• 更新日 : 2021年6月1日

販売促進費とは?広告宣伝費や交際費との違い、勘定科目の仕訳例を解説

販売促進費とは?広告宣伝費や交際費との違い、勘定科目の仕訳例を解説

販売促進費とは、商品やサービスの販売による売上増加や、ブランド力向上のための支出です。しかし、広告宣伝費交際費との違いがわかりにくいことから「どの勘定科目を使うのが正解なのか」と悩む担当者は少なくありません。
今回は販売促進費の具体的な概要として、広告宣伝費や交際費との違いや販売促進費を使った仕訳例を解説します。

販売促進費とは?

販売促進費の定義は「促進」と名付けられているとおり、商品や製品、そのほかのサービスに関する販売業務の効果上昇のために支出する費用の総称です。
損益計算書上では「販売費及び一般管理費」に当てはまります。

販売促進費の定義・英語表記とは?

販売促進費として処理する条件は、主に次の3つです。

  • 商品やサービスなどの「販売対象の売上増加」に貢献する費用であること
  • 消費者や取引先を対象にして支出する費用であること
  • 損金として算入できる費用(経費計上できる費用)であること

ポイントは「消費者や取引先との関わりが直接的かどうか」です。例えば取引先へ直接サンプル品を送ったり、自社製品を出品する展示会に支出したりなどは販売促進費に当てはまります。

具体的な例を見ていきましょう。

  • 商品サンプルの制作や配布用の費用
  • ノベルティグッズの制作や配布用の費用
  • 割引券やクーポン券の制作や配布用の費用
  • キャンペーン用の費用
  • 実演販売にかかった費用
  • 展示会や見本市への出品にかかる費用
  • 販売手数料
  • 販売奨励金(リベート)用の費用

など

ただし「損金として算入できる」という条件から、固定資産や工具器具備品として資産計上する必要があるものへの支出は、原則として販売促進費にはできません
また、支出の仕方によっては広告宣伝費や交際費に区分されるため、仕訳の際には注意が必要です。

ちなみに、英語で販売促進費を表す場合は次の表現になります。

  • Promotion expenses
  • Sales Promotion expenses
  • cost of sales promotion
  • sales promotion cost

など

販売促進費と広告宣伝費の違い

広告宣伝費も販売促進費と同じく、販売費及び一般管理費に当てはまる費用です。
実際のところ広告宣伝費と販売促進費との間に、明確な違いや法的な基準が定められているわけではありません

おおまかな違いは「消費者や取引先との関わりが間接的かどうか」です。商品やサービスを特定の人へ手渡したり見てもらったりではなく、不特定多数の人に宣伝するための支出が広告宣伝費に区分されます。

広告宣伝費の具体例を見ていきましょう。

  • 広告宣伝用のパンフレットやポスターの制作費
  • テレビやインターネット広告の制作費
  • 雑誌や新聞、地域情報誌等への掲載費
  • 会社案内の制作費

など

広義では、販売促進費という大枠の中に広告宣伝費が入っているという関係です。「宣伝広告を利用したアピールが広告宣伝費」「直接売り込むのが販売促進費」というイメージが近くなります。

とはいえ実際に仕訳を行う際は、事業主の判断によるところが大きいため、自社や取引先、税務署が混乱しないように分類しましょう。

販売促進費と交際費の違い

交際費とは、取引先や仕入先などの「事業の関係者」に対する接待や慰安、贈答などを行うために支出する費用のことです。
「直接アプローチして販売を促進する」という販売促進費と似た性質を持つこともあり、交際費と販売促進費との区別に迷う担当者も少なくありません。

交際費として判断するポイントは「事業の関係者といった『特定の相手』が対象であること」「広告宣伝を目的としたものでないこと」の2点になります。
例えば、取引先への贈り物のために支出した費用は交際費ですが、宣伝を目的に社名が入った贈答品を贈った場合は販売促進費です。

実際に国税庁のホームページに記載がある「不特定多数の者に対する宣伝効果を意図した費用」と見なされ、販売促進費(広告宣伝費)となる例をご紹介します。

  • 抽選で一般消費者に「金品を交付するため」または「旅行や演劇などに招待するため」に支出した費用
  • 一般消費者に金品引換券付販売にともなって金品を贈るための費用
  • 一定の商品を購入する一般消費者を旅行や観劇に招待することをあらかじめ宣伝し、実際に招待するための費用
  • 商品を購入した一般消費者に贈る景品の費用
  • 工場見学者への試飲や飲食のためにかかる費用
  • 見本品や試用品を贈るための費用
  • 一般消費者に依頼したアンケートやモニター(消費動向調査など)の謝礼にかかる費用

ただし、以下の業種や事業のケースはその限りではない点に注意してください。

  • 医薬品の製造業者または販売業者が、医師や病院を対象にするとき
  • 化粧品の製造業者または販売業者が、美容業者や理容業者を対象にするとき
  • 建築材料の製造業者または販売業者が、建設業者を対象にするとき
  • 農業用資材の製造業者または販売業者が、農家を対象にするとき
  • 機械や工具の製造業者または販売業者が、鉄工業者を対象にするとき

注意すべきポイントとして、法人の交際費の計上額には、税法上では上限が設けられていることが挙げられます。つまり、法人は販売促進費になるか交際費になるかで、損金の総額(経費計上の総額)に違いが生じます。
逆に交際費だと思われていた支出を販売促進費として適切に計上できれば、節税につながるかもしれません。

【参考】国税庁|交際費等と広告宣伝費との区分

販売促進費に消費税はかかる?

販売促進費として支出した費用に関しては、課税対象になるものと課税対象外になるものが存在します。

対象費用課税の有無
展示会や抽選会費用課税対象
情報提供料課税対象
スタンプ券(加盟店)スタンプ券の購入とスタンプ券による商品引き渡しは課税対象
スタンプ券の無償配布とスタンプ枚数に応じた決済は課税なし
販売奨励金課税対象だが条件によって一部控除
見本品や試供品提供見本品や試供品の購入は課税対象
自社で作成して配る場合は課税なし(材料等は課税対象)
輸出免税取引課税対象外

上記のうち販売奨励金を支払った場合に関しては「売上に係る対価の変換等」に当てはまるため、販売奨励金に係る消費税分を課税標準額の消費税から差し引きます

勘定科目「販売促進費」の仕訳例

販売促進費の仕訳も、他の支出での仕訳と大きく変わりません。支出が発生した際は借方に費用計上し、貸方は普通預金や現金など支払いに関係する資産の減少となります。以下では販売促進費を支払った場合の仕訳例をご紹介します。

<販売促進費を支払った場合>

借方貸方
販売促進費200,000 普通預金 200,000 

もし広告宣伝費や交際費が混ざっている場合は、混同しないように注意しましょう。
例えば「展示会に25万円で出品した」「展示会場内でパンフレットを20万円分配った」「展示会終了後取引先との会食で5万円支払った」が同じ日に発生した場合は、それぞれに合った仕訳を行います。

<展示会に関わる費用の仕訳を行った場合>

借方貸方
販売促進費250,000 普通預金 450,000 
広告宣伝費200,000 現金   50,000  
交際費  50,000  

また、例えば宣伝用に制作したサンプルが余って在庫となった場合は、余った分を資産として計上しなければなりません。

<40万円分のサンプル品を制作した>

借方貸方
貯蔵品 400,000普通預金400,000

<30万円分は配れたが諸事情で10万円分が残った>
借方貸方
販売促進費300,000 貯蔵品  300,000 

販売促進費のポイントをおさえよう!

販売促進費は広告宣伝費や接待費との区別が難しいですが「直接的に相手にアプローチして宣伝するための費用」と考えられればイメージしやすくなります。
とくに法人は交際費の計上に上限があるため、正確な会計処理と節税を行う意味でも、正しく仕訳できるようにしましょう。
仕訳自体は複雑ではありません。広告宣伝費や交際費と混合しないように注意してください。

よくある質問

販売促進費とは?

商品や製品、そのほかのサービスに関する販売業務の効果上昇のために支出する費用の総称です。詳しくはこちらをご覧ください。

広告宣伝費や交際費との違い

明確な違いや法的な基準が定められているわけではありませんが、おおまかに「消費者や取引先との関わりが間接的かどうか」が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

販売促進費の仕訳例

他の支出の仕訳と同様に、借方に費用計上します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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