- 更新日 : 2026年4月22日
中小企業に大きな優遇!研究開発税制を活用して研究開発を促進せよ
研究開発税制は、企業の試験研究費の一定割合を法人税から税額控除できる制度です。
- 対象は試験研究費
- 最大25%等の控除枠
- 令和8年度税制改正で戦略技術型を新設
青色申告法人で要件を満たせば、中小企業も適用可能です。
研究開発税制は、企業が新製品や新技術の開発に投じた試験研究費について、法人税額から一定割合を控除できる制度です。技術革新を後押しする重要な政策税制として位置付けられており、令和8年度税制改正では戦略技術領域型の創設などの見直しも行われました。
本記事では、研究開発税制の概要や枠組み、控除上限などを整理します。
目次
研究開発税制とは?
研究開発税制は、企業が研究開発活動に投じた費用の一部を法人税から控除できる制度です。技術革新やイノベーション投資を後押しするために設けられており、日本企業の国際競争力強化を目的としています。
研究開発税制は試験研究費の一定割合を法人税から税額控除できる制度
研究開発税制とは、企業が支出した試験研究費の一定割合を法人税額から直接差し引くことができる税額控除制度です。対象となるのは、新製品や新技術の開発、既存製品の改良など、将来の収益獲得を目的とした研究活動に要する費用です。控除は課税所得を減らす仕組みではなく、算出された法人税額そのものを減額する点が特徴です。制度には一般型やオープンイノベーション型などの区分があり、研究開発の形態に応じて適用されます。
イノベーション投資を促進する政策税制
この制度は国家戦略としての技術力強化を目的としています。世界的な技術競争が激化する中、AI、半導体、バイオなどの先端分野への投資を促す役割も担っています。令和8年度税制改正では、試験研究費の算定方法の見直しや戦略技術領域への対応強化が示されており、研究開発税制はより政策的な色彩を強めています。
研究開発税制の対象となる試験研究費は?
研究開発税制を活用するには、どの支出が「試験研究費」に該当するのかを正しく理解する必要があります。すべての研究関連費用が対象になるわけではなく、税法上の定義に基づき判定されます。
対象は、新製品や新技術の開発等に直接要する費用
試験研究費とは、新製品や新技術の開発、既存製品の改良などを目的とした研究活動に直接要する費用をいいます。研究員の人件費、原材料費、試作品製作費、外部委託費などが含まれます。これらは将来の技術的進歩や性能向上を目指す活動に支出されたものであることが前提です。単なる生産活動や通常の品質管理費用は対象外となります。
試験研究費は会計上の研究開発費とは必ずしも一致しない
研究開発税制における試験研究費は、企業会計上の「研究開発費」と必ずしも同一ではありません。税法上の定義に基づいて判定されるため、販売促進目的の市場調査費や量産工程に関する改良費などは除かれる場合があります。また、国等からその試験研究費の額に係る費用に充てるため交付を受けた補助金については、控除額の計算対象となる試験研究費の額から差し引かれることとなります。
研究開発税制の枠組みは?
研究開発税制は、企業の試験研究費に応じて法人税額を控除する制度であり、複数の類型によって構成されています。令和8年度税制改正では、新たに「戦略技術領域型」が創設され、制度の枠組みが再整理されました。
研究開発税制は4つの類型で構成される
研究開発税制は、主に次の類型から成り立っています。
- 一般型
- 中小企業技術基盤強化税制
- オープンイノベーション型(特別試験研究費に係る税額控除)
- 戦略技術領域型(令和8年度税制改正で創設)
中心となるのは一般型で、企業が支出した試験研究費総額に応じて法人税額から一定割合を控除します。中小企業技術基盤強化税制は中小企業者等が利用できる、一般型よりもより有利な制度です。オープンイノベーション型は、大学や研究機関、他企業との共同研究など外部連携による研究を後押しする枠組みです。
戦略技術領域型の創設により重点分野支援が強化された
令和8年度税制改正で新設された戦略技術領域型は、AI、半導体、量子、バイオなど国の成長戦略上重要な分野を対象とする類型です。従来の一般型とは別枠で管理され、一定の要件を満たす研究開発費について、より高い控除率や優遇措置が適用される設計となっています。これにより、先端技術分野への中長期的な研究投資を税制面から強力に支援する構造へと発展しています。
研究開発税制の適用要件は?
研究開発税制を利用するには、研究開発費を支出しているだけでは足りません。税法上の「試験研究費」に該当することや、法人税額の範囲内であることなど、一定の要件を満たす必要があります。ここでは基本的な適用要件を整理します。
青色申告法人が試験研究費を支出していることが前提
研究開発税制の適用対象は、原則として青色申告を行っている法人です。対象となるのは、製品の新規開発や既存製品の改良などを目的とした「試験研究費」であり、生産活動や品質管理費用は含まれません。また、控除できる金額は法人税額の一定割合を上限とするため、赤字法人はその期の税額控除を受けられない点にも注意が必要です。税額控除は法人税額から直接差し引く方式であり、課税所得を減らす仕組みではありません。
類型ごとに追加要件がある
一般型では、当期の試験研究費総額が基礎となります。増加型では、前期と比較して試験研究費が増加していることが条件となります。オープンイノベーション型では、大学や他企業との共同研究契約など、外部連携に基づく支出であることが必要です。令和8年度税制改正で創設された戦略技術領域型では、AIや半導体など指定された戦略分野に該当する研究であることが前提となります。いずれの場合も、研究内容や支出区分を明確に管理し、申告時に根拠資料を示せる体制が求められます。
研究開発税制の適用の流れは?
研究開発税制は事前認定を要しない制度ですが、対象費用の判定から申告書類の作成まで一定の手順を踏む必要があります。類型(一般型・中小企業技術基盤強化税制・オープンイノベーション型・戦略技術領域型)ごとに確認事項は異なりますが、基本的な流れは共通です。
① 試験研究費の範囲を整理する
まず、当期に支出した費用のうち、税法上の「試験研究費」に該当するものを抽出します。研究員の人件費、原材料費、試作品費、外注費などを区分し、対象外の費用(量産費用や販売促進費など)を除外します。戦略技術領域型を適用する場合は、対象分野への該当性も同時に確認します。
② 類型ごとの要件を判定する
一般型と中小企業技術基盤強化税制は当期総額と増減割合、オープンイノベーション型は外部連携契約の有無などを確認します。戦略技術領域型では、指定分野の研究であることや所定の管理要件を満たすかを判定します。控除率や上限の計算基礎を確定させます。
③ 税額控除額を計算する
確定した試験研究費の額に控除率を乗じ控除可能額を算定します。当期の法人税額に一定割合を掛けた金額が上限額となる点に注意し、複数類型を併用する場合は、制度ごとの上限や優先順位を踏まえて計算します。
④ 申告書類を作成・添付する
法人税の確定申告時に、試験研究費の税額控除に関する所定の別表を作成し添付します。
⑤ 証拠資料を保存する
税務調査に備え、研究計画書、契約書、支出証憑、社内管理資料などを適切に保管します。研究内容と支出の関連性を説明できる体制を整えておくことがポイントです。
研究開発税制の控除上限は?
研究開発税制を活用する際、どれだけ税額控除を受けられるかは「控除上限」のルールによって制限されます。令和8年度税制改正では、一般的な控除上限の見直しに加え、重点分野向けの別枠枠組みが明確化され、控除上限の扱いが分かりやすく整理されました。
【一般的な控除上限】原則として法人税額の25%
従来からある研究開発税制(一般型や中小企業技術基盤強化税制など)では、試験研究費に対する税額控除は試験研究費の額の一定割合で計算されますが、企業がどれだけ多額の控除を受けられるかには一定の上限が設けられています。研究開発税制で算出された控除額が法人税額の25%相当までという「控除上限」が基本枠となっており、一定の場合には加算されます。この上限は、控除率が高くても法人税額そのものを大幅に超える控除を避けるためのルールです。
令和8年度税制改正でも、一般的な研究開発税制の控除上限については大枠の枠組みが維持されつつ、控除率の計算式や上限の変動措置(控除率の変動や追加控除のルール)が見直されました。たとえば、研究開発費に占める増加割合や特定条件に応じて控除率・上限の調整が検討され、一定の柔軟性が持たされています。
【戦略技術領域型の控除上限】法人税額の10%
令和8年度税制改正で創設された「戦略技術領域型」では、重視する先端分野(AI、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケアなど)に係る研究開発費について、特別な税額控除率が設定されています。これらの重点分野の試験研究費については、一般型と別枠で40%の控除率(一定の共同・委託研究で50%)が適用される仕組みとなりましたが、控除上限そのものは当期の法人税額の10%までという制限が設けられました。控除限度を超えた金額は最大3年間繰越し控除が可能です。
令和8年度税制改正による研究開発税制の変更点は?
令和8年度税制改正大綱では、成長戦略の一環として研究開発税制の見直し・拡充が盛り込まれました。従来の制度を維持しつつ、重点的な研究投資を後押しする新たな枠組みが設けられたほか、控除率や対象研究の取扱いにも調整が加えられています。
戦略技術領域型が新設された
令和8年度税制改正では、従来の一般型・増加型・オープンイノベーション型に加え、「戦略技術領域型」という新たな類型が設けられました。これはAI、先端ロボット、量子、半導体・通信、バイオ・ヘルスケアなどの戦略分野での研究開発投資に対して、より手厚い税額控除を認める枠組みです。戦略技術領域型を活用することで、通常の税額控除率よりも高い控除を受けられる可能性が出てきています。
戦略領域向けの控除率・優遇措置の具体化
研究開発税制の新たな戦略技術領域型では、重点分野の試験研究費の額に応じて40%の控除率が想定され、認定研究機関との共同研究・委託研究ではさらに高い50%の税額控除が受けられる設計が示されています。また、控除額は法人税額に対して一定比率の上限が設けられ、超過額は3年間繰越して適用できる点も制度上の工夫として挙げられています。
一般型の控除率・上限措置も見直し
一般型についても令和8年度改正で調整が行われています。一般試験研究費に係る控除率の計算式(基準に応じた控除率の変動)や控除上限の組み換えが提示されており、企業規模や投資額に応じた控除の設計が改めて整理されています。これにより、大規模な投資でも税制上のメリットが取り込みやすくなっています。
海外委託研究の取扱いが整理される
海外に委託した試験研究費についても税制上の取扱いが明確化されています。改正では、国外で行う試験研究委託について税額控除対象となる割合が段階的に引き下げられる仕組みが導入され、国内外の研究投資のバランス調整が図られる方向性が示されています。
研究開発税制を正しく理解して戦略的に活用しよう
研究開発税制は、企業の試験研究費に対して法人税の税額控除を認めることで、技術革新と競争力強化を後押しする制度です。令和8年度税制改正では戦略技術領域型が創設され、重点分野への支援が強化されました。一方で、控除上限や対象費用の判定など実務上の要件も整理されています。自社の研究内容や投資計画を踏まえ、各類型の特徴を把握したうえで適切に申告手続きを行い、制度のメリットを余すことなく活かしましょう。
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