- 作成日 : 2024年8月19日
短期借入金とは?長期借入金との違いや仕訳の解説
短期借入金とは、返済期限が1年以内に到来する借入金のことです。この記事では、長期借入金と短期借入金の違いや、短期借入金の適正性を測る流動比率と当座比率、短期借入金のパターン別の仕訳について解説します。
短期借入金とは
短期借入金とは、借入金のうち1年以内に返済の期日が到来するものを指します。1年以内の返済を約束した借入金だけでなく、ワンイヤールールにより前期まで長期借入金だったもののうち返済期限が1年以内になったものも含まれます。
短期借入金に該当するのは、銀行などの金融機関から融資を受けた残額や、関連会社からの借入金の残額、役員個人から借りた金銭などです。当座借越の残高も短期借入金に含まれます。
短期借入金と長期借入金の違い
長期借入金は短期借入金以外の借入金で、返済期限の到来まで1年を超えるものです。貸借対照表上では、短期借入金は流動負債の部に、長期借入金は固定負債の部に表示されます。
短期借入金と長期借入金の大きな違いは、返済の原資です。短期借入金は運転資金を想定して借り入れるため、通常は売掛金の回収額を原資に返済します。長期借入金は設備投資を想定して借り入れるため、取得資産の減価償却額に起因するキャッシュフローが主な返済原資です。
短期借入金の適切性を判断するポイント
短期借入金をうまく活用すれば、企業の成長に大きく貢献します。借入金により資金に余裕が生まれることで、販売数を増やしたり、取引先を拡大したりできるためです。
しかし、短期借入金が多すぎると期日までに返済できなくなるおそれがあります。短期借入金が無理のない範囲に収まっているかという適正性を判断する方法に、流動比率を確認する方法と当座比率を確認する方法があります。
流動比率で確認する
流動比率は、流動資産と流動負債を比較した割合です。流動資産には現金や預金の他、売掛金や棚卸資産などが含まれます。流動負債には短期借入金の他、買掛金や支払手形などが含まれます。いずれも1年以内に現金化、または支払いが予定されるものです。
流動比率は流動負債を流動資産が上回っている状態、つまり100%を超えている状態が理想です。流動資産のほうが多いということは、短期的な支払能力があるということです。短期借入金は1年以内に返済期限が到来する借入金なので、流動比率を計算することで返済期限内に無理なく支払いが行えそうかがわかります。
当座比率で確認する
当座比率は、当座資産と流動負債を比較した割合です。流動比率は流動資産で支払能力を測定する指標ですが、当座比率は当座資産で支払能力を測定します。
当座資産とは、現金や預金、売掛金などの流動資産の中でも流動性の高い資産のことです。棚卸資産を除いた流動資産で計算するため、棚卸資産が売れないことによるリスクを取り除いて支払能力を測定できます。
短期借入金の仕訳
短期借入金の処理にはどのようなものがあるのか、仕訳例をいくつか紹介します。
(仕訳例:手形貸付)
約束手形を振り出し、手形を担保として50万円の融資を受けた。借入金は同日に当座預金に振り込まれている。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
当座預金 | 500,000円 | 短期借入金 | 500,000円 |
融資を受ける事業者が、振り出した約束手形を担保に金銭を借り入れる方法を手形貸付といいます。返済日は、担保となっている約束手形の満期日です。約束手形の振り出しではあるものの、借入金としての性質を有するため、短期借入金として仕訳をします。
(仕訳例:返済時)
金融機関からの短期借入金100万円を普通預金から返済した。利息5万円も同時に支払った。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
短期借入金 | 1,000,000円 | 普通預金 | 1,050,000円 |
支払利息 | 50,000円 |
短期借入金の返済をしたときは、借方は短期借入金で仕訳をします。返済と同時に利息を支払ったときは、利息分は支払利息として仕訳をします。
(仕訳例:借換え)
短期借入金について利息5万円を支払い、同額を借り換えた。借換え後の借入金は1年以内に返済期限が到来するものである。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
短期借入金 | 950,000円 | 短期借入金 | 1,000,000円 |
支払利息 | 50,000円 |
借換えをしたときは、返済期日が1年未満のときは短期借入金、返済期日が1年を超えるときは長期借入金に振り替えます。
(仕訳例:当座借越)
当座借越契約により20万円を借り入れた。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
当座預金 | 200,000円 | 短期借入金 | 200,000円 |
当座借越が行われたときは、短期借入金の代わりに、当座借越の勘定科目で仕訳をする方法もあります。また、短期借入金勘定も当座借越勘定も使わずに、当座預金のみで仕訳をする方法もあります。
(仕訳例:長期借入金の振り替え)
長期借入金200万円の返済期日が1年以内になった。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期借入金 | 2,000,000円 | 短期借入金 | 2,000,000円 |
ワンイヤールールにより、返済期限が1年未満になった長期借入金は、短期借入金に振り替えます。
短期借入金は適正性も確認しよう
短期借入金の仕訳には、手形貸付や借換え、当座借越などさまざまなパターンがあります。借入時や返済時の仕訳以外も確認しておきましょう。
短期借入金を利用する際は、適正な範囲内で借り入れることが重要です。短期借入金の支払能力を確認する指標に、当座比率や流動比率があります。いずれも、100%を下回らないようにコントロールしながら短期借入金を活用しましょう。
借入期間の長短に関係なく、借入金がある場合、企業は返済スケジュールをしっかりと管理することが重要です。返済期日を失念することがあると信用に傷がつく可能性があります。
また、金融機関との信頼関係を築くことも重要であり、着実な返済の実績を積むことは将来の融資にも大きく影響します。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
不動産業の会計・経理業務
不動産の経理業務は、言葉にすると非常にハードルが高そうに思えます。賃料はまだ良いとしても敷金や礼金、滞納や前納の仕訳のタイミング、さらには消費税が課税されるかどうかの基準など、分からないことが多数あるでしょう。 今回は不動産業の経理業務を担…
詳しくみる中小企業の人手不足にどう対応する?経営者が知っておくべき3つの道
景気回復に伴って浮き彫りになってきた中小企業の人手不足問題。 ここではその現状を解説するとともに、企業が取るべき3つの対応策、すなわち「攻め」の採用活動、女性雇用促進、外国人雇用促進について考えます。 人手不足している中小企業は50.2% …
詳しくみる【これは軽減税率?】ぶどう狩りや梨狩り。その場で食べると軽減税率の対象外ってほんと?
2019年10月1日からスタートした消費税の軽減税率制度。主に「飲食料品」は消費税軽減税率8%の対象になりますが、飲食のシチュエーションなどによっては適用対象になりません。 本シリーズ『これは軽減税率?』では、事業者のみなさんが軽減税率につ…
詳しくみる【公益法人会計基準とは】法人税が非課税になるのには理由があった
公益法人は税制面で優遇されています。法人なら支払うべき法人税がなぜ非課税になるのでしょうか? 公益法人は税制面で優遇されるため財務状況が厳しく審査されています。(これを公益法人会計基準といいます) 税制優遇の光と影について解説します。 公益…
詳しくみるイノベーションボックス税制とは?控除対象や事業者への影響を解説
イノベーションボックス税制では2025年〜2032年の間に開始した事業につき、特定の特許権や著作権から生じたライセンス料や譲渡益に所得控除が適用されます。イノベーションを税制の面から後押しする目的をもった制度で、民間の知財開発を促進する期待…
詳しくみる「e-Gov」って何?その全容と活用法を知っておこう!
e-Gov(イーガブ「電子政府の総合窓口」)とは、政府が運営する行政情報のポータルサイトをいいます。 このe-Govを使えば、オンライン上で行政手続きを行うことができたり、政府の試みなどの情報を簡単に共有・活用することができます。私たちの政…
詳しくみる