- 更新日 : 2020年9月17日
仕入税額控除の対象とその計算方法

仕入税額控除は、課税事業者にとって納税額を大きく左右するポイントです。
計算方法を間違うとキャッシュフローが悪化し、経営に支障をきたす場合もありますので注意が必要です。
そもそも、仕入税額控除とは何なのでしょうか。また、仕入税額控除の対象となる項目とは何か、その計算方法はどうするのかなどを以下に解説します。
目次
仕入税額控除とは
仕入税額控除とは、事業者が消費税を納税する際に、商品や役務(サービス)を提供するために購入する仕入商品や原料、設備などの消費税を控除することです。
つまり、事業者と消費者が同じ商品に対して二重に負担しなくてもよいように、事業者が仕入れ価格と販売価格に対する消費税の差額だけを負担するための控除です。
仕入税額控除の対象項目
仕入税額控除の対象となる項目は「課税仕入」と呼ばれ、主に以下のようなものがあります。
給与の支払いは課税仕入ではありませんが、人材派遣などの事業者が提供する労働やサービスなどは対象となります。
2.製品の原材料などの購入
3.印刷機や溶接機などの機械、社屋や倉庫などの建物、車両や備品などの設備、事業用資産の購入や賃借
4.広告宣伝費、福利厚生費、交際費、通信費、水道光熱費、燃料費などの支払い
5.文具などの事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
6.建物や設備、車両などの修繕費の支払い
7.業務や派遣などの外注費、委託費の支払い
仕入税額控除の対象とならないもの
消費に対する税という観点から、課税の対象と考えないものや社会的な配慮から非課税とする項目があります。
控除の対象とならないものはさまざまな種類がありますが、主に以下のものが該当します。
2.郵便局の切手や印紙
3.自治体が行う証紙
4.商品券やプリペイドカード
5.保険の対象となる医療やサービス
6.学校の入学金や授業料
仕入控除税額の計算方法(課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合が95%以上の場合)
仕入税額控除は、課税期間中の課税仕入高に108分の8をかけた金額です。したがって、課税売上高の消費税額から仕入税額控除を引いた金額が納付する消費税となります。
平成26年4月から税率が8%(消費税率6.3%+地方消費税率1.7%)になりました。
計算方法は下記のようになります。
課税売上高(税抜)×100分の8-課税仕入高(税込)×108分の8
例)衣料品店が3,000円(税抜)で仕入れたマフラーを4,000円(税抜)で販売した場合
・課税仕入高(税抜)3,000円×100分の8=240円
・納付する消費税=320円-240円=80円
※仕入税額控除として240円が控除されました。
免税事業者や消費者から仕入れたときの計算方法
免税事業者や消費者など、消費税の表示がない請求書で支払いをした場合の計算方法はどうなるのでしょうか。
課税仕入は国内の非課税の取引以外を対象としているので、課税対象の取引であれば相手に関係なく、仕入税額控除の対象となります。したがって、支払った金額を税込みの金額として計算します。
例)友人にホームページの制作を依頼して、合計10万円を支払い、顧客に12万円で提供した。
計算方法は下記のようになります。
・課税仕入高(税込)10万円×108分の8=7,407円
・納付する消費税=9,600円-7,407円=2,193円
※仕入税額控除として7,407円が控除されました。
交際費や寄付金、会費、入会金などの計算方法
直接的な仕入でなくても、仕入税額控除の対象としてみなされる項目があります。判断基準は、物品やサービスに対しての支払いか、支払うことにより対価が認められるかがポイントです。
対象になる場合は、上記と同じ計算方法で控除することができます。
お歳暮などの贈答品や接待の飲食代などは、課税仕入になります。しかし、商品券やお祝いなどの金銭は仕入税額控除にはなりません。
2.寄付金
対価が認められないので対象となりませんが、物品を寄付した場合は仕入税額控除が適用される場合があります。
3.会費、入会金
組合や業界団体などの会費や、入会金は支払いによる対価が認められる場合のみ対象となります。例えば、月会費や入会金は対象となりませんが、講習会やセミナーなどの会費は対象になります。
ただし、リゾートクラブやゴルフなどのレジャー会員の会費や入会金は、施設利用の対価が認められるので対象となります。
仕入税額控除は事業者にとって不可欠な控除ですが、対象の範囲も広く、事業経営への影響も大きいものです。
対象になる項目を仕訳しておくことによって、申告時の消費税額を簡単な計算方法で算出できます。日ごろからの科目仕訳を適切に行って、正しい消費税額計算をしましょう。
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