- 更新日 : 2024年9月20日
外形標準課税制度とは?対象法人や課税の内容をわかりやすく解説
外形標準課税は、行政サービスを受けている以上、黒字の企業も赤字の企業も費用を平等に負担すべきだという指摘に対応する形で生まれた法人事業税の課税方式です。
外形標準課税は、企業間の不公平感をなくして負担をならす効果があると同時に、税収の安定をもたらすと言われています。外形標準課税とはどんな制度か、対象となる企業の要件も踏まえて学んでみましょう。
外形標準課税制度とは
外形標準課税は、企業の所得だけでなく付加価値や資本金等の「外形」による基準をもとに課税するもので、行政サービスの受益の対価として「応益課税」としての性格を有します。
法人事業税は法人の事業活動に課される税金であり、その一つとして外形標準課税は行政サービスの供給に必要な経費を公平に分担するという考えに基づいた、「税負担公平性の確保」を目的とする課税方式です。
外形標準課税は、資本金や人件費といった企業の事業規模や付加価値、活動量など客観的な判断基準をもとに課税され、応益課税(各人が受ける利益に応じて課される税)という税の性格が反映されています。外形標準課税を導入することで、それまでは赤字であるため法人事業税の納付がなかった法人企業も、赤字・黒字を問わず課税されるようになりました。
これにより、所得に対する税負担が相対的に緩和され、事業活動でより多くの利潤を得ようとする「経済活性」や経営の効率化が期待されています。地方自治体の財源を安定的に確保し、地方税の充実と地方財政の自主性を向上させる目的を持つ外形標準課税により、企業が事業活動を続けるために欠かせない、地方自治体による行政サービスの安定的な供給が実現するのです。
外形標準課税の対象法人の要件
外形標準課税の対象法人は令和6年度に税制改正がなされ、令和7年3月31日までと同4月1日以降では対象法人の要件が異なります。
令和7年3月31日まで
原則として事業年度末日における資本金の額が1億円を超える法人(公共法人等やみなし課税法人、特別法人、特定目的会社、投資法人、人格のない社団等、一般社団法人及び一般財団法人を除く)が課税対象となります。
なお、3年以上継続して所得がない法人や創業5年以内の所得がない法人には、原則3年間(最長6年間)外形標準課税の徴収を猶予する制度があり、この徴収猶予制度の利用期間中は延滞金の1/2が免除されるといった措置があります。
令和7年4月1日以降
前事業年度に外形標準課税の対象となった法人は、当事業年度に資本金の額が1億円以下でも、「資本金と資本剰余金の合計」が10億円を超える場合などは外形標準課税の対象となります。
大企業の減資等による法人事業税の外形標準課税逃れが散見されるため、従来の課税逃れについては課税対象としないが、今後の課税逃れを防止するためにこのような対策を講じることになったのです。
外形標準課税の税額計算の仕方
外形標準課税の税額は、「所得割」「付加価値割」「資本割」の金額を合算して求めます。
「所得割」は、繰越欠損金控除後の所得に税率を乗じたもので、外形標準課税が適用されない法人の「法人事業税」と同様の考え方に基づいています。「付加価値割」は「報酬給与額」「純支払利子」「純支払賃借料」に「単年度損益」を加えたものであり、「資本割」は「資本金」と「資本準備金」(無償の増減資があった場合にはその調整後)の合計で、標準税率は0.525%となっています。
「付加価値割」を構成する「報酬給与額」とは給料や賞与、手当、退職金等の合計額のことで、「純支払利子」は支払利子から受取利子を除いた額、「純支払賃借料」は土地・家屋の支払賃借料から受取賃借料を除いた額、「単年度損益」は繰越欠損金控除前の税法上の所得を指し、単年度損益がマイナスの場合は収益配分額(「純支払利子」と「報酬給与額」と「純支払賃借料」の合計額)から欠損金額を控除します。
また「雇用安定控除の特例」により、収益配分額のうち報酬給与額の占める割合が70%を超える場合には、その超過する金額(雇用安定控除額)を収益配分額から控除することになっています。
「資本割」にもいくつかの特例が設けられており、例えば資本金等の額が1,000億円を超える部分の課税標準額が金額に応じて圧縮されます。また、一部の持株会社については、資本金等の額の算定にあたっては、総資産に占める子会社株式割合に相当する金額を課税標準から控除できます。
外形標準課税の会計処理方法
法人事業税、法人税、法人住民税は「法人税、住民税及び事業税」で会計処理をすれば問題ありません。しかし、外形標準課税分は所得に対する課税ではありませんので、法人税等に含めることはできません。販売費や一般管理費の中の「租税公課」で処理する必要があります。
外形標準課税が導入された経緯
外形標準課税が導入される前は、地方自治体の公共施設を利用するといった形で行政サービスを受けていながら、法人事業税を負担していない企業が多く存在していました。帳簿上利益を出している企業だけが、法人事業税のほぼすべてを負担するという偏った状態が長い間続いていたのです。
外形標準課税の導入は、黒字の企業も赤字の企業も行政サービスを受けている以上、費用をまんべんなく負担すべきだという指摘に対応する形で、2004年に導入されました。
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