• 作成日 : 2022年12月23日

アパート経営で経費にできるもの・できないものまとめ

アパート経営で経費にできるもの・できないものまとめ

アパート経営では管理修繕費通信費、新聞書籍代などさまざまな費用を経費にできます。

事業に関係しているかどうかが基準になるため、プライベートな支出や税金の一種は経費とは認められません。また、新築でアパートを建てた場合は、減価償却費の扱いも重要です。

今回は、アパート経営で経費にできるものとできないもの、計上時の注意点などを解説します。

アパート経営で経費にできるもの

業種に限らず、事業に関係する費用は経費に含められます。曖昧な基準であるため線引きは難しく、費用ごとに確認する必要があります。

アパート経営で経費に計上できるものは、以下の通りです。

管理修繕費

管理修繕費とは、崩れ落ちた屋根瓦の補修や剥がれた外壁の塗装のような劣化を修繕するための必要経費です。維持管理や原状回復の費用は修繕費に含まれますが、修繕の内容によっては経費として認められないこともあります。

改良して耐久性を高めたり、新たな設備を設置したりした場合など、物件の価値を高める費用は資本的支出に該当します。資本的支出の場合、費用ではなく資産として扱うのが特徴です。減価償却も必要となり、建物や設備の対応年数に応じて決算時に適切な金額のみ費用化します。

交通費

物件見学時の電車賃、賃貸経営セミナーへのタクシー代など、アパート経営に関する交通費も経費にできます。車で向かう場合のガソリン代、高速料金も対象です。

タクシーや電車はプライベートでも使用する可能性があるため、アパート経営で利用した分と明確な区分が必要です。領収書やレシートをもらい、事業用と私的用途とが区別できるようにしましょう。交通系ICカードの場合、利用履歴が印字されるため別途帳票を用意しなくてもよいのがメリットです。

租税公課

固定資産税や不動産取得税、登録免許税、都市計画税などアパート経営に関する各種税金は必要経費にできます。

不動産取得税や固定資産税などは、アパート経営に関わる部分のみ計上が可能なため注意が必要です。一方で所得税や住民税法人税のような所得に対する税は、アパート経営とは無関係であるため、経費としては計上できません。

損害保険料

アパートにかけた火災保険、地震保険、水災保険、施設賠償責任保険などの保険料は経費に含められます。施設賠償保険とは、建物や設備が原因で他人がケガをしてしまった際、大家さんが負うべき損害賠償責任を肩代わりするものです。

損害保険料は契約期間に応じて、必要な会計処理が異なります。1年以内の契約の場合、保険料を支払ったタイミングで全額費用に計上します。一方で複数年契約の場合、経過期間分だけ費用化する処理が必要です。5年の契約で保険料が120万円のケースでは、毎年24万円ずつ経費化できます。

通信費

アパート経営で利用した電話やインターネット利用料金は経費計上可能です。具体的には管理会社との電話料や物件検索を行う際のインターネット利用料が該当します。

大家さんが管理物件に住んでいる場合、プライベートな部分との按分処理が必要です。時間や日数など適した指標を用いて按分割合を算出します。たとえば業務で5時間、プライベートで5時間インターネットを使っている場合、按分割合は5:5です。

借入金利息

アパート購入に要した借入金の利息を支払ったときは経費に算入できます。利息のみで借入金自体は経費に含めることはできません。またアパートやマンションだけが対象で、土地を購入した際の借入金利息は計上不可です。

アパートの賃料収入のような不動産所得は、赤字が出た場合に損益通算が可能です。しかし、土地取得に要した借入金の利息は赤字額を補填できず、損益通算からは除外されます。

報酬

アパート経営に関する事務作業を専門家へ依頼した場合の報酬は、必要経費です。税理士に確定申告を依頼する費用や、司法書士へ建物の登記を依頼する費用などが該当します。

報酬の全額を経費に入れられるため、依頼費用によっては大きな節税効果も期待できます。ただし、アパート経営とは関係ない自宅の登記を司法書士に依頼した場合や、個人的な法的トラブルの相談をした場合などは経費に入れられません。

立ち退き料

家賃滞納や騒音などのトラブルが長期的に続く場合、住人に立ち退きを求めるケースがあります。入居者に出て行ってもらうために支払う立ち退き料は計上可能です。支払う相手が個人でも法人でも扱いには変わりありません。

立ち退き費用は引っ越し費用や転居先での家賃の差額などを考慮の上、額が決定するため高額になりやすい傾向があります。立ち退き料には消費税がかからないことも知っておきましょう。

接待交際費

管理会社や税理士などアパート経営で必要な相手への接待交際費は経費として認められる可能性があります。不動産経営にかかるセミナー費用、取引先へのお中元・手みやげ代・慶弔費用も対象です。

不動産会社を経営している場合における、従業員の慰安目的のレクリエーション代や飲食代は含みません。内部の人間は、営業とは関係がないため、接待交際費に含めることは不可能です。友人とのゴルフコンペ代や、親族へのお中元も該当しません。

新聞書籍代

アパート経営に関する情報収集のために、書籍や新聞などを購入した場合は、経費算入が可能です。業界特有の知識やノウハウが身に付けなければ、失敗のリスクが高くなる業態であるからだといわれています。事業に関係あるかが肝になるため、アパート経営に役立つビジネス書や参考書であれば、おそらく大丈夫でしょう。

アパート経営に特化した書籍ではなく一般的な経営ノウハウ本の場合、事業に関係あると主張するのは難しいかもしれません。株式投資やFX投資などに関する本も、経費計上は認められにくいでしょう。

事務用品費

帳簿を付けるためのノートやペンの購入費、契約書に押印するための印鑑の購入費用などは事務用品費として経費にカウントできます。事務用品費は消耗品費と混同しやすいですが、とくに明確な区分があるわけではありません。

ノートやペンの仕訳は、事務用品費と消耗品費、どちらで処理してもよいです。一般的に事務用品といえば、デスクの上で使用する文房具というイメージを持つかもしれませんが、カーテンやティッシュなども該当します。

消耗品費

デジタルカメラやパソコン、プリンターなどアパート管理で必要な部品は消耗品費として経費に入れられます。消耗品費で記帳できるのは、使用可能期間が1年未満、購入代金が10万円未満の物品のみです。

10万円以上の物品は備品として扱います。備品だと減価償却が必要となるため、消耗品との線引きはしっかりと行う必要があります。プライベートでも使用する消耗品は家事按分の処理が必要です。金額が小さくても疎かにしないようにしましょう。

減価償却費

建物や固定資産が経年劣化したことによる価値減少分を費用として計上します。減価償却では資産ごとに決められた耐用年数で除して、取得費用を期間ごとに按分します。

木造家屋の法定耐用年数は22年です。給排水設備や電気設備などの設備関係は、おおむね15年程度と考えられます。アパートの建築には数千万円かかることも珍しくないため、減価償却費は数ある経費のうちでも金額が大きくなりやすい項目です。

アパート経営で経費にできないもの

アパート経営者が支払う費用のうち、経費にできない項目を紹介します。

  • アパートローン返済のうち元本部分
  • 所得税や法人税などアパート経営とは関係がない税金
  • 実際に修繕が行われていない場合の修繕積立金

修繕積立金は、修繕が行われるまで経費計上できません。

アパートローン返済のうち元本部分

アパートローンの返済では利息と異なり、元本は経費の対象から除外されます。借りたお金を返しているだけといえるため「特別な支払いではない」とみなされることが理由です。

借金をしたときに利益が増えないのと同様、負債を返済しても支出にカウントされません。アパートローンの返済は通信費のように毎月支払いが生じます。

一見経費に思えるかもしれませんが、新たに発生したものではないため、独自の扱いが必要です。つまり、アパートローンの元本部分は節税効果を有していないといえます。

所得税や法人税などアパート経営とは関係がない税金

所得税や住民税、法人税などの税金は経費には認められません。これらの税金を減らしたい方は損益通算をうまく活用しましょう。

不動産所得で赤字が出た場合、給与所得のようにその他の種類で得た黒字と合算できます。赤字分、利益の額が小さくなるため所得税や住民税の節税につながります。

これらの税金は直接経費に入れられませんが、損益通算によって税金対策が可能です。サラリーマンが副業で不動産経営をしたり、複数の事業を営んでいたりする場合は損益通算を検討しましょう。

実際に修繕が行われていない場合の修繕積立金

アパートやマンションは定期的に大規模修繕を施す場合があるため、慣例的に入居者から修繕積立金を徴収します。修繕積立金の額は長期修繕計画で決定し、アパートの戸数にも左右されます。

原則として入居者から徴収したタイミングでは経費計上できません。なぜなら実際に修繕が行われておらず、費用としての実体がないためです。修繕積立金は改修や修繕が行われた時点で実際に生じた費用に応じて経費に計上します。

アパート経営で必要経費を計上する際の注意点

アパート経営で必要経費を計上するときに重要なポイントは、確定申告に向けて早めに動き出すことです。必要書類を送ってもらったり取り寄せたりする手間が生じる場合もあるため、遅くとも年が明けたタイミングで動き出すべきでしょう。税務署による指摘に備えて、証明・根拠となる書類を揃えておきます。

また、不急の修繕であれば、タイミングをずらすことで所得を抑えられます。給湯設備や排水設備のような、入居者の満足度を左右する故障は早急な対処が必要ですが、防水工事や外装工事は多少後回しでも構わないでしょう。

入居者の入れ替わりが多い年度の切り替わりや更新のタイミングに合わせて修繕を行えば、赤字を防ぎやすくなります。

慣れていないうちは、確定申告や税金の専門家である税理士に相談するのがおすすめです。税金の知識を正しく身に付けていない場合、経費の計上漏れなど、税金対策が適切に行えない可能性があります。

税理士に相談することによって、青色申告への変更や法人化のタイミングなど、節税効果を最大限に高められる申告方法を教えてくれるでしょう。サラリーマンからの独立や副業の場合は、確定申告自体がはじめてのケースもあるため、プロの手を借りるのが得策です。

アパート経営で経費にできるものを把握して賢い税金対策を

アパート経営で経費にできる項目は多く、漏れなく計上すれば節税につながります。プライベートと併用している項目は家事按分を行い、事業に要した経費のみ算入します。

建物や設備部分について減価償却を忘れずに行うのもポイントです。減価償却費が経費全体に占めるウェイトは大きいため、節税効果を得やすいためです。

また、赤字が出た場合は他の所得と損益通算できないか検討しましょう。赤字によって資金繰りが厳しくなりそうでも、不所得税や住民税を抑えられるため非常に有益です。

よくある質問

アパート経営で経費にできるものは?

「管理修繕費」「交通費」「租税公課」「損害保険料」「通信費」「借入金利息」「報酬」「立ち退き料」「接待交際費」「新聞書籍代」「事務用品費」「消耗品費」「減価償却費」などです。詳しくはこちらをご覧ください。

アパート経営で経費にできないものは?

「アパートローン返済のうち元本部分」「所得税や法人税などアパート経営とは関係がない税金」「実際に修繕が行われていない場合の修繕積立金」です。詳しくはこちらをご覧ください。


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