- 更新日 : 2024年11月5日
電子帳簿保存法に基づく請求書の保存方法とは?紙・PDF別に解説
2024年1月1日以降、電子帳簿保存法に基づく電子取引データ保存義務の宥恕(ゆうじょ)措置が終了し、電子形式の請求書はデータでの保存が完全義務化されました。しかし、「具体的な請求書の保存方法が分からない」と感じている経理担当者は少なくないはずです。
この記事では、紙・PDF別に請求書の保存方法を解説します。保存要件や保存期間についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。最後まで読むことで、自社に合った請求書の保存方法を理解できるでしょう。
関連記事:電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説
目次
電子帳簿保存法における受領側の請求書保存方法
請求書の保存方法は、受領する形式によって異なります。形式ごとの保存方法を理解し、正しく保存することが大切です。
- 保存方法①電子データ(PDFなど)で受領した請求書
- 保存方法②紙で受領した請求書
保存方法①電子データ(PDFなど)で受領した請求書
電子データで受領した請求書は、電子取引データの保存要件に従い、データのまま保存する対応が必要です。電子データを保存せず、データを紙に出力して保存することは認められていません。
ただし、適切に電子データを保存したうえで、社内での確認用に印刷して保管することは可能です。
電子データを保存する際は、電子帳簿保存法における「真実性の確保」「可視性の確保」の要件を満たす必要があります。詳しくは後ほど説明します。
参考:電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください|国税庁
関連記事:電子請求書の受け取り側がすべきことは?メリット・デメリットや保存方法を解説
保存方法②紙で受領した請求書
請求書を紙で受領した場合は、2つの保存方法があります。
- 紙のまま保存する
- 書面をスキャンして電子データとして保存する(スキャナ保存)
従来の紙での保存方法に加え、書面をスキャンし、電子データとして保存することも可能です。スキャナ保存を選択する場合、後述の要件を満たせば、紙の原本を破棄しても問題ありません。
スキャナ保存への対応は任意であるため、業務フローやコストの観点から、自社にとって最適な保存方法を選びましょう。
電子帳簿保存法における発行側の請求書保存方法
請求書発行側が請求書控えを作成した場合は、控えも保存する必要があります。
- 保存方法①電子データ(PDFなど)で発行した請求書
- 保存方法②紙で発行した請求書
保存方法①電子データ(PDFなど)で発行した請求書
電子データで発行した請求書の控えは、電子取引データの保存要件に従い、データ形式で保存する必要があります。ルールに沿って電子データを保存していれば、確認用に別途印刷して保管することは問題ありません。
なお、適格請求書(インボイス)を発行した場合は、消費税法による請求書の保存義務も発生します。これまで請求書控えの発行は任意でしたが、2023年10月から始まったインボイス制度により、適格請求書発行事業者は請求書控えの発行および保存が必要になりました。
参考:電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください|国税庁
関連記事:電子帳簿保存法とインボイス制度の違いは?保存要件や対応するポイントを解説
保存方法②紙で発行した請求書
紙で発行した請求書の控えは、請求書を受領した場合と同じく、2つの保存方法があります。
- 紙のまま保存する
- 書面をスキャンして電子データとして保存する(スキャナ保存)
スキャナ保存を行う場合は、後述の要件を満たせば、紙の請求書原本を破棄しても問題ありません。
請求書の保存に関する要件
PDFなど電子データで受け取った請求書と、紙で受け取った後にスキャナ保存する請求書は、それぞれ以下の保存要件が定められています。
- 要件①電子取引データの保存には真実性と可視性の確保が必要となる
- 要件②スキャナ保存の要件は書類の種類によって異なる
要件①電子取引データの保存には真実性と可視性の確保が必要となる
電子データの請求書や控えを保存する際には、「真実性の確保」と「可視性の確保」の要件を満たすことが求められます。
真実性の確保とは、電子データが改ざんされていないことを証明するための要件です。具体的には、下記いずれかの対応を行う必要があります。
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タイムスタンプとは、保存されている電子データが改ざんされていないことを証明する技術です。改ざん防止機能のあるシステムを導入するのがおすすめですが、予算をかけられない場合は、訂正・削除の防止に関する事務処理規程を作成することでも対応できます。
可視性の確保とは、保存した電子データをいつでも検索・表示できる状態にするための要件であり、以下のすべてを満たす必要があります。
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なお、税務職員によるデータの提示・提出に応じられる場合は、「検索機能の確保」における②・③の対応は不要です。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問15)、電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください|国税庁
要件②スキャナ保存の要件は書類の種類によって異なる
紙の請求書や控えを電子データで保存する際は、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。要件①と同じく真実性と可視性の確保が求められ、そのために満たすべき保存要件は書類の種類によって異なります。
スキャナ保存の要件は以下の通りです。
請求書は重要書類に該当するため、高い解像度やカラー画像での保存が必要です。一方、見積書や注文書などの一般書類は、重要書類と比べて保存要件が緩く設定されています。
事業形態や請求書の種類に応じた保存期間の違い
請求書の保存期間について、以下の4つのパターンに分けて解説します。なお、ここでは受け取った請求書について説明しますが、請求書控えの保存期間も基本的に同じです。
- 法人における請求書の保存期間
- 個人事業主の請求書保存期間
- 一定規模の副業収入がある場合の保存期間
- 適格請求書(インボイス)に該当する場合の保存期間
法人における請求書の保存期間
法人の場合、請求書の保存期間は原則として7年間です。保存期間は、請求書の発行日や受領日ではなく、発行または受領した日が属する事業年度終了の日(決算日)の翌日から2ヶ月を経過した日(確定申告期限の翌日)から起算します。
例えば、3月を決算月にしている法人が請求書を受領した場合の保存期間について見てみましょう。
- 請求書の受領日:2024年11月1日
- 決算日:2025年3月31日
- 確定申告期限の翌日:2025年6月1日
- 請求書の保存期間:2032年5月31日まで
ただし、以下のケースに該当する場合は、10年間の保存が必要です。
法人の場合、請求書は10年間保存しておけば安心でしょう。
参考:法人税法(第六十七条第二項)、No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁、No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁
個人事業主の請求書保存期間
個人事業主の場合、青色申告・白色申告にかかわらず、請求書の保存期間は原則5年間です。保存期間は、請求書の発行日や受領日ではなく、発行または受領した日が属する年の翌年三月十五日の翌日から起算します。
例えば、個人事業主が請求書を受領した場合の保存期間は、以下の通りです。
- 請求書の受領日:2024年11月1日
- 確定申告期限の翌日:2025年3月16日
- 請求書の保存期間:2030年3月15日まで
ただし、適格請求書発行事業者として適格請求書(インボイス)を発行する場合は、保存期間が異なります。
一定規模の副業収入がある場合の保存期間
会社員などが副業で収入を得ており、前々年の収入金額が300万円を超える場合は、請求書を含む現金預金取引関係書類を5年間保存する必要があります。法人や個人事業主と同じく、保存期間の起算日は確定申告期限の翌日です。
参考:個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について|国税庁
適格請求書(インボイス)に該当する場合の保存期間
適格請求書発行事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、法人・個人を問わず、適格請求書(インボイス)を7年間保存する必要があります。保存期間は、適格請求書を受領した日が属する課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日を起点とします。
個人事業主の場合、所得税法における請求書の保存期間は5年間です。しかし、適格請求書に該当する場合は、消費税法により7年間の保存が必要になるため、保存期間が異なる点に注意してください。
請求書を電子データで保存する際のポイント
請求書を電子データで保存する際は、以下のポイントを意識することで、スムーズに対応できるでしょう。
- ポイント①自社の保存方法を売手側に通知する
- ポイント②電子帳簿保存法に対応したシステムを導入して効率化を図る
- ポイント③請求書の保存に関する社内ルールを整備する
ポイント①自社の保存方法を売手側に通知する
紙の請求書も電子データで保存する方法を採用する場合、あらかじめ取引先に通知することが大切です。不要な書面のやり取りを省くことで、管理の手間が軽減されます。売り手側でも書面の送付が不要となり、双方にとって業務の簡略化につながるでしょう。
ポイント②電子帳簿保存法に対応したシステムを導入して効率化を図る
電子取引データの保存要件を満たした方法で請求書を保存するには、電子帳簿保存法対応システムを導入するのがおすすめです。一般的にシステムの機能は以下のような機能があり、業務効率化を図れます。
- PDFなどの書類をアップロードすると、保存要件を満たした状態で自動的に保存される
- タイムスタンプの付与や訂正・削除の履歴が残り、データの改ざんを防止できる
- 紙の書面をスキャンすると、検索機能の確保に必要な情報が自動で読み取れる
電子帳簿保存法に対応したシステムを活用することで、法令を遵守しつつ、業務を効率化できるでしょう。
ポイント③請求書の保存に関する社内ルールを整備する
請求書の保存方法を社内で統一するためには、共通のルールを整備することが重要です。複数の部署で請求書を扱う場合、ルールがないと、意図せず法令に違反してしまう可能性もあります。
特に、電子帳簿保存法対応のシステムを導入しない場合には、法令に従った保存ができるよう、社内ルールをしっかりと整備しておく必要があります。自社に合ったルールを作成・運用することで、電子帳簿保存法への対応が円滑に進むでしょう。
電子帳簿保存法に基づく請求書保存に関するよくある質問
最後に、電子帳簿保存法に基づく請求書保存に関するよくある質問を紹介します。
売手側が紙と電子データの両方で請求書を送付してきた場合はどちらを保管すればいい?
電子データと紙の請求書がまったく同じ内容で、書面を原本とするルールを社内で定めている場合は、書面のみの保存で問題ありません。
ただし、書面の情報を補完する内容が電子データに含まれている場合など、内容が同一でない場合は、電子データと書面の両方を保存する必要があります。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問14)
指定されたURLからダウンロードした請求書データは保存が必要?
指定されたURLからダウンロードした請求書は、電子帳簿保存法の「電子取引のデータ保存」に該当するため、保存が必要です。
ただし、指定されたURL上で「真実性の確保」「可視性の確保」の要件を満たしており、かつ保存期間が満了するまで確認できる状態であれば、ダウンロードは必須ではありません。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】|国税庁(問40-2)
送付されてきたカラーの請求書を白黒でスキャナ保存することは可能?
見積書や貨物受領書などの一般書類は、白黒でスキャナ保存が可能です。一方、請求書や契約書などの重要書類は、カラーでのスキャンまたは撮影がスキャナ保存の要件となっており、白黒での保存は認められません。
受け取った請求書に書き込みをして保存するのは問題ない?
紙で受け取った請求書に書き込みをしたうえで、スキャナ保存することは法令上問題ありません。一方、電子データで届いた請求書を印刷して書面に書き込む場合は、受領した元の電子データを原本として保存する必要があります。
電子帳簿保存法を理解して請求書を適切に保存しよう
請求書の保存方法は、形式によって異なります。電子データの場合は、データのまま保存する必要があります。一方、紙の請求書は、紙のまま保存するか、スキャナ保存のいずれかを選択できます。
請求書の保存期間は事業形態や種類によって異なり、原則として以下の通りです。
- 法人における請求書の保存期間:7年間(青色申告で欠損金額が生じた事業年度は10年間)
- 個人事業主の請求書保存期間:5年間
- 一定規模の副業収入がある場合の保存期間:5年間
- 適格請求書(インボイス)に該当する場合の保存期間:7年間
請求書の保存ルールを理解し、システムの導入や社内ルールの整備を行うことで、法令遵守と業務効率化を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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