• 更新日 : 2024年8月8日

発注書や注文書の保存期間と方法は?2023年の法改正も解説

発注書や注文書は国税関係書類に該当するため、一定期間の保存が義務付けられます。また、電子帳簿保存法の適用は任意で、これまで紙に印刷して保存する方法が広く用いられてきましたが、2022年1月から施行された電子帳簿保存法の改正により、一部は電子保存が義務付けられることになりました。さらに、2023年度にも法改正が行われ、2024年1月から新たな要件が加わります。

法改正によって発注書や注文書の保存にどのような影響があるのでしょうか。紙や電子データによる保存方法、保存期間、発注書や注文書の電子化に関連して押さえておきたい2022年1月から施行された電子帳簿保存法の改正ポイントと、2023年度の法改正(2024年1月1日以降の取引に適用)について解説します。

発注書や注文書の保存期間

発注書や注文書を含む国税関係帳簿書類については、一定期間の保存が法律により義務付けられています。法人の保存期間、個人の保存期間、保存期間を守らず書類を保存しなかった場合はどうなるのか、順に解説していきます。

法人の場合

法人は、帳簿や帳簿にかかわる取引関連の書類について、確定申告書の提出期限の翌日から7年保存することが定められています。

青色申告書を提出した事業年度に欠損金が生じた場合及び青色申告書を提出しなかった事業年度に災害損失欠損金が生じた場合の保存期間は10年間となります。

個人の場合

個人事業主については、注文書や発注書などの書類を5年保存することが義務付けられています。赤字で所得税の確定申告を行わなかった事業年度の注文書や発注書も保存義務の対象になりますので注意しましょう。

保存しなかった場合

貸借対照表損益計算書などの計算書類、帳簿や事業に関する重要書類は、会社法において10年の保存期間が定められています。発注書や注文書はそれ以外の書類と考えますので、先に説明した法人税法上の保存期間7年(青色申告の事業年度に欠損金が出た場合などは10年)を気にしていれば問題ないです。

会社法の場合は違反すると過料に処される可能性がありますが、法人税法上の保存義務を守らなくても罰則はありません。

ただ、罰則はないものの、規則違反時のペナルティとして青色申告者の承認を取り消されることがあります。また、発注書や注文書などが適切に保存されていないと取引の証明ができませんので、法人税や所得税、消費税の計算において内容が否認される可能性があります。規定されている保存期間は守って書類を保存するようにしましょう。

発注書や注文書の保存方法

電子取引で授受した発注書や注文書を保存する場合、紙面で受け取った発注書や注文書をスキャンして保存する場合、原本をそのまま保存する場合について、それぞれの保存方法や要件を紹介します。

電子取引の場合

電子取引により受け取った発注書や注文書、または送信した発注書や注文書については、電子帳簿保存法の改正により電子データでの保存が義務付けられました。2023年12月31日まではデータを印刷して保存することも認められますが、猶予期間を過ぎたらすべての法人や個人事業主は、電子取引によるデータを電子保存することが義務付けられます。

電子取引によるデータの保存方法としては、やり取りしたシステム上での保存、PDFファイルなどでの保存、画面のスクリーンショットによる保存、などがあります。いずれの方法を採用するにしても、以下の保存要件を満たさなくてはなりません。

  • 改ざん防止措置をとること(タイムスタンプの付与、履歴が残るシステムでの保存など)
  • 日付、金額、取引先で検索できるようにすること(索引簿の作成や規則的なファイル名の付与も可)
  • ディスプレイやプリンターを備え付けること

電子帳簿保存法に対応したシステムを活用すると、データの一括管理もできますし、業務効率化にも役立つでしょう。

2023年の改正で、上述した猶予措置は2023年12月31日で廃止されますが、相当な理由がある・電子取引データのダウンロードの求めに応じるなどの要件を加えた、新たな猶予措置が設けられます(※2024年1月1日以後に行う電子取引から適用されます)。

紙をスキャンして保存する場合

電子帳簿保存法により、郵送など紙面で受け取った発注書や注文書、あるいは郵送で送付した発注書や注文書については、スキャンして電子保存できます。

スキャンして電子化したい場合は、スキャナやスキャン機能のあるコピー機などを準備しておく必要があるでしょう。また、以下に取り上げる一般書類のスキャナ保存の要件を満たしたうえで保存しなくてはなりません。

  • 解像度200dpi以上、赤・青・緑それぞれ256階調以上(グレースケールも可)でのスキャン
  • 入力期間(最長2か月+7営業日)内の保存とタイムスタンプの付与
  • 解像度や階調情報の保存
  • ヴァージョン管理(削除や訂正の履歴が残るシステムなどの利用)
  • 帳簿との関連性を相互に確認できるようにしておく
  • 14インチ以上のディスプレイやプリンターの備え付け
  • 取引日や金額、取引先など一定の検索機能の確保

スキャナ保存には重要書類と一般書類の区分があり、発注書や注文書が含まれる一般書類は、重要書類よりは要件が緩和されています。しかし、電子取引データの保存と比べると要件が多いため、電子帳簿保存に対応する機器やシステムを導入するケースも見られます。

2023年の法改正では、スキャナで読み取った際の解像度や階調・大きさの情報の保存が不要となるなど、スキャナ保存の要件緩和措置が設けられています(※2024年1月1日以後に行う電子取引から適用されます)。

紙の場合

電子保存は不正防止の観点などから複数の要件が定められていますが、従来からの保存方法である紙の保存には保存にあたっての要件は特にありません。ただし、税務署などから提出を求められたとき、すぐに探し出せるようにしておく必要がありますので、取引先ごとあるいは年度ごとに発注書や注文書の原本をまとめてファイリングするケースが多いです。

2022年・2023年の改正とは

電子帳簿保存法は、2022年1月1日から改正後の電子帳簿保存法が施行されています。改正により、これまで必要だった所轄税務署長への事前承認が廃止されたほか、タイムスタンプや検索要件の緩和、スキャナ保存の適正事務処理要件の廃止、電子取引の電子保存義務化と2年間の猶予期間の設置が行われています。中でも、電子取引の電子保存義務化は2024年1月1日以降、猶予期間中の措置が認められなくなるため、これに合わせて事業者は電子取引における電子保存の完全移行を行わなければなりません。

2023年の法改正(2024年1月1日以降の電子取引から適用)では、相当の理由があり、保存要件に従って電子取引データを保存できなかった場合の新たな猶予措置が講じられています。

また、スキャナ保存制度の要件緩和措置や、過少申告加算税の軽減措置の対象となる帳簿の明確化などが行われています。

2022年1月から施行された電子帳簿保存法の改正ポイントは、こちらの記事で詳細をご覧ください。

発注書と注文書はケースごとに保存方法を把握しておこう

発注書や注文書などの取引にかかわる書類は、電子取引によるものを電子保存するか、紙のデータをスキャンして電子保存するか、紙のまま保存するかによって保存方法が変わってきます。電子保存する場合は、一定の要件を満たして保存しなければなりません。特に電子取引で授受した発注書や注文書は、改正により電子保存が義務付けられることになりましたので、保存要件をよく確認しておきましょう。

よくある質問

発注書や注文書の保存期間は?

法人の場合は7年(青色申告をした事業年度で欠損金が生じた場合などは10年)、事業や不動産の貸付を行う個人は5年保存しておかなくてはなりません。詳しくはこちらをご覧ください。

発注書や注文書の保存方法は?

紙の原本を保存する方法、原本をスキャンして電子保存する方法、電子データで授受したデータを電子保存する方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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