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管理会計における意思決定プロセス

経営上の意思決定採決を進めるには、管理会計によって作成されたデータが必要です。管理会計のデータに基づく意思決定は、根拠が明確なため結果分析も容易です。

本記事では、意思決定のプロセスについて詳しく解説し、そのプロセスにおいて、管理会計がどのように関わるのかを説明します。

管理会計とは?

「会計」は、次の2つに大別されます。

・財務会計
・管理会計

財務会計は投資家のために行われる会計であり、「決算書」を作成し、業績を外部に報告することが目的です。

一方、管理会計は「組織の成長」「組織の管理」のために行われ、組織の内部を管理することを目的とします。組織が成長するためには、適時的確に意思決定を行う必要があります。組織の意思決定のためには、管理会計によって作成されたデータが必要です。

では、管理会計は意思決定採決のプロセス上、どこで必要とされるのかについて、次に説明します。

意思決定採決のプロセス

意思決定採決のプロセスは、大きく4つのフェーズに分けられます。

1.情報活動:問題を発見する
2.設計活動:問題解決のために、代替案を作成する
3.選択活動:代替案を比較し、最善案を選択する
4.検討活動:代替案を遂行し、その結果を分析・検討する

設計活動で作成される代替案は、できる限り定量化(数値化)することが望ましいです。定性化されたデータ(数値化されていないデータ)で代替案を作成してしまうと、最善案の選択が困難となるためです。

管理会計によって得られるデータは、意思決定プロセスのどの段階でも活用できます。問題を発見する情報活動はもちろん、定量化した代替案を作成する設計活動でも管理会計で得られるデータは欠かせません。

代替案を比較検討する選択活動においても、定量化された代替案を作成することで各案を比較しやすくなります。代替案を遂行した結果を分析する検討活動でも、管理会計データによって分析・検討が容易になります。

意思決定の種類

意思決定には、意思決定者の階層によって次の3つに分けられます。
意思決定の種類

1.戦略的意思決定

戦略的意思決定(構造的意思決定とも呼びます)とは、役員等の経営者層が、臨時的に行う意思決定をいいます。組織に対する影響は大きく、重要度が最も高いです。

具体的には、次のような意思決定が挙げられます。

・利益を拡大するために、新たな工場を設置すべきか
・売上高を拡大するために、販売拠点となる店舗を出店すべきか
・市場におけるシェアを拡大するために、競合他社を吸収合併すべきか

戦略的意思決定は、日々行われるものではなく、前例・参考情報に乏しいという点が特徴です。また、意思決定の結果は組織の存続に大きく影響を与えるため、採決には慎重を期します。

戦略的意思決定では長期的視点での意思決定が行われるため、たとえば「工場設置にかかる費用」や「資金繰り」といった管理会計のデータが必要です。

2.管理的意思決定

管理的意思決定とは、主に部長職等の中間管理者層が行う意思決定のことです。組織に対する影響はやや中程度であり、重要度もやや低くなります。管理的意思決定では、戦略的意思決定により採決された投資活動を日々の業務に落とし込むべく、「人員配置」「スケジュールの決定」等の意思決定が行われます。

3.業務的意思決定

業務的意思決定(戦術的意思決定とも呼びます)とは、担当者・グループリーダーレベルが、日々の業務において行う意思決定のことです。組織に対する影響は小さく、重要度は低くなります。具体的には、既存製品のセールスミックス(どの製品を、どの程度販売するかの割合)を変更する等の意思決定が行われます。

また、業務的意思決定では短期的視点での意思決定が行われるため、たとえば「製品ごとの単価」や「製品ごとの販売数量」といったデータが必要です。

意思決定の手法

意思決定の具体的手法の1つに、「差額原価収益分析」と呼ばれる手法があります。差額原価収益分析を行うことで、管理会計に基づく意思決定上、効率的な分析が可能です。代替案を比較するための手法であり、大きく次の3つの概念が存在します。

・差額収益:一方の案を採用した場合に、差が生じる収益
・差額原価:一方の案を採用した場合に、差が生じる費用
・埋没原価:どちらの案を採用しても、差が生じない費用


・A案を採用した場合:収益が100増加、費用<1>が20増加、費用<2>が50減少
・B案を採用した場合:収益が50増加、費用<1>は増減なし、費用<2>が50減少

この場合、A案を採用した場合の差額収益は+50(収益100-収益50)、差額原価は20(費用<1>20 ― 費用<1>0)です。A案を採用すると差額利益が+30(差額収益50 ― 差額原価20)となるため、A案を採用すべきという結論が出ます。

なお、費用<2>はA案・B案どちらを採用しても同じように50が減少するため、差額は発生せず埋没原価となります。代替案を比較する際に埋没原価(比較が不要な部分)を明確化することで、意思決定によってどの部分が変化するのかを明確化することが可能です。

いずれの意思決定においても、管理会計が重要である

戦略的意思決定、管理的意思決定、業務的意思決定のいずれにおいても「決算書」を活用することになります。また、差額原価収益分析を行うためには、部門別、製品品種別などの「管理会計によって作成されたデータ」が必要です。

管理会計を行わない場合、意思決定は「定性的な情報」に左右され、根拠に乏しい意思決定が行われてしまう恐れもあります。根拠が分からないままに行われた活動は、結果の分析を行うことが困難です。

企業活動においては事象をできる限り数値化し、日々数値を細分化しておく必要があります。

監修:藤沼 寛夫(公認会計士)

ライター 兼 公認会計士
「会計」「税務」「財務分析」について、分かりやすい記事を提供します。
https://fujinuma-write.com/

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