- 更新日 : 2024年8月8日
継続性の原則とは?正当な理由の具体例の解説
法律ではないものの、すべての企業が従わなければならない基準として、企業会計原則が定められています。継続性の原則は、企業会計原則の一般原則に定められている7つの原則の中のひとつです。この記事では、継続性の原則の意味と必要性、具体例を取り上げていきます。
継続性の原則とは?
企業会計基準の一般原則では、継続性の原則として次の原則が定められています。
”五 企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。”
これは、採用した会計方針を原則として毎期継続して適用することを求める原則です。
継続性の原則は、2つ以上の会計処理が選択できる場合を前提としています。2つ以上の会計処理が選択できる状況とは、一般に公正妥当な会計処理の原則や手続きが複数ある場合についてです。
一般に公正妥当と認められない会計処理への変更はそもそも認められないものですので、継続性の原則には当てはまりません。法律の変更などで一般に公正妥当と認められなくなった会計処理から、認められる会計処理への変更も当然の変更であるため、継続性の原則は適用されません。
企業会計原則の一般原則については以下の記事でも取り上げていますので、こちらも参照ください。
継続性の原則はなぜ必要なのか
継続性の原則が必要な理由は2つあります。
まず、経営者による恣意的利益操作を排除するためです。複数の会計処理の選択が認められる場合で、変更に一定の制限を設けないと、その都度、会社にとって都合の良い会計処理の方法が選択されてしまう可能性があります。
会計処理を都合よく変更することによって、利益が大きくなったり、あるいは利益が小さくなったり、利益操作ができてしまいます。
2つ目の理由に通じるところでもありますが、意図的な利益操作ができると決算書の期間比較もできなくなり、利害関係者の判断を誤らせてしまう可能性もあるでしょう。
2つ目の理由は、決算書の期間比較性を保つためです。利益の計算のための会計処理の方法が毎期同じであることは、期間比較を可能にするだけでなく、決算書の信頼性を高めることにもなります。
継続性の原則における「正当な理由」の具体例とは
原則的には継続性の原則が適用されますが、「正当な理由」がある場合は会計処理の変更が認められます。
正当な理由とは、会計基準などの改正により会計方針を変更しなければならなくなった場合や、正当な理由により自発的に会計方針を変更する場合です。具体的な変更のケースとしては、減価償却方法の変更、棚卸資産の評価方法の変更、などがあります。
例えば、減価償却の方法に関して、建物(鉱業用を除く)の減価償却方法は、平成10年3月31日以前に取得したものは旧定額法と旧定率法の2つが認められていましたが、税制改正により平成10年4月1日以後取得のものは旧定額法、平成19年4月1日以後取得のものは定額法のみとなりました。
法改正や税制改正にともない、これまで認められていた方法を変更する場合は継続性の原則を適用するものとして正当な理由に認められます。
正当な理由により自発的に会計方針を変更する場合とは、経営環境の変化や決算書へのより適切な反映を理由に変更する場合です。使用頻度が変化したことによる減価償却期間の短縮などがこのケースに該当します。自主的に変更する場合は、次の点に注意する必要があります。
- 経営環境の変化などにより行われる変更である
- 決算書により適切に反映させるための変更である
- 変更後の会計方針が一般的に公正妥当と認められる
- 変更が利益操作を目的としていない
- 本事業年度中に変更が妥当である
継続性の原則は利益操作の排除や期間比較性を保つための原則
企業会計原則の一般原則のひとつである「継続性の原則」は、企業が毎期継続して同じ会計方針を採用することを求めるものです。経営者による利益操作の排除、決算書の期間比較性の担保を目的にしています。
ただし、すべてにおいて会計方針の変更を制限しているのではなく、正当な理由がある場合にはその変更を認めています。正当な理由は、会計基準の改正などで会計方針を変更する場合、経営環境の変化や決算書への適切な反映のため会計方針を変更する場合に限られる点に注意しましょう。
よくある質問
継続性の原則とは?
2つ以上の会計処理を選択できるときに、選択した会計方針を毎期継続して適用することを求めた会計原則です。詳しくはこちらをご覧ください。
継続性の原則における「正当な理由」の具体例は?
会計基準の改正などで会計方針を変更しなければならなくなった場合、経営環境の変化や決算書への適切な反映を理由に自発的に会計方針を変更する場合です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
外形標準課税制度とは?対象法人や課税の内容をわかりやすく解説
外形標準課税は、行政サービスを受けている以上、黒字の企業も赤字の企業も費用を平等に負担すべきだという指摘に対応する形で生まれた法人事業税の課税方式です。 外形標準課税は、企業間の不公平感をなくして負担をならす効果があると同時に、税収の安定を…
詳しくみる法人税申告書の別表17とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税申告書を作成する際、必要に応じて添付するのが「別表」です。しかし、どの別表を使ったらいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は法人税申告書別表17についてご紹介します。 どのような場合に使うのか、そして、書き…
詳しくみる法人税は電子申告が義務化!申告のやり方やe-Taxでの納付方法も解説
令和2年度より、大法人で法人税の電子申告が義務化されています。電子申告が可能になることで申告や納付が進めやすくなっていますが、きちんと理解していないと作業が増えた感覚になるでしょう。この記事では、大法人で義務化された法人税の電子申告について…
詳しくみる法人税減税による4つのメリットまとめ
日本経済の長期的な成長を目指す政策とされるアベノミクスのなかでも、法人税の減税は抜本的な税制改正のひとつとして注目を集めています。 国内における投資の活性化や企業の成長促進を目的として、日本政府は法定実効税率の引き下げの具体的な実施を始めて…
詳しくみる法人税申告書の別表7(1)とは?見方や書き方、注意点まで解説
企業を経営していると、欠損金を出してしまうことは珍しくありません。しかし、欠損金が出てしまったとしても、青色申告ならば赤字分を次の年度以降に繰り越すこともできます。 本稿では、欠損金を繰り越すために必要な法人税申告書別表7(1)について紹介…
詳しくみる簡易課税の計算方法には基本と特例がある!
消費税の納税額は、簡易課税という方式と原則課税という方式のいずれかの方法で計算します。その1つである簡易課税方式は、仕入れや設備投資、経費など仕入れの際に支払った消費税の金額を計算する必要はありません。 売上時にもらった消費税に対して、みな…
詳しくみる