• 更新日 : 2020年9月17日

外形標準課税の対象法人になるとどうなる?

外形標準課税は、行政サービスを受けている以上、黒字の企業も赤字の企業も費用を平等に負担すべきだという指摘に対応する形で生まれた法人事業税です。

外形標準課税は、企業間の不公平感をなくして負担をならす効果があると同時に、税収の安定をもたらすといわれています。外形標準課税とはどんな制度か、対象となる企業の要件もふまえて学んでみましょう。

外形標準課税が導入された経緯

外形標準課税が導入される前は、地方自治体の公共施設を利用するといった形で行政サービスを受けていながら、法人事業税を負担していない企業が多く存在していました。帳簿上利益を出している企業だけが法人事業税のほぼすべてを負担するという偏った状態が長いあいだ続いていたのです。

外形標準課税の導入は、黒字の企業も赤字の企業も行政サービスを受けている以上、費用をまんべんなく負担すべきだという指摘に対応する形で、2004年に導入されました。

外形標準課税について

法人企業は事業活動を行うにあたり、各種の行政サービスを利用しています。言い換えれば、それら地方自治体が提供するサービスがなければ営利を目的とした経済活動ができないことになります。

法人事業税は法人の事業活動に課される税金であり、外形標準課税は行政サービスの供給に必要な経費を公平に分担するという考えに基づいた、「税負担公平性の確保」を目的とする税金です。

外形標準課税は、資本金や人件費といった企業の事業規模や付加価値、活動量など客観的な判断基準をもとに課税され、応益課税(各人がうける利益に応じて課される税)という税の性格が反映されています。外形標準課税を導入することで、それまで赤字であるため法人事業税の納付がなかった法人企業にも、赤字・黒字を問わず課税されるようになりました。

これにより、所得に対する税負担が相対的に緩和され、事業活動でより多くの利潤をあげようとする「経済活性」や経営の効率化が期待されています。地方自治体の財源を安定的に確保し、地方税の充実と地方財政の自主性を向上させる目的をもつ外形標準課税により、企業が事業活動を続けるために欠かせない、地方自治体による行政サービスの安定的な供給が実現するのです。

外形標準課税の対象法人の要件

外形標準課税は、事業年度末日における資本金の額が1億円を超える法人(公共法人等やみなし課税法人、特別法人、特定目的会社、投資法人、人格のない社団等、一般社団法人及び一般財団法人を除く。)が課税対象となります。

なお、3年以上継続して所得がない法人や創業5年以内の所得がない法人には、原則3年(最長6年)、外形標準課税の徴収を猶予する制度があり、この徴収猶予制度の利用期間中は延滞金の1/2が免除されます。

付加価値割と資本割のしくみ

外形標準課税の税額は、「所得割」と「付加価値割」、「資本割」の金額を合算して求めます。「所得割」は所得に係る法人税のことで、その一部は地方法人特別税として徴収されます。

「付加価値割」は「報酬給与額」と「純支払利子」、「純支払賃借料」、「資本割」は「資本金」と「資本積立金」に係り、標準税率は0.525%となっています。

・「付加価値割」を構成する「報酬給与額」は給料や賞与、手当、退職金等の合計額のことで、「純支払利子」は支払利子から受取利子を除いた額、「純支払賃借料」は土地・家屋の支払賃借料から受取賃借料を除いた額、「単年度損益」は繰越欠損金控除前の税法上の儲けを指し、マイナスの場合は収益配分額(「単年度損益」を除く「純支払利子」と「報酬給与額」と「純支払賃借料」の合計額)から欠損金額を控除します。また、「雇用安定控除の特例」により、収益配分額のうち報酬給与額の占める割合が70%を超える場合には、その超過する金額(雇用安定控除額)を収益配分額から控除することになっています。

「雇用安定控除額」=「報酬給与額」-(「収益配分額」×70%)

・「資本金」または「出資金」と「資本積立金額」の合計からなる「資本割」では、資本金等の額が1000億円を超える部分の課税標準額が金額に応じて圧縮されます。また、一部の持株会社については、資本金等のうち、総資産に占める子会社の株式分の金額を課税標準から控除できます。


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