• 作成日 : 2025年3月3日

中古車は一括償却できる?減価償却との違いや経費計上のシミュレーションも

中古車は取得価額20万円未満であれば、一括償却資産として3年で経費化が可能です。

本記事では、一括償却制度の概要をはじめ、減価償却との違いや法人・個人事業主を問わず利用可能な要件について解説します。さらに、2年落ちや4年落ち、10年落ちといった中古車の事例でどのように経費計上が変わるのかも見ていきましょう。

中古車は一括償却できる?

中古車は、取得価額によっては一括償却できる場合があります。購入価格が20万円未満であれば一括償却資産として扱い、3年間で均等に経費計上が可能です。

一括償却とは

一括償却とは、取得価額が20万円未満の固定資産について、3年間で均等に必要経費として計上できる制度です。通常の減価償却とは異なり、耐用年数や定額法・定率法などの計算手続きが不要で、簡易的に償却を行える特徴があります。

なお、取得価額20万円未満の資産であれば、中小企業者等以外のすべての事業者が利用可能です。青色申告法人である中小企業者等の場合は「少額減価償却資産の特例」という別の制度があり、要件を満たせば最大30万円未満の資産まで一度に経費処理できる場合もあります。

一括償却と減価償却の違い

一括償却と通常の減価償却(定額法・定率法)との大きな違いは、償却期間と途中処分の扱いにあります。

償却期間の違い

  • 一括償却資産:3年間で均等に経費を計上
  • 通常の減価償却:資産ごとに定められた耐用年数に応じて償却する

途中で売却・廃棄した場合の取り扱いの違い

  • 一括償却資産:売却・廃棄しても除却損を計上せず、3年間の均等償却を継続
  • 通常の減価償却:残存簿価をもとに除却損や譲渡損益を計上する

また、一括償却資産には月割り計算が不要という特徴もあります。通常、減価償却の初年度は取得時期に応じて月割り計算を行う必要がありますが、一括償却では取得月に関係なく1年分としてカウントし、合計3回で償却を終えます。

法人も個人事業主も中古車の一括償却が可能

一括償却資産の適用は、法人・個人事業主を問わず利用できます。事前に届出などの特別な手続きを行う必要もなく、該当する資産ごとに判断すればよい仕組みです。

青色申告者だけではなく、白色申告者も活用できます。

減価償却の詳細については、以下の記事をご覧ください。

中古車を一括償却する条件

中古車を一括償却するためには、取得価額や事業用途といった一定の条件を満たしている必要があります。ここでは、代表的な2つの条件を解説します。

取得価額が20万円未満であること

一括償却資産として扱うための第一条件は、取得価額が20万円未満であることです。この判定には、車両本体価格だけでなく、購入時の付随費用(登録費用や手数料、オプションの装着費など)も含めて算入する必要があります。ただし、税務上「一体として機能する資産」と判断される費用を合算したうえで20万円未満かどうかを確かめましょう。

たとえば、車体にETCやドライブレコーダーを後付けした場合、それらが単独で機能するのであれば別資産として扱うこともあります。一方、純正ディスプレイオーディオなど最初から車体とセットとして購入した場合は、一式の取得価額として扱うことになるため注意が必要です。

中古車を事業用資産として使用していること

一括償却資産として認められるためには、事業で使用する資産であることが大前提です。法人であれば法人名義の事業用車両、個人事業主であれば業務に利用する車両が該当します。

もし個人事業主が業務用とプライベート用を併用している場合は、家事按分を行う必要があります。使用時間や走行距離などの実績ベースで事業とプライベートの割合を合理的に判断し、事業使用分に相当する部分のみ経費計上しなければなりません。

中古車を一括償却するメリット

中古車を一括償却資産として計上すると、以下のようなメリットが考えられます。ただし、その金額要件や実際の車両の状態によっては適用できないケースも多いため、制度の趣旨を理解しつつ検討することが求められます。

早期に経費として計上できる

中古車の場合、通常の減価償却では残りの耐用年数が複数年あることが一般的です。たとえば耐用年数が6年の普通乗用車を2年使った中古車は、残り4年が目安の耐用年数になります。しかし、一括償却なら「3年間で均等償却」となるため、通常の減価償却よりも早期に経費化を完了させることが可能です。

複雑な減価償却費の計算が不要となる

通常の減価償却であれば、定額法・定率法のいずれを採用するかを決め、さらに取得時期が事業年度の途中であれば月割計算をする必要があります。一方で、一括償却の場合は3年間で均等に償却するというシンプルなルールだけなので、計算負荷が大幅に軽減可能です。

特に対象となる資産を多数購入しているような事業者にとっては、計算作業が簡単になると同時に、償却漏れや月割り計算ミスといったリスクを抑えられるのもメリットだといえます。

中古車の一括償却と減価償却の比較シミュレーション

ここでは、2年落ち・4年落ち・10年落ちの中古車をそれぞれ購入した場合を例に、一括償却と通常の減価償却ついて比較してみます。

2年落ちの中古車を購入した場合

普通乗用車で2年落ちの中古車の場合、通常の減価償却では耐用年数が4年です。一括償却を選択した場合は3年間で均等償却ではありますが、通常2年落ちの車は20万円以上するため、一括償却は使用できません。

なお2年落ちで取得価額100万円を車の場合、取得価額の100万円を耐用年数の4年で割るため、定額法の場合は毎年25万円を4年かけて償却することになります。

4年落ちの中古車を購入した場合

4年落ち以上の中古車は、法定耐用年数2年です。この場合、初年度の償却額が大きくなる定率法を使用すれば初年度に全額費用化が可能です。

初年度に全額費用化できない場合でも、2年で償却します。

なお、4年落ちでも一般的な中古車は20万円以上するケースがほとんどのため、一括償却はほぼできないと考えていいでしょう。

10年落ちの中古車を購入した場合

10年落ちの中古車の耐用年数は、最低の2年です。定率法であれば4年落ち同様、初年度で償却できます。または年度の途中で取得したなどの場合であっても、2年で償却することになります。

なお、10年落ちになると走行距離や年式によっては20万円以下の取得価額の中古車もあり、取得価額20万円以下であれば一括償却をすること自体は可能です。ただし、10年落ちの中古車は最長でも2年で償却できるため、3年かけて償却する一括償却をあえて使用するメリットはほとんどありません。

中古車だけでなく新車も一括償却できる?

中古車か新車かに関係なく、取得価額が20万円未満であれば一括償却資産として扱うことが可能です。法律上は明確に区分されていないので、適用要件は「取得価額が20万円未満かどうか」であり、中古車であるか否かは適用要件とは無関係です。

ただし、一般的な新車の取得価額は乗用車であればリーズナブルな軽自動車でも100万円近くになることが多く、結果として一括償却を適用できるケースは非常にまれといえます。オプションや諸費用を含めればなおさら20万円未満には収まらないため、実際には「新車でも理論上は可能だが、ほとんど該当するケースはない」というのが現状です。

一括償却は中古車の取得価額によっては使用できるが特にメリットはない

一括償却は、取得価額が20万円未満の資産にしか適用できません。中古車であってもその範囲に収まらないケースが多いため、中古車の償却に関しては実務ではあまり使われない制度といえます。

さらに、残り耐用年数が4年以下の中古車の場合、定率法であれば初年度に全額償却できることも多く、わざわざ3年間に分けて償却するメリットは乏しいのが実情です。経理上の簡便さも含めて、状況に応じて検討してみてもいいかもしれません。

判断に迷う場合は、税理士など専門家に相談することをおすすめします。


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