- 更新日 : 2024年8月8日
電話代はどの勘定科目で仕訳する?経費になるのはいつ?携帯電話・固定電話も分かりやすく解説
社外、あるいは社内でのやり取りで、必ずといっていいほど発生するのが電話代(あるいは電話料金)です。業務上、必要な電話代は経費として計上できます。この記事では、電話代とは何を指すのかその定義と範囲、電話代の勘定科目や仕訳、企業と個人事業主での扱いの違いについて解説します。
目次
電話料金・電話代の定義とは?
一般的に、電話代や電話料金は、電話に関わる費用全般を表します。しかし、会計処理を前提に考えた場合、電話に関わるすべての費用が電話料金や電話代に分類されるわけではありません。固定電話と携帯電話を例に、電話料金と電話代の定義を整理してみましょう。
固定電話と電話料金
固定電話を設置するとき、契約手数料や工事費、機器に関わる支出が発生します。これらの支出は固定電話の設置や取得に必要な支出ですので、電話料金や電話代とはとらえません。原則として10万円以上のものは固定資産、10万円未満のものは消耗品費として考えます。
固定電話のうち電話料金にあたるのは、毎月発生する基本料金や通話料です。電話を使用するのに必要な屋内配線のレンタル料、電話機能のオプションも電話料金に含まれます。
携帯電話と電話料金
携帯電話の場合、毎月の必要は、大きくデータ通信料と電話料金に分かれます。データ通信料はオンライン通信の利用料ですが、勘定科目は電話料金と同じであるため、会計上は電話料金ととらえても問題ありません。ただし、機種代金(分割の場合も含む)については、携帯電話機器の取得と考えますので、別途、固定資産や消耗品費として考えます。
電話代の勘定科目について
会計上、電話代に振り分けられる支出は、「通信費」として仕訳を行います。
(例)固定電話料金30,000円を当座預金から支払った。
通信費 | 30,000 | 当座預金 | 30,000 |
上記の仕訳は、支払時に費用に計上する方法です。ほかにも、請求書到着時に「未払費用」として計上し、支払いを行った時点で「未払金」から「通信費」に振り替えることもできます。同じ方法を継続して行っていれば、いずれの仕訳でも問題ありません。
実務上は支払時に通信費として計上する企業も多いです。しかし、問題なのは支払時に費用計上すると、料金発生時とズレが生じることです。電話料金は後払いであることが多いため、1/1~1/31の分を3月に支払うなど、発生時期と支払時期が大きくズレることがあります。
費用は発生時期に基づいて計上することが基本ですから、決算をまたぐ場合は、「未払費用」を使って当期に該当する分を「通信費」に計上しなくてはなりません。
(例)3月決算のA社は、2/1~2/28の電話代30,000円と3/1~3/31の電話代30,000円が、決算日において未払である。
通信費 | 60,000 | 未払費用 | 60,000 |
携帯電話料金は経費にできる?
固定電話は事務所に設置して事業専用で使用することが多いため、この場合の電話代はすべて「通信費」に計上できます。問題は、携帯電話料金です。携帯電話の場合は、さまざまなパータンが考えられます。
会社がビジネス用に携帯電話を支給した場合
利用頻度やセキュリティ、プライバシーなどを考慮して、会社が複数の携帯電話を所有し、社員に支給するケースもあります。
もっぱら事業に使用することを想定した支給ですので、基本的には会社で支給した携帯電話の料金はすべて経費に計上できると考えて問題ないでしょう。月々の携帯電話料金はすべて「通信費」ですので会計処理も楽です。
個人用の携帯電話を仕事で使った従業員が経費精算する場合
利用頻度が高い場合は、前述のように、会計処理の観点も含め会社からの支給が楽です。しかし、基本は会社の固定電話で対応し、携帯電話はあまり使用しないケースもあると思います。
会社からの支給なしで、従業員が個人の携帯電話を使った場合は、仕事で利用した分に限り、経費精算をすることが可能です。原則は、明細を確認し、仕事で使用した分のみを経費精算します。
しかし、会社で支給するときと比べて手間がかかります。使用分を経費精算するのではなく、あらかじめ携帯電話の利用を見越して、社員の手当として支給することも可能です。手当として支給する場合は、通信費ではなく、給料扱いです。
いずれの対応も可能ですが、その都度対応が変わると不平等ですし、社員に混乱を与えてしまいます。あらかじめ就業規則等で、個人の携帯電話を使用したときの経費精算や対応について明記しておくと良いでしょう。
個人事業主が事業とプライベートで兼用している場合
事業とプライベートで兼用する場合、事業用で使用した分を経費計上します。明細を確認して、事業用で使用した分を計算するのが原則です。しかし、実務上、ひとつひとつ確認するのは複雑な作業を要しますし、定額プランを利用していると割り出すのも難しくなります。
一般的には、事業とプライベートで携帯電話を利用している時間をベースに利用割合を出し、家事按分して経費とすることが多いです。例えば、事業で4割使用している場合は、携帯電話料金が10,000円の場合、4,000円を「通信費」に計上できます。
個人事業主については、固定電話を兼用している場合も携帯電話と同様です。家事按分して、事業で使用した部分のみを経費にします。
通信費は他にどのようなものが含まれる?
電話代や携帯電話料金以外にも、「通信費」に分類されるものはいくつかあります。ここでいう「通信費」とは、通信で必要とした費用のことです。
通信費に分類されるのは、電話代や携帯電話料金のほか、書類配達の運賃、はがき代、切手代、インターネット関連の費用、郵便速達、郵便書留、特殊記録郵便などです。代表的なものを、いくつか仕訳例とともに解説します。
インターネット利用料
(例)インターネット利用料として、通信回線業者に4,000円、プロバイダに1,000円、合わせて当座預金より支払った。
通信費 | 5,000 | 当座預金 | 5,000 |
会社で使用しているインターネット利用料(通信回線会社に支払う利用料、プロバイダに支払う利用料など)は、全額が通信費です。インターネットの接続に際し、かかった工事費やWi-Fi機器などは、固定資産や消耗品に計上します。
切手代
(例)取引先に文書を送付するために120円切手10枚を現金で購入した。
通信費 | 1,200 | 現金 | 1,200 |
切手は、相手に文書などを郵送する際に必要なものですので、通信費に分類されます。しかし厳密には、切手を購入した時点で使用するわけではありません。処理としては、購入時に資産として計上し、使用時に費用として計上するのが正しいです。
しかし、購入と使用を細かく管理するのは、実務上、効率的とはいえません。そのため、購入時に「通信費」として計上し、決算日に未使用分を「貯蔵品」(資産)に振り分けるのが一般的です。
郵便書留
(例)書類を送付するにあたり、一般運賃120円と一般書留435円を現金で支払った。
通信費 | 555 | 未払費用 | 555 |
書留は、送達過程を記録し、未達などが発生した場合に損害賠償金を受けられるサービスです。会計上は、通信費に分類されます。書類の送達も通信費になりますので、上記の例の場合は、いずれも通信費として計上します。速達や特殊記録郵便など、書類の配達に関するものは、書留と同じ扱いで通信費です。
電話機の仕訳と勘定科目
電話料金は前述のとおり「通信費」という勘定科目で計上します。注意したいのは電話機の購入代金です。同じ電話関連の支出でも、こちらは電話機という物品を購入しているため「消耗品費」、リースの場合は「リース料」となります。携帯電話やパソコンを購入した場合も同様です。
5万円の電話機を購入して「消耗品費」で計上する場合は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 | 電話機購入費用 |
リース契約をしてリース料3,000円を支払った場合は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
リース料 | 3,000円 | 現金 | 3,000円 | 電話機リース料 |
電話代の勘定科目についてポイントをおさえよう!
工事費や電話機器の購入費用などを除いた、毎月の電話代、携帯電話料金は、基本的に「通信費」として計上します。ただし、事業用とプライベートで兼用している場合、社員に携帯電話を会社から支給していない場合は全額通信費にはできませんので、注意しましょう。
また、電話代は基本的に後払いで、決算日の時点で当期の未払いが発生するのが通常です。未払分は、当期の通信費として計上することにも注意が必要です。電話代のほかにも、通信費として分類されるものにはいくつかありますので、よく確認しておきましょう。
よくある質問
電話代はどの勘定科目で仕訳する?
会計上、電話代に振り分けられる支出は「通信費」として仕訳を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
携帯電話料金は経費にできる?
固定電話の電話代はすべて通信費に計上できますが、携帯電話の場合はさまざまなパータンが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
通信費は他にどのようなものが含まれる?
インターネット利用料、切手代、郵便書留などが含まれます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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