• 更新日 : 2025年1月8日

稟議書の保管期間は?電子化の方法やメリットを解説!稟議書のテンプレートも紹介

稟議書とは、責任者や関係者から承認を得るために作成する書類のことです。本記事では、企業の経理担当の方向けに、稟議書の保管期間をはじめとする基本情報について解説します。

また、紙の稟議書を電子化するメリットや、稟議書を電子化する方法もまとめて取り上げるため、ぜひ最後までご覧ください。

稟議書とは

稟議書とは、自身の権限では判断できない事項について上長から承認を得るための書類です。起案書、または立案書と呼ばれることもあります。

主な稟議書の使用場面は、以下のとおりです。

  • 経費で物品を購入するとき
  • 社員の新規採用をするとき
  • 新しい社内システムを導入するとき

なお、稟議書は日本企業特有の文化であり、意思決定のスピード感を重視する海外ではほとんど採用されません。

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申請書との違い

稟議書と混同されがちな存在として、申請書の存在が挙げられます。稟議書は企業の方針をはじめ、重要な事項に対して複数の部署や関係者に承認を求めるための書類です。

一方の申請書は、稟議書と比較すると簡易な要求をするときに使用されます。承認を得る相手も、直属の上司のみのケースがほとんどです。

ただし、企業によっては同じレベル感の手続きをまとめて稟議書、または申請書で進めていることもあります。

届出書との違い

届出書も、稟議書とは異なる書類です。そもそも届出書とは、法的な義務や規制にもとづいて特定の事項を報告するために作成する文書のことで、有給休暇届、住所変更届、異動届などが該当します。

あくまで事実を会社側に伝えるために利用するものであって、承認を得ることはとくに目的としていません。

稟議書の保管期間

稟議書は、重要事項が多数記載されている書類です。しかし、どの程度の期間保管すればよいか、わからない方も少なくありません。

以下では、稟議書の保管期間について解説します。

法的な保管期間の規定はない

企業で扱う書類のなかには、会社法をはじめとする法律で保管が定められているものも多いです。しかし、稟議書には法的な保管期間の規定はとくに存在しません。

これは稟議書がほかの書類と異なり、企業の内部的な業務手続きを記録するのが目的の書類のためです。外部機関への公開や提出がとくに義務付けられていないため、処分のタイミングも稟議書を所有している企業に任されています。

永年保存とする企業が多い

用済みになった稟議書は、すぐに処分しても法律上は問題ありません。しかし、多くの企業では、稟議書を永年保存しています。

稟議書を永年保管する主な目的は、以下のとおりです。

  • 意思決定の記録を残すため
  • 法的保護のため
  • 経営の透明性を確保するため

とくに訴訟トラブルが発生した場合、稟議書は重要な証拠として用いられます。そのため、特別な理由がない限り、稟議書は残しておいた方が企業にとってよいことが多いです。

稟議書に添付する可能性がある書類の保管期間

稟議書以外の書類には、保管期間が定められているものが多いです。万が一保管期間以内に処分しても罰則はないものの、さまざまなデメリットが生じるため、確実に保管期間を守る必要があります。

以下では、稟議書に添付する可能性がある書類のなかで保管期間が定められているもの、そしてそれぞれの保管期間について解説します。

契約関連書類

契約と関連がある書類のなかで、保管期間が定められているのは以下のとおりです。

いずれの書類も、保管期間は税法等において原則7年と定められています。なお、法人税欠損金がある場合の保管期間は10年です。

採用関連書類

採用と関連がある書類のなかで、保管期間が定められているのは以下のとおりです。

職員の在職期間中は、履歴書と職務経歴書を確実に保管しておかなければなりません。保管期間は退職日、または死亡日から起算して5年間保管することが、労働基準法第109条によって義務化されています。2020年以前は3年だったため、間違えないように注意しましょう。

なお、マイナンバーカードの保管期間は7年です。

参考:e-GOV 労働基準法

固定資産関連書類

固定資産関連の書類のなかで、保管期間が定められているのは以下のとおりです。

  • 売買契約書
  • 請負契約書

会社法関連の契約書は10年間、法人税法関連の契約書は7年間です。

紙の稟議書の保管が抱える課題

稟議書を紙媒体で保管している企業は、依然として少なくありません。しかし、紙の稟議書にはいくつか見逃せない課題が存在します。

具体的な課題の内容は、以下のとおりです。

管理・保存のコストがかかる

紙の稟議書は管理、そして保存のコストがかかります。稟議書を紙媒体で作成する場合、紙代やインク代などが必要です。

発行する稟議書の数が少なければ、そこまで大きな額になることはないでしょう。しかし、発行数が増えれば、無視できないレベルでコストがかさむ可能性が高いです。

また、稟議書は書類1枚ではなく、関連書類も一緒に保管しなければなりません。永年保存のため、保存スペースは年々増え、保管スペースが圧迫されていきます。

紛失・盗難のリスクがある

紛失や盗難のリスクが高い点も、紙の稟議書の課題です。企業の経営年数が長くなれば、比例して稟議書の数も増えていきます。

しかし、稟議書をすべて企業側で把握するのは困難です。そのため、稟議書や関連書類が紛失したり、盗難したりしても、発覚するまでに時間がかかります。

稟議書の適切な管理ができない企業は、コンプライアンスに問題があると判断され、取引に悪影響を与える可能性も否定できません。

検索性が低い

紙の稟議書の課題として、検索性の低さも挙げられます。会議を進めるにあたって、過去の稟議書が必要になるケースは少なくありません。

しかし、大量の稟議書のなかから、目的の書類を1枚見つけるのはかなり困難です。保存場所が近くにあるとは限らず、外部の倉庫で保管している場合は移動時間もかかります。また、そこまでしても目的の稟議書が見つからない可能性もあります。

ファイリングしてファイルの背表紙にタイトルを記載する方法もありますが、作業の手間がかかるだけでなく、保管場所を圧迫するのが問題点です。

稟議書を電子化するメリット

昨今は稟議書を紙媒体ではなく、電子化して保管する企業が増えています。稟議書の電子化によって、企業はさまざまなメリットを享受することが可能です。

以下では、稟議書の電子化がもたらすメリットについて解説します。

承認フローの迅速化

電子化するメリットの1つとして、承認フローの迅速化が挙げられます。紙の稟議書の場合、決められたフォーマットの書類を用意してから必要事項を記載し、内容をチェックしてもらう工程が必要です。

チェック担当者が複数人いる場合、誰か1人でも出張や外回りなどで不在になると、その時点で稟議書の承認フローがストップしてしまいます。電子化すれば、適切な承認者のもとへ自動で回覧されるように、承認ルートを事前に設定しておけるため、承認フローをスムーズに進めることが可能です。

承認過程の可視化

承認過程を可視化できる点も、稟議書を電子化するメリットです。紙媒体の稟議書は、承認の進捗があまり明確ではありません。いつ稟議の返事がくるのかわからないため、作業も滞りがちです。

しかし、電子化すれば進捗が可視化できるため、どこで停滞しているのかすぐにわかります。承認の遅れや漏れも減り、決裁までの流れもスムーズになるでしょう。

保管コストの削減

電子化によって、保管コストの削減も期待できます。紙の稟議書は印刷にかかるコストをはじめ、お金がかかります。

しかし、書類の管理がオンライン上で完結すれば、書類の管理にかかっていた人件費や保管庫の管理費などの削減が可能です。また、期限切れの書類を自動で処分する仕組みにすれば、書類整理の手間もかかりません。

改ざんなど不正の防止

改ざんをはじめとする、各種不正の防止にも役立ちます。これは電子化すると、申請や承認、決裁などの工程が自動で処理されるためです。

システム上に履歴が残るため、不正の検知や不正発覚後の問題箇所の特定もしやすいです。また、製品によっては、稟議書にミスや不備があればアラートを表示してくれるものもあります。

検索性の向上

電子化した稟議書は、検索性も向上します。ファイル名での検索はもちろん、記載内容や日付、書類の作成者などからの絞り込みも可能です。

また、作業時間が短縮できるため、業務の効率化も目指せます。

稟議書を電子化する方法

稟議書を電子化する方法はいくつかありますが、それぞれメリットとデメリットが存在します。以下では、稟議書を電子化する主な方法について解説します。

WordやExcelで稟議書を作成する

稟議書を電子化するだけなら、WordやExcelを利用する方法があります。準備の手間もかからないほか、オンライン上に無料で公開されている稟議書の雛形を利用することも可能です。

ただし、メールで稟議書のやり取りをするため、申請者が進行状況を確認できない、宛先を間違えてしまうと機密情報が流出する可能性があるといったデメリットもあります。

ワークフローシステムの導入

今回とくにおすすめしたい方法が、ワークフローシステムの導入です。ワークフローシステムとは、稟議をはじめとする、各種業務を電子化する仕組みやソフトのことです。

組織情報やフォーム作成機能などが基本機能として備わっており、稟議書の作成から提出までの一連の工程をスムーズに実行できます。インターネットが使用できる環境があれば、社外でも対応できるため働き方の自由度が高まる点もメリットです。

ただし、初期費用をはじめ、ある程度予算を確保しなければなりません。

稟議書を永年保存する場合は、電子化がおすすめ

稟議書にはとくに決まった保管期間は存在しておらず、経営の透明性の確保や法的保護の観点から、永年保存するケースが多いです。しかし、紙の状態で稟議書を扱うのは、管理の手間がかかるほか、セキュリティ面でも不安が残ります。

そのため、検索性が高まり、保管コストも削減できる電子化を進めるのがおすすめです。もちろん電子化にはメリットのみならず、デメリットも存在します。稟議書の電子化を検討している方は、本記事で取り上げた情報を参考にしてください。


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