• 作成日 : 2024年10月24日

決算申告とは?期限や必要書類、作成手順などをわかりやすく解説

一般に、法人は年に一度決算を確定させて、その決算に基づいて確定申告をします。決算書を作成し、確定申告さえすればよいのではなく、法に基づいて決算書類を作成し、取締役会や株主総会で承認を得た上で、法人税をはじめとする申告及び納税をすることになります。

この記事では、法人の一連の手続きである決算申告について解説します。

決算申告とは?

最初に、決算申告、確定申告、中間申告など「申告」がつく言葉の意味を理解しておきましょう。

決算申告と確定申告の違い

一般に「申告」とは、個人や法人が自らの状況を公的機関に正式に報告することを言います。

そもそも「決算申告」という言葉は法律上にはなく、一般には「決算に基づく確定申告」を指す言葉として使われます。例えば、会社員が医療費控除を適用したい場合には「確定申告」が必要となりますが、この場合の確定申告には決算等は含まれていません。個人事業主や法人など事業を運営する場合においては「決算に基づく確定申告」、一般に言う「決算申告」が必要となります。

一方、「確定申告」は法人税法所得税法等で使用される用語です。例えば、法人税法第74条には次のようにあります。

第二款 確定申告 第74条

内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。

引用:法人税法第74条|e-Gov

しかし、所得税法上においては「確定申告」という用語はあるものの「決算申告」という用語は使用されていません。これは所得税の確定申告は、先に挙げた会社員の医療費控除のように必ずしも「決算」によるものとは限らないからです。

まとめると、決算申告は一般に広い意味で使われ、個人事業主や法人が事業活動をとりまとめて所得を計算する過程を含む「決算に基づく確定申告」を指しますが、確定申告は「所得を計算して申告書を提出すること」を指すことだと言えます。

決算申告と中間申告の違い

決算申告とは、事業年度全体における経営成績(損益)と財政状態(資産および負債)を確定させ、確定申告における納税額を確定するための一連の手続きを言います。

一方、中間申告は「事業年度の途中において」税金の一部を「前払い」するための制度です。前年度において一定額を超える税額がある場合には、確定申告でまとめて納めるのではなく、年度の途中で納税します。

また、中間申告においては方法が複数あります。例えば法人税においては、前年度の税額の1/2を納付する予定申告や仮決算に基づく申告があります。

中間申告の対象となる者は、次のようになっています。

税法中間申告等の対象となる者
法人税前事業年度の法人税額が20万円を超えた法人
所得税所得税においては「中間申告」ではありませんが、前年分の所得税額等を基準にした額が15万円を超えると「予定納税」として、予定納税基準額の1/3の金額を2回納付します。
消費税(個人・法人とも)年税額が48万円を超える者

所得税については、中間申告はありませんが、中間期における前払いとして「予定納付」があります。

参考:
法人税法第71条|e-Gov
予定納税 所得税|国税庁
中間申告の方法 消費税|国税庁

いずれの税法においても確定申告においては、当年度の年税額から中間申告や予定納税で支払った税額を差し引いた残額を納付します。

決算申告の期限

法人税以外にも決算申告が必要なものがありますが、この項では「法人税」に絞って決算申告に必要な期限を解説します。

確定申告書は、原則、各事業年度終了日の翌日から「2か月以内」に提出する必要があります。例えば、3月決算法人なら5月末までに確定申告をしなければなりません。そうなると、決算に伴い作成した計算書類は、原則として定時株主総会の承認が必要なため、実際には5月末までの株主総会承認が間に合わないケースがあります。

そこで、このような場合には事業年度終了の日までに申告期限の延長の特例を申請することができます。これにより、1カ月申告期限の延長が可能です。

このように法人税における「決算に基づく確定申告」の期限は特例を適用することもできます。なお、消費税の確定申告についても、申告期限の延長申請により1カ月の延長が可能です。

参考:
定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請(法人税)|国税庁
消費税申告期限延長届出手続|国税庁

決算申告に必要な書類

ここでは法人税に絞って、「決算に基づく確定申告」に必要な書類を見ていきましょう。なお、所得税と異なり、法人は納付すべき法人税額がない場合でも、確定申告をする必要があります。確定申告では、確定申告書及び各別表を提出しますが、次の書類を添付しなければなりません。

決算書(決算報告書)

決算時に作成した決算書を提出します。決算報告そのものではなく、必要なものは次の財務諸表です。

法人事業概況説明書

事業等の概況に関する書類として「法人事業概況説明書」を提出します。この説明書は、その法人の主要な事業の内容や業種、月度売上高、従業員数などを記載するもので、具体的な事業の規模や業態を確認するための書類と言えます。

なお、当説明書については令和6年3月より様式が改定され、次の2カ所について変更があったため注意しましょう。

参考:
法人税関係その他 パンフレット|国税庁
「法人事業概況説明書」

勘定科目内訳書

勘定科目内訳書は、申告の内容を詳細に説明することで、適正な税務処理が行われていることの裏付けとして提出する書類です。法人税の計算誤り、利益操作、申告漏れ等がないことを確認するための書類として、数多くの項目について詳細に報告します。

なかでも、役員報酬借入金や貸付金、売掛金買掛金、現金預金などについては調査の対象とされやすいため、作成の際は根拠資料との照合をしておきましょう。

なお、これら以外に次のものが必要となる場合があります。

  • 適用額明細書(租税特別措置を適用するとき)
  • 合併契約書、分割契約書その他の関係する書類の写し(組織再編があったとき)
  • 組織再編成に係る主要な事項の明細書(組織再編があったとき) など

決算書を作成する手順

決算書の作成について、多くの法人では会計ソフトを利用しているでしょう。したがって、決算書の作成方法としては会計仕訳を入力し、元帳や残高試算表を確認した上で、貸借対照表と損益計算書のチェックをして正しい決算書を作成します。

適正な決算書作成のためには、基本的には1つひとつの仕訳が適正かどうかを見極めることに尽きます。なかでも、イレギュラー取引、新規事業、決算前後の大きな取引等は複数名で仕訳の確認をすることをおすすめします。

貸借対照表を作成する

貸借対照表を作成する上で、多くの会計ソフトでは、実際に仕訳の際に使用した勘定科目と貸借対照表上に表示される勘定科目が異なるケースがあります。

例えば、貸借対照表には「現金及び預金」と集約して表示されますが、実際には「小口現金」や「当座預金」などで仕訳をします。貸借対照表上の集約が適正かどうかは決算時には見直しておきましょう。

また、金額が僅少な場合には、貸借対照表には「その他の流動資産」などとまとめて表示されます。その他の流動資産は具体的にはどの勘定科目からなるかは確認しておきましょう。

さらに貸借対照表作成のルールとして「流動性配列法」があります。資産と負債については流動性の高いものから順に並べられているかどうかも確認しておきましょう。

損益計算書を作成する

決算における損益計算書で、まず気を付けるべき点は「期またがり」です。例えば、検収基準で売上高を計上する場合において、検収日が決算日を超えていないか、固定資産を計上する場合に事業の用に供したのが決算日を超えていないかなど、日付には特に注意しましょう。決算期前後で大きな取引があるときには、必ず「決算日」を意識したチェックをすべきでしょう。

また、貸借対照表、損益計算書について、前期との比較(増減の確認)及び予算との比較によりそれぞれ差異の分析をします。差異の理由がよくわからない場合には、仕訳の誤りである可能性もあります。

会計ソフトにより自動的に出力される決算書ではなく、確たる根拠のある決算書となるまで多方面からのチェックをして財務諸表を整えます。

自分で決算申告をする方法

最近は税務申告ソフトも大変便利になり、税理士に頼らずとも社内で法人税の確定申告書を仕上げて申告をすることも少なくないようです。決算申告においては、次のような順に進めていくのがよくあるケースです。

  1. 決算整理仕訳、試算表等の最終確認
  2. 決算書の作成と税務調整の実施、株主総会資料作成
  3. 取締役会開催、承認
  4. 株主総会の開催、承認
  5. 確定申告書の作成、確認、提出、納付

上記のうち、2)以降について解説します。

決算書類、法人税申告書の作成

決算書類の1つである損益計算書の末尾には、「法人税等」「法人税、住民税及び事業税」など課税所得に対する税金をまとめて記載します。また、将来の法人税に影響を与える一時的な差異について税効果会計を適用するときは、貸借対照表に資産や負債を計上する必要があります。

これら税金の金額を算出するためには、会計上の利益と税務上の課税所得との差を意識しなければなりません。つまり、決算書類を作成するときに予め法人税等の概算を計算するという過程を経る必要があります。

これらのうち、上記 2)の手順を示すと次のようになります。

決算書の作成(法人税等の項目以外)→ 法人税等の概算 → 決算書の作成(法人税等の項目含む)→ 法人税申告書作成(下書き)

このような手順を経て、決算と向き合うことによって決算に関する知識や会計・税務のスキルが向上するだけでなく、経営陣などと決算について説明する機会が増えるのはメリットと言えます。

取締役会・株主総会で承認

作成した決算書類は経営陣や監査役等の確認を経て、まず取締役会の承認を得ます。取締役会では、決算報告の詳細レビューや監査報告書の指摘事項を議論したり、配当金の方針決定、スケジュールの確認などを行ったりします。そして最終的に決算の承認を得ます。

次に、株主が一堂に会し審議決定する場である株主総会での承認を得ます。株主によって財務諸表、会計監査報告などが承認を得ると、確定申告書の提出が可能になります。納税資金の資金繰りについては、この時期までに準備しておきます。

税務署へ提出・納税

国税庁の調査では令和4年度の法人税の電子申告割合は91.1%であり、多くの場合が電子申告にて法人税の確定申告を済ませているようです。自分で確定申告をする場合にこそ、手軽な電子申告が向いていると言えます。

法人税には提出すべき書類が多くありますが、電子申告の場合は追加で添付書類を送信することも難しくないため、ぜひおすすめします。また、法人税は高額になることが多いので、納税についてもキャッシュレス納付がおすすめです。

会計事務所に一任すると、決算の内容も税務調整も理解が浅くなるところ、社内で決算申告をすることにより、会社の数字を熟知できることもメリットであると言えます。

税理士に決算申告を依頼すべきケース

税理士に決算申告を依頼すべきケースは多々あります。社内に担当者が不在であったり、新たな担当者が不慣れであったりと人的リソースに問題があるケースや、取引内容が複雑なケースなどです。

特に組織再編をした場合などには、純資産の部に大きな変化があったり、提出すべき書類などが増えるため、税理士に相談したほうがよいでしょう。その場合には、その事象が発生する前から連絡をとり、進め方のアドバイスを受けるなど余裕をもった対応を心がけましょう。

会計担当者ならぜひ決算の経験を!

会計を担当していても、なかには決算申告には携わらない人もいるでしょう。しかし、決算業務を経験することで、会計業務の奥深さや面白さをさらに実感できるようになります。

決算業務は、日々の仕訳などの経理業務の集大成として、会社の業績を経営陣や株主に報告する重要な場面に立ち会う業務です。

決算申告を経験することは、会社の数字を読み解き、その数字を将来に活用する側へのステップアップの機会であると言えます。決算業務を積み重ねることで、会計業務へのより一層のやりがいを感じるようになるでしょう。


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