。

このように、法的な根拠で債権カットや債権放棄を行った場合は、対応する不良債権は回収できないものと考えられます。

事実上回収ができないケース

法的な縛りがなくても、債務者の資産状況などで、事実上、不良債権を回収できないケースがあります。例えば以下に該当するようなケースです。

  • 債務者が経営破綻した場合
  • 債務者に強制和議や強制執行があった場合
  • 債務者の死亡や行方不明により実質的に回収できなくなった場合
  • 天災や事故などを原因に債務者に支払い能力がなくなった場合
  • 債務者の債務超過が続き返済不能と思われる場合

事実上回収できないケースでは、債務者の支払い能力だけでなく、担保物はどうか、保証人から回収できないかも総合的に判断する必要があります。担保物や保証人による回収で、不良債権の一部または全額を回収できるケースもあるためです。

取引停止後も一定期間弁済されないケース

会計上の貸倒れでは、形式上の貸倒れに該当するケースです。法人税基本通達「9-6-3」において、取引停止以後1年以上経過した不良債権は、税法上損金として認められます。現実に考えると、取引停止から1年以上経過しても支払いが実行されない場合は、ほとんど債権回収の望みがないものとして考えられるでしょう。

以上のように、不良債権を回収できないと認められる場合は、会計上の貸倒れになるだけでなく、税法上も貸倒れとして損金算入が認められます。ただし、税法上の貸倒れと会計上の貸倒れは同一ではなく、税法上は貸倒れとして認められる範囲が狭くなる点に注意が必要です。なお、ここで取り上げた回収不能なケースは税法上の貸倒れに認められるケースです。

不良債権処理

不良債権は、会計上、貸倒れとして処理します。

不良債権が回収不能になった場合

(例1)500万円の売掛金があるA社が経営破綻に陥り、売掛金全額について回収が不能であることが見込まれる。

経営破綻で不良債権の全額が回収が不能になった場合、以下のような処理を行います。

借方
貸方
貸倒損失5,000,000売掛金5,000,000

(例2)500万円の売掛金があるA社が経営破綻に陥った。A社については300万円の保証を受け入れている。

このケースでは、経営破綻に陥った段階では、その後の債務整理などでいくらか不良債権が回収できる可能性もありますので、保証でカバーされない200万円部分につき「貸倒損失」ではなく「貸倒引当金繰入」及び「貸倒引当金」勘定を用いて会計処理を行います。売掛金から破産更生債権等への振替は、売掛金のうち回収不能と思われる額を区別するためです。

借方

貸方

破産更生債権等5,000,000売掛金5,000,000
貸倒引当金繰入2,000,000貸倒引当金2,000,000

貸倒の懸念がある不良債権の場合

(例)300万円の売掛金があるB社について、うち200万円が3カ月支払期限を過ぎている。よって、B社の売掛金のうち支払期限を超過しているものを貸倒懸念債権として計上することにした。B社からの保証の受け入れはなく、50%を貸倒れ処理する。

借方
貸方
貸倒引当金繰入1,000,000貸倒引当金1,000,000

不良債権までには至っていない貸倒懸念債権に対する貸倒引当金については、税務上、法定繰入率に相当する分までしか損金に算入できません。全額費用処理できないため、会計上費用に算入した額のうち、法定繰入率に相当する分までを損金に算入します

不良債権は早めに対応を

不良債権の増加は、キャッシュフローの悪化につながる可能性があります。さらに、会計上と税法上の貸倒れの範囲が異なるため、税法上いつまでも損金にできず課税額を調整できないデメリットも考えられます。

不良債権が増えることは、企業の経営にとって問題ですので、不良債権となった段階で話し合いをする、督促状を送る、法的措置を取る、などの早め早めの対応を取ることが重要です。

また、不良債権になる以前の段階で、手を打っておくこともできます。取引先に業績不振など経営にかげりが見えはじめたら、一部だけでも回収できるよう担保を提供してもらう、ファクタリング(売掛金の売却)で早期回収をする、取引先に信用状況を確認するなど、貸倒を防げるような予防策を行っておきましょう。

【参考】
内閣府 第1節 増え続ける不良債権
内閣府 第2節 不良債権・過剰債務は日本経済の重し
国税庁 No.5500 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岩波 竜太郎 (公認会計士 / 税理士 / 経営学修士)

公認会計士・税理士・経営学修士。大手監査法人、ベンチャー企業を経て、2015年に独立開業。大手監査法人での海外経験や管理本部長としての幅広い経験を武器に会計アドバイザリー業務を主たる業務として行うとともに、東証1部上場企業である株式会社OrchestraHoldingsの社外役員をはじめ、経営アドバイザーとして複数の企業に関与。Webメディア等の記事執筆・監修業務も積極的に行っている。

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