- 作成日 : 2024年11月19日
売掛金が未入金の場合の回収方法は?回収できない場合の法的措置も解説
未入金とは、買い手からまだ支払われていない売掛金のことです。未入金の回収方法として、取引先への連絡や買掛金との相殺などが挙げられます。
また、相手の対応次第で法的措置も検討しなければなりません。本記事では、未入金の概要や具体的な回収方法、法的措置を講じる場合のやり方などをわかりやすく解説します。
目次
そもそも未入金とは?
未入金の概要や未収入金との違いについて、ここから詳しく解説します。
未入金とはまだ支払われていない売掛金のこと
未入金とは、商品売買やサービス提供などの取引をしたにもかかわらず、買い手から売り手にまだ支払われていない代金(売掛金)のことです。未入金が発生する主な理由として、以下の点が挙げられます。
- 買い手が支払いを失念している
- 資金繰りが悪化していて、買い手が代金を支払えない状況にある
- 買い手が踏み倒して手元資金の減少を防ぐことを目論み、あえて支払おうとしない
未入金が発生すると、自社の資金繰りに悪影響を及ぼします。なぜなら、本来手元にあるはずの現金を回収できていないためです。
未入金の状態が続いて自社の資金繰りが悪化すると、最悪のケースでは倒産に至る可能性もあります。そのため、未入金の状況にはくれぐれも注意しなければなりません。
未入金と未収入金の違い
未入金と未収入金の主な違いとして、「本業収入によるものか」という点が挙げられます。未入金は主に商品やサービスを販売した際の売掛債権が対象であるのに対し、未収入金は不動産売却や有価証券売却などによる債権を対象にしたものを指すことが一般的です。
なお未収入金は、営業活動以外の取引で発生した金額を計上するための勘定科目としても用いられます。
売掛金が未入金の場合の回収方法は?
売掛金が未入金の場合にすべきことや具体的な回収方法は、主に以下のとおりです。
- 請求書の内容を確認する
- 未入金について取引先に連絡する
- 商品・サービスの提供を停止する
- 未入金と買掛金を相殺する
それぞれ解説します。
請求書の内容を確認する
売掛金が未入金であることに気づいたら、まず対象取引に関する請求書を確認しましょう。
自分や担当者の勘違いで、そもそもまだ支払期限が到来していない可能性があります。あわせて、請求書の送付漏れがないか、電子メールの送信履歴などを確認しておくことも大切です。
また、契約書に記載されている「期限の利益喪失条項」も確認しておきます。期限の利益喪失条項とは、契約書に記載されている事由が発生した場合に、債務者が「定められた期限までは債務を支払わなくてよい」という権利(期限の利益)を主張できなくなることです。
期限の利益喪失条項が設けられていれば、対象事由が発生した際に、支払いが遅れた売掛金以外の売掛金もあわせて支払うよう債務者に請求できます。
未入金について取引先に連絡する
具体的な行動や法的措置などをとる前に、未入金について電話やメールで取引先に連絡します。なぜなら、単に取引先が支払期限などを勘違いしたことで未入金になっている可能性があるためです。
なお、連絡する際に高圧的な態度で伝えると、未入金解消後の取引に支障をきたします。単に失念していたなど取引先に悪意がない場合や、トラブルでどうしても入金できなかった場合を想定し、連絡時は丁寧に伝えることを心がけましょう。
商品・サービスの提供を停止する
取引先に入金の意思がないことがはっきりとした場合は、未入金が発生している取引以外の取引に関する商品の発送やサービスの提供を停止します。未入金が発生している取引先と取引を続けていると、さらなる未入金が発生しかねません。
未入金の解消を促すためにも、取引先には商品の発送やサービスの提供を停止する理由をはっきりと伝えることが大切です。
未入金と買掛金を相殺する
未入金が発生している取引先に買掛金があれば、相殺を検討することも大切です。相殺とは、売掛金と買掛金を同額分減額させることを指します。
相殺するためには、原則として双方の合意が必要です。ただし、支払期日が到来しているなど、一定の要件を満たすことで一方的に相殺できる場合があります。
相手に相殺の意思表示を伝えるため、一方的に相殺するには内容証明郵便で相殺通知書を発送しなければなりません。相殺通知書に盛り込む内容は、対象の債権・債務や該当の金額、相殺することの意思表示などです。
内容証明郵便の概要については、後ほど詳しく解説します。
未入金を回収できない場合の法的措置は?
未入金を回収できない場合は、法的措置も検討しなければなりません。法的措置に関する行動として、主に以下が挙げられます。
- 催促状や督促状を送付する
- 内容証明郵便を送付する
- 公正証書を作成する
- 支払督促を行う
それぞれ確認していきましょう。
催促状や督促状を送付する
電話やメールで取引先に連絡しても反応がない場合は、催促状や督促状を送付しましょう。
催促状とは、支払いを促すために送る書面を指します。それに対して、督促状はより支払いを強く求める書面を指すことが一般的です。そのため、督促状には今後も支払いがない場合に、法的措置を講じる可能性があることを盛り込む場合もあります。
内容証明郵便を送付する
催促状や督促状を送付しても反応がない場合は、内容証明郵便で催告書を発送します。内容証明郵便とは、所定の料金を支払うことにより、「いつ」「どのような内容の文書を」「誰が」「誰に」差し出したかを証明できる郵便局のサービスです。
催告書を発送することにより、時効を延長できます。また、最終勧告である旨などを盛り込むため、深刻な状況であることを相手に伝えられるでしょう。
なお催促状や督促状の場合は、普通郵便で発送することが一般的です。
公正証書を作成する
連絡はとれても取引先がすぐに支払うことが困難な場合は、公正証書を作成することも検討しましょう。公正証書は公務員である公証人が作成する公文書のため、強力な証拠能力が認められます。
「今後も支払いに応じない場合は強制執行することを認める」という趣旨の文言を公正証書に入れておけば、裁判をせずに相手の財産の差し押さえが可能です。取引先は、差し押さえされないよう何とかして代金を払おうとするでしょう。
しかし、公正証書を作成するには、相手の合意が必要です。事態が深刻になって相手と連絡・交渉できなくなる前に、公正証書の作成を提案しましょう。
交渉時に保証人や担保の提供にも同意してもらえば、未入金のリスクをさらに軽減できます。
支払督促を行う
支払督促を検討することも、未入金を回収できない場合の法的措置として挙げられます。
支払督促とは、貸したお金を返してもらえない場合や、代金を支払ってもらえない場合などの状況にある申立人の申立てに基づき、簡易裁判所が債務者に金銭の支払いを命じる制度のことです。法的措置のため、命令を受けた取引先が急いで支払いに応じる可能性もあります。
支払督促には、申立書の提出などの手続きをしなければなりません。ただし、裁判所に出向く必要はなく、比較的短期間で手続きできます。
参考:裁判所 支払督促
未入金の回収不能リスクを減らす方法は?
そもそも、未入金の回収不能リスクを軽減しておけば、法的措置なども検討せずに済みます。リスク軽減方法は、主に以下のとおりです。
- 売掛金を正しく管理する
- 取引先の与信管理を徹底する
それぞれ解説します。
売掛金を正しく管理する
未入金の回収不能リスクを軽減するためには、売掛金を正しく管理することが大切です。取引後に売掛金の状況を細かく把握し、債権回収を怠らないようにすることで、より確実に代金を回収できます。
そのためには、営業部門の担当者と管理部門の担当者がコミュニケーションをとることがポイントです。営業担当者が取引先を訪問する際に覚えた違和感を管理部門にこまめに報告することで、回収不能になる前に迅速に未入金を解消する対策を立てられる場合があります。
取引先の与信管理を徹底する
取引先の与信管理を徹底することも、未入金の回収不能リスクを軽減する方法です。与信管理とは、取引先に関する情報収集や信用力の評価のように、回収リスクをできるだけ抑えることを目的とした活動を指します。
外部機関による調査結果や自社の分析に基づき、取引の是非や取引量を判断することにより、回収不能に陥りやすい事業者と取引するリスクを極力抑えられるでしょう。
売掛金が未入金の場合は状況次第で法的措置も検討する
未入金とは、商品売買やサービス提供後、買い手から売り手に代金が支払われていない状態のことです。
支払期限が到来したにもかかわらず、売掛金が未入金の場合は、取引先へ連絡したり、商品・サービスの提供を停止したりするなどの方法があります。それでも、未入金の状態が解消されない場合は、法的措置も検討しましょう。
また、そもそも回収不能に陥ることがないように、与信管理を徹底するなどの心がけも必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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