• 更新日 : 2021年7月29日

資金収支計算書とは何か?おさえておくべき3つのポイント

資金収支計算書とは何か?おさえておくべき3つのポイント

「資金収支計算書」とは、社会福祉法人や学校法人が作成しなければならない財務諸表の1つです。

ここでは社会福祉法人に関する、
・資金収支計算書の法的根拠
・資金収支計算書の記載内容
・新会計基準導入で変更した点

の3つのポイントについて解説していきます。

資金収支計算書の法的根拠

資金収支計算書は社会福祉法人が作成しなければならない財務諸表であることは既に述べたとおりですが、資金収支計算書以外にも作成しなければならない財務諸表があり、厚生労働省令第79号の「社会福祉法人会計基準」が、これらの法的な根拠となっています。

社会福祉法人会計基準の第7条で社会福祉法人が作成しなければならない計算書類等について、以下のように定められています。

1.貸借対照表(法人単位貸借対照表、貸借対照表内訳表、事業区分貸借対照表内訳表、拠点区分貸借対照表)
2-1.収支計算書(法人単位資金収支計算書、資金収支内訳表、事業区分資金収支内訳表、拠点区分資金収支計算書)
2-2.事業活動計算書(法人単位事業活動計算書、事業活動内訳表、事業区分事業活動内訳表、拠点区分事業活動計算書)
3.各会計年度に係る計算書類の附属明細書
4.各会計年度に係る財産目録

また、
・資金収支計算書の内容
・資金収支計算の方法
・資金収支計算書の区分
・資金収支計算書の構成
・資金収支計算書の種類及び様式
といった5つの内容が、社会福祉会計基準の第12条から第18条によって規定されています。

それでは実際にこれらの内容をどのように記載し、資金収支計算書を作成するのかを見ていきましょう。

資金収支計算書の記載内容

資金収支計算書に使用する勘定科目は、社会福祉法人会計基準の別表第一に記載されたものを使用します(社会福祉法人会計基準第18条)。

また、資金収支計算書の記載方法は、当該会計年度の決算の額を予算の額と対比して記載します(社会福祉法人会計基準第16条第5項)。

つまり、あらかじめ用意された勘定科目ごとに決算額と予算額を対比し、差額を算出することによって、資金収支計算書を作成することになります。

資金収支計算書を法人単位で作成したものだけでは、事業ごとの収支がわからないため、「資金収支内訳表」や「事業区分資金収支内訳表」によって明らかにする必要があります。また拠点区分ごとの「資金収支計算書」も作成します。

これらの計算書類それぞれの様式は、第1号第1様式から第1号第4様式に対応しています。

[書類別様式対応表]

法人単位の資金収支計算書第1号第1様式
資金収支内訳表第1号第2様式
事業区分資金収支内訳表第1号第3様式
拠点区分資金収支計算書第1号第4様式

(引用:PDF:会計基準の構成と作成する計算書類等について|厚生労働省)

第1号第1様式(一部抜粋)
第1号第1様式(一部抜粋)
[引用:平成28年3月31日官報]

第1号第2様式(一部抜粋)
第1号第2様式(一部抜粋)

第1号第3様式(一部抜粋)
第1号第3様式(一部抜粋)

第1号第4様式(一部抜粋)
第1号第4様式(一部抜粋)

平成24年4月から導入された新会計基準で変更された点

従来の社会福祉法人の会計基準は、指導指針や老健準則などさまざまなルールが混在していたため、事務手続きが煩雑になるだけでなく、計算結果が異なるなどの問題点がありました。

そこでこれらの問題点を解消するために、導入されることになったのが「新会計基準」と呼ばれるものです。

大きく変更された点は、「拠点」という概念が導入されたことです。

拠点という概念を取り入れることで経営分析しやすくなるため、社会福祉法人の財務体質を強化するだけでなく、効率の良い経営を行なっていくことが可能となります。

区分方法の変更
(出典:社会福祉法人の新会計基準について(概要)pdf)

また、勘定科目の細分化や統廃合、名称変更が行われており、収支と損益の概念がより一層明確になりました。

たとえば勘定科目の細分化という点では、旧会計基準は「前払金」のみでしたが、新会計基準では「前払金」と「前払費用」の2つに分割されています。

「前払金」は、商品仕入など何かを受領する権利を発生させるための仕訳に使用し、「前払費用」は火災保険料などの年間保険料を一括払いしたときに事業年度を超えた分に関して、今年度と翌年度を区別するために使用します。

これは株式会社などの営利法人では従前より行われている会計処理の方法であり、社会福祉法人にも企業会計と同じ概念を取り入れることによって、一般の利害関係者にとって理解しやすい財務諸表として活用することができます。

まとめ

今回は社会福祉法人が作成しなければならない「資金収支計算書」に特化した解説を行ないました。

資金収支計算書は、「社会福祉法人会計基準」を法的根拠として作成する書類であり、定型フォーマットに予算額や決算額を記入することによって作成されます。

新会計基準が導入されることによって、法人全体の財務状況が明らかになるだけでなく、経営分析しやすくなっていることもポイントの1つです。

解説してきた3つのポイントを参考に、社会福祉法人の会計実務の参考にしてみてください。

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よくある質問

資金収支計算書の法的根拠は?

資金収支計算書以外にも作成しなければならない財務諸表があり、厚生労働省令第79号の「社会福祉法人会計基準」がこれらの法的な根拠となっています。詳しくはこちらをご覧ください。

資金収支計算書の記載内容は?

あらかじめ用意された勘定科目ごとに決算額と予算額を対比し、差額を算出することによって、資金収支計算書を作成することになります。詳しくはこちらをご覧ください。

平成24年4月から導入された新会計基準で変更された点は?

「新会計基準」が導入されたことで「拠点」という概念が生まれたことです。詳しくはこちらをご覧ください。


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