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  • 作成日 : 2020年11月6日

繰延税金資産とは?取り崩しや回収可能性、仕訳について解説

企業会計上の収益と費用、税務会計上の益金と損金では、それぞれ認識にあたって期間的なズレが生じることがあります。「繰延税金資産」とは、2つの会計の間で期間的なズレが生じた場合に、企業会計上の税務費用を適切に対応させる会計処理「税効果会計」で使用する会計科目です。この記事では、繰延税金資産の概要や取り崩しのほか、仕訳や計算、回収可能性まで、税効果会計で知っておきたい繰延税金資産について解説します。

繰延税金資産とは

繰延税金資産とは、税効果会計に関係する会計科目です。将来減算一時差異について、将来の課税所得から減額される額を資産として計上したものを指します。実質は、法人税等の先払いの額になります。

ここで、いくつか会計に関する専門用語が出てきましたので、ひとつずつ解説していきたいと思います。

税効果会計

まず、繰延税金資産に関連する税効果会計についてです。会計にはさまざまな種類があります。代表的なものが、企業会計と税務会計です。企業会計は企業内部や外部への報告を目的としたもので、税務会計は法人税等の税務申告を目的とした会計になります。

永久差異と一時差異

企業会計と税務会計で異なるのは、企業会計の収益と費用、税務会計の益金と損金の認識です。収益と益金・費用と損金はほぼ同じですが、両者で異なる部分もあり、そのうちでズレが解消されないものを「永久差異」認識時期が違うだけで将来的に解消されるものを「一時差異」と言います。

税効果会計で会計処理を行うのは、企業会計と税務会計のズレ(差異)のうち、一時差異についてです。認識時期がずれることで、損益計算書上の法人税の額が当期純利益に対応しなくなることを防ぐために、税効果会計により会計処理を行います。

繰延税金資産は、税効果会計の一時差異のうち、将来、課税所得が減額されると予測される額を表します。これは、税務会計上の計算で利益が企業会計上の計算よりも上がったことによるズレです。賞与引当金貸倒引当金の法定限度額の超過分が損金に算入されないことなどが、繰延税金資産の発生原因にあげられます。

【税効果会計と繰延税金資産の例】
税効果会計と繰延税金資産の例

※上の表は税務会計の課税所得300と企業会計の利益200の差異がすべて将来減算一時差異だった場合で、法定実効税率30%だったときの、簡単な数値例です。

繰延税金資産の取り崩し

取り崩しとは何か

繰延税金資産は、将来、企業会計と税務会計のズレ(ズレのうち将来減算一時差異)が解消された時点で、会計上も解消する処理を行います。しかし、ズレの解消がまだ到来していない段階で、繰延資産の取り崩しを行うことがあります。

繰延税金資産の取り崩しとは、資産として計上された繰延税金資産の全額、または一部を会計上で解消してしまうことです。

なぜ取り崩しが起きるのか

繰延税金資産の解消を待たず、取り崩しを行うのは、将来減算する課税所得が見込めなくなったときです。減算が見込めないとは、将来減算するだけの課税所得が計上されないときになります。

「減算可能な課税所得が計上されないとき」というのは、これまでどおりの業績を上げられなくなった、著しく業績が低迷するような事態に陥ったときを指します。

例えば赤字になった場合、税金が当初予想していたように発生しないと見込まれ、繰延税金資産として資産に税金の先払いを計上することの意味はなくなります。資産に上げていても、ズレの解消があった時点で減額できる分がなければ、繰延税金資産の資産的価値はないためです。

そのため、将来減算できる課税所得がないと見込んだ時点で、繰延税金資産の取り崩しを実行することになります。

近頃は、新型コロナウイルス感染症の影響で業績が落ち込み、繰延税金資産の取り崩しを実行している大企業も多くみられます。

取り崩しが起こった際の影響

上場企業などで、たびたび繰延税金資産の取り崩しが取り上げられることがあります。これは、繰延税金資産の取り崩しが決算に影響を与えるためです。

繰延税金資産の取り崩しでは、資産から繰延税金資産の取り崩しの対象となる額を減らすと同時に、取り崩した分を費用として処理する会計処理を行います。つまり、繰延税金資産を取り崩すということは、費用を増加させるということです。

ただし、費用を増加させるといっても、取り崩す繰延税金資産が少額ならば大きな影響はありません。注意すべきなのは、繰延税金資産の取り崩しが多額になったときです。

多額の繰延税金資産が取り崩されて費用に計上されると、もともとは赤字ではなかった企業が、その影響で最終赤字を計上することがあります。企業にとっては、繰延税金資産取り崩しの下方修正によって、本来より赤字が拡大してしまうことが問題なのです。

繰延税金資産の計算方法

繰延税金資産は、将来、課税所得から減算される額を示したものだと説明しました。繰延税金資産の計算にかかわるのは法人税等です。「法人税等」とは、法人税をはじめ、均等割を除く住民税、課税標準を利益とする事業税の所得割、地方法人特別税のことを指します。

繰延税金資産の対象になるもの、ならないもの

繰延税金資産の対象は、法人のかかわるすべての税金ではなく、利益を課税標準にした税金に限られます。前述したように、繰延税金資産と関連する税効果会計は、当期純利益と法人税等を対応させることを目的としているためです。

繰延税金資産の対象にならない主なものは、以下の通りです。

  • 利益を課税標準としない住民税の均等割
  • 課税基準が収入の事業税
  • 事業税の付加価値割と資本割
  • 事業所税

また、繰延税金資産は将来減算一時差異の全額は計上しません。繰延税金資産として計上するのは、法人税等に対応する部分です。

法人税等に対応する部分の計算

法人税等に対応する部分は、繰延税金資産の対象になる税金の法定実効税率によって求めます。法定実効税率とは、税効果会計の対象になる税金の税率を総合したものです。

法定実効税率 = {法人税率 ×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率} /(1+事業税率)

※上記の計算式は地方法人特別税(令和元年9月30日に廃止)を含めない計算式です。

繰延税金資産は、将来減算一時差異に法定実効税率を乗算して求めます

繰延税金資産の仕訳

繰延税金資産の仕訳では、繰延税金資産法人税等調整額の会計科目を使用します。

繰延税金資産は、先に説明したように、将来減算一時差異のうち、将来、課税所得の減算の効果がある額で、貸借対照表の資産になります。法人税等調整額は、税引前当期純利益を加減して法人税等の額を調整するための会計科目です。

繰延税金資産はどのような場面で使われ、どのように仕訳をするのか、仕訳例をいくつか見ていきましょう。

(例1)企業会計上、貸倒引当金に繰り入れた額のうち、税法上、貸倒引当金繰入限度超過額にあたる50万円は損金に算入されなかった(法定実効税率は30%とする)。

借方貸方
繰延税金資産150,000法人税等調整額150,000

繰延税金資産の対象になるのは、将来減算一時差異に該当する、貸倒引当金繰入限度額を超えた50万円です。しかし、50万円をそのまま計上すると、将来減算一時差異の額をそのまま計上することになります。繰延税金資産としたいのは、将来、減算効果がある額ですので、50万円に法定実効税率の30%をかけた額を繰延税金資産として計上します。繰延税金資産の相手科目は、法人税等調整額です。

上記の貸倒引当金について、税務上の損金として認識されるなどで繰延税金資産が解消されたときは、以下のように逆仕訳をします。

借方貸方
法人税等調整額150,000繰延税金資産150,000

(例2)税法上、損金に算入されなかった賞与引当金100万円を税効果会計で処理した(法定実効税率は30%とする)。

借方貸方
繰延税金資産300,000法人税等調整額300,000

賞与引当金は、企業会計上は費用として認識しますが、税法上は損金として認識しません。損金になるのは、賞与引当金計上時ではなく、賞与が実際に支払われたときです。上記の例では、賞与引当金100万円のうち法定実効税率をかけた30万円が繰延税金資産になります。

賞与引当金が計上された翌年、賞与が支払われたとき(繰延税金資産が解消されたとき)に行う仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
法人税等調整額300,000繰延税金資産300,000

繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産は、企業が業績不振などに陥った場合、取り崩すこともあると説明しました。繰延税金資産を取り崩すのは、繰延税金資産の回収可能性がかかわってくるためです。

回収可能性とは何か

繰延税金資産の回収可能性とは、繰延税金資産を回収できるかどうかということです。繰延税金資産は、将来、課税所得を減算する効果が認められるものと説明しましたが、解消時に減算できる対象がなければ、回収は不可能です。

そのため、繰延税金資産の対象となる将来減算一時差異が生じたからといって、必ずしも税効果会計を適用するわけではありません。回収可能と見込める場合にのみ、繰延税金資産を計上することが認められています。

回収可能性の要件

繰延税金資産の回収可能性を測るには、まず課税所得による十分性を検討する必要があります。課税所得の十分性とは、収益力が十分にあって、一時差異などを加減しても十分に課税所得が残るかということです。課税所得がタックス・プランニングによって確保できるかということを指します。

タックス・プランニングとは、一時差異の解消見込み時期や有形固定資産の売却の予定など、税金が大きく関係してくる計画のことです。

繰延税金資産を資産計上する場合は、直近の業績だけでなく、タックス・プランニングも考慮に入れて回収可能性を検討し、回収が認められる場合に限り計上するよう、慎重に判断しなければなりません。

さらに、繰延税金資産を資産に計上する場合は、課税所得や業績予測による企業の分類も確認しておく必要があります。

過去3年間、課税所得が十分にあり、業績悪化など著しい変化が認められない企業については、退職給付引当金などの長期一時差異や5年を超える見積りの一時差異も資産計上可能です(繰延税金資産に該当する範囲はすべて資産計上が可能です)。

しかし、過去3年間に税務上の欠損金が生じたなど、以下の「回収可能性についての企業分類表」企業分類の1~5のうち、2~4の企業分類に該当する場合は、計上できる繰延税金資産の範囲が限定されます。なお、重要な税務上の欠損金が生じている場合など企業分類の5に該当する場合は、繰延税金資産の計上は一切認められません。

繰延税金資産の回収可能性には、以上のようにさまざまな要件がありますので、将来の状況も予測して、繰延税金資産として計上できるかどうか判断する必要があります。

【回収可能性についての企業分類表】

分類要件回収可能性が認められる範囲
分類1・過去3年間と当期末に将来減算一時差異を十分に上回る課税所得がある
・経営環境に著しい変化はないと見込まれている
全額が回収可能性を認められる
分類2・臨時的な原因を除き過去3年間と当期末に安定して課税所得が生じている
・経営環境に著しい変化はないと見込まれている
・過去3年間と当期末までに重要な税務上の欠損金がない
スケジューリング不能なものを除き原則回収可能性が認められる
(ただし、スケジューリング不能であっても回収可能性について合理的な根拠をもって説明できるものについては例外的に認められる)
分類3・臨時的な原因を除き過去3年間と当期末の課税所得が大きく増減している
・過去3年間と当期末までに重要な税務上の欠損金がない
おおむね5年以内のスケジューリングに基づき原則回収可能性が認められる
(ただし、5年超であっても回収可能性について合理的な根拠をもって説明できるものについては例外的に認められる)
分類4以下のいずれかを満たし、翌期に一時差異等加減算前課税所得が見込まれる
・過去3年間と当期末までに重要な税務上の欠損金が生じた
・過去3年間に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れがあった
・当期末に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる
原則回収可能性が認められるのは翌期の見積課税所得の範囲内
(ただし、翌期以降のもののうち、回収可能性について合理的な根拠をもって説明できるものについては、その程度に応じて分類2または分類3に準じた取り扱いが可能)
分類5・過去3年と当期末すべてで重要な税務上の欠損金が生じている
・翌期も重要な税務上の欠損金が見込まれる
回収可能性はいずれも認められない
その他分類1~5のいずれにも該当しない場合
過去の課税所得の推移など総合的に判断し、1~5のうちもっともかい離の少ないものに分類する
1~5の分類に準じる

回収可能性が失われるとき

繰延税金資産の回収可能性が失われるときとは、回収可能性の見込みがなくなったときです。繰延税金資産の計上は毎期見直しが必要とされており、回収の可能性が消えた時点で繰延税金資産を取り崩すことになっています。

回収可能性が失われるときとは、著しく業績が悪化したときや課税所得が見込めなくなったときです。見直しを行い、回収可能性が失われた部分について、取り崩しの処理を行います。

繰延税金資産は回収可能な場合にのみ資産計上できるもの

企業会計と税務会計の期間的なズレを合理的に対応させるために、税効果会計が存在します。繰延税金資産は、税効果会計により生じる会計科目です。繰延税金資産は将来課税所得を減算する資産になるため、回収可能性があるかどうかを慎重に判断した上で計上すること、回収不能になった時点で取り崩すよう毎期見直しすることが求められています。回収不能な場合は資産への計上が認められない会計科目ですので、注意が必要です。計上にあたって不明な点があれば、専門家である公認会計士と相談の上、適切な判断をされることをお勧め致します。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岩波 竜太郎 (公認会計士 / 税理士 / 経営学修士)

公認会計士・税理士・経営学修士。大手監査法人、ベンチャー企業を経て、2015年に独立開業。大手監査法人での海外経験や管理本部長としての幅広い経験を武器に会計アドバイザリー業務を主たる業務として行うとともに、東証1部上場企業である株式会社OrchestraHoldingsの社外役員をはじめ、経営アドバイザーとして複数の企業に関与。Webメディア等の記事執筆・監修業務も積極的に行っている。

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