• 更新日 : 2025年2月20日

月商とは月の売上のこと!計算方法や月収との違いを解説

企業や事業を評価する際、月商という言葉を耳にする機会も多いでしょう。一方で、月商は月収や月給という似た言葉も存在し、これらの違いをしっかり理解しておくことが大切です。

この記事では、月商の基本的な定義や押さえておくべき注意点、月収・月給との違い、どのように売上予測に関わってくるのかなどについて詳しく解説します。

月商は月の総売上高

月商とは、ある月における企業や事業の総売上高を指し、事業の規模や成長度合いを測るひとつの重要な指標となります。そのため、企業間の業績比較や取引先選定の際などに、月商が参照されることがあります。

また、月商は1ヶ月の売上高を示したものであるため「年商(1年間の売上高)÷12(ヶ月)」で算出することが可能です。

月商は人件費や経費を差し引く前の金額

月商は、企業や事業がその月に得た総売上高を意味しますが、人件費や経費などの費用を差し引く前の金額である点を把握しておきましょう。

つまり、月商は商品の売上やサービスの提供によって得られた収入の合計であり、利益を求めるためには、月商から人件費や材料費などの各種経費を差し引かなければいけません。

月商だけに着目して、事業が順調に成長しているのかどうかを判断するのは避けましょう。

月商の計算方法

月商の計算は月間の売上をすべて合計することで求められます。具体的には、その月に販売した商品や提供したサービスの売上金額を足し合わせることで、月商が算出されます。

また、年間の決算書から月商を求める場合には「年商(1年間の売上高)÷12(ヶ月)」でも算出可能です。一方で、季節や月ごとに売上が変動する場合もあるため、年商を12ヶ月で割った値はあくまで平均月商である点を押さえておきましょう。

月商が表すのは事業規模の大きさ

月商は、その企業や事業の規模を示す指標のひとつです。なぜなら、月商が高いほど、その企業が多くの商品やサービスを提供し、多くの顧客と取引をしていることを意味するからです。

ただし、月商だけでは財務状況の健全性を判断することはできません。たとえば、売上があったとしても取引先から代金を回収できていない場合、事業の資金繰りが悪化する恐れがあるでしょう。

他にも、大きな売上がある一方で、借入金や負債の金額が大きいと企業全体の財務状況は悪くなります。

このように、月商はあくまで事業規模の大きさを示す一側面であり、企業や事業の全体像を理解するためには総合的な分析が欠かせません。

月商と月収、月給の違い

月商と似ている言葉に、月収や月給があげられますが、それぞれ異なる意味を有しており、正確に把握しておくことが重要です。

個人事業主にとって月収とは、月の売上高(月商)から経費を差し引いた後の利益額を指します。また、従業員が月収という言葉を使用する際、月収の中には残業手当や変動手当が含まれる点を把握しておきましょう。

月給は、従業員が雇用主から毎月固定で受け取る給与のことを指します。そのため、月給の中に残業手当や変動手当は含まれず「基本給+固定手当」の合計額で算出されます。

これらの用語を混同すると、経営判断や財務計画において誤った認識を持ってしまうかもしれません。それぞれの概念や用語の意味をしっかりと理解し、適切に使い分けることが大切です。

月商を見る際の注意点

会社の事業規模や売上の状況を評価する際に、月商を参照することがあります。ただし、企業や事業を正しく評価するためには、いくつかの注意点を把握しておく必要があるでしょう。

ここでは、月商を分析する際に踏まえておくべきポイントを紹介します。

月商イコール利益ではない

月商はその月の総売上高を示しており、利益を示しているわけではありません。

利益を参照するためには、月商から経費やコストの合計を差し引きましょう。具体的には、商品の製造や仕入れにかかるコスト、人件費、広告費、運送費、固定費など、すべての経費を月商から差し引くと利益を算出できます。

企業や事業の健全性を評価する際には、月商だけでなく、利益や経費、そして利益率といった他の財務指標を合わせて考慮することが不可欠です。

儲けは営業利益から判断する

事業の実際の「儲け」を判断するためには、営業利益に注目しましょう。営業利益とは、月商から本業に関する経費を差し引いた後の金額です。

この営業利益は、本業による収益性を示すため、月商よりも正確に企業の儲けを判断できます。また、営業利益には以下のような収入が含まれていないため、企業が本業によって得られた収益のみを把握できる点がポイントです。

  • 企業が保有する株式からの配当金や利息などの金融収入
  • 企業が保有している土地を駐車場として貸している賃貸収入
  • 生産・加工の過程で生じた廃材の売却収入
  • 保険金収入や補助金・助成金収入 など

このように、営業利益から儲けを把握することで、企業が運営する本業の収益性を評価でき、そのビジネスが成功しているかどうか読み取ることができるでしょう。

月の売上を利用した売上予測

月商は事業規模を判断するだけでなく、売上の予測にも活用できます。具体的には以下の計算式で、将来の売上予測を算出できます。

売上予測=過去の売上データ(過去数年に渡る売上平均や前年同月の月商など)×成長率

 
たとえば、2年前の12月の月商が40億円、去年同月の月商が50億円だった場合、以下の計算によって年間成長率は25%となります。

(50億円-40億円)÷40億円×100%=25%(年間成長率)

そのため、今年の12月の月商は以下の計算式より62.5億円と予測されます。

50億円×125%=62.5億円(売上予測)

ただし、より精度の高い売上予測を算出するならば、より多くのデータや複雑な計算が必要となります。多くの企業では売上予測を算出する際に、エクセルや専用のツールを用いるのが一般的です。

エクセルで関数やマクロを組む

関数やマクロを活用することで、エクセルでも売上予測を立てることが可能です。

エクセルでの月商を用いた売上予測の手法としては、季節ごとの変動率を利用したものがあげられます。たとえば、各月の月商から季節ごとの変動率を算出し、事前に計算された年間売上予測に対して、各月の変動率をかけ合わせていくことで、季節ごとの変動率が反映された売上予測を算出できます。

関数やマクロを設定しておくと、計算の度に計算式をすべて入力する必要はなくなり、求められるデータを順次入力していくだけで、売上予測を算出できるでしょう。このように、エクセルの関数やマクロを使いこなすことで、売上予測の精度を高めるとともに、データ分析の効率が向上します。

専用ツールを導入する

売上予測の精度をさらに高めるためには、専用ツールを導入することが有効です。専用ツールの多くは、高度な分析機能や予測モデルを搭載しており、専門的な予測手法を利用できます。

これにより、月商だけでなく、季節変動や商談の成約率などを反映した予測が可能です。また、データの可視化機能も充実しており、グラフやチャートを用いて視覚的に売上トレンドを把握できます。

エクセルよりも複雑なデータ処理を実施したい方は、専用ツールの導入も検討しましょう。

売上管理をする上で知っておきたい用語集

最後に、売上管理を行う上で、知っておきたい3つの用語を紹介します。

具体的には、企業が事業で得た利益を示す営業利益、売上に対する営業利益の比率を示す営業利益率、企業が利益をゼロにするために必要な売上高を示す損益分岐点があげられます。

各用語の概要について見ていきましょう。

営業利益

営業利益は、企業の本業から得られる利益を示す指標であり、月商から売上原価販売費一般管理費などの事業運営に直接関連する費用を差し引いた後の利益を指します。

営業利益=月商-経費の合計(売上原価+販売費+一般管理費 など)

 
販売費とは広告宣伝費旅費交通費など、企業が利益を得るために必要な費用を指します。また、一般管理費とは、人件費や水道光熱費、家賃・テナント料など企業を運営するために必要な費用です。

こうした経費の合計額を月商から差し引くことで、本業の事業活動からどのくらいの利益を得られているのかを把握できます。

営業利益率

営業利益率は、企業の売上高に対する営業利益の割合を示す指標で、事業の収益性を評価するために用います。計算方法は、営業利益を売上高で割り、その結果をパーセンテージで表します。

営業利益率(%)=( 営業利益÷売上高)×100

 
営業利益率が高いほど、売上高に対して効率的に利益をあげていることを意味します。たとえば、売上高が1,000万円で営業利益が200万円の場合、営業利益率は20%となります。

営業利益率を参照することで、企業の経営効率やコスト管理の状態を把握するのに役立つでしょう。

損益分岐点

損益分岐点は固定費と変動費をカバーするために必要な売上高のことを指し、この点を超えると利益が発生します。損益分岐点を計算するには、以下の式を用います。

損益分岐点売上高= 固定費÷(1 – 変動費率)

 
この時、固定費とは家賃や固定給などの毎月固定で発生するコストであり、変動費とは売上額の増減によって変動する費用を指しています。そして、変動費率は「変動費÷売上高」で算出され、売上高における変動費の割合を示しています。

上記の計算によって、損益分岐点を把握することで、企業は最低限必要な売上高を理解し、売上目標や価格戦略の設定に役立つでしょう。

月商を正しく理解し、経営判断の参考にしよう

月商は1ヶ月間の総売上高を示し、事業の規模を把握するための重要な指標です。ただし、利益とは異なり、月商は人件費や経費などの支出を差し引く前の金額である点に注意が必要です。

月商と月収・月給は混同されがちですが、それぞれの意味を正しく理解することが大切になります。他にも、エクセルや専用ツールなどを用いることで、月商をもとに売上予測を算出できます。

このように、月商やその周辺知識について正しく理解することで、より正確に経営判断を行えるでしょう。


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