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  • 更新日 : 2021年9月15日

負ののれんの発生原因から仕訳、会計処理など解説

負ののれんとは?発生原因から仕訳、会計処理などわかりやすく解説

経営基盤の強化や後継者問題解決の方法として、M&Aが注目を浴びるようになりました。M&Aとは企業買収や企業合併のことで、広義では資本業務提携や技術などの業務提携を含みます。M&Aによって生じるのが「のれん」です。のれんとは、目には見えない企業の超過収益力のことです。一方、M&Aによって「負ののれん」が発生することもあります。負ののれんとは、その価値がマイナスであるのれんのことです。今回は負ののれんに焦点を当てて、発生益を認識する際の会計処理や、その仕訳などについて解説します。

負ののれんとは

経営基盤の強化や後継者問題の解決などを目的として、企業の買収や合併(広義では業務提携を含む)といったM&Aが盛んに行われるようになりました。企業の買収や合併をともなうM&Aによって発生するのが、資産として計上する「正ののれん」と特別利益として認識する「負ののれん」です。

のれんとは

のれんとは
のれん(正ののれん)は、「超過収益力」と表現されます。上の図が示すように、買収した企業の純資産を超えるM&Aの対価(買収価格)と純資産の差額です。

純資産とは、資産から他人資本を差し引いた、会社に帰属する自己資本のことです。その大半は、株主から払い込まれた額(または出資金)と、これまでの利益の積み上げの中で配当されていない額です。これらは、企業の正味財産といえます。では、企業の正味価値よりも高い額でM&Aが成立するのはなぜでしょうか。それは、目に見える純資産以外にも買収する企業のブランド力や顧客など、目に見えない価値があるからです。通常、M&Aは企業の価値を織り込んで行われます。

そのため純資産よりも高い額でM&Aが成立し、純資産を超過した額が「のれん」として評価されるのです。

負ののれんの意味

負ののれんの意味

負ののれんとは、買収した企業の純資産よりも低いM&Aの対価と純資産との差額です。詳細は次項で説明しますが、純資産額よりも低い対価でM&Aが成立するのは、買収や合併の対象になる企業に何らかのマイナス要因があるからです。

企業をM&Aによって取得する企業にとっては、正味財産よりも低い価格で取得できることになります。負ののれんの会計処理の部分で詳しく説明しますが、負ののれんが利益として認識されるのはこのためです。

負ののれんの発生原因

なぜ純資産よりも低い価格でM&Aが成立し、負ののれんが発生するのでしょうか。ここでは、負ののれんが発生する原因をいくつか取り上げます。

  • 訴訟リスクを抱えている
  • トラブルなどによって買収される企業に訴訟リスクがある場合、将来損害賠償を請求されるおそれがあります。その場合、損害賠償金を負担するのは買収した企業です。そのため、将来のリスクを考慮して、純資産よりも低い額でM&Aが成立することがあるのです。

  • 決算書には表れないリスクがある
  • 会社が持つ経済的資源や価値を決算書上で適切に表現すべく、将来の損失や費用を見越して引当金などの会計処理が行われますが、決算書上ですべての資産やリスクを表現できるわけではありません。例えば、決算書には記載されないものに偶発債務があります。偶発債務とは、借金の保証人や手形の裏書譲渡などのことで、引当金よりも発生の可能性が低いとされます。発生の可能性が高くないとはいえ、原因が消えない限りリスクは存在し続けます。M&Aでは、決算上には表れないリスクを評価することで、負ののれんが発生することがあります。

  • 買収される側の思いも反映される
  • M&Aは、より高い額を提示した企業が買い手になるとは限りません。買収する企業の今後の経営方針やM&A後の従業員の処遇などについて、買収する側と買収される側との意見が合わないと成立しないことがあります。「対価が純資産を下回っていても、希望に応じてくれる会社に買い取ってもらいたい」という経営者の思いから、負ののれんが発生することもあるのです。

のれんの償却とは

負ののれんについて説明しましたが、ここでは通常の「のれん」(正ののれん)についてどのような会計処理を行うか、確認してみましょう。

超過収益力である「のれん」は、目に見えない会社の価値です。そのため、のれんは取得時に貸借対照表の資産の部(無形固定資産)に計上されます。

他の無形固定資産と同じく「時間の経過にともなって費消され、各期の収益に貢献する」と考えますので、最大で20年間にわたってのれんを償却していきます。

のれんの償却の概要と償却時の仕訳については、以下の記事で詳しく解説しています。

負ののれんの事例:RIZAP

ここで、もう一度負ののれんに戻ります。負ののれんとは何か、どのような問題があるか、負ののれんについての理解を深めるために、RAIZAP(ライザップ)の事例を取り上げます。

RAIZAPは、2018年まで順調に利益を上げていました。しかし、2019年の連結決算で大幅な赤字を出します。2018年3月の営業利益は約117億円でしたが、2019年3月には約93億円の赤字に転落したのです。(※数値はRAIZAP有価証券報告書より)連結業績予想が下方修正され、大幅な赤字が予想されたことから、それまで上昇していたRAIZAPの株価は大幅に下落しました。

順調に利益を出していたRAIZAPは、なぜ大幅な赤字に転落したのでしょうか。答えは「負ののれん」です。2018年11月の下方修正の報告と新規M&Aの凍結を発表するまで、RAIZAPが続けていたM&Aが決算書上の利益を増加させていたのです。

通常、M&Aでは正ののれんが計上されるケースがほとんどですが、RAIZAPは経営などに問題のある企業を多く買収していたため、多額の負ののれんが計上されていたのです。次項の会計処理でも説明しますが、負ののれんは取得した期の営業利益として処理されます。日本基準では特別利益ですが、RAIZAPはIFRSの基準を採用していたため特別利益には計上されず、M&Aを進めることで営業利益が増加しているように見える決算書になっていたのです。

このように、負ののれんはIFRSの基準を採用している場合は営業利益として計上されることから、その額が多いと営業利益が良く見えてしまうという問題があります。

負ののれんの会計・税務処理と仕訳

のれんは貸借対照表上の資産の部に計上されますが、負ののれんは貸借対照表には計上されません。会計上、取得時に特別利益として認識するためです。そのため、複数年にわたって負ののれんを償却するといった処理も行いません。

一方で税務上の負ののれんは、差額負債調整勘定という差額概念として認識されます。また、税務上の負ののれん(差額負債調整勘定)は、引当金などの未確定債務などの影響で、会計上の負ののれんとは必ずしも一致しません。会計上は取得時に特別利益として処理しますが、税務上は5年にわたって益金として処理する点も異なります。

会計上の処理と税務上の処理が異なるので、注意が必要です。

負ののれんの仕訳例

ここでは、会計上の負ののれんの仕訳について説明します。

借方
貸方
(資産)
×××
(負債)
(対価)
負ののれん
×××
×××
×××

上記は、ある企業を総資産額よりも低い価格で取得したときの仕訳です。(資産)には取得した企業の各資産の項目、(負債)には取得した企業の各負債の項目、(対価)には現金など取得の方法や対価の勘定科目と金額を記入します。負ののれんは、「負ののれん発生益」などと表現されることもあります。

(仕訳の例)現金預金100万円、建物2,000万円、借入金1,000万円の企業を現金1,000万円で取得した。

借方
貸方
現金預金
1,000,000円

借入金

10,000,000円

建物
20,000,000円
現金
10,000,000円

負ののれん
1,000,000円

日本の会計基準とIFRSでの会計処理の違い

ここでは税務上の違いではなく、日本基準とIFRSにおけるのれんの会計処理の違いについて説明します。

IFRSとは、国際財務報告基準のことです。日本の会計基準とIFRSでは、のれんの会計処理が異なります。

日本の会計基準では、のれん(正ののれん)は20年以内に定額法などの合理的な方法で償却することとしています。のれんとして認識した価値は、時間の経過とともに徐々に減少していくと考えるためです。

一方、IFRSではのれんを償却しません。代わりに、毎期のれんの減損テストを行って見直します。のれんの価値の消費パターンは、一概に定義できないと考えるためです。

負ののれんの会計処理も、日本の会計基準とIFRSでは異なります。日本の会計基準は営業利益と特別利益の区分があるため「負ののれん」は特別利益として計上しますが、IFRSには営業利益と特別利益の区分がありません。そのため、日本基準での特別利益も含めて、すべて営業利益として計上されます。

RAIZAPのように、日本国内でもIFRSに合わせて財務諸表を作成する企業が増えています。決算書でのれんを確認する際は、「どちらの基準で会計処理が行われているか」にも注目するとよいでしょう。

負ののれんは発生益として特別利益で会計処理する

M&Aで企業買収が行われる際に、負ののれんが発生することがあります。負ののれんは、買収される企業の純資産を下回る対価でM&Aが成立したときの、純資産との差額です。負ののれんは、発生した期に特別利益として会計処理します。これは適切な処理ではありますが、M&Aが多い会社は負ののれんによる利益計上によって、利益が多く見えることがあるため注意が必要です。企業分析の際は、利益の内容もよく確認することをおすすめします。

よくある質問

負ののれんとは?

買収した企業の純資産よりも取得対価が低い場合の、取得対価と純資産とのマイナスの差額のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

負ののれんの原因は?

負ののれんは決算書上には表れないリスクや、買収される側の思いなどから発生します。詳しくはこちらをご覧ください。

負ののれんの会計処理は?

負ののれんを認識したときは、当期の特別利益として処理します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。