- 更新日 : 2026年5月29日
一括償却資産と少額減価償却資産の違いは?判定基準や節税効果などを解説
どちらも通常より早く費用へ振り替え、当期の税負担を軽くする方法です。
- 一括償却は20万円未満を3年で均等に分ける
- 少額特例は取得年度に全額を経費に回す
- 中小企業はより有利な方を選べる
後者は償却資産税の対象になり、年間300万円の枠もあるため、利益や資金繰りを見て選びましょう。
一括償却資産と少額減価償却資産は、減価償却方法の1つです。一定金額以下の固定資産について、通常の減価償却よりも早期に固定資産を償却できるため、当期の税負担を抑える効果が期待できます(最終的な損金算入総額が増える制度ではありません )。
本記事では、一括償却資産と少額減価償却資産の違いを解説します。一括償却資産と少額減価償却資産のメリットとデメリット、仕訳方法、利用するときの注意点も紹介しますので、経理担当者の方は参考にしてください。
目次
一括償却資産と少額減価償却資産の違い
最初に、一括償却資産と少額減価償却資産の制度内容と両制度の違いについて解説します。
「一括償却資産」とは、取得価額20万円未満の資産を3年間で均等償却する制度です。
一方、「少額減価償却資産」とは一定の中小企業者等が一定額未満の資産を取得年度に全額損金算入できる「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」を意味します。
両制度を活用すれば償却資産を3年または1年の短期で償却できるため、特徴を理解して有効活用しましょう。
一括償却資産とは
一括償却資産とは、取得価額を3年にわたって均等償却できる固定資産のことです。規模の大小を問わずすべての企業が利用できます。対象となる資産は、取得価額が20万円未満の固定資産です。
取得価額が10万円未満の固定資産は取得年度に全額を損金計上できるため、実際にこの償却方法を利用するのは、10万円以上20万円未満の固定資産となります。
一括償却資産の詳細については、以下の記事をご参照ください。
少額減価償却資産とは
少額減価償却資産は、正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の対象となる資産を指します 。制度を利用できるのは所定の要件を満たす中小企業だけです。また、対象は、平成18年4月1日から令和8年3月31日までに取得した取得価額30万円未満の固定資産です。
令和8年度税制改正では、取得価額の上限を40万円未満に引き上げたうえで、適用期限を令和11年3月31日まで3年延長することが示されています(令和8年4月1日以後に取得する減価償却資産が対象)。
複数の固定資産に対して損金計上は可能ですが、利用できるのは1年間の合計取得価額が300万円までです。
正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(以下、少額減価償却資産の特例)」と呼びます。一括償却資産と比較すると、対象となる固定資産の範囲が広く早く償却できるのがメリットです。ただし、一括償却資産と異なり中小企業しか利用できません。
少額減価償却資産の詳細については、以下の記事をご参照ください。
特例を利用できる中小企業者等
少額減価償却資産の特例を利用できる中小企業は、次のすべてを満たす中小企業者等です。法人だけでなく、要件を満たす個人事業主も対象になります。
なお、令和8年度税制改正により 、令和8年4月1日以後に取得する減価償却資産について、常時使用する従業員数が400人を超える法人は本特例の対象から除外されています。実質的に、新制度では従業員400人以下が上限となります。
参考:国税庁 少額の減価償却資産及び一括償却資産(令第138条及び第139条関係)
参考:国税庁 No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
参考:令和8年度税制改正の大綱|財務省
一括償却資産と少額減価償却資産の判定基準
一括償却資産と少額減価償却資産に該当するかどうかの判定基準は、固定資産の取得価額や企業規模などによって異なります。それぞれの判断基準は下表の通りです。
(判定基準)
| 全企業 | 一定の中小企業等 | |
|---|---|---|
| 取得価額が10万円未満
または使用可能期間1年未満 |
原則として全額損金計上 | 原則として全額損金計上 |
| 取得価額が10万円以上 20万円未満 |
一括償却資産として3年均等償却を選択できる | 一括償却資産、通常の減価償却、または少額減価償却資産の特例を選択可能 |
| 取得価額が20万円以上 30万円未満 (令和8年3月31日までに取得) |
通常の減価償却 | 令和8年3月31日以前取得分は、少額減価償却資産の特例を適用可能 |
| 取得価額が30万円以上 40万円未満 (令和8年4月1日以後に取得 |
通常の減価償却 | 令和8年4月1日以後取得分は、少額減価償却資産の特例を適用可能 |
| 取得価額が40万円以上 | 通常の減価償却 | 通常の減価償却 |
取得価額が10万円未満または使用可能期間1年未満の資産については、企業規模にかかわらず全額損金計上できます。中小企業が取得価額20万円未満の固定資産を購入した場合、どちらを選択したらよいか迷うかもしれません。次章で迷ったときの判断材料を紹介します。
一括償却資産と少額減価償却資産はどちらがおすすめ?
一括償却資産と少額減価償却資産の両方を選択できる場合、どちらの方法で減価償却すればいいでしょうか。それぞれのメリットとデメリットを解説しますので、選択時の判断材料にしてください。
ただし、実際にどちらを選ぶべきかは、当期の利益水準、資金繰り、償却資産税の影響、年間300万円の上限枠、将来の損益見通しを踏まえて判断します。
少額減価償却資産の特例は早期に全額損金算入できる一方、償却資産税の対象になる点や年間300万円の上限がある点に注意が必要です。
一括償却資産のメリット・デメリット
一括償却資産の主なメリットは、以下の通りです。
- 3年間で取得価額をすべて償却でき、法人税等を抑えられる
- 企業規模に関係なく利用できる
- 償却資産税が課税されない
- 取得価額を3等分するだけなので、償却費の計算が簡単である(また、事務用の机と椅子など複数の固定資産をまとめて償却できる)
一方、一括償却資産の主なデメリットは、以下の通りです。
- 損金計上額が増えて利益が下がる
- 利益の低下により企業の信用力が低下し銀行融資が難しくなる、取引に悪影響を及ぼす、株価が低迷する可能性がある
- 少額減価償却資産と比較すると償却に時間がかかる
- 複数の固定資産をまとめて一括償却するため個別に除却できない
少額減価償却資産のメリット・デメリット
少額減価償却資産の主なメリットは、以下の通りです。
- 全額一度に償却でき、法人税等を抑えられる(一括償却資産より効果大)
- 取得価額30万円未満まで利用できる(一括償却資産は20万円未満)。なお、令和8年4月1日以後取得分については取得価額の上限が40万円未満に引き上げられている(令和8年度税制改正による)。
- 取得年度に償却できるため、償却費の計算が簡単
少額減価償却資産の主なデメリットは、以下の通りです。
- 中小企業等に該当しなければ利用できない
- 経費計上額が増え利益が下がる(一括償却資産より悪影響大)
- 償却資産税の対象となる
早期の減価償却によるメリットと償却資産税がかかるというデメリットをよく検討して、一括償却資産とどちらがよいかを判断しましょう。
一括償却資産と少額減価償却資産の仕訳方法
一括償却資産と少額減価償却資産の仕訳方法について、モデルケースを使って具体的に解説します。
一括償却資産の仕訳方法
次のモデルケースを使って、購入時や決済時の仕訳例を紹介します。一括償却資産では、取得価額を3年で均等に減価償却します。
【モデルケース:事務机と椅子を15万円で購入】
(購入時)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 150,000円 | 現金 | 150,000円 | 事務机と椅子の購入 | |
(1年目の決算時)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 50,000円 | 工具器具備品 | 50,000円 | 事務机と椅子の減価償却 | |
2年目、3年目の決算時も、1年目と同様に5万円の減価償却費を計上します。
少額減価償却資産の仕訳方法
次のモデルケースで、少額減価償却資産の仕訳を紹介します。少額減価償却資産は、単年度で全額損金計上します。
※税務上の特例を適用する場合は、損金経理に加え、確定申告書への明細書添付などの手続きが必要です。法人の場合、通常は別表16(7)で取得価額等を明らかにする必要があります。
【モデルケース:パソコンを25万円で購入】
(購入時)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 工具器具備品 | 250,000円 | 現金 | 250,000円 | パソコンの購入 | |
(決算時)
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 250,000円 | 工具器具備品 | 250,000円 | パソコンの減価償却 | |
一括償却資産と少額減価償却資産で注意すべきポイント
一括償却資産と少額減価償却資産で注意すべき主なポイントは、次の通りです。
- 通常の減価償却よりも利益が下がる
- 一括償却資産は除却できない
- 少額減価償却資産の特例は限度額が年間300万円
各ポイントについて解説します。
通常の減価償却よりも利益が下がる
一括償却資産または少額減価償却資産で償却した場合、通常の減価償却よりも利益が下がります。最初に損金計上する金額が、通常の減価償却より大きくなるためです。取得価額15万円の備品(耐用年数10年)を購入したときの、初年度の損金計上額は次の通りです。
- 一括償却資産:5万円(3年で均等償却)
- 少額減価償却資産:15万円
- 通常の減価償却(定額法):1万5,000円(10年で均等償却)
損金が大きいほど利益が下がり、当期の税負担の軽減、税負担の将来への繰延になりますが、デメリットもあります。企業の信用力が低下し、銀行融資が難しくなったり取引に悪影響を及ぼしたりする可能性があるので注意しましょう。
一括償却資産は除却できない
一括償却資産の一部を売却したり譲渡した場合でも、除却処理(帳簿からの抹消)はできません。一括償却資産は年度ごとに償却資産をひとつにまとめて3年間で均等償却しなければならないためです。売却や譲渡しても、償却を打ち切れません。
少額減価償却資産の特例は限度額が300万円
少額減価償却資産の特例には、1年の取得価額が年間300万円に達するまでの取得価額について特例適用が可能という限度が設けられています。300万円を超える場合には、通常の減価償却が必要です。
また、税込経理方式と税抜経理方式では取得価額が異なることに注意しましょう。たとえば現行制度(取得価額30万円未満)では、税抜28万円(税込30万8,000円)の固定資産は、税抜経理方式なら28万円で特例が適用されますが、税込経理方式では30万円を超えるため特例は使えません。
令和8年度税制改正大綱で示された新制度(令和8年4月1日以後取得分・取得価額40万円未満)に当てはめると、たとえば税抜38万円(税込41万8,000円)の固定資産は、税抜経理方式では38万円で特例が適用されますが、税込経理方式では40万円を超えるため特例が使えない、という関係になります。
メリットとデメリットを理解して自社に合った償却方法を選択しよう
一括償却資産と少額減価償却資産の主な違いは、対象となる企業と取得価額の限度、償却の年数などです。どちらも通常の減価償却よりも償却期間が短いため、節税効果が期待できます。
ただし、利益が下がって企業活動に悪影響を及ぼす可能性もあります。メリットとデメリットをきちんと理解したうえで、自社に合った償却方法を選択し節税対策に活かしましょう。
※本記事の内容は2025年12月公表の税制改正をもとにしています。実際の適用にあたっては、取得日、事業供用日、取得価額、採用している消費税の経理方式、青色申告の有無、従業員数、年間300万円の限度額、貸付用途の有無などを確認し、国税庁・中小企業庁等の最新情報を参照してください。
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