- 更新日 : 2024年8月8日
予防接種を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
インフルエンザなどの予防接種は、経費にできる場合があります。予防接種が業務上必要であり、高額でなくすべての従業員を対象としていれば、福利厚生費として計上が可能です。従業員個人が負担すべき場合に会社が負担した場合は、給与として処理する必要があります。
本記事では予防接種が経費に計上できる場合や消費税の取り扱いについて解説し、使える勘定科目や仕訳例、個人事業主でも経費にできる場合などを紹介します。
予防接種費用の仕訳に使える勘定科目
予防接種は基本的に個人が費用を負担するものですが、会社が負担して経費に計上できる場合もあります。経費に計上する場合の勘定科目は「福利厚生費」を使いますが、その要件は以下のとおりです。
- 予防接種が業務上必要であること
- すべての従業員を対象としていること
- 金額が社会通念上、常識の範囲内であること
まず経費というためには、予防接種が業務上必要であることが必要です。医療従事者の受ける予防接種や、海外への事業展開にあたり入国のために必要な予防接種などが該当します。
また福利厚生費は、全従業員を対象にした平等なものであることが前提です。予防接種の場合、平等の対象となるのは業務で必要と判断される従業員となります。
海外に赴任するために予防接種を受ける場合、対象となるのは海外赴任する従業員で、国内で働く従業員が同じ予防接種を受けても経費の対象にはなりません。
すべての従業員を対象にしていても、体調不良などで受けられない従業員もいるでしょう。このような場合でも予防接種を接種する機会は平等に与えられており、経費に計上する要件は満たしています。
福利厚生費で経費に計上するには、社会通念上妥当な金額でなければなりません。予防接種は種類により金額が異なり、通常の医療機関で受けるものであれば3,000円から2万円程度です。
派遣社員や出向者など、会社と直接雇用関係のない社員は福利厚生の対象外です。一般的に、派遣社員は派遣元で、出向社員は出向元の会社で経費計上します。
なお予防接種は、消費税の支払いが必要です。健康保険による医療費は非課税ですが、予防医療である予防接種は課税取引で、税込の金額が表示されています。仕訳の際に注意しましょう。
従業員が30人いる会社でインフルエンザの予防接種をして15万円を支出した場合、以下のように仕訳します。
予防接種費用の税務上の取扱い
予防接種の勘定科目は「福利厚生費」とするのが一般的で、福利厚生費の要件に当てはまらない場合は、通常、個人が負担すべき費用となります。会社が負担した場合は給与として扱われ、源泉徴収しなければなりません。
申し込み時から会社で管理・支払いするか、従業員が個別に立て替えて経費精算をするかは会社により異なります。
会社の規模が大きく従業員が多い会社では、医師を派遣してもらい集団予防接種を実施することが可能です。その場合は会社に一括請求されるため、まとめて支払いができます。
しかし会社の規模が小さい、もしくは拠点ごとの従業員が少なく医師を呼べない場合は、従業員各自が医療機関に出向き予防接種を受け、費用を一時的に立て替えるのが一般的です。その際は領収書を提出してもらい、精算の処理を行います。
個人事業主は予防接種費用を経費にできる?
個人事業主の場合、自分が受ける予防接種は経費にできません。青色専従者も同様です。個人事業主が従業員を雇用し、全従業員を対象にする場合は福利厚生費で処理できます。
個人事業主自身の予防接種は、医療費控除も適用できません。医療費控除は治療のための支出が対象であり、予防のための支出である予防接種は対象外です。
ただし予防接種は、セルフメディケーション税制の対象になる可能性があります。セルフメディケーション税制とは「健康の保持増進及び疾病の予防として一定の取り組みを行っている場合、その年中に自己または自己と生計を一にする配偶者、その他の親族のために1万2,000円以上の対象医薬品を購入した場合に所得控除を受けられる医療費控除の特例」です。一定の取り組みには予防接種も含まれています。2022年(令和4年)以降、制度が5年延長されています。
セルフメディケーション税制は通常の医療費控除と併用はできず、選択適用となるため注意してください。
参考:セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について|厚生労働省
予防接種は福利厚生費に計上できる場合がある
従業員が受ける予防接種は基本的に個人負担になりますが、会社が負担した場合、業務上必要があるなど一定の要件を満たせば福利厚生費として経費に計上できます。福利厚生費とならず給与扱いとなる場合、源泉徴収が必要です。
また個人事業主の場合は、事業主自身もしくは青色専従者が受けた予防接種は経費に計上できないため注意しましょう。
よくある質問
予防接種費用は経費にできる?
一定の要件を満たした場合は「福利厚生費」として経費にできる場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。
予防接種費用の税務上の取扱いは?
福利厚生費として認められれば経費に計上でき、個人が負担すべきケースで会社が負担した場合は給与として取り扱います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
仕入割戻とは?会計処理、仕訳例、税務上の扱いを解説
仕入割戻とは、一定期間に多額もしくは大量の仕入れをした際に代金の一部が返還されることです。価格が事後に下がるため、仕入高から控除する処理を行います。税務上の取り扱いでは、算定基準が契約書に明示されている以外は、割戻金額の通知を受けた日の事業…
詳しくみる減価償却累計額はどんな勘定科目?考え方と仕訳のルールを解説
減価償却は建物や機械装置、ソフトウェアなどの有形・無形固定資産に特有の費用配分処理です。減価償却累計額とはこの減価償却をする際に使う勘定科目で、これを理解するためには減価償却の基本を理解しておく必要があります。 以下では減価償却の基本的な考…
詳しくみる退職給付会計とは?退職給付債務の計算や会計基準をわかりやすく解説
退職給付会計は、会計処理のなかでも専門用語の頻出度や計算の複雑さから、理解が難しい会計処理と言われています。 しかし、目的はシンプルです。 最終的に「退職給付引当金」と「退職給付費用」を算出し、計上するために行います。 当記事では退職給付会…
詳しくみる貸し会議室などの施設利用料の仕訳と勘定科目まとめ
貸し会議室などを利用するときは、施設利用料を経費として計上できます。しかし、施設をどんな目的で利用するのかによって、勘定科目が異なる点に注意が必要です。 施設利用料の勘定科目は何になるのか、よくある目的にわけて具体的に紹介します。また、仕訳…
詳しくみる新収益認識基準で前受金はなくなった?新設の勘定科目や仕訳方法を解説
新収益認識基準の導入により、企業会計における収益認識のタイミングが見直されたことで、「契約負債」などの新たな勘定科目が追加されました。 ここでは、新収益認識基準が導入された背景や、従来の「前受金」との違い、新基準適用後の仕訳処理の変更点につ…
詳しくみる印鑑を経費にする場合の仕訳に使う勘定科目まとめ
会社で事業を行う場合、印鑑は必須ですが、購入する機会は少ないものです。そのため、経費として計上できることはわかっていても、どのように扱うのか、仕訳にどの勘定科目を使えばよいのか悩む方もいるのではないでしょうか。本記事では、使用する勘定科目や…
詳しくみる