- 更新日 : 2024年8月8日
税金を滞納するとどうなる?
日本に住んでいるかぎり、法律の定めるところにより私たちには納税をしなければならないという義務があります。税金を納付期限までに支払わなかった場合、どのようなことが起きるのでしょうか。今回は、国税(所得税や相続税など)を中心に、税金を滞納したときに課せられる延滞税や滞納者に対する行政処分についてご紹介します。
目次
税金を滞納すると延滞税がかかる
税金には、法律によって定められた国税を納付すべき期限(法定納期限)があります。期限を過ぎても支払われない場合、原則として、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて利息に相当する延滞税が自動的に課されます。
延滞税が課せられる3つの場合
延滞税がかかるのは、以下のようなケースです。
1.法定納期限までに、申告などで確定した税額を完納しない場合
2.期限後申告書もしくは修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額がある場合
3.更正もしくは決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額がある場合
いずれのケースでも、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて延滞税が発生します。ただし、2の場合の納付期限は申告書を提出した日、3の場合の法定納期限は更正通知書を発行した日から1カ月後です。なお、延滞税が課されるのは本税のみで、加算税に対しては課されません。
延滞税の割合は延滞期間によって異なる
延滞税は、納付すべき期限の翌日から完納する日までの期間に応じて、以下のように課せられます。
・納期限の翌日から2カ月を経過する日まで……原則として年7.3%
・納期限の翌日から2カ月を経過した日以後……原則として年14.6%
ただし、日本銀行が定める基準割引率や特例基準割合の適用により軽減される期間があります。詳細は、国税庁の資料やホームページなどで確認できます。
延滞税の計算期間に含めない特例
期限内に申告書を提出している場合で、法定申告期限後1年を経過してから修正申告や更正があったとき等、一定の期間を期間は延滞税の計算期間に含めないという特例があります。自分で判断できない場合は、税務署に相談しましょう。
税金を滞納すると行政処分を受ける
納付期限までに国税を支払わないと、滞納者に対して行政処分が行われます。具体的には、督促、財産の差し押さえ、差押財産の換価、差押財産の換価代金からの配当という流れになります。
督促状による督促
国税の納付期限を過ぎると、納税を催告する督促状が送られてきます。督促の対象には、本税、延滞税や利子税が含まれます。督促があっても完納されない場合、財産の差し押さえが行われます。
財産の差し押さえ
納税者の所轄税務署の徴収職員は、滞納処分のために財産の調査を行うことができます。そこで「税金を納める財産があるのに納めていない」と判断された場合、滞納者の財産は差し押さえられます。
対象となった財産の売買や贈与はできなくなりますし、貸付金などの債権の場合は利息に対しても効力が及びます。ただし、滞納者やその家族などが生活していくための3カ月間の食料や燃料は差し押さえることができません。
しかし、税金を完納したり、更正が取り消されたり、その他の理由により差し押さえの目的となっている国税が消滅したりしなければ、差し押さえられた財産は金銭に換えられ、納められます。
滞納処分を妨害すると刑罰を受ける
国税徴収法では、納税者が滞納処分の執行をまぬがれようと、財産を隠ぺい・損壊したり、価値を減少させたりする行為をした場合には、懲役や罰金などの一定の刑罰を科すことを定められています。過去には裁判にまで発展している事例もありますので、注意しましょう。
(参照:国税庁 HP国税徴収基本通達主要項目 第10章 罰則 第187条関係(滞納処分免脱罪))
督促状が届いたら直ちに対応しよう
このように、税金を滞納した場合には、延滞税が課されるばかりか、督促や財産の差し押さえなど行政処分を受けることになってしまいます。今回は国税を中心に紹介しましたが、地方税(住民税や事業税など)の場合でも徴収手続きはおおむね同じです。
支払う資金が足りなかったとしても、督促状を放置しておくと事態が大きくなりかねません。督促状が届いた段階で、所軸の担当職員と納税の方法や時期、分割払いの回数などの相談を行ってください。また、納税の期限と方法については「納税の期限と方法まとめ!法人ならチェック必須の10の税金」を参考にしてください。
参考URL:
・国税庁HP No.9205 延滞税について
・国税庁 HP No.9206 国税を期限内に納付できないとき
・国税庁 HP国税徴収基本通達主要項目 第10章 罰則 第187条関係(滞納処分免脱罪)
よくある質問
税金を滞納するとどうなる?
延滞税が課されたり、行政処分が行われたりします。詳しくはこちらをご覧ください。
延滞税の割合は?
納期限の翌日から2カ月を経過する日までは原則として年7.3%、2カ月を経過した日以後は原則として年14.6%が課せられます。詳しくはこちらをご覧ください。
行政処分の具体的な流れは?
督促、財産の差し押さえ、差押財産の換価、差押財産の換価代金からの配当です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
農業法人設立の流れとメリット 白色申告の農家が受けられる税金面の優遇措置とは
農業を営んでいるといっても個人事業主や農業法人など事業形態はさまざまですが、家族経営している農家が多いのではないでしょうか。 家族経営している白色申告の農家であったとしても農業法人を設立することによって、税金面などで優遇されるメリットを受け…
詳しくみる外交員報酬の税法上の扱いは?源泉徴収の方法について解説
保険の外交員や集金人、または電力計の検針人などを指す「外交員」に支払う外交員報酬は、税法上「給与」とは違う扱いを受けます。 ここでは外交員及び外交員報酬の定義を解説するとともに、税法上の「給与」との違いを明らかにし、外交員報酬に関する源泉徴…
詳しくみる中小企業とはどんな企業か?今さら聞けない定義を解説
日本の企業のほとんどが中小企業であることを知っていても、中小企業の定義を明確に答えられない人も多いのではないでしょうか。 しかし中小企業であるかどうかは軽減税率措置を始め、企業を経営していくにあたって重要な知識です。ここではそんな「今さら聞…
詳しくみる納税の期限と方法まとめ!法人ならチェック必須の10の税金
起業したときに必ず頭に入れないといけないのが「法人における税金」について。責任ある企業として活動していくためには納税の義務は避けて通ることはできません。みなさんは納税の期限や方法について正しく理解できていますでしょうか? 今回は、法人が納め…
詳しくみる法人税申告書の別表5とは?見方や書き方、注意点まで解説
別表5は、利益積立金額の計算に関する申告書です。別表5を自社で作成する場合どのように作成していけばよいか、別表5の書き方と注意点を紹介します。 法人税申告書の別表5とは 法人税申告書の別表5は、利益積立金や租税公課の納付に関する申告書です。…
詳しくみる法人税の節税対策は?社宅や保険・車など効果的な方法10選を紹介
法人税は法人が事業を行ううえで必要な費用ですが、適切な費用計上によって節税に結びつく方法があります。法人税を節税すれば、法人の利益を増やすことが可能です。この記事では、法人税の効果的な節税対策10選を紹介します。 法人税とは 最初に法人税に…
詳しくみる