- 更新日 : 2024年8月8日
法人税減税による4つのメリットまとめ
日本経済の長期的な成長を目指す政策とされるアベノミクスのなかでも、法人税の減税は抜本的な税制改正のひとつとして注目を集めています。
国内における投資の活性化や企業の成長促進を目的として、日本政府は法定実効税率の引き下げの具体的な実施を始めています。欧州諸国を中心とする世界各国ではすでに実施されており、国際的な租税競争が広がってきています。
他国に比べて税負担の重い日本ですが、法定実効税率を引き下げると、どのようなメリットがあるのでしょうか。今回は法人税の減税によるメリットを4つまとめました。
目次
法人税率を下げても税収は上がる
法人税率の引き下げにも関わらず、法人税収対国内総生産(GDP)比が増加する現象を、「法人税のパラドックス」と呼びます。
この現象は、課税ベースを拡大することで、法人税を減税しても税収が減少しない、むしろ増加するという仕組みになっていて、欧州諸国ではすでに実証されています。
課税ベースの拡大を実現させるためには、投資減税(設備投資額の一部を税額控除する優遇措置)の縮小や、減価償却制度を厳しくする見直しなどを行い、広く薄く負担を求める必要があります。また、減税により企業が活性化し、企業利益とともに法人税収も増加するという考えがあります。
メリット1:企業立地・事業高度化へのメリット
法人税の減税により純利益が増加すれば、投資にまわす資金が確保できるようになり、新規事業の展開や技術開発を始める企業がたくさん出てくるでしょう。
そのようにして企業の競争力が高まることで、利益や税収を増やすだけではなく、企業の成長、製品やサービスの改革、新たな企業の創出などのさまざまなメリットにつながります。
また、個人事業主が法人化する「法人成り」も誘発され、法人税収増加に寄与するでしょう。さらに、そういったなかで雇用が生まれ、失業率の低下につながる可能性もあります。
メリット2:労働者への投資が拡大
企業が法人税の減税によって確保できる資金は、新規事業だけではなく労働者への投資にも流用が期待されます。賃金の上昇はもとより、職業訓練の強化や人材開発の促進といったことに企業は力を注ぐようになるでしょう。
結果として、日本に質の高い労働者が増えれば、法人税減税のメリットは大きいと言えるようになるでしょう。
メリット3:日本産業の空洞化防止
今までは高い法人税率によって、国内企業の海外移転に歯止めが効かない状況がありました。国内企業が海外への設備投資に積極的となり、海外における現地生産比率の上昇という結果を招いています。
円高も理由のひとつではありますが、減税のメリットとして産業、特に製造業を国内回帰させ、企業の空洞化を食い止めることが期待されています。
メリット4:海外企業の日本への投資拡大
法人税率が下がれば、海外企業の日本進出が期待できます。日本が海外企業から受け入れる投資額の対GDP比の水準は、主要国のなかでも圧倒的に低いため、海外からの投資を促進することは重要な課題となってきました。
法人税の減税によるメリットとして、海外からの投資が増えるとともに、日本のGDP、さらには期待成長率が上昇すると予想されています。国際標準に照らしながら、法人税のあり方を見直すということが、競争力の強化にもつながってくるでしょう。
法人税の減税は中長期的な影響が期待できる
減税すれば、単に税収増加が見込めるというメリットだけではなく、日本経済の発展、国際競争力の強化、企業の成長、国内産業の保守、雇用促進といったさまざまなメリットがあります。
また、それらは短期的ではなく、中長期的なメリットとなっていくでしょう。個人にとっても、賃金の上昇や雇用の確保が保証されれば生活が豊かになるため、消費増加によって社会経済の潤滑油となるほか、将来的に少子化や自殺増加といった問題の歯止めにもつながるかもしれません。
よくある質問
「法人税のパラドックス」とは?
法人税率の引き下げにも関わらず、法人税収対国内総生産(GDP)比が増加する現象をいいます詳しくはこちらをご覧ください。
法人税減税によるメリットは?
企業立地・事業高度化へのメリット・労働者への投資が拡大・日本産業の空洞化防止・海外企業の日本への投資拡大の4点です。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税の減税は中長期的な影響はある?
あります。単に税収増加にとどまらない、中長期的な影響が見込まれます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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