- 更新日 : 2024年10月1日
製造業でミスが多い場合の予防策は?発生原因や対策事例を紹介
製造業でミスが多い原因は、主に作業員の不注意や誤認といったヒューマンエラーや、作業環境・ルールの不整備などが考えられます。ミスが起きたときはまず原因を特定し、具体的な対策を考えることが大切です。
本記事では、製造業でミスが多い事例や発生原因、ミスの予防策、対策を行った企業事例などを解説します。ぜひ参考にしてください。
製造業で多いミスの事例
製造業では、工程ごとに起こりやすいミスがあります。
ここでは、製造業で多いミスの事例を工程別にみていきましょう。
受け入れ時のミス
製造業では、メーカーなどの仕入れ先や物流拠点から商品や荷物が入ってくるため、受け入れ業務が必要です。受け入れ時には送られていた物品の伝票を確認したり、作業指示書をみたりする作業があります。
その際に、伝票や作業指示書の読み間違い、記入ミスなどが起こりやすいでしょう。これらのミスが起こると、数量の過不足が起こってその後の作業に影響が出てしまいます。
ピッキング作業時のミス
ピッキング作業時には、次のようなミスが起こりやすくなります。
- 商品の品番やサイズ、色の間違い
- 数量・単位の間違い
- 商品の同梱漏れ
ピッキングはピッキングリストを元に倉庫内から商品を集めてくる作業で、人の手で行うためにミスが起こりやすくなります。
ピッキングリストに記載されている情報が多かったり、品番や見た目が似ていたりすると間違いが起こりやすいでしょう。
オペレーション操作時のミス
オペレーション操作時は、次のようなミスが起こりやすくなります。
- 設備機器の操作を間違える
- 工具のセット方法を誤る
- 数値の調整を誤る
- 測定器からの計算を間違える
オペレーション操作は作業者のスキルに依存することが多く、ヒューマンエラーが起こりやすい作業のひとつです。
作業が慣れてくると自己流で行ってしまうこともあり、つい確認を怠ってミスを起こすこともあるでしょう。
組み立て作業でのミス
組み立て作業の工程では、次のようなミスが起こりがちです。
- 作業工程を飛ばす
- 見た目が似ている部品を間違えて組み立てる
- ネジを締め忘れる
組み立て作業は単調な定型業務になりやすく、一日中同じ作業を行っていると集中力が切れてミスをしやすくなります。集中力が切れると見落としなどのミスも多くなるでしょう。思い込みや気のゆるみによるミスなどは、ベテランの作業員にも起こりやすいといえます。
検査・梱包時のミス
検査・梱包時には、次のようなミスが起こりやすいでしょう。
- 不良品を見逃す
- 数量を間違える
- 付属品を間違えて梱包する
- 出荷先を間違える
検査・梱包は人の手で行う作業のためミスを完全になくすことは難しく、見落としが発生しがちです。検品・梱包をする数量や確認項目が増えれば増えるほど、作業員の集中力が低下してミスをしやすくなります。
その他の工程でのミス
その他、さまざまな工程の中で、次のようなミスが起こりやすいでしょう。
- 製品に傷をつける
- 指示を間違える・聞き間違える
- 作業報告を忘れる
作業手順を間違えたり手抜きをしたりすると、製品に傷をつけるミスも起こりやすくなります。
指示の間違いや聞き間違いにより、作業にミスが発生することもあります。
また、管理者に作業報告を忘れるのも、ミスのひとつといえるでしょう。
製造業のミスの発生原因
製造業でミスが多い原因は、主に次の3つが考えられます。
- ヒューマンエラー
- 作業環境の不整備
- マニュアルなどルールの不備
それぞれ、詳しくみていきましょう。
ヒューマンエラー
製造業で起こるミスの多くは、人間の行動が引き起こすヒューマンエラーです。
製造業は自動化が進んでいますが、すべてを自動化できているところはまだ少なく、どうしても人の作業が必要な工程が発生します。
ヒューマンエラーは、経験・スキルの不足や不慣れな状況で起こります。疲労や集中力の低下により作業の質が落ち、ミスにつながることもあるでしょう。作業に慣れていても、見落としや思い込みでミスをすることもあります。
作業環境の不整備
作業環境の不整備が原因で起こるミスもあります。現場に工具や部品が散らかっていたり、設備機器の操作が複雑であったりすると、ミスを発生させやすいでしょう。
機械音が大きい現場では、相手の声がうまく聞き取れずに伝達ミスが起こる場合もあります。
作業環境の悪い現場は生産効率にも影響するため、早急な改善が求められるでしょう。
マニュアルなどルールの不備
マニュアルが整備されていなかったり、マニュアルはあっても誤った運用をされていたりすると、ミスが発生しやすくなります。
作業手順が変わっても古いマニュアルのままで更新されていなければ、慣れていない作業員が間違った手順をしてミスを起こしてしまうでしょう。
「チェック項目が多い」「基準がわかりにくい」など、マニュアルの内容自体に問題があり、ミスを誘発しやすい場合もあります。
製造業でミスが多いと起こりうるリスク
製造業でミスが多いと、製品の品質低下や従業員のケガなど、さまざまなリスクが発生します。
ここでは、ミスが多いことで起こりうるリスクについて解説します。
品質の低下
ミスの増加により、製品の品質が低下するリスクが高まります。製品の廃棄や再製造が必要になり、生産効率の低下や製造コストの増加を招くでしょう。
万が一市場に出荷された製品に品質不良が発見された場合、リコールが必要になります。リコールによって製品回収や製品交換、リコール告知の社告費用といったコストも発生します。顧客からの問い合わせに対応するための費用も必要になるでしょう。
品質不良は単にコストが発生するだけではなく、企業に対する信用低下につながります。一度失った信頼を回復するためには長い時間が必要になるでしょう。
従業員のケガや事故
製造業のミスが多いと、従業員のケガや事故につながるリスクが高まります。製造業での労働災害には「挟まれ・巻き込まれ」が多く、機械の操作ミスが主な原因とされています。
十分な安全対策を行っていなかったり、安全規則を遵守していなかったりすると、作業員のケガ・事故が起こるリスクが高まるでしょう。
生産効率の悪化
ミスが多いことで、製造ラインの停滞や停止、歩留まり(投入した原材料に対する完成した生産数の割合)の低下を招くリスクがあります。
その結果、生産効率が悪化し、製品の生産計画にも影響してくるでしょう。企業の市場競争力を弱める結果にもなりかねません。従業員のミスが、企業の存続に関わる事態になる可能性もあります。
顧客からのクレーム
ミスにより不良品が増加し、出荷されて顧客のもとに届けばクレームにつながります。下請けで製造を行っている場合、クレームの発生は取引先を失う事態にもなりうるでしょう。
近年は大手メーカーをはじめとして品質管理の徹底と向上が推進されており、その対応は下請企業にも求められています。不良品の出荷でクレームが発生すれば、元請け企業の信用も傷つけてしまうでしょう。
製造業のミスの予防策
製造業のミスを予防するためには、まず原因を特定して適切な対策を立てなければなりません。
ここでは、ミスの予防策について解説します。
原因を特定する
ミスが発生する原因を特定するため、まずは現場で起こっているミスをすべて洗い出しましょう。ミスが発生した日時や作業員・作業内容などの詳細をまとめてください。
ミスを洗い出したら、それらが起きた原因を明確にします。ヒューマンエラー・作業環境・ルールの不備のうち、どれが原因なのかを特定してください。ひとつにあてはまるのではなく、複数の要因が絡みあっているケースもあるため、さまざまな観点から原因を探ることが必要です。
作業環境を整える
作業環境に問題がある場合は、作業場や設備を改善して作業に集中しやすい環境に整えます。
照明が暗すぎることで部品の誤認や手順の見落としが起こりやすい場合は、作業場全体を明るくしましょう。騒音が大きく指示の声が聞き取りにくい場合は音が静かな機械に変えるなど、原因に応じた改善を行いましょう。
機械や設備が老朽化していて不具合が起きやすい場合は、設備投資も必要です。
コミュニケーションを活性化する
ヒューマンエラーによるミスの多くは、コミュニケーション不足によるものです。現場で作業員が十分な能力を発揮して作業するためには、全員が知識や情報を共有し合う必要があります。
コミュニケーションがうまくとれていない現場は思い込みで作業したり、必要な情報を共有できなかったりして、ミスが起こりやすくなるでしょう。
コミュニケーションを活性化させるためには、会社側が積極的に取り組む必要があります。経営者や管理者が率先してコミュニケーションをとり、作業員同士が声を掛け合う風土を作ることが大切です。
マニュアルを整備する
ルールの不備が原因の場合、マニュアルの整備が必要です。作業が複雑になるほどミスは起きやすくなるため、現在のマニュアルや工程に問題はないかを確認し、誰が見てもわかるマニュアルを作りましょう。
マニュアルは作成したら終わりではなく、少しでも手順に変更があればこまめに更新していくことが必要です。
作業員のスキルを高める
作業環境やルールに問題がない場合、作業員のスキルが不足している可能性があります。定期的な研修や勉強会を開催し、作業員の知識やスキルの向上に努めましょう。作業員の知識やスキルが高まれば、ミスを軽減できるだけでなく、リスクへの意識も高まります。
作業員一人ひとりがミスを起こさないという意識を持つことで、ミスの発生を減らすことができるでしょう。
システムで代替できる作業を自動化する
システムで代替できる作業があれば、できるだけシステム化することがミスの予防につながります。システムの導入による自動化で人が行う作業が減れば、それだけヒューマンエラーも少なくなるでしょう。
作業の負担が減ることで作業員のストレスも軽減し、作業に集中できるようになります。その結果、不注意や見落としなどの人的ミスを減らすことが可能です。
ミスを減少させた企業の対策例
これまで、多くの製造業でミスを減少させる取り組みが行われています。ここでは、ミスの減少に成功した企業の事例を2つ紹介します。
トヨタ自動車|「ポカヨケ」を生産方式から生み出す
大手自動車メーカーのトヨタ自動車では、自社の生産方式で「ポカヨケ」を生み出しています。ポカヨケとは、製造業で発生する人間の作業ミス(ポカミス)に起因する事故を防ぐための仕組みです。
トヨタの生産方式とは、「異常が発生したら機械が直ちに停止して、不良品をつくらない」という考え方(自働化)と、各工程が必要なものだけを流れるように停滞なく生産する考え方(ジャスト・イン・タイム)により、良い製品だけをタイムリーに生産するという方式です。
すべての生産現場による徹底した実践を通して確立されてきたもので、世界中の生産活動にも適用されています。
富士フイルムテクノプロダクツ|作業支援カメラの導入
医療機器メーカー・富士フイルムテクノプロダクツでは、製造工程の中で画像認識により作業ミスを防止する作業支援カメラシステムを導入しました。
画像認識カメラが組み立て状況を作業途中に自動でチェックし、作業手順を間違えるなどトラブルが発生したときは速やかに検知される仕組みです。これにより、製造の現場で作業ミスが発生するリスクを軽減しています。
それまで、現場ではヒューマンエラーを防ぐためにベテランの作業員を配置していました。しかし、システムの導入によって経験の浅い人員でも作業できるようになったということです。
製造業のミスを減らす対策を考えよう
製造業ではヒューマンエラーや作業環境の不整備・ルールの不備といった原因によるミスが多く、対策が必要とされています。
ミスが多いと製品の品質低下や従業員のケガ・事故、生産性の低下につながるリスクがあります。
ミスを減らすためには、まず原因を特定することが必要です。原因ごとに適切な対策を考え、ミスの発生を防止しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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