• 作成日 : 2019年10月25日

中小企業における経理の流れと業務の効率化

中小企業の経理業務は、人手不足の場合が少なくありません。
クラウド会計や経理代行は解決手段のひとつですが、自社の業務にマッチしているかどうかを検証せずいきなり導入すると、問題が起こるリスクがあります。

本記事では、中小企業の経理の流れと業務の効率化、中小企業の経理担当者に求められるスキルについて解説します。

中小企業の現状

一般に大企業においては、組織内の役割分担が明確であり、社員一人ひとりの仕事の範囲が決められ、専門性が高いという傾向があります。一方、中小企業においては、実際のところ一人で多くの業務範囲をカバーせざるを得ない状況です。

同じ経理業務であったとしても、企業規模が異なれば、伝票の流れや決済までのやり方に違いがあって当然と言えます。その一方で、経理業務の根幹部分においては、企業規模の大小に関係ないものもあります。
また、経理業務は利益を生まない間接業務とされ、経費や人員削減の対象になりやすいという傾向にもあります。逆に、中小企業の経理部門では、人材が足りていないという現状があります。

そんな中で今、脚光を浴びているのは、クラウド会計と経理代行(経理のアウトソーシング)です。大企業にとっては一括で経理業務をアウトソーシングすることで人件費の削減ができます。中小企業にとっては、なかなか増やせない人材の代替手段として利用できます。

ただし、クラウド会計と経理代行には、それぞれメリットとデメリットがあるため、特徴についてはしっかり確認しておきましょう。

クラウド会計や経理代行を導入するにあたって

クラウド会計とは、インターネット経由で会計システムを利用するサービスです。システムは特段の会計知識がなくても使い始めることができます。「自計化」と呼ばれる、金融機関の口座と連携することによって自動で入出金伝票を作成する機能が大きな特徴です。この機能により、業務の効率化が可能になるという点は、クラウド会計の大きなメリットです。

しかし、事前の策なしで会計システムを導入するだけでは業務効率化はできません。会計システムは導入後、長期にわたって運用することを前提としています。最も効率的な方法は、会計システムに合わせて業務を変えていくことです。しかし、すぐに業務を変えることはそう簡単ではありません。

経理代行とは、経理業務を専門会社に委託することです。記帳だけでなく、支払や入金の管理、決算・確定申告に至るまで外部委託することができ、費用対効果が期待できる点がメリットです。
しかし経理代行は、入力の元となる証憑(契約書や発注書、請求書などの証拠書類)が随時揃っていないとスムーズにいきません。今の形態ですぐ導入ができるでしょうか?

クラウド会計も経理代行も、その仕組みが企業にマッチしていれば費用対効果が期待できますが、マッチしていない場合はかえって人件費がかかるリスクもあります。クラウド会計や経理代行ありきで考えず、まずは身近な業務を見直してからどの手段を選ぶかを考えた方が良いでしょう。

業務を見直し、攻めの経理へ

業務効率化とは、生産性を高めるための施策のひとつです。個々の業務がシンプルで短時間に終わることは重要ですが、その業務そのものが本当に必要かどうかを考えることが生産性向上につながります。業務の取捨選択は、経理担当だけでなく部門を越えて考えるのが、生産性を高めるポイントです。

業務を実際に担当している人や既にあるサービスを利用することによって、確認作業や入力ミスを減らし、作業時間を短縮することができます。例えば、経費精算などは現場の人たちや役員でもできる作業として積極的にしてもらう、売上については営業担当が入力する、継続取引先は口座振替を利用する、などは業務見直しの一例です。

各業務の担当者が業務の根本的な見直しをした上で、経理部門に特化される業務の見直しに入ります。経理の業務フローは、日次、月次、年度と異なったサイクルの業務が同時進行します。この中で、いかに日次や月次の作業を削減し、簡素化するかを考えます。

実際には、他の部門の作業を増やしたり、今まで部内でやっていた業務を省略したりするには、勇気と時間を要します。予算や決算の資料作成や評価のタイミングで、思い切った提案も必要かもしれません。
しかし、経理部門が将来を見据えた能動的な業務や提案をすることは、他部門が経理に抱く印象を良い方向に変えるという大きなメリットもあります。攻めの提案をすることで、「経理は事後的、受動的な処理ばかりする業務で利益を生まない間接部門だ」という見方を打ち破ることもできるためです。

経理担当者に本当に必要なスキルとは?

現在、中小企業の経理担当者にとって最も必要なスキルとは、「ITスキル」ではないでしょうか?

経理業務において、先を読んだ能動的な業務を進めるには、計数管理能力や財務提案力などの高度なスキルが必要です。しかし、このような経理センス、会計リテラシーといったものは、経験値がものをいう世界でもあり、時間をかけて身につけていくものです。

すぐに導入できそうなクラウド会計があったとしても、すぐに外注に出したい入力があったとしても検証なしの導入にはリスクがあります。

経理担当者は、クラウド会計や経理代行の継続的な利用によって、現在の経理業務や実取引にどこまで影響するか、どう変えれば導入しやすいかを、これまで培った経理知識から検討することができます。経営層に強くアピールできる資料を作るには、過去データの分析や将来のシミュレーションなど、ITスキルが必要なのです。

経理知識とITスキルで業務効率化を図りましょう

中小企業の経理における業務の効率化とそのためのスキルについて解説しました。クラウド会計や経理代行は便利です。しかし、経理担当者は、自社の経理業務とどこまでマッチするのかを確認し、時には各部門に業務そのものの取捨選択を問い合わせる必要もあります。この作業をスムーズに進めるために、経理担当者は、経理の業務知識とITスキルを駆使して、導入効果や課題を提案することも求められるでしょう。※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

関連記事