• 更新日 : 2022年1月21日

修繕引当金と特別修繕引当金とは?

修繕引当金と特別修繕引当金とは?

修繕引当金や特別修繕引当金は、決算整理仕訳で計上される勘定科目です。日常的に使用される勘定科目ではないため、扱い方がよく分からない経理担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、修繕引当金や特別修繕引当金の考え方を仕訳例も交えて紹介します。分かりやすく解説していますので、ぜひ実務に役立ててください。

修繕引当金とは

修繕引当金とは、建物や機械などメンテナンスが必要な固定資産の機能を維持するために準備する修繕費用のことです。修繕に備えてあらかじめ準備しておくため、引当金として取り扱われます。

修繕引当金が発生するのは、毎年行われる修繕が何らかの理由があって当期に行えなかったとき、または修繕が必要な状況になっても何らかの理由により当期中に修繕ができなかったときなどです。当期に修繕ができないとしても費用は当期に属させるべきものと考えられるため、翌期にかかる修繕費用を見積もって当期の費用として引当金に計上します。

来期にかかる修繕費用をなぜ当期に見積もるのか、不思議に感じる人もいるでしょう。その理由は、修繕が必要な事実は当期に発生しており、発生主義に基づけば当期の費用として処理することが適切だと考えられるからです(これを発生主義と呼びます)。借方科目は「修繕引当金繰入」(費用)、貸方科目が「修繕引当金」(負債)となり、修繕引当金は決算仕訳で計上されます。

修繕引当金が用いられる業種は、大規模な工場設備を所有する企業や、定期的に修繕が必要な固定資産を持つ産業が中心です。例えば、重化学工業や装置型産業がその代表的なものといえます。

修繕引当金は、必ず修繕をすべきという義務はないため、企業の判断で計上されるものです。大規模な修繕が必要な企業は修繕費用が決算に与える影響が大きいため、あらかじめ修繕費用を見積もって計上しておくのが一般的といえるでしょう。

修繕引当金は負債の部の流動負債に計上されます。以下の図で赤く囲まれているのが該当部分です。

貸借対照表

特別修繕引当金とは

特別修繕引当金は毎年ではなく数年おきに行われる大規模な設備修繕に備えた引当金のことで、引当金の一種として負債の部に計上されます。船舶や溶鉱炉、ガスホルダーなどの装置を所有する産業で主に使われる勘定科目です。1年以内に修繕が行われない場合は、固定負債に計上します。

修繕を行うのが当期ではない場合も、修繕が必要な事実は当期に発生していると考えて当期の費用として引当金計上します。発生主義の考え方にもとづいて計上されるのは、先ほど説明した修繕引当金と同様です。

修繕引当金と特別修繕引当金の違い

修繕引当金と特別修繕引当金の違いは、想定される修繕の頻度や時期にあります。

修繕引当金は毎年行う修繕が事業年度内に実施できなかった場合に計上するものであることに対し、特別修繕引当金は、数年おきに行われる大規模修繕に備えて各事業年度に相当する分を分割して計上しておく性質のものです。

1年以内に行われる予定の修繕費用は修繕引当金に、1年以上先に行われる予定の修繕費用は、特別修繕引当金に分類すると理解しておきましょう。

特別修繕引当金の仕訳例

特別修繕引当金を決算期に計上し、支払いを行うまでの流れの仕訳例を紹介します。

(仕訳例1)
2021年度決算期に、5年後の2025年に行われる溶鉱炉の定期修繕に備えて特別修繕引当金1,000万円を繰り入れた。

借方
貸方
特別修繕引当金繰入
10,000,000円
特別修繕引当金
10,000,000円

1年以内に実施される予定のない修繕のため、特別修繕引当金(固定負債)に計上します。

(仕訳例2)
2024年度決算期にも同様に、2025年の定期修繕に備えた特別修繕引当金1,000万円を繰り入れた。また、翌年度(1年以内)に修繕が行われる予定のため、貸借対照表上の表示区分を固定負債から流動負債に変更した。

貸方
借方
特別修繕引当金繰入
10,000,000円
特別修繕引当金
10,000,000円

まずは特別修繕引当金に当期分を計上します。次に、上記仕訳に加えて修繕の実施が1年以内に迫っているため表示区分を流動負債に変更します。

(仕訳例3)
2025年度に予定通り定期修繕が行われ、修理代金5,000万円を現金で支払った。4年間積み立てた特別修繕引当金を取り崩し、差額は当期の費用として修繕費を計上した。

借方
貸方
特別修繕引当金
40,000,000円
普通預金
50,000,000円
修繕費
10,000,000円

引当金で不足する分は、当期の費用として修繕費を計上します。

修繕引当金は来期以降に備えて積み立てておくもの

修繕引当金や特別修繕引当金は計上が義務付けられているものではないため、企業の判断で計上されるものになります。大型設備のメンテナンスは経営に与える数値的インパクトが大きいため、必要額を適切に見積もって計画的に計上しておくことが大切です。
修繕自体は数年に1回だとしても、修繕の原因は当期に発生していると考えて計上する「発生主義」が採用されていることも意識しておきましょう。

よくある質問

修繕引当金とは?

修繕引当金とは、所有する建物や機械などの固定資産の機能を維持するために行われる修繕用の引当金。修繕の頻度や時期によっては、特別修繕引当金と使い分けられる。 詳しくはこちらをご覧ください。

特別修繕引当金とは?

毎年ではなく数年おきに行われる大規模な設備修繕に備えた引当金のこと。船舶や溶鉱炉、ガスホルダーなどの大型の設備を必要とする装置産業で主に使われる。 詳しくはこちらをご覧ください。


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