• 作成日 : 2023年4月21日

正規の簿記の原則とは?具体例から解説

正規の簿記の原則とは?具体例から解説

企業会計の重要な原則の一つに「正規の簿記の原則」があります。
正規の簿記の原則とは、「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」とするものです。
この記事では、正規の簿記の原則の意味、および必要性、要件を具体例から解説します。

正規の簿記の原則とは?

正規の簿記の原則とは、「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」とする企業会計上の原則です。

ここでいう「正確な会計帳簿」とは、網羅性立証性(検証可能性)秩序性の3つが要件とされています。

これら3つを兼ね備えた簿記は「複式簿記」であるというのが一般的な解釈です。

正規の簿記の原則は、1949年(昭和24年)に旧・大蔵省の経済安定本部・企業会計制度対策調査会により公表された『企業会計原則』に記載されています。

財務諸表は株主や金融機関、社債権者など企業の利害関係者に対して、業績を明示するために作成されるものです。その際、もし財務諸表の作成ルールが企業ごとに異なれば、利害関係者は企業の業績を正しく判断できません。そこで、企業会計の普遍的なルールを示すため、企業会計原則が公表されました。

企業会計原則は、「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」の3部構成です。正規の簿記の原則は、一般原則の中の第2原則として記載されています。

一般原則は7つの原則から構成されており、全体の構成は以下の通りです。

  1. 真実性の原則
  2. 正規の簿記の原則
  3. 資本取引・損益取引区分の原則
  4. 明瞭性の原則
  5. 継続性の原則
  6. 保守主義の原則
  7. 単一性の原則

企業会計原則は法律ではないため、法的拘束力は持ちません。しかし、大企業・中小企業を問わず会計上守るべきルールとして、今日まで伝えられてきています。

ただし、今日では社会のグローバル化により新たな会計基準が次々と策定されているため、企業会計原則は実際の会計処理には適用されていない部分も多々あります。新たに制定された会計基準は『概念フレームワーク(2006年に改訂版)』を基礎としており、企業会計原則の役割は低下しつつあるともいえるでしょう。

なお、企業会計原則については以下の記事でも詳しく解説しています。

正規の簿記の原則はなぜ必要なのか

正規の簿記の原則が必要なのは、
①正しい貸借対照表と損益計算書を作成するため、
②真実性の原則を満たすため、
の2つの理由があります。

正しい貸借対照表と損益計算書を作成するため

正規の簿記の原則は、正しい貸借対照表と損益計算書を作成するために必要です。所得税法施行規則 第57条には、正規の簿記の原則に関して以下の記載があります。

「資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。」

すなわち、正規の簿記の原則は、正しい貸借対照表および損益計算書を導き出せるような、組織的な簿記の必要性を規定したものなのです。

引用:所得税法施行規則|e-Gov法令検索

真実性の原則を満たすため

正規の簿記の原則は、やはり企業会計原則に記載される第1原則「真実性の原則」を満たすために必要です。

真実性の原則は、企業会計原則にて次のように規定されています。

「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。」

引用:新版 会計法規集 第10版(中央出版社)

「真実」とは、不正や不当な利益操作などがない、正確なものでなければなりません。

ところで、正規の簿記の原則では「正確な会計帳簿を作成しなければならない」と謳われています。すなわち、正規の簿記の原則は真実性の原則を満たすための、前提となる条件だといえるのです。

※もちろん、真実性の原則と正規の簿記の原則は、どちらも企業会計原則の一般原則です。従って、相互に関係性は持ちつつも、それぞれが独立した原則であることは、まずは大前提となります。

正規の簿記の原則の要件とは

正規の簿記の原則で「正確な会計帳簿」の要件は、網羅性と立証性、秩序性の3つです。

要件① 網羅性

網羅性とは、企業の経済活動のすべてが漏れなく記録されていることを意味します。たとえば、事業の売上が年間で1億円あるところ、その一部の8,000万円分の売上だけを記録するのでは網羅的とはいえません。売上が1億円なら、1億円分の売上すべてが記録される必要があるのです。

要件② 立証性

立証性とは、すべての記録が立証可能な証拠資料に基づいていることです。このことは、会計記録が客観的な証拠により、検証可能であることを意味するともいえます。たとえば、普通預金の総勘定元帳を作成する場合なら、証拠資料は普通預金通帳です。元帳の残高は普通預金通帳の残高と一致しなければなりません。

要件③ 秩序性

秩序性とは、すべての記録が一貫した秩序やルールのもとで整合的・継続的に行われることを意味します。他の資料と整合性が取れないような処理は、会計記録では認められません。たとえば、ある事業に関する交際費を、ある年度では経費として計上するのに、別の年度では経費計上しない、などは認められません。一度採用した会計処理方法は、その後継続して使用することが必要です。

なお、以上3つの要件を備えた会計帳簿は、一般に「複式簿記」であると理解されています。小規模な事業なら単式簿記でも正規の簿記の原則を満たせますが、一定以上の企業規模になった場合は、複式簿記でしか正規の簿記の要件を満たすことができません。

また、所得税の青色申告の場合にも、正規の簿記の原則に従った会計帳簿の作成が必要です。個人事業主の場合には、単式簿記で記帳した場合には10万円、複式簿記で記帳した場合には65万円(e-Taxで提出の場合)の青色申告特別控除が適用できます。

正規の簿記の原則を日々の業務に活かしていこう

「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」とする正規の簿記の原則は、企業会計上の重要な原則の一つです。

真実性の原則を満たすため、および貸借対照表と損益計算書を作成するために必要で、網羅性・立証性・秩序性が要件となっています。正規の簿記の原則を学び、日々の業務に活かしていきましょう。

よくある質問

正規の簿記の原則とは?

正規の簿記の原則とは「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない」とするものです。詳しくはこちらをご覧ください。

正規の簿記の原則の要件は?

正規の簿記の原則の要件は、網羅性、立証性、および秩序性です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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