• 更新日 : 2023年8月23日

月またぎでも経費精算できる?年度をまたぐ場合も解説

月またぎでも経費精算できる?年度をまたぐ場合も解説

月末に出張が立て込んでしまったり、ついつい申請を忘れてしまったりして経費精算が月またぎになってしまうケースも少なくありません。この場合、精算はできるのでしょうか?

この記事では月またぎや年度またぎの経費精算の可否や、月や決算期をまたいでしまった場合の経費の会計処理の方法についてご紹介します。

月またぎの経費精算はできる?

結論からいうと月またぎの経費精算は可能です。民法上では従業員は経費が発生してから5年間は会社に経費の支払いを請求する権利があります。債権の時効を定めた民法166条には「債権者が権利を行使することができることを知ったときから五年間行使しないとき。」と記載されています。立て替えた経費も債権に該当しますので、経費精算の時効も5年であり、月またぎの経費精算も問題ないということになるのです。

とはいえ、月またぎで経費精算を行うとなると通常とは異なる会計処理を行わなければなりません。また、月またぎや年度またぎの会計処理が頻発していると会社の信用が低下するおそれがあります。

経理担当者は社内ルールで経費精算の期限を設ける、早めの精算を呼びかける、業務フローを改善するなどの工夫をする、従業員は経費が発生したら速やかに精算するなど、お互いが配慮することが大切です。

月またぎの経費精算を軽減するためのポイントについては後ほど詳しくご紹介します。

参照:民法|e-Gov法令検索

月またぎの経費精算が発生するケース

ちゃんと呼びかけているのにも関わらず、月をまたいでから従業員が経費精算を行うことに課題感を抱えている経理担当者の方もいらっしゃるかと思います。しかし、それにはやむを得ない事情もあるかもしれません。

なぜ月またぎの経費精算が発生するのか?ここからはその理由について見ていきましょう。

そもそも月またぎの経費精算とは?

月またぎとはその名のとおり月をまたいで翌月にかかること、物事が2ヶ月におよぶことを指します。

月またぎの経費精算とは前月以前に発生した経費を精算することです。たとえば3月28日に経費が発生し、申請書と領収書を4月2日に経理担当者に渡して精算を行ったケースなどが挙げられます。

利用期間が月をまたぐ

月またぎの経費精算が発生する理由としてまず挙げられるのが、利用期間です。たとえば出張で新幹線の往復チケットを使ったとします。3月30日に出張先に行き、4月2日に帰ってきた場合、利用期間が月をまたいでいるため経費精算も月をまたぐことになるのです。

月末の経費を請求する

先ほどの例にも挙げたように、3月30日から4月2日までなど従業員が月またぎで出張に行っていた場合、経費を精算するのは帰ってきた後になります。この場合、4月に発生した分は通常通りの精算で問題ありませんが、3月中に発生した経費はすべて月またぎの経費精算を行う必要があります。

特に出張や外出の頻度が高く精算すべき経費が多い人ほど、月またぎの経費精算が多くなる傾向にあります。

経費精算の申請が間に合わない

経費精算の申請が間に合わなくて精算が月またぎになってしまうケースもよくあります。たとえば3月31日の夕方や夜間に突発的に経費が発生し、すでに経理担当者が帰宅してしまっていた場合は精算が翌月になってしまいます。

経費精算にあたって上司の承認が必要な場合、上司が出張に行っていたり承認が遅れたりすることで、月またぎの精算になってしまうケースもあります。

従業員が忘れている

上記以外にも、従業員が経費精算の申請を忘れていたり、精算すべき経費が漏れていたりという理由で申請が遅れてしまうこともあります。特に、どうしても担当業務が忙しいときは経費まわりのことは後回しになりがちです。その結果、経費精算が遅れてしまう、申請を忘れてしまうということもあり得ます。

決算期・年度をまたぐ経費精算

前述のとおり経費精算の時効は5年です。そのため決算期や年度をまたぐ経費精算もあり得ます。特に期末や年度末に経費が発生した場合、どうしても決算期や年度をまたいで精算をしなければならないケースも多いです。

ただし、事業年度をまたいで決算が終わってしまうと、遡って数字を変えることはできません。また、経費を損金として処理できるのは税務申告までに計上した経費のみです。

そのため、決算期や年度をまたいだ経費精算を行う場合、一般的には翌年度分の経費として処理することになります。

月や年度をまたぐ経費の会計処理

決算期をまたいで経費精算を行う場合は確定債権で、経過勘定未払費用前払費用になります。2万円の新幹線の往復チケットを用いて決算月(3月を想定)をまたいで出張をした例で、料金を先払いしたケースと後払いしたケースで具体的に会計処理の方法を見ていきましょう。

料金を先払いした場合の処理方法

料金を先払いした場合は「前払費用」という勘定科目を用いて会計処理を行います。たとえば3月に往復チケットを購入して出張に行き、4月に往路を使った場合は以下のような処理になります。

借方貸方
3月旅費交通費 10,000円
前払費用 10,000円
現金 20,000円
4月旅費交通費 10,000円前払費用 10,000円

後払いしたケース

料金を後払いした場合は「未払費用」という勘定科目を使って処理をします。3月に出張先に行き、4月に帰ってきてチケット代も4月に支払った場合は以下のようになります。

借方貸方
3月旅費交通費 10,000円未払費用 10,000円
4月未払費用 20,000円現金 20,000円

月またぎの経費精算を最小限に抑えるために

従業員側にもやむを得ない事情は多々あると考えられますが、それでもなるべく月またぎや年度またぎの経費精算は減らしたほうがベターです。最小限に抑えるためには以下のような取り組みを検討してみましょう。

経費精算の期限を決める

まずは就業規則や社内規定で経費精算の期限を設けましょう。ルールを定めることで従業員の意識も変わり、月末よりも少し前に期限を設ければ月またぎの経費精算も減るはずです。

ただし、ここまで説明してきたように出張や突発的な経費の発生、上司の承認の遅れなど、やむを得ない事情があるケースも少なくありません。また、5年間の時効もあります。「期限を過ぎたから一切受け付けない」ではなく、柔軟に対応していくことが大切です。

従業員に期限内に精算するよう呼びかける

ルールを決めても、忘れてしまう人や守らない人が出てくる可能性があります。経費精算に関する規定を社内で周知し、期限前に精算をしてもらうよう呼びかけましょう。

ただし、経理部門だけでは限界があります。各部門長からも部署内に周知してもらう、ルールを守らない人には直属の上司から共有してもらうなど、連携を取りながら働きかけていくことで改善が期待できます。

経費精算システムを導入する

経費精算の申請が遅れるのは業務フローに問題がある可能性もあります。たとえば紙の申請書や帳面に経費の内訳を書いて承認を得るために上司に提出し、さらに経理部門まで申請に行くというのは非常に手間がかかります。特に外出や出張が多く経費を立て替える機会が多い人ほど、経費精算が後回しになってしまいがちです。

ペーパーレス化すれば手書きで申請書や帳面に書き込む手間はありません。ネット経由で経費精算の申請ができるシステムを導入すれば、こうした手間がかからずスピーディーな処理が可能となります。

月またぎや決算期またぎの経費精算はできるが、なるべく軽減しよう

月や決算期をまたいだ経費精算もできないわけではありません。前払費用や未払費用といった経過勘定を用いることで、会計処理をすることができます。ただし、なるべくなら月内や決算期前に処理をしておきたいところです。また、月末月初は経理部門が忙しくなる傾向があるため、経費精算の申請が集中しないよう工夫することも大切です。

社内ルールを確立する、従業員に早めの精算を呼びかける、業務フローを改善するなどの対策をとっていきましょう。


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