- 作成日 : 2024年9月26日
固定資産税は期間で按分できる?計算方法の例や経費計上、注意点を解説
不動産の売買時点で未経過の固定資産税は、一般的に売主と買主で日割りで精算します。
本記事では、固定資産税を期間で按分する方法や、具体的な計算例、法人の場合の経費計上方法について解説します。また、日割りの取り決めや契約書作成時の注意点も紹介しているためぜひ、参考にしてください。
目次
固定資産税は期間で按分できる?
固定資産税の賦課期日(課税が開始される日)は1月1日で、その時点で固定資産を保有している者に1年分の固定資産税の納税義務が発生します。固定資産税は年単位で課税され、4期に分けて納付します。通常は、月割りや日割りでの計算は行われません。
しかし、不動産の売却や購入をする場合、売主と買主の間で固定資産税を日割りで精算することが一般的です。所有期間に応じて公平に税負担を分けるためです。
つまり、固定資産税は年単位で課税される税金ですが、不動産取引時には売主と買主それぞれの負担を分けるため、期間で按分できます。
固定資産税の起算日
起算日とは、固定資産税を期間ごとに按分して精算する際に、精算を開始する基準となる日を指します。固定資産税を期間按分する際には、起算日と不動産の引渡を基準に税額を計算し、売主と買主の間で負担を分け合います。
起算日は、地域や不動産業者により異なりますが、一般的には1月1日または4月1日です。
不動産売却後の固定資産税は日割りが一般的
年の途中で不動産の売買が行われた場合、売主と買主は固定資産税を日割りで精算するのが一般的です。
固定資産税の日割り精算が行われる背景には、以下の理由があります。
- 固定資産税の納税義務は、1月1日時点の固定資産を所有している者にあるため
- 年の途中で売却し、所有権は買主に移転した場合、売主が1年分の固定資産税を負担するのは不公平であるため
- 売主と買主の間で未経過の固定資産税相当額の精算を行うことで解決する習慣が生まれたため
つまり、固定資産税の日割り精算は、地方税法の規定ではなく、不動産取引を行う際の慣例です。
負担額の決め方
固定資産税の日割り精算は、地方税法に明確な規定がないため、売主と買主の話し合いで負担割合を決める必要があります。一般的には、引渡し日と起算日を基に、売主と買主の所有期間に応じて日割り計算を行います。
(例)
- 固定資産税:150,000円
- 起算日:1月1日
- 引渡し日:6月1日
上記のケースでは、1月1日~5月31日までは売主の所有になるため、売主は1月1日~5月31日までの151日分の固定資産税を負担し、買主は残りの日数分を負担します。
精算金の受け渡し方法
日割り計算による精算金は、決済時に受け渡しが行われるケースが一般的です。
買主は、起算日と売却時に基づいて決定した、固定資産税の負担額を土地建物の譲渡価格に上乗せして支払います。
(例)
- 土地建物の売買金額:30,000,000円
- 売主側の負担額:62,055円
- 買主側の負担額:87,945円
上記のケースでは買主は売買価格に加え、固定資産税分87,945円を支払い、総額30,087,945円を売主に支払います。
固定資産税を期間で按分する場合の計算方法
固定資産税を期間で按分する際は、以下の計算式を用いて売主・買主それぞれの負担額を算出します。
- 売主:(固定資産税の額÷365日)×その年の起算日から引渡し日までの所有日数
- 買主:(固定資産税の額÷365日)×引渡し日から翌年の起算日までの所有日数
日割り計算の例
固定資産税を日割りで計算する場合、起算日によって負担額が異なります。
以下では、1月1日と4月1日を起算日としたケースを例に、計算方法を解説します。
固定資産税:100,000円
引渡し日:6月1日
- 1月1日が起算日のケース
1月1日が起算日の場合、1月1日から5月31日までの固定資産税を売主が支払い、残りを買主が支払います。
それぞれの計算式は以下の通りです。
売主:(100,000円÷365日)×151日₌41,370円
買主:(100,000円÷365日)×214日₌58,630円
- 4月1日が起算日のケース
4月1日が起算日の場合、4月1日から5月31日までの固定資産税を売主が支払い、残りを買主が支払います。
それぞれの計算式は以下の通りです。
売主:(100,000円÷365日)×61日₌16,712円
買主:(100,000円÷365日)×304日₌83,288円
上記のように、同じ引渡し日でも、起算日により売主と買主の負担額が異なります。起算日から引渡し日までの日数が長いほど売主の負担が増え、反対に短い場合は買主の負担が増加します。
【法人の場合】期間で按分した固定資産税は経費にできる?
法人が不動産の売買に伴い固定資産税を期間按分した場合、負担した固定資産税は経費として計上できません。
理由は、上記で解説した精算金の受け渡し方法にあります。
ポイントをまとめると以下のとおりです。
- 売主側の固定資産税の精算金は「譲渡収入」に含まれる
- 買主側の固定資産税の精算金は「固定資産の取得価額」に含まれる
つまり、期間按分した固定資産税は「国・自治体に支払うもの」ではなく「売買代金」に含まれるため、精算金だけ経費として計上することはできません。
固定資産税を期間で按分する際の注意点
固定資産税を期間で按分する際の注意点を解説します。
当事者間で合意をとる
固定資産税の日割り精算は、地方税法で定められた義務ではないため、売主と買主が負担割合について合意することが大切です。双方が納得できる負担割合を算出し、精算に関する条件の話し合いが必要になります。
とくに、起算日は地域ごとに異なり、固定資産税の負担割合にも影響を与えるため、双方の認識を一致させることで、トラブルの発生を防げます。
また、固定資産税額の日割り計算を行う際、1円未満の端数が出ることが多いため、端数を切り捨てるか切り上げるかについても、取り決めておくとよいでしょう。
売買契約書に税金の分担方法を記載する
固定資産税を売主と買主で按分する場合、売買契約書に詳細を明確に記載することで、トラブルを防げます。起算日や税額の計算方法、支払方法を具体的に記載するとよいでしょう。
契約書の作成時には、専門家が用意したテンプレートを使用することで、記載漏れや法的ミスを防止できます。
マネーフォワード クラウドでは、紙と電子契約に対応した売買契約書のテンプレートをご用意しております。ぜひダウンロードして、ご活用ください。
固定資産税の期間按分は売買契約書で明確にしよう
本記事では、固定資産税の期間按分に関する基礎知識と注意点について解説しました。
固定資産税は通常、1月1日時点の不動産所有者に対しての年税ですが、不動産の売買が発生する場合、売主と買主の間で日割り精算を行うことが一般的です。税金の負担割合を明確にし、トラブルを避けるために、売買契約書に詳細を正確に記載することが重要です。
また、契約書の作成には法的な知識が求められるため、専門家が用意したテンプレートやひな形を活用することで、記載ミスを防ぎ、適切な取り決めが行えます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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