• 作成日 : 2024年11月5日

e-文書法と電子帳簿保存法の違いとは?対象となる文書や保存方法について解説

会社の重要な文書を電子保存するには、e-文書法を正しく理解することが大切です。最近は、電子帳簿保存法と同義語のように使われることがあります。

いずれも文書の電子保存を認める法律です。一方で電子帳簿保存法はデータ保存が義務付けられている点でe-文書法とは大きく異なります。

本記事では、e-文書法の概要や電子帳簿保存法との違い、それぞれの法律で対象となる文書を解説します。電子データを受領する場合の対策法6ステップも紹介するので、スムーズに電子保存できるようになりますよ。

e-文書法とは

e-文書法は、企業などがこれまで紙で保管していた特定の書類について、電子保存することを許可するための法律です。2005年4月に施行されました。

電子的に保存できる書類は契約書や図面、帳簿など多岐にわたります。また、それぞれ文書として保管することを定めた法律も、財務省や国土交通省など複数の省庁が管轄するものに分かれています。

それぞれの省庁の規程をひとまとめにし、「電子化して保存することを認める」ために制定されたのがe-文書法です。

参考:e-文書法について|厚生労働省

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、原則として紙で保存が義務付けられている国税関係帳簿や、国税関係書類を電子データの形で保存するための法律です。1998年に施行されました。

国税関係帳簿とは、以下のような文書を指します。

国税関係書類とは、以下のような文書を指します。

企業等の重要な文書の電子保存を認める点で、e-文書法と共通しています。

参考:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

関連記事:電子帳簿保存法について(令和5年税制度改訂版)

e-文書法と電子帳簿保存法の違いとは

e-文書法と電子帳簿保存法のちがいは、大きく分けて以下の3つです。

  1. データ保存の容認と義務化
  2. 適用される文書
  3. 要件

データ保存の容認と義務化

e-文書法と電子帳簿保存法の大きな違いは、以下の点です。

  • e-文書法はデータ保存の「容認のみ」
  • 電子帳簿保存法はデータ保存の「容認と義務化」

重要な文書の電子保存を認めることは共通しています。一方で電子帳簿保存法では、主にデジタル化や業務効率の向上を目的として、データ保存が義務化されました。

文書の範囲

e-文書法は、民間企業で保存が義務付けられた法定文書が対象で、複数の省庁が管轄する法律をまたいで適用されます。

一方で、電子帳簿保存法は、国税関係および電子取引のみが対象です。

要件

電子保存した文書が公的な文書と認められるためには、それぞれの法律で定められた要件を満たす必要があります。

【e-文書法の4つの要件】

  1. 見読性:明瞭な状態で見られるか
  2. 完全性:改ざんや消失されないよう対策しているか
  3. 機密性:許可された人だけアクセスできるか
  4. 検索性:すぐ取り出せるか

上記4つの要件のうち、「見読性」以外は対象文書の種類によって必要かどうか決まります。

【電子帳簿保存法 2つの要件】

  1. 真実性:書類の原本が改ざんされることなく正式なプロセスで電子化されている
  2. 可視性:パソコンなどに備え付けていつでも確認できること

法律で定められた要件を満たさない文書は、税務調査で問題になることがあります。よって、電子保存する書類がどちらの法律の対象となるのかをしっかりと区別し、それぞれの要件を満たした方法で保存しましょう。

e-文書法の対象となる文書

e-文書法の対象となるのは、約250本の法律で保存・交付などが義務付けられた文書です。主な法律には、会社法法人税法所得税法・銀行法などがあります。

各法律で保存・交付などが義務付けられた文書は、以下のとおりです。

  • 営業報告書
  • 財産目録
  • 事業(業務・事務)報告書
  • 組合員名簿
  • 議決権行使書
  • 規約等
  • 資産負債状況書類
  • 取締役会議事録
  • 定款

上記の文書で、後述するe-文書法の要件を満たせると、電子化しても公的な文書として認められます。

電子帳簿保存法の対象となる文書

電子帳簿保存法の対象となる文書は、国税関係の帳簿や文書です。ここでは、国税関係の書類について、以下の4つの項目に分けて解説していきます。

  1. 国税関係帳簿
  2. 決算関係書類
  3. 取引関係書類
  4. 電子取引データ

国税関係帳簿

電子帳簿保存法の対象となる文書の1つめは、国税関係帳簿です。

国税関係帳簿の例

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 補助簿 など

上記の電子的に作成した帳簿・書類は、電子帳簿等保存制度に基づき、データのまま保存できます。

決算関係書類

電子帳簿保存法の対象となる文書の2つめは、決算関係書類です。

決算関係書類の例

  • 損益計算書
  • 棚卸表
  • 貸借対照表

上記の電子的に作成した帳簿・書類も、電子帳簿等保存法に基づき、データのまま保存できます。

取引関係書類

電子帳簿保存法の対象となる文書の3つめは、取引関係書類です。

取引関係書類の例

  • 請求書(原本・控え)
  • 見積書(原本・控え)
  • 納品書(原本・控え)

自社が一貫してコンピュータで作成した取引関係書類は、電子帳簿等保存法制度に基づき、データのままでの保存が認められています。

一方、自社が紙に打ち出した書類や、他社から紙で受領した書類については、スキャナ保存制度に基づき、データ化して保存できます。

電子取引データ

電子帳簿保存法の対象となる文書の4つめは、電子取引データです。

電子取引データの例

  • EDI取引
  • Web請求書
  • Web見積書
  • メールデータ

電子的にやり取りした以下のような取引データは、電子取引に係る電子データの保存制度に基づき、電子データのまま保存できます。

参考:電子帳簿保存法一問一答(Q&A)

電子データを受領する場合の実務対策6ステップ

ここでは、実際に取引先から電子データを受領する時、どのような対応が必要となるのかを6つのステップに分けて紹介します。

  1. 現状の取引内容の整理する
  2. 電子データの保存方法を決める
  3. 電子データの保存場所を決める
  4. 業務フローを考える
  5. 規程などを備え付ける
  6. 関係者に周知し、運用をスタートする

①現状の取引内容の整理する

まずは自社で存在する電子取引を把握するため、現状の取引内容を整理しましょう。

確認項目具体的に確認する内容
①取引書類請求書や領収など、どのような取引書類があるか
②授受方法取引先ごとに何の形式で受け取っているか(PDF・EDI・クラウドサービスなど)
③保存場所、方法受け取ったデータは、どこにどのように保存しているか
④件数月間、年間でどのくらいの件数か

②電子データの保存方法を決める

電子データを保存するためには、取引先か自社でタイムスタンプを付与するか、または訂正削除の防止に関する事務処理規程に従って運用する必要があります。

タイムスタンプを付与できない場合は、事務処理規程の運用が基本です。保存方法は取引先ごとに異なっても問題はないので、以下の4つの保存措置から取引ごとに自社に適した方法を選んで採用しましょう。

電子取引の保存要件
措置①タイムスタンプが付与された電子データを受領
措置②データを授受した後、速やかにタイムスタンプを付与
措置③訂正削除の記録が残るシステム、または訂正削除ができないシステムを利用
措置④訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備え付け

③電子データの保存場所を決める

電子データの保存する時は、「日付、取引先、金額」の検索機能の確保が必要です。具体的な保存場所は、証憑収集・保管システムを利用するか、自社のサーバ内のフォルダへの保存となります。

保存作業を効率よく行うには、自動で検索要件を満たせる証憑収集・保管システムの利用がおすすめです。

例えば、ECサイトで買い物した際、ECサイトのサービスとマネーフォワードクラウド会計を連携することで、取引明細データや電子領収書などの証憑データを自動で取り込んでくれます。

関連記事:「証憑添付」機能の使い方|マネーフォワードクラウド会計

④業務フローを考える

電子データは電子データの形式のまま保管する必要があるので、紙面に印刷することなく承認や経理で仕分け入力などの一連の業務ができるようフローを検討しましょう。

電子請求書を受領した時のフロー

営業1 電子データ受領メールに添付されたPDFを、システム上で責任者へ回す
責任者2 上長承認システム上でPDFのまま確認・承認し、経理へ回す
経理3 経理担当承認システム上でPDFのまま確認・承認
4 仕訳入力会計システムへの仕訳入力
5 電子データを保存社内フォルダやシステムにPDFを保存

⑤規程などを備え付ける

e-文書法や電子帳簿保存法の要件を満たして保管するために、以下の規程・システムを用意すると良いでしょう。

  • 事務処理規程を作成
  • システムの操作説明書の備え付け

事務処理規程を備え付けて運用する場合、国税庁のサンプルを参考に、自社の状況に合わせてアレンジして規程を作成しましょう。(国税庁各種規程等のサンプルはこちら

⑥関係者に周知し、運用をスタートする

要件に沿った運用を開始するため、従業員や取引先に対して周知・説明します。

  • 【従業員】電子取引に関する取り扱いを説明
  • 【取引先】徐々に電子データでのやりとりにシフトしていくことを依頼

取引先にも書類管理体制があり、いきなりすべての取引を電子データで渡してほしいとお願いするのは困難です。あくまでも相手との関係性をふまえた上でお願いしましょう。

文書を電子保存するメリット4つ

企業の文書を電子保存することで得られるメリットは以下の4つです。

  1. コスト削減
  2. 業務効率化
  3. テレワーク促進
  4. セキュリティ強化

①コスト削減

メリットの1つめは、コストを減らせる点です。紙の文書を電子化して保存すると、下記のようなコストを削減できます。

  • 紙代、印刷コスト
  • 印刷機器のメンテナンス、維持コスト
  • 拠点間、企業間の輸送コスト

文書の保管スペースが縮小されるので、オフィス・設備費用を節約できます。

②業務効率化

メリットの2つめは、業務の効率化につながる点です。文書を電子化して保存すると、紙ならではの以下のような非効率な作業を減らせます。

  • 印刷、押印の手間
  • 承認者不在による回覧の停滞
  • ファイリング、発送の準備

上記のような作業がなくなれば、削減できた作業時間をほかの業務に割り当てられます。企業全体の生産性の向上も期待できるでしょう。

③テレワーク促進

メリットの3つめは、テレワークの促進につながる点です。

紙の文書の場合、取引先への発送準備や手渡しによる回覧など、オフィスにいなければ作業が行えないため、従業員が出社せざるを得ない状況を作ってしまいます。

文書を電子化しシステム上に保存できると、テレワーク環境でも文書を閲覧や、従業員同士での共有、取引先への送信も可能になります。

④セキュリティ強化

メリットの4つめは、セキュリティの強化につながる点です。

紙の文書は経年劣化で「見読性」が損なわれる恐れや、持ち出しによる紛失などのリスクがあります。

一方、文書データは閲覧権限を設定したり、アクセス履歴を確認したりできるので、リスクコントロールが簡単にできます。また、システムを導入してデータ保存し、訂正削除ができないようにすることも可能です。

e-文書法に関する省庁ごとのガイドライン

e-文書法では、企業で保存が義務付けられている文書の電子保存について、基本的な規則を定めています。ここでは、主な省庁がe-文書法にもとづいて発令した、ガイドラインや施行規則の例を紹介します。

省庁ガイドライン・施行規則
国税庁
厚生労働省

(医療関係)

文部科学省

(学校関係)

国土交通省

(建築関係)

データ保存についてe-文書法は「容認のみ」電帳法は「容認と義務化」されている

e-文書法と電子帳簿保存法の一番のちがいは、e-文書法はデータ保存の「容認のみ」で、電子帳簿保存法はデータ保存の「容認と義務化」されている点です。

税務調査で信頼性を確保するためにも、要件に沿った方法で電子データを保存しましょう。

電子データの保存にはメリットがある一方、実際にデータをダウンロードしたり、ファイル名を統一して保存したりするのは手間がかかります。

e-文書法や電子帳簿保存法で定められた要件を満たしつつ、取引明細データや電子領収書などの証憑データを自動で取り込んでくれるサービスがあります。

関連記事:「証憑添付」機能の使い方|マネーフォワードクラウド会計

業務の効率化をはかるために、活用してみてはいかがでしょうか。


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